FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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それぞれの攻防
前書き
最近飲み会が多くて更新が滞っておりました。
まだしばらくはゆっくりになるとは思いますが、更新は続けたいと思うので気長にお待ちくださいm(_ _)m
第三者side
「なるほど・・・あんなやり方があったとはな」
後ろで行われていた会話を聞いていたディマリアは悔しそうに歯軋りをしながら進んでいく。それは仲間であるセレーネが行った挑発により、シリルが本気モードになったからだ。
「てっきり本調子のあいつとはできないと思って譲ったが・・・判断ミスだったか」
女性陣たちのお色気により全力で戦えないと思われていたシリルの本気を引き出すことができた彼女に感服するのと同時に、そうはならないと思っていたために彼との戦いを譲ってしまった自身の読みの甘さに悔しさを滲ませる。だが、それもほんの数秒だった。
「まぁいい。今はこいつとの再戦が大事だ」
頭を切り替えた彼女は冷静さを取り戻すと、今回のターゲットとなる少女の姿を確認し、集中力を高めていく。
「シェリアさん」
「うん。わかってる」
高い魔力を持った相手が自分たちに近付いてきていることをすぐに理解したサクラとシェリアはすぐにそちらへと視線を向ける。二人に対して一人で現れた女性は不敵な笑みを浮かべながら、少女たちを見据えていた。
「なんだ?あいつは」
シリルとジュビア、二人に対峙している女性を見ながら眉間にシワを寄せているのは妖精女王の異名を持つ女性。彼女はロングヘアの女性を鋭い眼光で見据えている。
「せっかく私たちがシリルを戦えないようにしたのに・・・」
「わざわざあんな挑発をするなんてな」
内心二人とも彼の反応を楽しんでいたことは置いておいて、たった今この中でもっとも警戒すべき人物に対峙している者はそのアドバンテージをあっさりと捨て去ったのだ。この行動の意味が理解できず、彼女たちは困惑していた。
「ただあいつ・・・以前どこかで・・・!!」
見覚えのある風貌の女性が誰なのか推測しようとしていたところ、不意に視界の隅に見覚えのある異空間が現れ、エルザは慌ててその場を離れる。そして彼女がその行動に移した瞬間に、それは爆発を起こした。
「きゃっ!!」
「リサーナ!!」
ただその異空間に気が付いていたのは彼女だけ。仲間であるリサーナはそれに気が付いていなかったようで、引き起こされた爆発に巻き込まれてしまった。
「よそ見か?エルザ」
「!!」
仲間の元へと戻ろうとしたエルザだったが、その背後から聞こえた声に反応しすぐさま振り返り、防御を固める。そこに打ち込まれたのはお団子ヘアの女性の拳だった。
「やはりこちらに来るか」
エルザの目に映るのはミネルバ。彼女はその問いに不敵な笑みを浮かべつつ答える。
「当然だ。やはり貴様の相手は妾でなければ」
お互いにギルドの最上位クラスの強さを誇ることでエルザを何かと気にすることが多いミネルバ。だが、それは受けて立つ女性も同様だった。
「いいだろう、受けて立つ」
気合い十分な目をして互いに視線を交わす。そしてその横では彼女たちを援護するように互いの仲間がぶつかり合おうとしていた。
「リサーナ様、ここは私がお相手します」
「挑むところ!!」
レオンside
『これは面白い展開になってきた!!分散して一気に敵を減らしに来たのは狩猟豹の頭のムーンとクロノス!!それを迎え撃つのは今競技最強ペアといって過言はないシリルたんとジュビアペア!!さらにはシェリアとサクラも迎え撃つぅ!!』
『それにエルザくんとミネルバくんのこのカードも注目だねぇ』
『最っ高にCOOL!!な組み合わせだぜ!!みんな!!頑張ってくれぇ!!』
ここまで初出場ながら旋風を巻き起こしている狩猟豹の頭、それに対し実力のあるうちと妖精の尻尾がぶつかる形になっている。ただ、この判断が果たして正解なのか俺たちからはわからない。
「シリルとジュビアを相手に一人で戦うのか?」
「ずいぶんな自信だな、おい」
「オオーン」
リオンくんがジュビア姉の名前を妙に強調していたのは置いておいて、この二人に一人で戦いを挑むのは無謀にも思える。ただ、狩猟豹の頭となると話は別なのかもしれない。
「実際どう?あの二人」
「さぁな。まだ大した動きも見せていないし、何とも・・・」
「だよね」
シェリアとサクラに一人・・・これは今までの戦いぶりから見ても可能性がなくはない。問題はシリルとジュビアに一人で・・・ましてやシリルの妄想を消してまで挑むのはよほどの自信か?
