Fate/WizarDragonknight
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エピローグ
前書き
七章完結!
ウィザード放映時に考えた話の一つがようやく完成してよかった!
『……驚いたね』
断崖の上。
打ち滅ぼされたアマダムを見下ろしながら、キュゥべえは呟いた。
『まさか本当に、アマダムを倒されるなんてね』
『しかも、何だあの参加者の数!?』
キュゥべえの隣では、コエムシも声を荒げている。
『アレ、全体の何割ぐらいだよ? あんなに結託されちゃ、聖杯戦争も成り立たねえぜ!』
『生き残りをかけた戦いであれば、結託するのも自然じゃないかな? 生物が生存競争のために群れるものだよ?』
そう言いながら、キュゥべえはじっとウィザードを見下ろす。
『……』
『おや? キュゥべえ君、ウィザードをじっと見つめてどうしたの?』
その赤い目を見上げながら、モノクマが大きな笑みを浮かべる。
『そんなに見つめちゃって、お熱いねえ。恋かな?』
『キュゥべえ先輩!?』
モノクマとコエムシの言葉があっても、キュゥべえは視線を動かさなかった。
『おいおい、先輩。どうしたんだよ?』
『……別に。行くよ。ここの拠点は破棄しよう』
「うっ……」
「おお、あぶねえっ!」
倒れかけたハルトを、真司が支えた。
「お疲れ。ハルト」
「うん。今回は、本当に疲れた……」
ハルトは苦笑する。
真司はにっこりと笑みながら、ハルトの頬をぐりぐりと拳で押し当てる。
「ああ。マジでな。お前、すっげえボロボロじゃねえか」
「そりゃそうでしょ。昨日からずっと外だよ」
真司から離れたハルトは、自らの体を見下ろした。
「あ、そういえば俺、昨日も今日もシフトじゃん……やばい、言い訳どうしよう……」
「ハルトさん!」
ハルトがそれを言い終えるよりも先に、体に茶色が飛び込んでくる。頭突きに近いタックルをした可奈美が、ハルトに再び抱き着いてきたのだ。
「もう……もう……! 一人じゃないよ! 寂しくないよ!」
「分かってる……分かってるよ!」
「本当に? 本当に分かったの!?」
「だから、分かったから! もう皆から逃げ出したりしないよ! もう……自分からも……」
可奈美を落ち着かせたハルトは、協力してくれた者たちを見渡す。
「本当に……皆、ありがとう……!」
コウスケはサムズアップをし。
響は安堵の息を吐き。
友奈は手を振っている。
えりかも合わせて駆け寄ってきており、大なり小なりハルトへ笑顔を向けていた。
「ハルトさん」
ハルトから離れた可奈美が、改めて言う。
「何度でも言うよ。ハルトさんは、一人じゃない。ハルトさんの重荷も、運命も。とっても重そう。重そうだから……私……ううん、私達に、半分持たせて」
ハルトが仲間たちに囲まれて騒いでいるのを眺めながら、士はほほ笑む。
やがて背を向け、歩み出すと、声をかけられた。
「行くのかい? 士」
それは、海東。
彼もまた手を組みながら、士の動向を見守っている。
足を止めた士は、面倒そうにため息を付いて海東を見つめる。
「お前……付いてくるなよ」
「いいじゃないか。僕は君の追っかけだ。どの世界でも、共にいようじゃないか」
「はあ」
士はため息を付く。
「そういえば、お前この世界のお宝はいいのか? 案の定聖杯は汚れていたわけだが、他に探せばいいだろ」
「いや……元より、お宝は見つけていたよ」
海東はそう言って、ハルトたちを見返す。
「どれだけ世界が巡ったとしても変わらない絆。それがこの世界のお宝でいいんじゃないか?」
「……お前、何か悪い物でも食べたか?」
士は冷めた目をして尋ねる。
「そんな詩的なことを言う奴だったか?」
「たまには僕も、そんなことを言うよ」
「気持ち悪いな。それに何より……そういう絆とか、お前嫌いじゃなかったか?」
「好きじゃないが……嫌いでもないよ」
海東は笑みを浮かべたまま、手で作った銃で士の額へ発砲。
「この世界のお宝は奪えないから……次に君が訪れる世界のお宝を頂くよ」
「ふん」
呆れた士は、右手を大きく振った。
すると、マゼンタの光が士の右手を包む。すると、刻まれた令呪をマゼンタのヴェールが覆っていく。
やがて、それはマゼンタのオーラとともに消失。首を回したところで、海東はまた口を開いた。
「それより士。次はどの世界に行くんだい?」
ずっと嫌な顔をして、士は動かない。やがて手を上げると、目の前に銀色のオーロラが現れた。
このオーロラをくぐれば、この世界と別れることになる。そのまま、まだ見ぬ別世界へ___
「士!」
背後からの呼びかけに、士は足を止めた。
仲間たちに囲まれながら、ハルトが口元に手を当てながら大きな声で叫んでいる。
「ありがとう! アンタのおかげで、俺は……!」
「俺は何もしていない。立ち直ったのはお前が自分でやったことだ」
士はそう言って、オーロラへ視線を移す。
だが、それでもハルトの声は途切れなかった。
「それでも言わせてくれ! アンタがいなかったら、俺は今の自分の目標も分からなかった。もしかしたら、このままダラダラと、今まで皆に正体を隠していたことに対して引け目を感じていまま生きていくことになったかもしれない」
ハルトは、さらに続ける。
「俺は、自分の罪を受け入れる。そしていつか、この命が……松菜ハルトに胸張って、生き切ったって言えるその時まで……!」
ハルトは振り返る。
真司、可奈美、コウスケ、響、友奈。
少し離れたところにいるえりか。
すでに立ち去ろうとしている、ほむら、リゲル、ソロ。
彼らへ、そしてこの世界から去る士たちへ、ハルトは宣言した。
「この絶望ばかりの聖杯戦争を止める……! そして、皆の希望になってみせる……!」
ハルトは、進化して装着したままの指輪を見下ろす。
手を上げ進みながら、彼はハルトの言葉に耳を傾ける。
「俺はファントムで……ウィザードで……仮面ライダーだ!」
士は手を振る。
決してハルトを振り返ることもなく、そのままオーロラの中へ消えていった。
次回予告
「ハルトさんが……一番張り切ってる……!」
「アートじゃねえな! 芸術は爆発だろ! うん!」
「人間になりたいお前が、そんな怪物になってどうするんだ!?」
「まあそれでも___君自身が敗北を望むのなら、仕方ないね」
「物事は常に流転するもの。私とて、南にずっといるわけではありません」
「君は何回切り刻めば死ぬのかね?」
「ヤマタノオロチ……!」
「この汚れた世界を浄化する!」
「ダチだからこそ……! ダチの間違いは、オレが止めんだよ!」
「随分と勘がいいですね。私は好きですよ。君のような優秀な子は」
後書き
いつも通り、キャラ紹介をした後で八章に入ります!
ただ、多分数週間くらいは時間空けます
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