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色々と間違ってる異世界サムライ

作者:モッチー7
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第15話:勇者の計算外その3

セインperspective

僕は見慣れない城の前にいる。
しかも、この城はただの城じゃない……あの忌々しき凶悪大量殺人鬼のツキツバ・ギンコがデスアントの女王を討伐する為に造ったダンジョンだって噂だ。
僕らはすぐに挑戦する事にした。
待っていろツキツバ・ギンコ……貴様が造ったヘボダンジョンなんぞ、直ぐに踏破してくれるわ!
「ずいぶんと深い森の中にあるんだね」
「入り口の周囲だけやけに綺麗なのが気になるわ」
「どうでもいいだろ! 早く中に入ろうぜ!」
「ネイ、冷静にね。高難易度ということは敵もレベルが高いのですから」
視界に入るのは野営をする冒険者達だ。
鑑定スキルで見てみるがどいつもこいつも雑魚レベル。
思わず吹き出しそうになった。
必死に挑戦しているところ悪いが、ここは僕らが踏破させてもらうよ。
ツキツバ・ギンコのせいで……ここで鬱憤を晴らさせてもらう。それに僕が高難易度ダンジョンを踏破してみせれば、さぞ世間は驚くに違いない。
その上で聖剣を手に入れ僕の名を万民に知らしめてやろう。
あとは魔王との戦いに向けてレアアイテムを手に入れておかないとな。
今はまだその時じゃないが、いずれ僕は本格的な魔王討伐の旅に出ることとなる。
その際に不備がないよう今から準備はしておかないと。
「行くぞ!」
「「「了解」」」

