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Fate/WizarDragonknight

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前書き
さて……さて…… 

 
 爆発。
 聖杯が安置されている聖杯の間を吹き飛ばし、ウィザード達は元の荒野に投げ出された。
 殺風景な場所で転がったウィザードたちは、じりじりと歩み寄ってくるアマダムを見上げる。
 彼の破壊された右腕が、聖杯によって真新しいものに付け替えられていた。
 灰色だったアマダムの体とは変わり、金色の腕となったそれは、アマダムの他の部分とは異なり、凶悪な爪が飛び出ている。

「流石、運営側のサーヴァントだけあって、滅茶苦茶じゃねえか?」

 真っ先に起き上がったビーストはダイスサーベルを回転させた。

『5 ドルフィン セイバーストライク』
「コネ持ってる奴は、違えなァ!」

 五体の紫のイルカの幻影が、地面を泳ぎながらアマダムへ迫る。
 だが、その全てをアマダムの爪が切り裂く。
 そのまま、大きく空を割いた斬撃は、ビーストの体を切り飛ばし、変身を解除させて転がす。

「コウスケ! このぉ!」
「ふん」
『アタックライド スラッシュ』

 龍騎とディケイドは同時に斬撃を放つ。
 だが、アマダムはあっさりとジャンプと同時に回避。

「温いわァ! リングも、カードも! お前たちの力、全部吸い尽くしてやる!」

 その頭上から、爪で切り裂き、龍騎とディケイドを変身解除まで追い込んだ。

「だああああああああああっ!」
「うおりゃあああああああッ!」
「やああああああああああっ!」

 可奈美、響、友奈。
 それぞれ三方向から攻め入る彼女たち。
 だが。

「残念無念! 小娘どもォ!」

 響と友奈の拳を受け止め、そのまま蹴りで可奈美の千鳥を受け止める。そのまま飛び上がることで、バランスを崩した三人。

「お前たちも、この炎の十字架の例外ではないわァ!」

 頭上から光の弾を放つアマダム。一気に霧散したそれは、可奈美たちの足場に着弾、地面が大きく爆発していく。

「「「うわああああああッ!」」」

 可奈美、響、友奈の三人はそれぞれ大きく宙を舞う。

「みんなっ!」
「案ずるなウィザード。次はお前だ」

 金色に輝く爪を向けながら、アマダムは宣言する。
 ウィザードはルビーとサファイアの指輪を入れかえながら、駆け出した。

『ウォーター プリーズ スイ~スイ~スイ~スイ~』

 魔力に秀でた水のウィザード。
 水のウィザードは、アマダムの爪を避け、魔法を発動させた。

『ライト プリーズ』

 突然、アマダムの目を潰す光。
 だが、アマダムにそんなこけおどしは通用しない。
 頭部を覆った甲冑は、そのままアマダムの視界を刺す光を遮り、ウィザードの体に刃を突き付ける。

『リキッド プリーズ』

 だが、それに対応するのは水のウィザード最大の特色である魔法。
 体を液状化させることで、爪の攻撃を無力化するが。

「無駄ァ!」

 アマダムの全身が眩く発光。
 光に含まれる熱により、水のウィザードは一気に吹き飛ばされてしまう。

「ぐっ……だったら……!」
『ハリケーン プリーズ フー フー フーフー フーフー』

 風の力を纏ったエメラルドの指輪。風属性となったウィザードは、一気に上昇。ヒットアンドアウェイ戦法で、アマダムへ攻撃を繰り返していく。
 だが。

「アイキャンフライ!」

 アマダムは両足を揃えてジャンプし、すぐに風のウィザードに接敵。

「速……!」
「お前が遅いんじゃい!」

 ソードガンの反撃も抑え、かかと落としでウィザードは空中から突き落とされた。

「ライダーキック!」

 ウィザードが地面に叩きつけられると同時に、アマダムの追撃が迫る。
 ウィザードやディケイド、龍騎。
 その仮面ライダーと呼ばれる者の系譜を最初に作り上げた者と同じ、風の蹴りである。

『ランド プリーズ ド ド ド ド ド ドン ドン ド ド ドン』

 その脅威を前に、ウィザードは急いで土のウィザードへ変化。

『ディフェンド プリーズ』

 防御力に秀でる形態と魔法。
 だがその組み合わせをもってしても、アマダムの攻撃を防ぎ切ることはできない。
 アマダムの飛び蹴りは、土の壁を紙のように破り、そのままウィザードにも直撃。
 吹き飛んだウィザードは変身を解除するまでに追い詰められていった。