「あいつらは気になるが、まずはシェリアたちを応援することだな」
「シェリアとサクラが負けるわけねぇだろ!!」
「キレんなよ、気持ちはわかるが」
二人とも急成長していることもあり今ではギルド内でも一、二を争うほどの実力を有している二人。ただ、彼女の目の前にいる女性にどこか見覚えのある俺は不安感を拭えなかった。
ウェンディside
三ヶ所に別れてのバトルロワイヤルとなっている闘技場。そこでも一際熱気があるのはやっぱりシリルたちのところでしょうか。
「あいつ・・・わざわざシリルを挑発して何がしたいんだい?」
「さぁ?でも考えられるのは・・・」
せっかくシリルに自身の胸を触らせてフラフラ状態にしたのにそれを自ら捨てるなんて何を考えているのかわからないムーンさん。ただその表情は笑っており、こちらにもその不気味さが伝わってくるほどでした。
「相当な自信があるってことなんでしょうね」
ミラさんのその言葉通り、ムーンさんはシリルたちの動きを気にすることなく攻撃へと出てきました。それはまるで陸地を移動しているかのような速度を見せており、あっという間にシリルの間合いを---
「え?」
通りすぎ、その後ろに来ていたジュビアさんの目の前へと現れました。
「ジュビア!!」
「あいつ速い!!」
瞬きもしていない・・・いえ、できないほどの速度で間合いに入ったムーンさん。彼女はそのまま拳を繰り出して来ましたが、ジュビアさんはそれを間一髪で受け止めました。
「さすが!!」
「違う!!これは・・・」
見事に攻撃を防いだかに思えたジュビアさん。しかし、これをムーンさんは想定していたのでしょう。宙返りのように身体を切り返すと、ジュビアさんの顔へと蹴りを放ちます。
「うっ!!」
しかしこれもジュビアさんはギリギリで顔を逸らせて最小限に止めます。クリーンヒットは避けたように見えた攻防、ですがこれは大魔闘演武の競技パート、通常のバトルとは異なったものになっています。
『あぁっと!!ジュビアの口から魔水晶が溢れたぁ!!』
敵の狙いは初めからこれだったのでしょう、顔を逸らせたジュビアさんとそれに合わせるように酸素魔水晶を弾いたムーンさん。敵の干渉により口からそれが外れたため、10秒間のカウントダウンが始まります。
「ジュビアさん!!」
「まずい!!」
慌てて落ちていこうとするそれを取りに行くシリルとジュビアさん。ですが、それよりも早くその魔水晶はムーンさんの手へと渡ってしまいました。
『10秒経過!!ジュビア選手退場カボ!!』
ルールに乗っ取り失格になってしまうジュビアさん。フィールドから離れた彼女は私たちのすぐ後ろへと転送されて来ました。
「すみません、皆さん」
申し訳なさそうに顔を伏せるジュビアさん。でも、彼女を責める人は誰もいません。その理由は言うまでもありませんでした。
「なんだいあいつ!!」
「シリルとジュビアが水中で反応できないなんて」
シリルたちの得意なフィールドだったはずなのにまるで二人が反応できていなかった。これには全員が動揺してしまいます。
「シリル」
わずか数秒のうちに数的有利が崩れてしまいました。これにはシリルも動揺しているようで思わず目が泳いでいるように見えます。そんな彼を見て、私も不安から手を握り合わせていました。
第三者side
シェリアたちのすぐ目の前へと泳いできた仮面の女。彼女は二人の射程圏内に入ったかと思うと、ゆっくりと速度を緩めていき、やがて停止する。
「一人で来るなんてずいぶん余裕ですね!!」
相変わらずの大きな声で敵へと本音をぶつけるサクラ。そんな彼女を見て敵はクスクスと笑っていた。
「何がおかしいの?」
「いや・・・まるで成長していないと思ってな」
「「??」」
彼女が何を言っているのかわからなかった二人は顔を見合わせる。しかしその直後、二人は混乱に陥っていた。
「!?ごほっ」
「サクラ!!」
突然咳き込んだサクラ。その理由は咥えていたはずの酸素魔水晶がなくなっていたことにより、吸い込みたかった空気ではなく水を飲み込んでしまい、呼吸が乱れてしまったのだ。
『蛇姫の鱗サクラ!!カウント入るカボ!!』
口からただ魔水晶が外れただけならば酸素切れの時と同様に30秒間の猶予が与えられる。しかし彼女のカウントのスタートは10秒からだった。
「まさか」
それに気が付いたシェリアが敵へと視線を向けると、そこには咥えているものとは違う魔水晶をこちらへと見せつけるように笑みを浮かべている女性がいた。
『サクラ!!退場です!!』
カウントダウンが終わるまでに魔水晶を奪い返すことができなかった・・・いや、そもそもサクラは空気を失った際にそれに気が付けず、すでに空気を使いきっていたため何もすることができずにそのまま失格になってしまった。
「この感じ・・・あんたは・・・」