で、実際に入って視ると、これのどこが高難易度ダンジョンなのか解らなくなる事だらけだった。
2重になっている門をくぐると、そこには異様に平たい屋敷が複数点在するだけであり、屋敷の中も内装が見慣れない以外は別段迷う感じは無い。
寧ろ、1階建ての家を無理矢理広くしただけって感じだ。
しかも、このダンジョンにいるモンスターは見慣れない鎧を着たスケルトンのみだ。雑魚の代名詞であるスケルトンのみとはお笑いだ!
通常のスケルトンなら僕らの敵じゃない。20匹いようが30匹いようが一瞬で蹴散らす自信がある。
……で、忌々しき凶悪大量殺人鬼のツキツバ・ギンコが造ったダンジョンで唯一『一応高難易度』と呼べる部分と言うと……
……さっき言った雑魚の代名詞の筈のスケルトンのレベルだ!
忌々しき凶悪大量殺人鬼のツキツバ・ギンコが造ったダンジョンに唯一配置されたモンスターである見慣れない鎧を着たスケルトンのレベルは、全員75以上!
通常のスケルトンがレベル1~43なので桁違いだ。
鑑定スキルで調べたから間違いない。
しかも未だに最初の屋敷、最序盤でこの調子なら最奥の見慣れない塔の中は地獄だ。
くそっ!計算外もいいところだ。
あっさり踏破してレアアイテムを手に入れる予定だったのに。
せめてあの骨共を倒して経験値を手に入れたいが、あのスケルトン異様なまでに知恵が回る。
と言うか、槍なげぇな。鬱陶しい!
奴らが使う異様に長い槍で頭を叩かれたソアラは気絶して使い物にならなくなった。
「お前ら、そこを退け!僕が大技で一気にカタをつける!」
ライトニングボルト!
勇者である僕だけが使える最高魔法。
頭上から落雷を落とされたのだ。これで無事に済む筈は……
「馬鹿な!?全然効いてないだと!?」
「スリープアロー!」
リサが睡眠魔法を使う。
だが、魔法はスケルトンに当たっても弾けて消えた。
「うそ!耐性まで高いの!?」
「そんなものより壁を作れ!障害物を作って足止めするんだよ!」
「分かったわセイン」
リサが土の壁を通路に出現させる。
「おい、セイン!リサ達を置いてくなよ!」
「黙れ!足の遅いお前らが悪いんだろうが!」
先頭を走るのは僕。そのすぐ後方をネイが追いかけており、さらにその後ろで気絶したソアラを背負ったリサが逃げている。
よし、もうすぐ門だ。
あの門をくぐれば奴らも諦めるだろう。
見えた!
真っ先に門をくぐり、続いて3人も門をくぐる。
「えいえいおー!えいえいおー!」
なに鬨の声を上げてんだよ骨共!僕達を取り逃がしたくせに!
今回は諦めてやるが、聖剣を手に入れて、このドクサレダンジョンを造った忌々しき凶悪大量殺人鬼のツキツバ・ギンコを豚箱にぶち込んだら、全員粉々に粉砕してやるからなぁ!
「もっと上手く魔法を使えよ!足手まといが!」
「ごめんなさい。許して」
頬を押さえて倒れ込むリサ。
僕は怒りのあまり剣に手を伸ばそうとした。
「ソアラが、ソアラが気絶さえしなかったらこんな事には」
「申し訳ございません。私の失態ですね」
「なぁ、もういいだろ。仲間割れしたって意味ないじゃん」
「……そうだな」
ネイの言葉に頭が少し冷えた。
ここには人の目がある。殺してしまっては外聞が非常に悪くなってしまう。
僕も少しは冷静にならなくてはな、勇者とはスマートな人物でなければいけない。
しかし、このパーティーはまとまりがなくなってきたな。
くそっ、イライラが止まらない。
「いやー、今回も良い物手に入れたな!」
「やっぱここはいいよ。経験値も美味いしアイテムも貴重だし、ほんといいダンジョンが近場にできて最高だな」
「コツさえ分かれば余裕っすね」
ダンジョンから出てきた3人組は、リュックを膨らませていた。
レベルは揃って30台。どうやってあのスケルトンを退けたのか不思議だった。
「セイン、あの人達にコツを教えてもらいましょ」
「あ? 僕に頭を下げろって言うのか」
「でもこのままだと何も得られないままよ」
「…………」
不愉快極まりない。
勇者である僕が格下に教えを請うなんて。
「わりぃ、ちょっと用を足してくるわ」
「ちょうどいいや、俺も行きたいところだったんだよ」
3人組は茂みの方へと歩いて行く。
なんだ、そんな事する必要ないじゃないか。
あいつらの持っている物を奪えば良い。
僕は世界を救うんだ。多少の犠牲は必要経費みたいなものだろ。
「少し待ってろ」
「分かった。その間、アタシらは休むから」
3人を残し茂みへと入る。
……え?
「ひぁああああああああっ!!」
「クソみたいな奴にはクソをぶつけてやる!」
「ニンニクを食った俺達の一撃を食らいやがれ」
僕は茂みから飛び出し全力疾走する。
男共は下半身丸出しで、茶色い物を投げつけた。
べちゃ。背中に塊が当たる。
臭い臭い臭い臭い!
最悪だ!普通、連れ添って行くのは小便だろう!
襲いに行ったら、3人揃ってお尻丸出しで用を足していた。
「セイン!?」
「うわっ、ウンコまみれだ」
「ひぃ」
3人が露骨に嫌な顔をする。
雌豚のくせになんなんだその態度は。
なんて屈辱的。勇者であるこの僕がウンコまみれだなんて。
「セイン、すて、すてきなにおいね」
「ごめん。今は近づくの無理」
「向こうに川がありますので……水浴びなどどうでしょうか」
僕からやけに距離を取る女共。
くそっ、しくじった代償がこれか。
もう蝿が寄ってきている!
失せろ!邪魔だ!
怒りに拳を振るわせつつ大人しく川へと向かった。

月鍔ギンコperspective

翌日、某達は倒したごーれむの調査を行う事にしました。
「それでこいつがいた遺跡はどこにある」
「フラウが案内するわ。付いてきて」
草をかき分け森を突き進むと辛うじて壁だけ残っておる瓦礫の山を発見し、周囲にはごーれむが複数転がっておりました。
……皆、既に息絶えておる様です。