「ぐあっ……!」

 さらに、残った指輪___変身用のウィザードリングも、地面に散らばっていく。
 それを拾い上げるアマダム。

「ウィザードには恨みがある。お前で晴らさせてもらおう」
「な……に……?」

 起き上がりながら、ハルトはアマダムを睨む。
 にやりと笑みを浮かべるアマダムは、その手に指輪___ハルトから奪ったルビーの指輪を見せつけた。

「教えてやろう……ウィザードリングの本当の使い方を」

 そして。

「出でよウィザード」

 ルビーの指輪に輝きが始まる。ハルトにとっても馴染みの深い、フレイムスタイルの輝き。
 その魔法陣が自分以外の者が発生させるのを、ハルトは初めて見た。
 見慣れた、変身の時の魔法陣が、アマダムの前に出現。
 やがて、魔法陣が人の形となり、質量を持っていく。

「まさか」

 そんなことはありえない。だが、実際に起こってしまった。
 魔法陣は、ウィザードフレイムスタイルその人となってしまったのだ。
 さらに、そのウィザードを中心とするように、水、風、土のウィザードも現れる。
 四体のウィザードが、それぞれ並び立ったのだった。

「な……に……!?」
「そんな……っ! ウィザードが……敵……!?」

 可奈美も、驚きの表情を隠せない。
 一方、笑みを絶やさないアマダムは、フレイムスタイルのウィザードの顎を撫でた。

「どうだ? 昨日までの自分が敵になる気分は? なかなかない経験だと思うぞ?」
「お前……どうして?」
「言っただろう? クロスオブファイアと。貴様が持つ力は、内に眠る怪人(ファントム)の力だろう? ならば、本来あるように、人類を脅かす脅威として使うのが筋というもの」

 アマダムはそう言って、号令をかけた。

「さあ……やれ! ウィザードたちよ!」

 すると、四人のウィザードは、それぞれ手にしたウィザーソードガンで襲い掛かる。特に、サブの三形態は背後の仲間たちを狙うものの、フレイムスタイルはハルトへ襲い掛かってくる。

「!」

 全ての指輪を奪われたハルトに、ウィザードへ対抗する手段はない。
 必死に銀の剣を避けるが、蹴りが胸元に炸裂する。

「うっ……!」
「ハルトさん!」

 ハルトへトドメを刺そうとするフレイムスタイル。そのウィザーソードガンを、割り込んできた可奈美が千鳥で受け止めた。

「可奈美ちゃん!」
「大丈夫。こんな偽物……ハルトさんの剣に比べたら、何も伝わってこないよ!」

 そう言って、可奈美はフレイムスタイルと切り結ぶ。
 何度も音が響いてくるが、ハルトには援護に行くことさえ出来ない。
 魔力が抜かれたハルトの体は、体力も多く奪い去っており、立ち上ることすら難しかった。
 残り三体のウィザードたちも、それぞれ戦いを開始している。

「このっ!」

 ウォータースタイルは龍騎、友奈と。

「ふん」

 ハリケーンスタイルはディケイドと。

「ハルト! 逃げろ!」

 ランドスタイルはビースト、響と。
 それぞれ火花を散らしていく。
 だが四体のウィザードたちがコピーしたのは外見だけではなかった。それぞれがバラバラの動きで指輪を取り出し、発動させる。

『ビッグ プリーズ』
『リキッド プリーズ』
『バインド プリーズ』
『ディフェンド プリーズ』

 可奈美を巨大な腕が弾き飛ばし。
 液体の体となって龍騎と友奈を打ち倒し。
 風の鎖がディケイドの動きを阻害し。
 土の壁がビーストと響の攻撃を防いだ。

「そんな……!」

 自らの姿が、仲間たちをどんどん追い詰めていく。
 その事実に、ハルトは目を伏せる。
 だが、すぐさま可奈美の悲鳴に顔を上げた。
 そして飛び込んできた光景に、ハルトは目を疑った。
 フレイムスタイルのウィザードに、可奈美が膝を折っている。
 これまで可奈美とは、何度も戦闘を繰り返してきた。剣という戦いの領域では、可奈美に太刀打ちすることは困難だった。
 それなのに、自分が入っていない偽物のウィザードが、可奈美を倒している。

