FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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女の勘
前書き
ジェラール罪ばっかり背負わされてるけどそろそろ許されないのかと思ってしまった件について。
ソフィアside
闘技場に現れた二人の美女。彼女たちを見た観客たちはあまりの好カードに興奮を隠すことができないでいる。
「とりあえず予定通りね」
「カグラを使うのは勿体無いけど、仕方ないね」
第三試合の対戦カードが決まった時点でソフィアたちの対戦相手は決まっていた。そしてそこから、誰が来るかもおおよそ検討はついていた。
「ミャア!!カグラちゃんなら問題ないよ!!」
「そうそう!!明日からはアチキたちが頑張ればいいし!!」
剣咬の虎はマスターが代わったことによって周囲にも気を配れるようなギルドになった。だけど、ソフィアたちは知っている。彼らの本質的なものはそれに馴染みきれていないことも。
「でもやっぱりソフィアが出たかったなぁ」
「仕方ないだろ?カグラとの約束なんだから」
剣咬の虎は確かに落ち着いた。でも、いざ戦いになった時に力がある分どうしても相手を舐めている傾向が見える。その中で対戦相手が女性しかいない人魚の踵となったら絶対に男性陣は出てこない。先の競技パートで負傷したグラシアンの代わりにソラノさんが入っていることからも、ミネルバさん、ユキノさん、ソラノさんの三人から選出することはわかっていた。
その中でミネルバさんならカグラさんが、ユキノさんかソラノさんならソフィアが出ることで話が決まっていたため、もうちょっとでイチャイチャタイムに漕ぎ着けただけにガッカリしてしまう。
「はぁ・・・もう女の子とイチャつける場面はないかなぁ」
昨日今日とバトルパートでせっかくの機会を逃していることもありやる気が起きてこない。でも、その考えが明日否定されることをこの時のソフィアは知らなかったのでした。
レオンside
「すごいカードだな、これは」
まだ二人とも所定の位置についていないのにこの緊張感。前回の大会のこともあるだろうし、この試合は目を離せないものになることは言うまでもない。
「どこも温存なんてしてこないんですね」
「このルールなら捨ててくるところもあるかと思ったけど・・・」
決着がつかない可能性すらある今回の試合時間。にもかかわらずどのギルドも最善の選手を選び、全てで勝敗が決まっている。
「どっちが勝つと思う?」
ユウカさんのその問いかけに即答できるものはいない。どちらの力も拮抗しているが、お互いにここまでの戦いを見て何を仕掛けてくるのか皆目検討もつかないからだ。
「魔力で考えればミネルバだが、あいつの技は発動に時間がかかる」
「となるとカグラさんのスピードがものを言いそうだけど、ミネルバさんには絶対領土があるからね」
カグラさんが突っ込めばミネルバさんは自身と彼女の立ち位置を入れ替えて起死回生をしてきかねない。ただ、ミネルバさんが一撃で決める場合は大技を発動するしかない。その隙をカグラさんは確実に生かすだろうから迂闊に彼女も動けない。
「どんな戦いをするんだろう」
何よりも興味が尽きないこの戦いに俺たちは固唾を飲みながら見届けることにする。所定の位置についた二人は既に臨戦態勢に入っているのか、交わる視線から火花が散っているかのようだった。
第三者side
位置についた二人の女性魔導士。彼女たちは一切の言葉を交わすことはしなかった。その並々ならぬ雰囲気により、沸き上がっていた会場が一気に静まり返る。
「大丈夫でしょうか?ミネルバ様」
「心配いらねぇだろ」
「うむ。お嬢が負けることなど、記憶にないね」
「あぁ」
心配そうに仲間の方を見つめるユキノだったが、オルガたちは一切心配している様子はない。ただ一人心配そうに手を握り合わせている女性に対し、姉であるソラノはハグをしながら声をかけていたが、男性陣に一睨みされ、渋々声を抑えている。
『それでは大魔闘演武二日目バトルパート最終試合!!スタートカボ!!』
大注目の第四試合、銅鑼の音と共に動いたのはやはり剣士の方だった。
「先手必勝か」
「カグラさんならそうだよね」
得意の一瞬で敵の間合いに入るスタイルを見せるカグラ。だが、それを当然ミネルバは読んでいた。
ヒュンッ
もうカグラの剣が腹部へと突き刺さるかというタイミング。そこでミネルバは自身の魔法絶対領土を発動、自らの身体とカグラの身体を入れ替えることに成功した。
「ヤバッ!!」
「カグラちゃん!!」
相手の姿勢も引き継いだミネルバは無防備になっているカグラの腹部へと蹴りを放つ。それにより剣士の身体は軽々と宙へと浮き上がった。
「悪いな、カグーーー」
空中では身動きを取ることができない。ここからならばミネルバの強力なヤクマ十八闘神魔法を使える。そう思って顔を見上げた彼女は困惑した。なぜなら打ち上げられたはずの女性が笑みを浮かべていたからだ。
