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仮面ライダーAP

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夜戦編 蒼き女豹と仮面の狙撃手 第11話


 クランツ曹長をはじめとする敗残兵達の群れ。その追撃を振り切り、薄暗い通路を走り続けていた真凛は、海岸線に隠された洞窟に辿り着いていた。白く長い脚を止めた瞬間、釣鐘型の爆乳と安産型の巨尻がばるんっと弾む。

「この洞窟は……」

 ここはスナイパースパルタンの専用マシンである、マリンプロテクターサイクロン号が配備されているはずの場所だ。しかしこの洞窟にその船は無く、ノバシェード製の水上バイクが残置されているのみとなっていた。

「……さすがは私が見込んだ仮面ライダー達ね。期待通りの働きだわ」

 その光景を目の当たりにした真凛はここで起きていたことを一目で見抜き、不敵な笑みを浮かべる。引き締まった腰を左右にくねらせながら、ノバシェード製の水上バイクに跨った彼女は即座にエンジンを起動させ、島の外を目指して急発進して行った。その反動で特大の爆乳と爆尻が、ばるんっと上下に躍動する。

「それじゃあ私は……気楽に脱出させて貰おうかしら?」

 彼女を乗せた水上バイクは機雷に遭遇することなく一直線に海上を駆け抜け、爆発が及ばない遠洋にまで到達していた。すでに夜が明けていた空は眩い輝きを放っており、真凛が辿り着いた海面を鮮やかに照らしている。

 ターボ達を乗せたマリンプロテクターサイクロン号が、進路上の機雷を蹴散らすように「爆進」していたおかげで、後に続く形となった真凛の水上バイクは安全に脱出出来ていたのだ。シャドーフォートレス島が爆炎に飲み込まれたのは、それから間も無くのことであった。

「……ふふっ」

 煌びやかな朝陽に照らされる中、真凛は水上バイクに跨りながら大空を仰ぐ。日の出と共に飛び去って行く1機のヘリを見上げながら、彼女は穏やかな微笑を浮かべていた。ヘレンとオルバスはそのヘリに乗り、間一髪のところで島を脱出していたのだ。

(どうやら皆、無事に脱出出来たようね。少々アクシデントはあったけれど……目的は達成された。悪くない結果ね。パンティは取られたけど)

 去り行くヘリを仰ぎ、微笑む真凛。そんな彼女の遥か前方では、マリンプロテクターサイクロン号が穏やかに海上を漂っている。
 密かに傍受していたターボ達の会話内容から、G-verⅥの負傷を察知していた真凛は、事前にハイパーレスキューを手配していたのだ。船の方へと視線を移した真凛は、蠱惑的な微笑を溢している。

(……良い「宣伝」になりそうでしょう? お人好しなハイパーレスキューさん)

 ハイパーレスキューの隊長である駿介は、「傷病者はノバシェードでも救う」という信念に基づいて活動している。その姿勢はノバシェードに憎悪を向ける者達からは疎まれることも多く、彼らは新世代ライダー達と比べて、政治的な理解や援助を受けにくい立場にあった。

 絶対的なヒーローとして世間に周知されている新世代ライダー達を救う……という今回の救助活動は、そんなハイパーレスキューに対する社会からの評価を大きく向上させる、「プロパガンダ」としては最適なのだ。その「宣伝」も、真凛の目的に含まれていたのである。

(あなた達には、今後もしっかりと働いて貰う必要があるわ。大局が見えていない権力者の連中に、あなた達のような「精鋭」が潰されても困るし……ね)

 ノバシェードを忌み嫌う真凛から見てもハイパーレスキューは精鋭揃いであり、彼らが精力的に活動出来る状況であればあるほど、自分も他のライダー達も生存率が大きく上がる。そう見込んでいた真凛は、駿介達にもシャドーフォートレス島の情報を流し、ターボ達を助けに行くように仕向けていたのである。

 かつては、ノバシェードの男達による恥辱の「拷問」を味わったことがある真凛。そんな彼女としても、憎きノバシェードにまで救いの手を伸ばす駿介達に対しては、少なからず思うところがある。だが、だからといって私情で「非効率」な判断を下すことはない。使えるものは何であろうと、誰であろうと「使う」のが彼女のやり方なのだ。

「……そうね。あなたはそういう男よ、東方駿介」

 そして、真凛の思惑通り。駿介達は情の厚さを利用される形で、この島の近海に急行していたのである。しかしそこには、無理解な権力者達にハイパーレスキューを潰させないため……という別の理由も絡んでいた。

(日の当たる光の道……私には縁の無い世界ね)

 それが駿介達への好意によるものなのか、ハイパーレスキューに利用価値があるからなのか。真凛は妖艶な微笑を浮かべながら、マリンプロテクターサイクロン号からヘレン達を乗せたヘリへと、再び視線を移す。

「……これからも進み続けなさい、ヘレン。あなた自身が信じる道を。あなた自身が信じる、正義のために……」

 蠱惑的な笑みを溢す真凛はハンドルに白い手指を絡ませ、独りエンジンを再始動させて行く。青い扇情的なチャイナドレスは、その豊満な肢体にぴっちりと密着していた。安産型のラインを描いた極上の生尻(・・)は、シートにむにゅりと押し付けられ、淫らに形を変えている。

(さぁ……次の「獲物」はどこかしら?)

