FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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互いの狙い
前書き
今週なぜかサイトにログインできない時が多々あり投稿できないかと思いましたがなんとかできました|ョω・`)マニアッタ
ルーシィside
遡ること第一試合が始まる前、あたしたちは顔を合わせて話し合いをしていた。
「まさか事前に自分たちの試合の参加者をエントリーしないといけないとはね」
「対策を練ってからという人選はできないわけですね」
今回のバトルパートは運営が決めた組み合わせではない。それはいいんだけど、この日の最終試合となっているあたしたちまでこのタイミングで選手を決めなければならないことであたしたちは誰を選べばいいのか迷っていた。
「タッグバトルと考えると・・・」
「シリルとウェンディが適任だけど・・・」
合体魔法も使えるしコンビネーションもいい小さな滅竜魔導士コンビ。変則ルールではあるものの、彼女たちが参加してくれれば言うことはない。と思ったんだけど、二人は抱き合った状態でシンクロするように首を横に振っていました。
「え?そんなにイヤなの?」
「何かあるの?」
どこか怯えているようにも見える二人に違和感を覚えつつも、その原因がわからないため問いかけるしかないあたしたちはそれを実行する。すると、シリルの方からもっともらしい答えが返ってきました。
「だってこの対戦カードじゃソフィアが出てくるじゃないですか」
「「「「あ~」」」」
言いたいことはよくわかった。二人が恐れているのはマーメイドにいるセクハラ娘に蹂躙されてしまうこと。実力的には大差がないはずなんだけど、彼女たちはその少女との相性があまり良くないようでなかなか苦戦させられている印象がある。特にシリルに関しては、完全に相手の言いようにやられて苦汁を舐めさせられているのはよく聞く。
「てかソフィアが出てくるならあたしもイヤなんだけど・・・」
ソフィアは女性相手にイヤらしい行為を連発してくるため、そのターゲットになりそうな相手が出てきた時に参加することが多い。そして今回のあたしたちのチームでは全員が対象になるため、誰が出てもイヤな予感がするのは言うまでもない。
「そうかしら?」
「え?」
どうしようかと考えていたところ、ミラさんが真剣な表情であたしたちの方へと視線を送る。
「ソフィアはさっきの競技パートに出たわ。あんなんだけど、あの子の実力は確かだし後半戦に温存しておきたいと考えるんじゃないかしら?」
言われてみればそうだ。前回の大魔闘演武とは異なり今回は初めの四日間は出場回数に制限がある。そうなると高い実力を誇る彼女をそう簡単につぎ込むのは気が引けるのではないだろうか。
「あたしもそう思うな」
「ジュビアも」
カナとジュビアもその考えに賛同みたい。ただ、それでもシリルとウェンディは頑なにそれを拒んでいた。
「じゃあこの試合はお任せします」
「私たちは応援してますから」
そんなわけでこちらの中でもっとも強いペアは選出することができなくなってしまった。そうなるとどういう組み合わせをすればいいのかしら。
「さっきの考えだと、ミラを出すのは気が引けるね」
「そうですね。ミラさんの力は絶対必要になりますから」
すでに競技パートに出ているミラさんを省いて三人の中から選ぶことになる。あれ?これだとあたしの参加確定的じゃない?
「あ!!」
「ん?」
そんな中、シリルが何か閃いたようで声をあげる。やっぱり参加してくれたりするのかと思ったけど、どうやらそうではないらしい。
「ジュビアさんって物理攻撃効かないんでしたよね?」
「基本は受け流せますが・・・」
ジュビアの身体は水で出来ているため大体の物理攻撃は回避することが出来る。それを確認したシリルは、先程までのイヤイヤ期状態の子供ではなく、頭を使った戦略家の顔をしていた。
シリルside
「うまくいけそうね」
「ですね」
ルーシィさんからそんな声をかけられ俺は得意気に胸を張る。内心うまくいくかビクビクだったのは内緒だ。
「ジュビアさんが攻撃を凌いでカナさんの合流を待つ」
「そしてカナが出たら妖精の輝きで相手を仕留める」
ジュビアさんの魔法は高いレベルを誇ってはいるけど、人魚の踵のあの二人相手では仕留めきれないかもしれない。特にカグラさんはかなりの強者だ。ただ、あの二人は物理攻撃が主体の魔導士、ジュビアさんにダメージを与えることはできない・・・はず!!
