FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
覆す力
前書き
皆さんお久しぶりです。
シリルのハーレムタイムが終わったことで燃え尽きておりましたm(_ _)m
ただ、まだやりたいお色気シーンがあったことを思い出して舞い戻りました。次の更新がいつになるかはわかりませんが、楽しんでもらえたら幸いです。
一つの戦いに決着が着いた頃、こちらでは予想外の形で二人の戦いが終演を迎えようとしていた。
「「ゴボッ」」
互いに相手の攻撃を受けては流し、繰り出すことを繰り出していたリサーナとユキノ。ただ、両者の力は拮抗していたことにより一進一退のまま膠着状態となっていた。だが、この戦いは普通のバトルではない。それが今回の決着を迎える要因となってしまった。
『リサーナ選手!!ユキノ選手!!カウントに入るカボ!!』
二人の口元にはいまだに魔水晶が咥えられている。にもかかわらずこのマトー君の声に困惑するものもいたが、多くの者たちがすぐに理解した。
「二人の酸素が切れやがったのか」
「この場合はどうなるんだ?」
両者ともに持っていた魔水晶の酸素切れ。バトルでの決着になるとばかり考えていた観客たちも魔導士たちもこれには困惑を隠せない。
『30秒以内に酸素の入った魔水晶に交換できないと失格になるカボ』
今回は双方ともに相手の干渉とは無関係の酸素切れのため、魔水晶の付け替え時間の30秒が適用される。だが・・・
(まずい)
(私たちはまだ・・・)
彼女たちは誰からも魔水晶《ラクリマ》を奪えていない。そのため交換しようにもそれが叶わないのだ。
(ミネルバ様は!?)
(エルザは!?)
二人は仲間の方に視線を向けるがミネルバはすでに退場、リサーナはエルザの姿を捉えてはいたが、その距離の遠さに絶望することしかできない。
「「・・・」」
二人は顔を見合わせるとお互いに肩を竦めてみせた。そして二人はマトー君の方へと手を挙げる。
『リサーナ選手とユキノ選手よりギブアップが入ったカボ!!』
まだタイムリミットまで余裕はあったがここから打開することができないと判断した二人はこうする他になかった。ただ、彼女たちは悔しさよりも楽しさが上回っていたのか、笑いながらその場から転送された。
「・・・」
シェリアの言葉により先程までの言葉が嘘のように静まり返っているクロノス。しばしの沈黙の中、向かい合う二人は酸素切れを起こす前に魔水晶を新たなものへと付け替えていた。
(ああは言ったけど、今の状況は五分五分。いや、あたしの方が分が悪いよね)
彼女は自身が有利になれる点を見つけつつも、それがそこまで大きなメリットでないことはわかっていた。
(さっきのまま攻めてくれてれば・・・)
終わってしまったことを考えてしまう少女。だが、その思考に気がついていないのか、クロノスはなかなか動けずにいる。
((この人・・・もしかしてわかっていない?)
今攻めれば有利なのは相手側。それなのに相手は動きを見せない。それが策略なのか単純な思考の欠落なのかわからなかったシェリアは距離を取るために後ろへと下がっていこうとする。
(ううん!!違う!!)
だが、それが相手の狙いだと言うことにすぐに気が付いた。
「うわっ!!」
狙いに気が付くと同時に頭を下げていた。それによりクロノスの手を寸でのところで回避することに成功する。
「ちっ。相当強くなっているようだな」
悔しそうな表情を見せるクロノス。だが、彼女はまたしても一気に酸素の消耗を知らせる気泡を出しながら攻撃を仕掛けてくる。
「速い」
何とかギリギリで魔法の効果から抜け出すことができ逃げてはいるが、その度に酸素が一気に削られているのがわかる。しかも自身は攻めに転じる隙もなく、対処ができない。
「どうしよう」
焦り始めてきたシェリア。だが、その色は相手にも見えてきていた。
「くっ。どうすれば・・・」
シリルside
仮面に隠れているものの、ムーンは明らかに余裕さを醸し出しているのがわかる。それもそのはず、彼女はこの俺有利のステージをものともしないほどの魔力を有しているのだ。
「この魔力の感じ・・・もしかして・・・」
ただ、それにより相手が誰なのかもすぐにわかった。この人は先日の100年クエストの時に戦った月神竜・セレーネだ。
「なんでこんな大会に・・・」
なぜ彼女のような人?が大魔闘演武に出てきたのか皆目検討がつかない。
「私の狙いは貴様だ、シリル」
「俺?」
セレーネさんは先程入手した新しい魔水晶へと交換を行いながら俺の疑問に対し不敵な笑みを浮かべながら答える。別に100年クエストの時に俺は彼女と大きく争った記憶はないんだけど、その目は嘘を言っているようには見えなかった。
「悪いがここでやらせてもらう!!」
そう言った彼女はまたしても水中とは思えないほどの速度で間合いを詰めてくる。ここは一旦距離を置いた方がいいのか?