 エンジンの躍動に応じてKカップの爆乳がどたぷんっと弾んだ瞬間、彼女を乗せた水上バイクは大海の果てへと旅立って行く。その行先を知る者は居ない――。

 ◆

「ふゥン……ようやく終わったようだねぇ。随分と、長い夜だったじゃあないか」

 夜明けと共に爆発の瞬間を迎え、草一つ残らぬ焦土と化したシャドーフォートレス島。その惨状を映像越しに観測していた一光は興味を失ったかのように、車椅子を反転させてモニターに背を向けていた。

「オルバスの力なら、真夜中のうちにアイアンザックを始末出来ていたはずです。彼がまだ未熟だったのか、スパルタンシリーズのスペックが想定を超えていたのか……あるいは、その両方か。いずれにせよ、彼にはもっと成長して貰わねばなりませんね」

 亜灰縁も彼女に続き、冷淡な佇まいで踵を返す。その弾みで、白衣を内側から押し上げている彼女達の膨らみ(・・・)が、ぷるんっと揺れていた。極上の美少女達の柔肌に宿る甘い匂い。その芳香が僅かに漂うこの薄暗い研究室は、静寂に包まれている。

「……これでミサイルスパルタンも、スナイパースパルタンも消滅。一度は滅び損ねたスパルタンシリーズも、今度こそ完全な終焉を迎えたようだねぇ」
「えぇ。……オルバスもまだ成長途上ではありますが、今回の戦闘でさらに経験値を積めたことでしょう。それに……」
「あぁ……真凛・S・スチュワート。彼女の働き振りはなかなかのモノだった。……そろそろ君も、認めざるを得なくなったのではないかな?」

 光の興味は、オルバスやヘレンを陰から援護していた真凛に移っていたらしい。彼女の言葉に目を細めながら、縁はデスクに置かれていたジャスティアドライバーの一つを手に取る。それはジャスティアタイプの42番機「ウェペル」のベルトだった。

「……別に、貴女の判断に口を挟むつもりはありません。単に気に食わなかった、というだけのことです」

 優れた潜水能力を持つ真凛ならば、水陸両用という特性を持つウェペルの鎧を使いこなせるかも知れない。そんな期待に胸を膨らませている光とは裏腹に、真凛の経歴から滲み出る「我の強さ」に眉を顰めている縁は、怪訝な表情でモニターに映る彼女の姿を見つめていた。

「あぁ……なるほど。君とはあまり相性が良くなさそうなタイプだからねぇ」

 縁の横顔を一瞥する光は、腑に落ちたという様子で口元を緩めている。彼女の艶やかな唇はモニターの光を浴び、扇情的な光沢を放っていた。まだ18歳という若さではあるが、モニターに照らされた蠱惑的な美貌は、底知れぬ妖艶さを湛えている。そんな彼女の吸い込まれるような瞳が、再びモニターに向けられた。

「しかし……スパルタンシリーズ、ねぇ。11年前の『エンデバーランド事変』で滅びたというマルコシアン隊は……あんな粗雑な玩具で旧シェードの侵攻を退けたというのだから、信じ難い話だ。その計画の最高傑作(ミサイルスパルタン)でさえあの程度だったのだから、当時生産されていた他の試作機なんて、なおのこと酷いモノばかりだったろうに……」
「……どんなに優れた外骨格でも、使い手の実力が伴わなければ宝の持ち腐れ。それは逆も然り、ですからね。いくら優秀な装着者を用意出来ても、肝心のスーツの性能が劣悪では……」
「あぁ。それに……『失敗作』の寄せ集めに過ぎない今のノバシェードとは違って、当時の旧シェードは『正規品』ばかりの精鋭集団だったはずだ。そんな怪物達を、スパルタンシリーズ如き(・・)で撃退した陸軍兵士達……か」

 11年前の北欧某国で起きたという、旧シェードと陸軍の武力衝突「エンデバーランド事変」。その激戦の中で散って行ったマルコシアン隊の兵士達は、劣悪な性能(スペック)のスパルタンシリーズで、旧シェードの怪人達に立ち向かっていたのだという。

 愛する故郷のため、人類の未来のため、決して勝ち目のない戦場に飛び込んで行った彼らが、もし今も健在だったなら。この時代の仮面ライダーとして、再び立ち上がる未来もあり得たのかも知れない。

「……会えるものなら、私も会ってみたかったよ。さぞかし面白い戦闘データが取れただろうに」

 しかし、どれほど科学が進歩しようとも時は巻き戻せないし死者は蘇らない。ならば、こんな仮定の話にも意味は無いのだろう。スパルタンシリーズに対しては冷淡だった光だが、その鎧を着ていた当時のマルコシアン隊に対しては思うところがあったのか――今度はどこか名残惜しげに、モニターに背を向けていた。

「死ねば会えるのでは? あぁ、貴女では死んでも会えませんね。人類のため命を賭した彼らなら、今頃は天国に居るのかも知れませんが……貴女は間違いなく地獄行きなので」
「……君の言葉は常に辛辣だねぇ」

 相変わらず容赦のない部下の言葉に眉を顰めながら、光は次の研究に向けて動き出して行く。他のジャスティアドライバーを任せる適合者候補も、これから見付けて行かなければならない。

「まぁいい、済んだ話は終わりにして『次』の仕事に取り掛かろうじゃないか。時間は有限なんだからねぇ」
「自分で振っておいてそれですか、全く……」

 失われたものにいつまでも囚われていられるほど、彼女達は「暇」ではないのだから――。
 
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