「リズリーさんが出てたら少し危なかったですけど・・・」
「そこは大丈夫じゃないかしら?ジュビアならリズリーだったら一人で倒せると思うわ」
人魚の踵の中で唯一物理攻撃型ではない重力魔法の使い手であるリズリーさんだけはネックだったけど、運良く彼女の参加は避けられた。あとはできるだけ早くカナさんが合流してくれることを祈るだけ。
「できることなら先にカナさんが出てほしい・・・」
「そうね。いくらジュビアといえど・・・」
「完璧に回避し続けられるかはわかりませんからね」
時折彼女の身体にダメージを与えてくる相手がいる。大半は属性的な問題だったりするからその点は大丈夫だと思うけど、カグラさんがいるからな。万が一を避けるためにカナさんが先に放出になってほしい。
「ネコパンチ!!」
「効きません!!」
遠距離型の攻撃がないミリアーナさんはとにかく手数でジュビアさんを圧倒するしかないと考えたのか、とにかく攻撃を繰り出してはいくもののジュビアさんには一ミリのダメージもない。それどころかさすがは元幽鬼の支配者のエレメント4というべきか、小さいながらも着実にダメージを与えている。
「この調子ならいけるはず・・・」
レオンside
完全にペースを握っているのは妖精の尻尾。恐らく戦略通りに進めているのであろうジュビア姉には余裕が見て取れた。
「さすが俺のジュビアだ、いい戦い方をするな」
「え?」
「まだ諦めてなかったんですか?」
隣でボケなのかマジなのかわからないことを言っているリオンくんに俺とサクラが突っ込みを入れるが彼は気にした素振りもない。そろそろ諦めた方がいいとは思うが・・・言わない方がいいか。
「どう?レオン」
「もし先にカナさんが出たら、妖精の尻尾の勝ちは確実だね」
恐らくジュラさん以上のパワーをMPFで見せつけた妖精の輝きで決めるのが戦略のはず。ジュビア姉を先に仕留めない限り、彼女の魔法を防ぐ手立てはないはずだ。
「でもカグラが先に出たらどうなんだよ」
「いや・・・恐らくそれも問題ないだろう」
ユウカさんの疑問にリオンくんが答える。それには俺も同意見だ。なぜならカグラさんもミリアーナさん同様にジュビア姉の水の身体にダメージを与えることができない物理型の魔導士だからだ。つまりよほどの何かが起きない限り、カナさんが出てくるまでの時間を稼ぐことはできる。
「この戦略なら妖精の尻尾に負けはないな」
「マーメイドが勝ってたら荒れそうだったけどなぁ」
競技パートを何食わぬ顔でソフィアが一位抜けしているため、ここで人魚の踵が勝つと一位で一日目を終えることになる。昨年は最後までいい位置に残っていたものの、最後まで一位に躍り出ることができなかった彼女たちがいきなりそれを叶えるとこの大会の流れが一気に変わるかと思ったが・・・この戦略を相手にしては難しいか。
「やっぱりすごいよ、シリルは」
恐らくこれを考えたのはシリルだろう。魔力もあり魔法の種類も豊富な上にあいつは頭もいい。ここまで万能型の魔導士は他にいないはずだ。
「それでも勝つのは俺だけどな」
ただ、それで諦めるようなことはあり得ない。あいつの知略もこちらは覆せるだけの力がある。この大会のどこかで必ずぶつかるであろうあいつを倒すのは・・・俺だ!!