「いや・・・」
そんな思考をすぐに振り払う。なぜなら彼女が俺に狙いを定めている以上、逃れることができないことは明白だからだ。
「なら・・・」
迎え撃つしかない。そう思い彼女を視界に捉えることに集中すると、彼女は一瞬だけ手をドラゴンの状態にしたのか、長い爪が顔のスレスレを通り抜けていく。
「うおっ!!」
思わず変な声が出た。だが、間一髪回避することができたため安堵の息を漏らしていると、なぜか観客から大歓声が発せられているのが耳に入る。
「すまん」
「え?」
そしてなぜかセレーネさんも手を合わせて謝罪してくる。何が起きているのかわからなかったが視線を落とすとすぐに原因がわかった。彼女の爪が俺のラッシュガードを切り裂いたために、肌が先程よりも露出していたからだ。
「ちょ・・・えぇ・・・」
これはこれでリアクションに困る。男だから隠すのはプライドが許さないしこのままだと観客たちがよくわからない歓声を上げ続けるしで思わずタメ息が漏れ出てしまう。
「あぁ、そういえばお前は男だったのか。一応」
「一応言うな!!」
セレーネさんの言葉に突っ込みを入れる。ただ、彼女はそれで気を良くしたのか、すぐさま攻撃に転じて来る。
「早っ!!」
その攻撃はまさしくドラゴン。水中の抵抗など一切ものともしないそれは休むことなく続いてくる。
(この人は確かに強い。でも・・・)
圧倒的な力を見せつけてくるセレーネさん。だが、俺はその中であることに考えが至っていた。
「見えた!!勝利への道筋が!!」
勝ちへの糸口が見えた俺はセレーネさんの攻撃を掻い潜り距離を取ると、酸素が尽きた魔水晶の交換を行うのだった。
ウェンディside
ムーンさんの猛攻を間一髪で回避し続けているシリル。その奥ではシェリアがこれまたクロノスさんの攻撃をギリギリで防ぎ続けているのが見えた。
「あの二人もしかして・・・」
「ルーシィさんも気付きましたか?」
今二人が対峙しているのは恐らく五神竜の一人だったセレーネさんとアルバレス帝国のスプリガン16の一人だったディマリアさん。彼女たちの実力の高さがわかっているだけに、二人のことが心配になってしまい握り締める手に力が入ります。だけど・・・
「シリル・・・笑ってる?」
苦悶の表情を浮かべているシェリアとは対照的に、劣勢に見えるシリルはなぜか笑みを浮かべていました。それは追い込まれたことによる苦笑いなのかとも考えましたが、すぐに違うことがわかります。
(でも・・・ここからどうやって逆転するつもりなの?シリル)
レオンside
「あれが戦乙女と言われていた女か」
「だけど、シェリアもギリギリで対処しきれているな」
竜王祭の時はウルティアさんの力がなければ戦いになることすらなかった二人。でも、シェリアはあれから大きく力を伸ばしていることもあり彼女の魔法から抜け出すことができるほどになっていた。
「ですけど、このままじゃ負けちゃいますよ!!」
「全然攻めれてねぇじゃねーかよ!!」
「キレんなよ」
戻ってきたサクラとトビーさん、ユウカさんは防戦一方に見えるシェリアに気が気ではない様子。ただ、それと対照的に俺とリオンくんは一切動じることはなかった。
「いや・・・」
「恐らく大丈夫だろう」
「「「え?」」」
俺たちの意見に困惑の表情を浮かべる三人。リオンくんと目が合うと、どうやら彼も気が付いているらしい。
「戦乙女のあの魔法には欠陥がある」
「まぁ、この競技ならではの・・・だけどね」
そしてそれにシェリアも気が付いているだろうし、相手もわかっているからあれだけの攻め手を繰り出しているんだろう。となればここからは持久戦、シェリアの有利な展開に持っていくだけだ。
第三者side
コポコポッ
激しく動いているシェリアとディマリア。それに同調し、彼女たちの口元から溢れ出る気泡は多くなっていく。
(まずい、あっちは完全に持久戦に入っている)
防戦一方に見えるシェリアだが、敵対する女性は気が付いていた。彼女がすでに詰将棋に入っていることに。
(このまま動いても恐らく仕留めるには至らないだろう。だが、まだ策がないわけではない)
彼女は腰元に付けているもう一つの酸素魔水晶を確認する。