「むっ!?」
突如として視界に文字が出現しました。

《報告:設置したLv3ダンジョンがLv5に成長しました》

《報告:ダンジョン内にマイルームができました》

「どうした?」
「よく解りませんが……だんじょんが成長してまいるーむが出来た……そうです」
「あ!もしかしてあの噂でしょうか!」
ノノ殿がぽんっと手の平に拳を打ち付け納得した様子。
噂とはどう言う事でしょうか?気になるので説明をしてもらいたい。
「実は少し前から王都の近くに高難易度のダンジョンができた、って噂になってたんです。落ちてるアイテムもレアものばかりで、冒険者が押し寄せてるとか」
それを聞いたセツナ殿が鼻で笑いました。
「つまり、ツキツバが造った城の中で、未熟な冒険家がバッタバッタくたばってるって事だな?」
セツナ殿!何気に仰る事が物騒なのですが!
「ちょっと待たれよ!それって、某がその者達を殺した様なモノではないですか!?」
某の絶叫を聞いたセツナ殿が慌てて釈明しました。
「待て待て!お前が造った城が冒険者を殺したのと、お前が無関係な人を殺したのとでは違う!冒険者は近場にダンジョンが出来たら、喜び勇んで挑んじゃうもんなんだよ。つまり、これは冒険者とお前が造った城との……そう!合戦なんだよ!」
合戦!?だんじょんと冒険者の!?
「……と……ところで、このまいるーむとは何なのです?」
「さぁ?」
某の質問に皆が首を傾げておると、再び視界に文字が出現しました。

《選択:マイルームに転移しますか? YES/NO》

「……まいるーむにてんそう……とは?」
それを聞いたノノ殿が驚いておりました。
「行けるの!?今から!?」
……これは……往くしかありませぬな。
虎穴に入らずんば虎子を得ずと言うものです。

某達が到着したのは、天守の屋根裏部屋でした。
そこには、るんたったで見たあの光る巨石がありました。
「ここって!?ツキツバが造ったダンジョンの塔の部分だよな!?」
「ここに核石があるって事は……」
……いや、ここは天守の屋根裏の筈です。なら、この光る巨石はるんたったで見た物とは別物の筈です。
おまけにこの部屋は天守の最上階の屋根裏部屋。つまり最最上階とも言うべき場所にあります。
この部屋へと続く階段は複数のからくりによって隠されておる様で、そう簡単には発見出来ない様になっておる様です。
で、皆がこの部屋をどう使うか悩んだ結果、この部屋は蔵として利用する事になりました。

セインperspective

僕らは宿には泊まらず遙か先にある聖武具の神殿へと急いだ。
「これが聖剣!やっと!やっとだ!!」
目の前の台座に、神聖で美しい片手剣が突き刺さっている。
まるで僕を待っていたかのようだ。
「おめでとうセイン! ようやくこの時が来たわね!」
「早く引き抜こうぜ。セインに抜けないわけないんだからさ」
「まぁまぁ、こういうのは雰囲気が大事なのですよ」
3人も僕が引き抜くことを確信している。
「もったいぶるのもよくないね。じゃあいくよ」
そっと柄を握りしめる。
今、勇者である僕の物にしてあげるからね。
早くツキツバ・ギンコをぶちのめそう。
ああ、待ち遠しいな。
腕に一気に力を込める。
「ふんっ!ふんっ!?ふんぐぐぐぐぐっ!」
どうした、どうして引き抜けない。
あれなのか、第2の試練と言うくらいだからまだ僕を試しているのか。
やけに固いな。いいから早く抜けろって。
どうせ僕の物になるんだから、つまらない事なんてするなよ。
台座を踏みつけ全力で剣を引き抜こうとする。
全身の血管が浮き上がり額から汗がにじみ出た。
「ふんぐぐぐぐぐっ!ふん!」
おかしい……どうして抜けない!?
僕は選ばれし勇者だぞ。世界を救う男なんだ。
おまけに全てが完璧で一点の曇りも無い。
聖剣が僕の手に収まるのは必然だ。
……その筈なのに、この事態はなんなんだ。
「ふんぐぐぐぐぐっ!……ふん?!」
こんな忙しい時に……腹が急にぎゅぎゅるしてきた!?
「遊んでいないで早くしろよセイン~」
「そうそう、勇者の貴方が抜けないわけないのですから」
「でも、なんだか顔が真っ赤ね」
「……今は話しかけるな」
早く聖剣を抜いて即離脱しないと……全てが一気に飛び出して大惨事となる。
耐えろ。僕は歴史に名を刻む勇者だ。勇者である僕が漏らす訳にはいかない。
「なにしてんだよ。早くずばって抜けって」
「なにかおかしくないですか?セインの額に大量の汗が……」
「そうね。心なしか顔も青ざめてるようだし」
「っつ!?」
やばい……九割の力がお尻に持って行かれる。
「いいから早く抜けろおぉーーーーー!……おっ!?」
聖剣が抜ける事はなかったが、その代わりに大量の何かが抜け出ていった。
この瞬間だけは最高に気持ちが良い。
頭が真っ白になる。
ああああああああああああ……