「なぜ笑って・・・!!」
彼女が何をしようとしているのかわからなかったミネルバは一瞬動きが止まった。そのタイミングを待ち構えていたのか、カグラは空中でその剣を構えた。
「怨刀・不倶戴天!!」
「まさか・・・」
「わざと打ち上げられたのか!?」
その姿勢は彼女のもっとも威力のある剣術の構え。あらかじめ準備をしていなければ取れないであろう体勢を作り出した彼女は重力を利用し真下にいる敵へと飛び込む。
「剛の型!!」
「くっ」
カグラは自らが敵の間合いに入ったことで立ち位置をすり替えられるのがわかっていた。そのためそれを逆に利用し、敵の攻撃を一度受けることで逆に彼女の得意とする状態を難なく作り出したのだ。さらには相手の動揺も引き出していることもあり、ミネルバは反応が遅れている。
「やらせん!!」
ただ、それでも彼女は強かった。自らの前に異空間を作り出し、それを爆発させる。これにより相手の攻撃を急所で受けることは免れた。
ガッ
だが、カグラも負けじとミネルバの身体へと剣を押し込んだ。
「くあっ!!」
「ぐっ!!」
双方ともに地面を転がる。しかし意地かプライドか、二人はすぐさま起き上がり攻撃体勢を取った。
カンカンカンカン
そのタイミングで試合終了を告げる鐘が鳴り響いた。
『試合終了!!二日目最終試合は両者引き分けぇ!!』
短い試合時間だったためにお互いに決めきれなかった。しかしわずかなその戦いでも双方ともに力を出し切ったことを見ていた観客たちからは温かい拍手が送られるのだった。
ソフィアside
試合終了を受けて互いに握手するカグラさんとミネルバさん。きっとまたどこかで戦おうとか話しているんだろうなぁと思いつつも、ソフィアはそんなこと関係なかった。
「きっとミネルバさんと戦うのはソフィアになるだろうなぁ」
「なんでそんなこと言えるの?」
確証はない。でも、なんでかそんな気がしていた。特に彼女と因縁があるわけでもないけど、ミネルバさんと戦うのはカグラさんじゃなくてソフィアになる。なぜかふとそう思っていた。
「確信はないけど・・・女の勘ってやつかな?」
「あんたにそんなのあるとは思えないけど・・・」
リズリーさんの嫌味も今のソフィアには気にならない。早くその時が来ないかなぁと思いながら、ソフィアたちは戦いを終えたカグラさんを迎え入れた。
シリルside
『二日目のバトルパートも終了しました!!ここで順位の確認をしていきましょう』
チャパティさんの大きな声で身体が目覚めた俺はゆっくりと身体を起こす。それに気が付いたウェンディとシャルル、そしてセシリーが顔を覗き込んできた。
「シリル大丈夫?」
「とりあえず無事でよかったわ」
「心配したんだよ~」
とかいいつつ二匹の猫はそこまで心配そうな顔をしていないような気がしたがここはスルーしておこう。俺はゆっくりと身体を起こしていくが、特段痛みも違和感もないようで一安心。
『1位は狩猟豹の頭で30ポイント!!2位はワンランクダウンで人魚の踵!!3位もこれまたワンランクダウンで青い天馬となっております』
俺が負けてしまったことによりあのギルドが1位に躍り出てしまった現在。作戦が完璧だっただけに、あの敗戦は悔やまれる。
「あれって昨日思い付いたの?」
悔しさに歯軋りさせていると、隣にいた少女からそんなことを訪ねられる。
「うん。これならきっとうまくいくなぁって思ってた」
あの人は戦いのことしか興味がない。だからこそ一瞬でも気を逸らせれば俺の一撃が入ると思っていたのに、まさかそれ以上の反応速度を見せてくるとは思わなかった。
「猫騙しなんて今時やるやついないわよ」
「でもいい感じに見えたけどな~」
どうやらあの攻め手は周囲から見れば賛否両論だったようだ。まぁ結果が結果だっただけに、そうなってしまうのも仕方ないだろう。
『順位は以上になります!!それでは皆さん!!また明日お会いしましょう!!』
いつの間にか順位の確認も終わっていたようでそんな声が聞こえてくる。ちょうどそのタイミングで部屋の扉が開いたかと思うと、ポーリュシカさんがこちらを見て固まっていた。
「なんだい。あんたは無事だったんだね」
「お陰さまで」
昨日やられてしまったナツさんたちはいまだに意識を取り戻していないからなのだろう。どこか安堵したように聞こえる声を聞いて俺とウェンディがにやけていると、彼女もそれに気が付いたのか大袈裟なくらい怖い顔を作ってきた。
「大丈夫なら早く帰りな!!人間の世話ばっかりで溜まったもんじゃないよ!!」
「わわ!!」
人間嫌いのポーリュシカさんは俺のことをつまみ上げるとそのまま部屋の外へと投げ出されてしまう。ただ彼女はエドラスのグランディーネだからなのか、ウェンディには優しく接しており今回も例に漏れず彼女は丁寧に外へと出されていた。
「俺にも優しくしてもいいじゃん!!」
「いいんだよ。あんただし」
「何それ!?」