「我が作り上げたウィザード達には、我の力で能力も底上げ済みじゃ……どうやら、そこの小娘程度では、相手にもならないようじゃ……」

 アマダムは余裕の表情を浮かべながら、可奈美に歩み寄っていく。

「このっ!」

 苦し紛れの可奈美の斬撃を、アマダムは手首を掴むことで防ぎ、そのまま首を絞め上げる。

「う……ぐっ……」
「可奈美ちゃん!」

 徐々に彼女の身体から力が抜けていく。逆に、アマダムが可奈美を持ち上げる力が強まっていく。可奈美の足が地面から離れ、蹴りで抵抗するが、アマダムには全く効果がない。

「可奈美ちゃん! うっ!」

 再びフレイムスタイルがハルトへ牙を向く。
 腹を蹴り、膝打ちで地面に突き落とす。さらに、その背中を強く踏みつけてきた。

「か……はっ……!」

 背中から圧迫するウィザードの足。だが、地面との挟み撃ちになりながらも、ハルトは可奈美へ手を伸ばす。だが、全身の傷と、ウィザードフレイムスタイルのせいで、これ以上動けない。
 そうしている間にも、可奈美はどんどん吐く息が細くなっていく。バタバタと動かす足も、だんだん弱っていく。

「ぬわっはははははは! いい! これはいい! ウィザードが苦悶の表情でおじゃる!」
「や……め……ろ……! アマダム……!」

 可奈美の顔が、どんどん弱っていく。薄ら目になりながらも、ハルトへ手を伸ばしてきた。
 向けた手は遥か遠く、とても届かない。

「やめろ……! やめろ……!」
「絶望しろウィザード。その苦痛の顔を、もっと我に見せておくれ!」
「あ……っ がっ……」

 アマダムが、可奈美の首をどんどん持ち上げていく。
 苦悶の声を漏らす可奈美。アマダムを蹴って抵抗する足から、だんだんと力が抜けていく。その手から千鳥が零れ、甲高い音が響いた。

 そして。

 黒い目が、赤く光った。

「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 赤い、何か(・・)が、地上を走った。

 指輪のない、生身のハルト。
 その全身より、赤いオーラが放たれる。
 それは、背中に乗るフレイムを放り投げ、誰もが戦いを中断させ、大きく後退させるほどのものであった。

「な、何だ?」

 おちゃらけた口調をなくしたアマダムもこちらを凝視している。
 その中で、ハルトはゆらりと立ち上がった。
 そのオーラと同じ色調の文様が、ハルトの顔に浮かび上がる。
 それを見て、可奈美は薄ら目を大きく開き、アマダムは口をガタガタと震わせる。

「まさか……貴様……!」



「うおおおおおおおおアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」



 ハルトの咆哮。そして、変わっていく。
 人間の、道具の使用に特化した手が、爪が伸び、狩りを目的とした剛腕に。
 足が、直立歩行のものより、膝を落とし、重量を支えることを目的とした柱に。
 背中を突き破る、雄々しくも美しい翼と、その下にともに現れる尾。
 そしてハルトの顔は、人間の平べったいものより徐々に尖り始めていく。口は伸び、目は吊り上がり、そしてその頭部には角が生えてくる。変わった頭部を支えるように、その首は長く伸びていく。

「ラアアアアアアアアアッ!」

 それはまさに、神話の時代より蘇ったドラゴン。
 その正体は。

「ウィザード……貴様まさか、ファントムそのものだったというのか……!?」
「ハルトさんが……ファントム……?」

 可奈美が細目で呟く。だが、締め上げる首により、やがてその体がだらんと力を失った。
 そしてファントムは……ハルトは……

「ええいっ! だが、所詮はファントム! 一体増えたところで、こちらにはウィザードがいる! やれ!」

 アマダムの命令に従い、フレイムスタイルのウィザードは即座に魔法を発動させた。

『チョーイイネ キックストライク サイコー』

 ハルトが、数多くのファントムを屠って来た炎のキックストライク。
 足元に赤い魔法陣を浮かべて放たれる、ストライクウィザード。これまでの実績から、それはハルトが変身したファントムを一撃で葬ることが出来るだろう。
 だが。
 ハルトだったファントムの背中の突起が、赤く輝く。あたかも火山が噴火するように、熱エネルギーを溜めていくそれは、やがてそのドラゴンの口元にも熱エネルギーが溜まっていく。
 そして、口から直線状に放たれるのは、熱エネルギーを直線にした光線。
 それは、ストライクウィザードごと、火のウィザードを爆発させる。
 爆炎の中から零れ落ちる、ルビーのウィザードリング。
 だが、ハルト(ファントム)はその回収よりも先に、残りのウィザードたちを蹴散らすことを優先した。
 赤い双眸が、向かってくる三人のウィザードを捉える。
 その足が、地面を砕き。
 雄々しき尾が、その体を支える(アンカー)となり。
 再び、背中の突起が赤い光を放つ。すると、周囲の大気がその熱によって揺らぎ、ハルト(ファントム)が立つ地表が溶けだしていく。
 そして。
 放たれる放射熱線。それは三人のウィザードを一瞬で飲み込み、蒸発。もとの指輪に戻してしまう。
 次の狙いは、アマダム本体。