(元々の酸素はすでにない。今付けているのは天馬の女から奪い取ったもの。そしてこれはあいつの仲間から奪ったもの)
二つの魔水晶を所有している自身に対し相手は今現在使用しているものしか手にしていないことを把握していた。
(少し早いが、代えておくか)
立場が優勢なうちに先手を取ろうとディマリアは魔水晶の交換を行うために腰に付けていたそれを取ろうとした。その瞬間、彼女は敵から視線を切ってしまった。
「天神の舞!!」
「!?」
警戒していたはずだったが、一瞬の目の動きをシェリアは見逃さなかった。さらに彼女が狙ったところが的確。相手の現在使用しているそれではなく攻撃をぶつけたのは、たった今取ろうとした予備の魔水晶の方。
「しまっ・・・」
てっきり今使用している方を狙ってくるとばかり考えていたディマリアはそちらに意識が向いていたこともあり、予備のものを簡単に落としてしまう。慌ててそれを拾う直そうとするが、それよりも早くシェリアが迫っていることに気が付き、すぐにそちらに向き直る。
「天神の北風!!」
「無駄だ」
追撃の攻撃だったがディマリアは自身の魔法・アージュ・シールで難なく回避。そのまま身体を反転させ拳を振るうが、シェリアも頭を下げてそれを交わしていた。
「まだま・・・ゴフッ!!」
こうなったからには戦いを続けるしかない、そう判断した彼女だったが、それは間違いだった。なぜならこのタイミングでディマリアの酸素が切れてしまったのだから。
「あなたの弱点はその魔法。だって時を止めている間も、あなたは呼吸をしていないといけないんだから」
「っ・・・」
ディマリアは時の魔法を使うことにより周囲の時間を止めることができる。しかしそれはこの競技に置いては大きな欠陥となっていたのだ。酸素に限りがあるにも関わらず、彼女は魔法を発動する度に自身の酸素だけを消耗する状況になっていたのだから。
「これで・・・終わり!!」
酸素切れにより行動に制限のかかってしまった敵に強烈な一撃を喰らわせるシェリア。それにより気を失ったディマリアはなす統べなく沈んでいく。
『クロノス選手!!意識喪失によりドクターストップ!!失格です!!』
水中ではわずかな判断の遅れで命の危険があるため、運営は競技続行が困難と判断した彼女をすぐさま転送する。待機場所に戻ってきた彼女は気を失ったままではあるが、息はあるようで何かを呟き続けていた。
「また・・・負けた・・・のか・・・」
無意識下のはずなのにそんな言葉が出る彼女にその場にいた二人の男は視線を交わらせ、一人はタメ息をつき、もう一人は衛生兵を呼ぶためにその場を後にした。
セレーネside
声高らかにそんなことを言い出したシリル。それに私は思わず眉を潜めた。
「ずいぶんだな、私に何か弱点でも見つけたか?」
彼にそんなことを思われるようなことをした覚えはないが、こいつは異常なまでにいい目を持っていると聞いている。それにより私が気が付いていない何か欠陥を見破られているのかと思ったが・・・
「へ?」
どうやらそれは思い過ごしだったらしく、彼はキョトンとした顔を覗かせていた。
「しかし・・・」
それならばなぜあんなに自信に満ちた顔でそんなことを宣言できたのか。それが気になって仕方がない。
「いや・・・それが狙いかもな」
こいつは意外と頭もいいと聞く。それは昨日のバトルパートで確認済み。あれだけ計算ずくで動けると考えると、あながちこの考えも間違いではないかもしれない。
「まぁいい、戦ってみればわかること!!」
魔力を考える限り私の方が力があることは間違いない。それにこのゲーム、無駄に思考したところで酸素を消耗するだけ。水中が得意なこともありシリルが消費している酸素の量は私よりも少ないことを考えると、長期戦にするのは愚策。そう考え、すぐさま接近戦へと持ち込む。
「くっ」
元々の速度域で考えればかなり落ちてはいるが、それでも人間と戦うには問題ない速度が出せている。だが、相手は逆に地上と変わらない速度を維持していることから結果的に五分と五分の戦いになっていた。
(ここからどう展開していくべきーーー)
