イベリス
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第百二十六話 言葉を受けてもその六
「そうすべきことです」
「それが出来たら素晴らしいことですね」
「人として尊敬出来ます、ですが触れないだけでも」
「いいんですね」
「逆に言えば迂闊に触れますと」
「怨まれるものですね」
「そうです、ですから癒せればよく」
素晴らしい人の行いでというのだ。
「心優しい労わりを知る人になりたいなら」
「それならですね」
「せめて触れないことです」
「その人に何かがあって」
「心の傷を背負う様なことになってもです」
それでもというのだ。
「そうされて下さい」
「そうします」
咲は速水に確かな声で答えた。
「私も」
「その様にされて下さい、ただ」
「ただ?」
「自分がそうしたことに遭わないとわからないこともです」
「ありますか」
「そうです、人にとって最高の授業は何か」
人生においてというのだ。
「経験ですので」
「実際にそうしたことがないとですか」
「わからないものです」
「そうなんですね」
「ですから辛いこともです」
そう言われることもというのだ。
「機会があれば」
「経験することですか」
「そうです、それで何かあっても」
「いいんですね」
「貴重な勉強を出来るので。乗り切れば」
その時に起こることをというのだ。
「いい糧を得られます」
「人生において」
「多くの人は様々な経験を経てです」
「成長していって」
「いい人になっていきます、まあ悪い経験ばかりですと」
「悪事ですか」
「そうです、悪事を重ねますと」
そうした経験を積むと、というのだ。一概に経験といってもいいものばかりとは限らないというのだ。
「碌でもない人にです」
「なってしまいますか」
「そうです、経験は経験でも」
「いい経験ですね」
「それを積むことです」
「それが大事ですね」
「その中には辛いもの悲しいものもありますが」
「そういったものもですね」
「後で振り返れば」
「いい経験だったりしますね」
「人の道に反しない経験なら」
速水は悪事を今度はこう表現して話した。
「それならです」
「いいですか」
「そうです、そうしたもの以外なら」
「どんな経験もですか」
「素晴らしい糧になります」
人生のというのだ。
「愛別離苦全てが」
「そうですか」
「ですからどんな経験も受け入れて」
「前を向いていくことですか」
「そうです、是非です」
まさにというのだ。
「そうしていって下さい」
「私もですね」
「私からお話することは今はそれだけですが」
速水は咲に優しい声で話した。
ページ上へ戻る