第三者side
みるみる減っていく残り時間。それを見つめている仮面の魔導士たちは感心したように話をしていた。
「うまい戦い方をするわね」
「これなら少なくとも、あの子達の負けはないわ」
多くの実力者たちは彼女たちの狙いに気が付いていた。そしてそれは彼らも当然ながら該当しており、その場にいるメンバーたちは楽しそうにしている。
「妖精三大魔法か・・・非常に興味深いな」
「そうね。あとから一気に試合を決めようとしていると考えると、相当自信のある技なんでしょうし」
大男と長い髪の女は話でしか聞いたことがない魔法がどれほどのものなのか、気になって仕方がない。だが、その隣にいるもう一人の女性はご機嫌斜めだ。
「気に入らない」
「何が?」
「あいつがだよ」
彼女の視線の先にいるのは水色の髪をした少年。恐らく今フィールドで戦っている二人に戦略を託したであろう彼は安心しきった様子で試合を見ているため、その表情が気に入らなかったらしい。
「あの子に負けた時のこと、思い出しちゃう感じ?」
「うるさい!!」
図星を突かれたことで苛立ちを押さえられなくなった女性は怒声をあげ、それを浴びたもう一人の女性は楽しそうに笑っている。
「・・・」
「どうした?」
そんな中、一番後ろでこの戦いを見つめていた男・・・先ほど妖精の尻尾の最強候補二人を倒したその人物は何も話すことなくただ試合を見つめている。
「・・・何も」
「そういうことにしておいてやる」
明らかに何かを考えていたのはわかったが、答えないのならと追求することはしない青年。沸き上がる会場の中、その男は一人ただ静かに試合を見つめ、そして笑みを浮かべる。
「やはりお前は面白いな」
誰も思い付かないような戦法を繰り出してくる相手。それを見て自身の最大のライバルのことを思い出しながら、彼は少年の方へと視線を向け、その場から離れていこうとする。
「どこに行く?」
「用事ができた」
「今?」
「あぁ」
彼がどこかにいこうとしていることに気がついた面々は声をかけるが、彼はそれを軽くあしらいあるところへと歩を進めていく。
「予定変更だ。明日のバトル内容を変更させよう」
彼の頭の中にはすでに構図が出来上がっていた。それを実現するため、彼はそれを成せる人物の元へと向かっている。
「まだ力は及ばないが、あのルールならいい試合ができるかもしれん」
そう呟いた男は不敵な笑みを浮かべ、歩く速度をあげるのだった。
シリルside
まもなく次の魔導士が試合へと参加できる時間になる。そのため俺たちのいる待機場所は緊張感に包まれていた。
「ここまでは予定通りね」
「問題はここからですよ」
「お願い!!カナを先に出して」
隣にいる三人の祈るような声。それは当然俺もなんだけど、もうなるようにしかならないと割り切っているところもあるのが我ながら不思議だ。
そして運命の時、檻から解放されたのは・・・
『カナです!!フェアリーガールズのカナが放出されました!!』
これを受け俺とウェンディはハイタッチをする。完全に流れを掴んでいることは言うまでもない。そしてここから・・・
「ジュビア!!退いて!!」
「はい!!」
「ミャア!?」
魔力を溜めるまでのわずかな時間をジュビアさんが稼いだところですぐさま背後からカナさんが走り出す。完全に目の前の相手に気を取られていたミリアーナさんはカナさんの接近に反応が遅れていた。そしてーーー
「妖精の輝き!!」
「ミャアアアアアアアアア!!」
カナさんの一撃必殺が見事に彼女を捉えた。
『ミリアーナダウン!!これにより人魚の踵のカグラが放出されます!!』
最後の解放タイムを待つことなく檻から解放されるカグラさん。2対1の上に残り時間を考えても引き分けまで持ち込むのは厳しい展開。それなのに、彼女は一切取り乱す様子は見受けられなかった。
カグラside
会場を飲み込まんばかりの歓声。それに呼応するように目の前にいる二人も流れを掴んでいることを理解しているようで、表情に余裕が見て取れた。
「やれやれ・・・」
思わずタメ息が漏れ出てしまう。様々な感情が入り交じっているからこその行動ではあるが、それには誰も気が付いていないようだった。
「ナメられたものだな、私も」
このバトルパート、てっきりシリルが出てくるものだとばかり考えていた。だが、蓋を開けてみれば実際には全く違う二人。彼女たちも十分に強いのだが、私は大した脅威は感じていなかった。
「本当はあの時の借りを返してやろうと思っていたが・・・」
たまたま訪れたマーガレットの街で行われていた祭り。それの最後の勝者を決める戦いでとっておきの戦法を使ってきた相手との再戦を心待ちにしていたため、如何せん物足りないがそうは言っていられない。
「成長した私の力も見せておくか」