攻めてはいるものの決め手に欠けている。残りの酸素の量を考えれば相手の方が有利、そろそろ何とかしなければならない。そう思っていたところ、シリルの口から漏れ出る気泡が一瞬完全に無くなる。
「なっ・・・」
それが何を意味しているか、二通りの考えがある。一つ目はシンプルに呼吸を止めた可能性。しかし、このタイミングでそれをする意味がない。となると考えられるのは一つだけ。
「水竜の・・・」
滅竜魔導士が得意とする魔法の一つ、ブレス。しかし、私もそれは持っているから想定はできた。彼が魔水晶を外すよりも早く身体を反らせるように回避行動に入る。
「咆哮!!」
ブレスを発射するためには空気を消費する。そのために一度酸素を吸い込むことに集中したことで気泡が止んだんだと理解したことでなんとか避けることはできた。だが、それは身体だけだった、彼の魔法は確かに捉えた、私の咥えている魔水晶を。
「くっ!!」
慌ててそれを拾いに動こうとするが、その際不意に視界に入ってきたのは攻撃を放ったことで隙だらけになっている彼の姿。
「なんだ、勝った気でいるのか?」
「!!」
私の弾かれた魔水晶はかなり離れた位置にある。あれを10秒以内に拾えるかを問われるとイエスとは即答できない。だが、あるじゃないか。目の前に目的と同じものが。
「ふっ!!」
「あっ」
私はすぐさま標的を切り替え、彼の手に握られていた魔水晶を蹴り飛ばし、すぐさまそれに向かって前進する。その結果、私はわずかな時間で新たな魔水晶を入手することができた。
「残念だったな、シリル」
あいつのまさかの攻撃で負けかけたが結果は無事に生還。いや、むしろあいつの魔水晶の方が残っている酸素の量は多いはず。むしろ有利になったのかもしれない。そう思いながらそれを咥えた私はーーー
「がっ」
想定外の事態に困惑と苦痛の表情になっていた。
「ない!?この魔水晶には酸素がない!?」
吸い込もうとしたはずの空気が吸い込めなかったのだ。意味がわからずにいた私だったが、彼の方を見てすぐに理解した。
「さっきの言葉、そのまんまお返しします」
彼の口に咥えられているのは先程蹴り飛ばしたと思った魔水晶。いや、正確には違うか。
「バカな・・・」
私が蹴り飛ばしたのは彼が先程付け替えていた方の魔水晶。今彼が持っている方が新しいものだったらしい。
「一体いつの間に・・・」
ブレスを放つ時に手に持っているのは見ていた。それと古いものを入れ替えるところを私は見ていない。
「いや・・・」
まるで手品のようにも思えたが違った。私はブレスを交わすことに意識が向きすぎており、あいつの手元を見ていない時間帯があった。
「これがあいつの狙い・・・」
口が塞がれていることで私もシリルも接近戦に持ち込むしかないという先入観、ブレスを放つために魔水晶を手に持ちかえる隙をわざと見せる演技、至近距離のため受けても交わしても自身からは一瞬でも視線が外れるという計算、そしてその隙を見逃さない洞察力。全てが完璧に噛み合っていたことにより、彼は本来圧倒的に実力差のある私を追い詰めた。
「滅竜奥義・水中海嵐舞!!」
そして自らは万全な状態で、最高の魔法で確実に決め切る非情さ。
「見事だ、シリル」
私はそれに回避行動を取らない。無理すれば取れたのかもしれないが、それをしたところで私の負けは覆すことができない。少年の重たい一撃を受け、私の意識はそこで途絶えた。
シリルside
『ムーン選手!!退場カボ!!』
魔水晶を口にしていなかった時間が一定時間を過ぎたためその場から転送されるセレーネさん。俺はそれを見届けてから、彼女が咥えていた魔水晶を回収し、腰元へと付ける。
「あとは誰が残ってるんだ?」
残り時間はわずか。他の参加者がどうなっているのかを把握しようと辺りを見渡すと、すぐに全てを理解することができた。
「あとは俺たち三人だけか」
警戒しながら俺との距離を詰めてくるのはエルザさんとシェリア。最終バトルにふさわしい二人を見て俺は思わず口元を緩ませた。
後書き
100年クエストようやくアニメ化されるようですね。
少しストックが溜まったことでこちらの100年クエストも進め始められたらと考えたりしてます|ョω・`)ジカンガアレバデスガ
ページ上へ戻る