月鍔ギンコperspective

フラウ殿の故郷に戻る道中、某達は聖武具の神殿へと訪れました。
事の発端は、某が脇差の研ぎが少々甘くなってきた事を悩んだ事でした。
「本当に宜しいのでしょうか?某達が聖剣を何本も持ち歩いて」
「解る!ツキツバさんのその気持ちは解りますよ!そのせいで勇者セイン様が聖剣を手に入れる事が出来なくなってしまったらと思うと!」
「良いじゃない。出来るなら聖剣を何本も持っても」
セツナ殿の言い分にフラウ殿が噛みつく。
「なによそれ!?それじゃあまるでツキツバ様が聖剣を抜けないみたいじゃない!」
「あくまで可能性の話だ。過去にも聖剣を抜けなかった奴が別の場所の聖剣を抜いたって話も聞くしな」
「セツナさん、それってどう言う事で?」
「あくまで可能性の話だ。こればかりは試してみないと―――」
某は、門の前の砂や泥を発見してある確信が生まれました。
「セツナ殿が言う試しは……お預けの様です」
神殿へと複数の足跡が続いていた。数は恐らく4人。
もしかしたらすでに聖武具は持ち去られた後かもしれない。
……なら、某達がする事はただ1つ。
「……往きましょう。フラウ殿の故郷へ」
それを聞いたセツナ殿が慌てておりました。
「ちょっと待て!奴らが聖剣を抜いた証拠は―――」
ですが、
「実際に聖剣を抜いた某だから解るのです。ノノ殿が言っている聖剣は……そこまで重くありません」
「……だから……」
「つまり、誰でも簡単に抜けるのです。そう、問題はこの神殿の神々しくて近寄りがたい威厳に屈さずにここまで辿り着けるか否か。そして聖剣を抜いて所持した後の行動の良し悪しです」
某の言葉にノノ殿とフラウ殿は困惑しておりますが、セツナ殿はそれなりに理解してくれた様です。
「……そうだな」
「セツナさんまで!?」
「聖武具には形に囚われない特性があると聞く。望めば剣にも槍にも盾にも防具にもなるって事だろう。だが、所有者の望む形になるのは引き抜く時にたった1度だけ」
「……」
それには、ノノ殿達も押し黙りました。

と言う訳で、某達は聖剣を抜く事無くこの神殿を後にしました。
だだ、
「ん?」
「セツナ殿?どうかしましたか?」
「……何か臭くないか?」
「……どの様な?」
「……トイレの香り?」
……もしや、某は気付かずに漏らしましたか? 
 

 
後書き
この作品での後書きを書くのは……だいぶ久しぶりです(汗)。
で、今回は、勇者セインがウンコセインと呼ばれる由縁2連発!
先ずは人様の物を盗もうとしてウンコを浴びせられ、続いては聖剣を台座から抜く最中に下痢を1発!
しかも、原作通りのセインと聖剣との相性最悪!
その上、月鍔ギンコの屈強な太刀筋とウンコセインの欲の皮が突っ張た顔との距離が、相も変わらず近くて遠い!
果たして、ウンコセインと月鍔ギンコの直接対決は何時になる事やら! 
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