恐らくこの組み合わせの関係から、最終日までシリルと戦うことはもうないだろう。しかし逆に言えばリベンジのチャンスはあとたったの一度だけ。それならば、彼女に私と戦いたいと思わせる必要がある。
それを踏まえ、私は鞘に納めている刀を強く握り締めながら呼吸を整えていた。
レオンside
「これは決まったな」
「そうだね」
「ですね」
想定通りの展開になっている闘技場。それを受け、リオンくんたちはすでに試合への関心が薄れているようにも見えた。
「まぁ・・・いくらカグラさんでもここからじゃ厳しいか」
その気持ちもわからないではないと俺も思う。カグラさんは確かに強いけど、今この場を支配しているのはどう見てもジュビア姉とカナさんだ。そもそも、ジュビア姉に彼女の攻撃が通用しないであろうことを考えると良くて引き分けなのが見るまでもなくわかる。
「カナさん」
「わかってるよ」
そしてここでもジュビア姉が先頭に入りカナさんが魔力を溜める。彼女が魔法を発動するまでの時間はほんの数秒であろうことから、試合が決するまでも数秒になるだろう。そう思っていた。しかし、ここから流れが一気に変わることを俺は・・・いや、恐らくこの場にいた全員が予想することなどできるわけもなかった。
シリルside
ダッ
真っ先に動いたのはカグラさん。それはそうだろう、カナさんが妖精の輝きを発動するまでにはわずかな間が生まれる。強力な魔法のためこれは仕方ないが、今回はタッグバトル。彼女にたどり着く前に水色の髪の女性が立ち塞がっているのだ。
「水流昇霞!!」
迫ってくるカグラさんへと攻撃を放つジュビアさん。しかし、ここで予想外の出来事が起こる。
「ふっ」
刀でそれを切り裂きながら前へと進むカグラさん。これは想像できた、彼女ならやりかねないだろうということくらい。だが、問題はここから。
「キャッ!!」
突然ジュビアさんの頭上に魔法陣が浮かび上がったかと思うと、それにより彼女がバランスを崩し・・・いや、まるで地面に押されるように崩れ落ちてしまったのだ。
「え!?」
「何あれ!?」
「どういうこと!?」
意味がわからず変な声が出てしまった俺たち。その隣でルーシィさんが何かを思い出したかのように声を出した。
「そういえばカグラって重力の魔法が使えたはずじゃ・・・」
「「「あ!!」」」
普段なかなか使っている様子がないため忘れていたが、リズリーさんの重力魔法はそもそも彼女が教えたもの。つまりカグラさんも重力魔法を使うことができるってことか!!
「悪いな」
強力な重力魔法により立ち上がることができないジュビアさん。しかもそのせいで彼女の水の身体がうまく機能しなかったらしく、カグラさんからの一撃を受けたジュビアさんはそのあまりの衝撃に気絶してしまった。
「まずいですよ!!」
「ううん。そうでもないわ」
俺が忘れていたせいで形勢が逆転しかねない展開に陥る。だが、運がいいことにカナさんが魔力を溜めきっていたようでそのまま向かってくるカグラさんに飛び掛かっていた。
「妖精の輝き!!」
「怨刀・不倶戴天!!」
一度攻撃をしていたカグラさんよりもこの一撃のために準備していたカナさんの方が先に魔法を打ち出すことができた。カグラさんも負けじと技を繰り出そうとしているけど、これならなんとか押し込めるはず!!
「人魚の型!!」
覆せるわけがないと思っていた勝敗。しかし、カグラさんのその一撃はカナさんの最強の一撃を打ち払った。
「なっ・・・」
そのまま彼女の一撃を受けるカナさん。その衝撃は大きいと思ったけど、彼女はなんとか立ち上がろうとして・・・
「くそっ・・・」
起き上がれず、その場に倒れ込んでしまった。
『勝負あり!!勝者!!人魚の踵!!』
絶対にできないと思われた逆転劇。しかしそれをものの数秒でやってのけた剣士はこちらへと視線を向け、ニヤリと微笑んでくる。
「くっ・・・」
あのお祭りでの敗戦のことを根に持っているのだろう。それで俺に対しての挑発も兼ねてこんなことをしてきているのはわかっている。わかっているけど・・・
「受けて立つ・・・!!」
それにあえて乗ってやる。この大会の最中彼女とどこかと戦うのは間違いないだろう。だったらその時、今回の策を看破されたこともまとめて倒してみせる!!そう決意を固め、俺たちの一日目は終わるのだった。
一日目順位
一位 人魚の踵 20P
二位 剣咬の虎 18P
三位 狩猟豹の頭 14P
四位 青い天馬 11P
五位 四つ首の番犬 6P
六位 妖精の尻尾B 3P
七位 蛇姫の鱗 2P
八位 妖精の尻尾A 0P
後書き
いかがだったでしょうか。
これにて無事に一日目終了です。
次の話でいきなり二日目に入るか少し遊ぶかは未定ですが気長に読んでくれると嬉しいです(*・ω・)
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