仮面ライダーAP
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夜戦編 蒼き女豹と仮面の狙撃手 第10話
――ターボ達の脱出成功から、遡ること数分前。要塞最深部の格納庫で繰り広げられていたミサイルスパルタンとの戦いも、ついに決着の瞬間を迎えていた。
「……生憎だけど。『仮面ライダー』からは、あなたが1番遠いのよッ!」
マス・ライダー軽装型の強化服を纏う、ヘレン・アーヴィングが撃ち放ったサラマンダーの一撃。そのグレネード弾が、アイアンザックを乗せたミサイルスパルタンの要塞形態を、完全に撃破したのである。
「ぐぅおぉおあぁあぁああッ……! か、めん、ライダァァアッ……! その名は私のぉおぉッ……!」
爆炎に飲まれ、倒れ伏して行く鋼鉄の巨人。そこから響いて来る無惨な断末魔は、燃え滾るような憎悪に満ちていた。しかしその憎しみが仇敵に届くことはなく、巨人はそのまま消し炭と化して行く。機体を動かしていたアイアンザック諸共、その巨躯は地獄の業火に焼き尽くされていた。
「……」
サラマンダーのカスタムパーツをこの場に届け、ヘレンとオルバスの頭上から決着の瞬間を見守っていた真凛・S・スチュワート。彼女は「後輩」の勝利とアイアンザックの最期を見届けた後、素早い足取りでこの島からの脱出を図っていたのだが――まだ要塞内には、僅かな生き残りの兵士達が居たらしい。
「待てェッ、侵入者めッ! こうなれば……貴様だけでも道連れにしてやるッ!」
「むしゃぶりつきたくなるような、甘ったるい雌の匂い撒き散らしやがって……! このままただで……ただでくたばって、たまるかぁあぁあッ!」
豊満な乳房と安産型の桃尻をばるんばるんと弾ませ、くびれた腰を左右にくねらせながら通路を駆ける真凛。そんな彼女を地獄の道連れにしようと、己の死期を悟った兵士達は狂気を宿した瞳で極上の爆乳美女を射抜き、その優美な背中を追い掛けている。
スラリと伸びた長い美脚を際立たせるハイヒールが床を蹴るたびに、その反動で超弩級の爆乳と爆尻がたぷんっと大きく揺れ動く。そんな彼女の白く瑞々しい柔肌から滲み出る、雄の獣欲を煽る淫らな雌のフェロモンが、兵士達の鼻腔を挑発していた。
脱出を目指す真凛を発見した兵士達はコンバットナイフを手に、彼女の背中を追い続けている。薄暗い通路を駆け抜けて行く彼らは、何度も地震に体勢を崩されながらも執拗に真凛を追い、殺意を込めた刃を閃かせていた。弾切れになるまで銃を乱射し、その銃身を放り投げて真凛を猛追する彼らの双眸は、苛烈な殺気で血走っている。
「……しつこい男は嫌われるものよ。覚えておきなさい」
そんな彼らを肩越しに一瞥する真凛は、知的な眼を細めて忌々しげに呟いていた。裏社会の女探偵として生きて行くということは、対策室に居た頃とは違い、組織の援護を一切受けられない……ということでもある。
(捕まるわけには行かないわね。私はもう、独りなのだから)
それが意味するものを、真凛は己の肌で理解していた。対策室時代に一度味わった「悪夢」が脳裏を過ぎった瞬間、怜悧な貌が僅かに歪む。今でも払拭し切れていない「屈辱の記憶」は、呼び起こされる度に真凛の「プライド」を傷付けているのだ。
(……っ。忘れたい記憶ほど、よく残るのよね)
現役の特務捜査官として、とある潜入任務に就いていた時。一瞬の隙を突かれてノバシェードに捕らえられた真凛は、身体中を隅々まで念入りに調べ尽くされ、屈辱と恥辱に塗れた「尋問」を受けたことがあった。その時に味わった痛みと辱めは、今も彼女の身体がはっきりと覚えている。
――や、やめなさいっ……! そっ、そこはっ……んぁあぁあっ!? あはぁあぅっ!
――へへっ……通信機はどこだァ? 女って奴は、何かと隠し場所が多いモンだからなァ……しっかり探さなきゃならねぇ。特に……あんたみてぇな、男を手玉に取ろうってタイプには容赦しねぇ。隅から隅まで、徹底的に調べ尽くしてやる……! ほらほら、へばってる暇なんて与えねぇぞ乳牛女ァッ!
――んぉおおっ!? ぉおっ、おっ……も、もうやめっ……! はぁあぁあっ!