そこまで言いかけたところでクロノスはシェリアの目の前へと現れ、静かにするようにと自らの唇に立てた人差し指を当て、ニヤリと微笑んでみせる。
「大丈夫、あんたにはこんなことしない。あの時の借りを返すんだからな」
「っ・・・」
自身が相対する敵の正体に気が付いたシェリア。その表情は険しくなっており、動揺しているのが誰から見ても明らかだった。
ドォン
激しくぶつかり合う妖精と虎。二手に別れた彼女たちはそれぞれの技を駆使して敵へと向かっていた。
「接収・アニマルソウル!!」
動物へと変化できるリサーナは水中を得意とする動物へと姿を変えながら敵へと向かっていく。
「開け!!天秤宮の扉・ライブラ!!」
それに対しユキノは重力を変化させ敵を近付かせることを阻みつつ、自身はルーシィを見様見真似で覚えた星霊衣で次々に攻撃を繰り出していた。
「消えろ!!」
その横では両ギルドの最強候補二人による激しい戦いが繰り広げられていた。
「させるか!!」
海王の鎧に身を包み動きを水中での戦いに対応しているエルザはミネルバの攻撃を機敏に交わしていく。しかし、それにより彼女の酸素はみるみる消費されていた。
(まさかこんなに酸素を消耗してしまうとは・・・)
自身の視界に入ってくる気泡がその消耗度合いを物語っていた。対するミネルバは動きを最小限に止め攻撃を仕掛けていることにより、酸素の消耗は比較的少ないように感じる。
(このままでは酸素が尽きてしまう!!何が突破口は・・・!!)
近付こうにも遠距離戦ではミネルバの方が実力は上。どうするべきかと頭を悩ませていると、彼女はあるものを視界に捉えた。
(これを活かせなければ、私に勝ち目はない)
シリルside
ジュビアさんから魔水晶を奪ったムーンさんはこちらをニヤリと笑いながら見つめている。その姿は余裕綽々といった感じで、対するこちらは焦りが出てしまう。
(これはまずい・・・色々と)
敵の動きにこちらは反応できていなかった。それに対応するには目を使っていくしかないが、それによってどの程度酸素を消耗するかが全くの未知数。
(予備はあるけど、戦いの最中に尽きたら付け替える時間がない。でもそれは相手も同じはず)
普通に戦えば俺の方が酸素は長く持つはず。そう割りきり俺は目の魔水晶を発動し敵の動きへと意識を集中させる。
「ほう、それが・・・」
どうやら相手もこの状態のことは把握していたらしい。一瞬動こうか躊躇ったかに見えたが、彼女は構うことなくこちらへと突進してくる。
「見える!!」
しかしそれに今度は反応することができた。難なくそれを交わすと今度はこちらの番、背中を取った彼女へ向けて蹴りを放つ。
「ぐっ」
それは見事に捉えたが、彼女は一回転するとこちらに拳を突き出してくる。しかしそれは届か---
「えっ?」
距離があって届かないと思ったその一撃。しかし目測を誤ったのか彼女の拳が俺の腹部へとクリーンヒットした。
「なっ・・・」
そのままダメ押しをしてこようとしていた彼女だが、急いで脚をバタつかせることで距離を取る。おかげで酸素は消耗したが、何とか距離は取れた。
「これは・・・まずいぞ」
敵は水中をものともしない速度で移動できる。それに対応することはできるが、五分五分では決定機を作れない。かといって今は口に魔水晶を咥えているためブレスができないことで、遠距離勝負にも持ち込めない。
「さてさて、どうしたもんかな」
第三者side
「あんたはあの時の---」
そこまで言いかけたシェリアだったが、この先の言葉を発することはできなかった。理由は単純、離れた距離にいたはずの敵が目の前へと現れていたからだ。
「わっ!!」
危うく攻撃を受けかねない状況だったが、間一髪でこれを回避。それを見て女性は感嘆の声を漏らした。
「全く成長してないと思ったが、多少は成長しているようだな」
彼女の魔法、アージュ・シールは自分以外の時間を止めることができる。しかしシェリアは本来止まり続けるはずのそれから抜け出すことができていた。それはひとえに彼女の魔力が目の前の相手に近付いていたからに他ならない。
「でも、いつまで耐えきれるかな?」
ニヤリと微笑むクロノスを名乗る女性。しかし、シェリアはそんな彼女を見て何かに気が付くと、不敵な笑みを浮かべた。
「もしかしてこの勝負、あたしの方が有利なんじゃない?」
「!!」
突然のその言葉に目を見開くクロノス。彼女はまるでその言葉が事実であるのを認めるように、その場から動けなくなってしまった。
キンッ
接近戦で互いに間合いを詰めあっているリサーナとユキノ。それと正反対に距離を置いて互いに攻め手に欠いているのはエルザとミネルバ。
しかしこの中で違和感を覚えていたのは優勢に立っているお団子ヘアの女性だった。
(なんだ?エルザはなぜ攻めてこない?)