納得できない扱いの差に口を尖らせるもそれを知らないフリしたポーリュシカさんは扉を強く閉めてしまう。顔を見合わせた俺とウェンディは彼女のらしい行動に笑った後、先に戻っているであろうみんなと合流するために歩き出す。
「他の試合はどうだったの?」
「すごかったよ!!エルザさんとバッカスさんの試合も出し、カグラさんとミネルバさんもね」
「え!?」
寝ていた間の試合結果を聞くとなんだかとんでもない試合が組まれていたようで話題は自然とそちらへと切り替わっていく。二日目終了時点での順位は以下の通りとなっていた。
1位 狩猟豹の頭 30P
2位 人魚の踵 22P
3位 青い天馬 21P
4位 剣咬の虎 18P
5位 妖精の尻尾A 14P
6位 蛇姫の鱗 13P
7位 妖精の尻尾B 11P
8位 四つ首の番犬 9P
第三者side
「ご苦労だったな、二日目」
ここはドムス・フラウの医務室。その部屋には二人の男がベッドの上に横たわり、他の面々はそれぞれ椅子に腰かけたり壁に寄り掛かったりと各々の姿勢を取っていた。
「特にお前ら三人の仕事ぶりは完璧だった。後はゆっくり休んでくれ」
「我は納得していないがな」
そう言ったのは包帯だらけの大柄の男。それを見て深紅の髪の青年はわざとらしくタメ息をついてみせた。
「一夜のは事故だ。お前はグラシアンをやってくれただけで十分」
「だが・・・」
不満げな表情を隠す素振りもない彼だったが、それはすぐそばにいた背の高い男も同様だったようで、先程から何も話そうとしない。
「お前たちはこの世界のためになることをした。それで十分。まぁシリルを仕留められなかったのは残念だが、そこは予定通りお前らに任せるからいい」
視線を送られた二人の女性は嬉しそうに笑みを浮かべる。そんな中いまだに話題に上がらない青年は顔を俯けたままだった。
「明日、お前には最重要任務があるからな。夜更かしはするなよ」
「わかってる」
冗談半分で言ったはずだったが、緊張かはたまた気負いか男は真面目な声のトーンで返し、深紅の青年と女性陣二人は顔を見合わせタメ息をつく。
「エリゴール、ジエンマ。お前らへの恩赦も決まりだからな。それまでに怪我を治しておくことだ」
「その時が本当にくるんだろうな」
その問いに彼は答えない。何も言わずに踵を返すと、引き留められるよりも早く扉を開けて出ていってしまった。
「相当追い詰められているようだな」
「無理もないよ。あんな薬に頼らなきゃいけないんだからね」
ボロボロの二人の身体を見ながらロングヘアの女性はそう言うと神隠しにでもあったかのようにその場から消えてしまう。後に残された面々もこれ以上の会話をする気にはならなかったのか、眠りにつくものとその場から立ち去るものと様々な反応を見せるのだった。
「あと三日で終わりか」
「厳密には四日だけどね」
何もないその空間に集っている数人の人影。お互いを視認できないほどに深い霧に覆われたそこで彼らは言葉を交わしている。
「しかしこんなお遊びが終わった後に実行とは・・・さすがに可哀想な気もするけどなぁ」
「そうじゃないだろ。最後に楽しめる時間を与えているだけ感謝してほしい、だろ?」
意見が割れるものもいる中ではあるが、全員やるべきことは決まっているのか特に争う気配もない。ただ、そんな状況でも不機嫌さを隠さないものもいるが。
「そんなに不服かい?」
「・・・いえ、作戦には何も」
「じゃあ・・・今回の人選が嫌なのかな?」
リーダーと思われるその人物からの問いに無反応を貫く人物。それを肯定と受け止めつつも、彼は嫌な表情を見せることはしなかった。
「そんなに俺が嫌いなら外れようか?」
わざとらしく対象と見られる人物がそう問いかけるが、その表情は答えをわかっているからか、不敵な笑みを浮かべていた。
「気にすることはないよ。君の力は貴重だ。予定通りに動いてくれればいい」
欲しかった回答を得られたことで満足げな表情を浮かべたそいつはいまだに不満さを隠そうともしない存在を一瞥し、背中を向ける。
「どうやらあちらの方でも動いている者もいるようだが、気にすることはない。君たちには力があるからね、予定を崩すことはしないよ」
慌てる様子もなく淡々とそう告げる存在。それに対し他の者たちも同様なのか、誰一人として取り乱している者は見受けられなかった。
(予定通り・・・ね。そううまくいくのかなぁ?)
ただ一人、何かを企んでいるのかわずかに表情が崩れた者もいたが、それに気が付いていたリーダー的な存在もすぐ近くにいた不機嫌そうな者も何も突っ込まない。それすらも織り込み済みのようにすら感じられるほど、彼らには余裕が垣間見えるのだった。
後書き
いかがだったでしょうか。
二日目はこれにて終了です。
特にやりたいこともないし三日目の競技パートは個人的な楽しみの一つなので早々にやっていこうと思ってます。
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