――斉藤空幻博士が貴様のために拵えた特製の媚薬だ、痛みすら心地良いだろう? 並の女なら、今頃は自我を破壊され廃人になっているところだ。頑丈な女に生まれてしまったことを後悔するんだな。仲間の居場所、組織の情報……全て吐くまで「尋問」は続く。無駄な意地を張って、壊れるまで可愛がられたいか? さっさと屈服して、楽になった方が良い。
――かはぁっ、んはぁっ、んっ、はぁ、はぁあっ……! だ、誰、がっ……!
――やれやれ……ここまでたっぷり可愛がられても、まだそんなツラが出来るなんて驚きだぜ。あんたも強情だなァ。つまらんプライドなんざドブに捨てて、楽になっちまえばどうだ? 最近対策室に入ったっていう、あんたの後輩……アーヴィングとか言ったか。あの爆乳女なら呼び付けても構わねぇぜ? 女日照りなウチのケダモノ共も、喜ぶだろうからなァ。
――はぁっ、んぁっ、はぁあぁっ……ふ、ふふっ。黙って聞いていれば……随分とヘレンのことを甘く見ているようね。彼女は私よりも遥かに優秀な捜査官よ。その程度のことも知らないようでは、彼女に足元を掬われるのも時間の問題ね。もうすぐこのアジトも、仮面ライダー達に見つかるわ。
――あァ……!?
――今のうちに、減刑狙いの方便でも考えておいた方が賢明よ。ふふっ……まぁ尤も、あなた達の残念な頭では何も捻り出せないでしょうけど。むしろ何も喋らない方がマシかも知れないわね。「馬鹿の考え休むに似たり」、よ。
――なんだと、このクソアマァッ……! 散々ケモノみてぇな声で無様にヒィヒィ啼かされてた雌豚の分際で、デカい口を……! どうやらまだまだ「躾」が足りてなかったみてぇだなァッ!
――うふふっ……脅し文句まで似たり寄ったり。よほど教養が足りていないのね。脳に割く栄養まで、その筋肉に吸われているのかしら?
――こいつッ……! 全身汗だくになってやがるくせに、なぁに余裕ブッこいてんだッ! もう許さねぇ、今すぐブッ壊してやるッ!
――落ち着け、この女豹は最後の最後まで油断ならんぞ。こうして囚われの身になっている今も、虎視眈々と逆転の隙を窺っているに違いない。ノバシェード対策室最強の特務捜査官……真凛・S・スチュワートを甘く見るな。いいか、失神する寸前まで徹底的に責め続けろ。策を練る暇を与えるな。思考を巡らせる時間も無いほど、激しく……念入りに可愛がってやれ。
――……っ!
――言われるまでもねぇ……! この女には散々煮湯を飲まされたんだ、「尋問」の本番はこれからよ! さぁ、まだまだ存分に楽しませて貰うぜぇ!? あんたが完全に屈服して、俺達の奴隷に成り下がるまでなぁあぁッ!
――うっ、あぁあっ、あぁあぁあうっ!? あっ、はあぁっ、あっあっあぁっ、あぁあぁあぁあああーっ!
嬌声にも似た、あられもない悲鳴。為す術もなく玩具にされ、憎むべき敵に弄ばれている無様な姿。そんな自分の醜態が脳裏に蘇り、真凛は口元を歪ませる。
「……くッ」
新世代ライダー達や後輩の救援が無ければ、あのまま下衆な男達に全身を嬲り尽くされ、忌むべき男達に心から「屈服」させられていたのだろう。最終的にはライダー達に救われ事なきを得たが、いつノバシェードに「敗北」してもおかしくない状況だった。
ノバシェードによる苛烈な拷問。その責めに屈し、男達に媚びるようになった自分の姿。そんな幻覚こそが、自分の在るべき姿なのだと何度錯覚しかけたことか。文字通り、正気の沙汰ではない。しかし確かにあの時の自分は、ノバシェードの奴隷に堕とされかけていた。
特務捜査官としてのキャリアが長く、数多の死線を潜り抜けて来たベテランの真凛でさえ、あと一歩で心が「陥落」していたのだ。その手の「経験」が無いヘレンの身体では、ひとたまりもなかっただろう。
彼女が焦ってスタンドプレーに走ることなく、ライダー達を引き連れて真凛を助けに来たのは正解だった。独断専行の常習犯だった真凛では、そうは行かなかっただろう。やはり、彼女は「優秀」だ。
(……屈しないわ。私はもう2度と、誰にも屈服しない……!)