自身が一方的に攻撃を仕掛けている状態。本来ならばそれは理想的な展開のはずだが、ミネルバは相手のことを高く評価し、そして理解していた。
(エルザなら必ず起死回生の一手を打ってくるはず。それなのにただ逃げ惑うだけ・・・?)
力のある自身よりもさらに力を持っている相手。そんな彼女の動きを見落とさないように、そしていち早く対応できるようにと思考をしていたミネルバ。だが、それにより・・・
ゴホッ
彼女の酸素の消費量がわずかに上がった。
(今だ!!)
気泡の量が増えたその刹那、エルザは一気に下方へと泳いでいく。その動きに若干ではあるが自らの気泡により視界が狭まったミネルバは反応が遅れた。
「下に何が・・・!!」
距離を取って体勢を立て直そうにも水中では彼女の攻撃範囲から逃れるには相当な労力がかかる。何が狙いなのかわからなかったミネルバだったが、彼女が目指している先にあるものを見てすぐに焦りの色を浮かべた。
「あれはさっきジュビアが落とした・・・」
セレーナはジュビアが咥えていた魔水晶は奪うことができたが、彼女が水着に忍ばせていたもう一つの魔水晶には気が付いていなかった。それは彼女が退場させられた際に下へと落ちており、エルザはそれを目指して泳ぎ始めたのだ。
「今の時間は---」
タイマーへと目をやるミネルバ。その表示は12分を過ぎたところ。つまり競技開始からその時間が過ぎていると言うことになる。
(やられた!!)
慌ててエルザの後を追うミネルバ。それにより一気に酸素を消費しているが、もうそんなことは言ってられない。
(妾もエルザもまだ誰からも魔水晶を奪っていない。そしてタイマーはあの時間・・・あの魔水晶を手に入れられたら一気に形勢逆転される!!)
目安として15分ほどの酸素が入っているとされているが、それは普通に泳ぐ分にはということ。互いに魔法を使っていたこの状況ではそこまでは持たないことは承知している。
(エルザが魔水晶に到達するよりも先に動きを止める!!)
酸素の消費量は彼女よりも自身の方が少ないのは確実。そのため動きを封じることができれば彼女は魔水晶へ到達できない。その可能性に賭け再度魔法を繰り出すが、エルザはそれをギリギリで回避し続け潜っていく。
「くっ」
それでも諦めずに攻撃を仕掛け続けたミネルバだったが、その手は彼女が魔水晶を掴んだことにより、止まってしまった。
「かはっ」
まるで見計らっていたかのように酸素が枯渇し呼吸ができなくなるエルザ。だが、彼女は新たに手に入れたそれを付け替えると、すぐさまミネルバへと向き直った。
「ふっ。やられたな」
そう言ったミネルバは動きを止めた。いや、止めざるを得なかった。なぜなら彼女ももうわずかで敵を捉える寸前まで来ていたから。つまり、エルザのもっとも得意とする間合いに入ってしまったのだ。
「ずいぶんと諦めが早いな、ミネルバ」
「仕方あるまい。妾の酸素ももう切れる。ここからではどうしようもあるまい」
残り時間を考えてもミネルバの行動には制限が生まれ、対してたった今魔水晶を手に入れたエルザは余裕を持って戦える。それにより敗北を悟った彼女は抗うことなくその現実を受け入れた。
「悪いな、また最終日に会おう」
「あぁ。その時は必ずリベンジしてみせる」
そう言ってエルザはミネルバの魔水晶を剣で弾き飛ばす。そこから10秒の時間が経ち、両者の決着は着いたのだった。
後書き
いかがだったでしょうか。
本当はシリルとシェリアの戦いまで終わらせる予定でしたが、予想より時間がかかりそうなので一度切ります。
次で二人の勝負は決すると思いますのでよろしくお願いします。
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