しかし今の真凛はもう、その救援に繋がる力を持った組織に身を置いてはいない。万一、捜査官の身分を失った自分が再び捕まるようなことがあれば、今度はどんな目に遭うか。どれほどこの身体を、丹念に味わうように嬲り尽くされるか。
「んっ……はぁ、あぁっ……!」
想像もしたくない。したくないのに、熟れた身体はあの痛みと火照りを思い出してしまう。下腹部が疼き、乳房の先が甘く熱を帯びる。じっとりと汗ばんだ白い肉体は僅かに桃色に染まり、柔肌から滲み出る濃厚なフェロモンが、芳しい匂いを振り撒く。
「……ッ! 来客に対して不親切な設計ね……!」
その時、真凛の眼前に大きな「落とし穴」が現れる。どうやら通路の床が一部崩落し、約30mもの距離がある「大穴」が生まれてしまったようだ。しかし、この奈落を避けて倒れる迂回路はない。このままでは、兵士達に追い詰められてしまう。
「……はぁッ!」
無論、為す術もなく殺される彼女ではない。真凛はチャイナドレスのスリットから覗く白い太腿に手を伸ばし、そこに装備されていたナイフを引き抜く。そして、大穴の真上に位置する通路の天井に切っ先を向け――柄のスイッチを押し込んだ。
すると、柄から勢いよく「射出」されたナイフの刃が、狙った先の天井に深々と突き刺さった。その刃と、真凛が握っている柄は強靭なワイヤーで繋がっており――刃を引き寄せようと柄の内部で猛回転するワイヤーの動きが、逆に真凛の身体を軽々と持ち上げてしまう。
「なっ……!?」
「……楽しかったわ。たまには、追いかけっこも悪くないわね」
やっとの思いで追い付いた兵士達が瞠目する中、真凛は皮肉に満ちた微笑を彼らに向けながら、地を蹴って空中に飛び出して行く。刃を引き寄せようとするワイヤーの力を利用し、大穴を飛び越えて行く真凛。
そんな彼女の背中を、兵士達の多くは指を咥えて見送ることしか出来ずにいた。天井に刺さった刃に向かって戻ろうとするワイヤーが、弧を描いて真凛の身体を奈落の向こうへと運んで行く。
「ただのナイフではなかったのか……!」
「まずい、このままでは……!」
「……逃すかぁあぁッ!」
だが、立ち尽くすばかりだった兵士達の中でただ1人。真凛の抹殺を諦め切れず、無謀を承知で大穴に向かってジャンプする男が居た。
先ほど真凛に気絶させられていた、クランツ曹長だ。彼は特殊強化服のパワーを頼りに、勢いよく地を蹴って真凛の背中に飛び掛かって行く。彼女に殺された、ミルド軍曹の仇を討つために。
「貴様の命だけは……刺し違えてでも貰って行くぞぉおおおッ!」
「……!」
その殺気を悟った真凛はハッと目を剥いて後方を見遣るが、空中では身動きが取れない。逆手持ちで振り下ろされたナイフの刃が、彼女の背中目掛けて一気に振り下ろされる。
「……っ!」
しかし、クランツ曹長のナイフが真凛の柔肌を傷付けることはなかった。紙一重のところで刃は空を切り――僅か1枚の黒い薄布だけが、振り抜かれた刃に纏わり付いていたのである。その紐のような布には、濃厚な雌のフェロモンがじっとりと染み付いていた。
「なっ……!?」
「……惜しかったわね。それは『残念賞』よ」
「ちっ……ちくしょおおおぉおぉッ!」
妖艶に微笑む真凛に見送られながら、底の見えない奈落に墜落して行くクランツ曹長。悲痛な断末魔と共に、永遠の闇に消えて行く彼の手には、最期までナイフが握られていた。
「はぁっ……!」
その刃に絡み付いていた「残念賞」――Tバックの黒パンティを一瞥つつ。前方に向き直った真凛は華麗に宙を舞い、大穴を越えた先へと軽やかに着地して行く。その瞬間、超弩級の爆乳と安産型の爆尻が、どたぷんっと豪快に弾んでいた。
「……今度こそさよならよ。次は地獄で逢いましょう?」
そのまま彼女は追っ手を振り切るように、素早く通路の先へと走り去って行くのだが――勢いでふわりと舞い上がったドレスの裾からは、白くむっちりとした生尻が僅かに覗いていた。
「ク、クランツ曹長が……そんな……!」
「……く、くそぉおお……!」
取り残された兵士達が、その極上の「桃」を記憶に刻んだことは言うまでもないだろう。大穴を超えた先にまで、彼女の身体から滲み出る芳しい雌の匂いが漂っていた――。
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