「があああああああああああああああああああああああッ!」

 ゆっくりと振り向いたハルト(ファントム)は、咆哮を上げる。

「がはっ!」

 胸を貫いた、アマダムの槍。
 すると、徐々にそこからハルト(ファントム)の力が抜けていく。やがて、人間の姿に戻ったハルトは、理解した。

「これ……まさか……!」

 さっき言っていた、力の根源(クロスオブファイア)
 それを抜き取る力が、この槍にもあるのだと、ハルトは理解する。

「よい、よいぞよいぞウィザード!」

 アマダムは怪物の姿から人間態になり、顔を近づける。

「仲間に隠し、自分に隠してきた化け物だったというわけだな、お前は!」

 挑発するように舌を出し、大きく笑みを露わにするアマダム。

「さあ、このまま惨めに消え去るがいい、ウィザード!」

 そして、アマダムの右手に光の弾が生成されていく。ゼロ距離でぶつけようと、徐々に大きくなっていくそれ。

「どうかな」

 だが。
 赤い眼(・・・)のハルトは、にやりと笑みを浮かべていた。
 そして、左右に破れていく上着。露わになった、ハルトの背中には。
 ファントムとしてのハルトの背にあった、背びれの突起が生えていた。

「お前……ファントムの力を、部分的に……!」
「もう遅い!」

 すでに背の突起はチャージを終え、ハルトの口には、炎はすでに溜まりきっている。
 ハルトが叫ぶと同時に、赤い熱線が発射。それは、アマダムの体を大きく後退させ、そのまま壁に激突させた。

「はあ、はあ……」

 膝を折ったハルトは、肩に突き刺さったままの槍の先端を抜き捨てる。口を拭い、冷静にアマダムの現状を見据えていた。

「倒しきれないか……」

 爆炎の中に、むっくりと起き上がるアマダムの姿が見える。

「ぐぐ……驚いたぞ、ウィザード」

 アマダムは、あちらこちらに大きなダメージを負っていた。怪人態の姿は破壊し尽くされ、人間態になりつつも、その纏っていたローブもボロボロになっている。
 念動力により、落ちていたウィザードリングを回収したアマダムは、大きく叫んだ。

「人間を守る仮面ライダーのお前が! 人間を滅ぼす悪だったということだな!」
「……」

 ハルトは何も答えない。
 やがて静かに、熱さが残る口元を拭った。

「仮面ライダーってのは知らないけど……人間を滅ぼす悪ってのは、まあそうだね」
「認めるのか! これぞまさにクロスオブファイア! 貴様の力は悪の力! 永遠の十字架を背負った悪の化身!」

 アマダムは笑みを絶やさぬまま、手を広げる。
 すると、彼の背後に銀色のオーロラが現れた。

「また会おうウィザード。我が下僕(しもべ)になるなら、歓迎するぞ」
「好きに言ってなよ」

 ハルトは吐き捨てた。
 やがて、アマダムの姿はオーロラに消えていく。
 敵がいなくなったところで、ハルトは後ろを振り向いた。
 咳き込みながら、友奈に肩を借りている可奈美。茫然としているコウスケと響。
 そして、何も珍しくないと言いたげな表情をしている士。

「ハルト……お前……」

 そして駆け寄ろうとしてきたのは、真司。
 彼はハルトの肩を叩こうと手を伸ばすが、ハルトはその手を払いのけた。

「ハルト……?」
「……ごめん」
「ごめんって……何謝ってるんだよ?」

 だが、ハルトは何も言わない。
 真司は続けた。

「なあ? お前ももう大丈夫だろ? もう帰ろうぜ?」

 もう、誰の言葉も聞きたくない。
 ハルトは、静かに真司を___そして、皆を見返す。
 静かにファントムの力を足にためたハルトは。

「ごめんね。皆」

 膝を曲げる。
 すると、一部だけファントムになったハルトは、そのジャンプ力で、その場を大きく離れていく。

「ハルトさん……」

 それを見て、可奈美は友奈から離れる。
 ふらふらになりながら真司のところまで足を進め。
 そして、彼女の声だけが、離れていくハルトの耳に残った。

「ハルトさああああああああああああん!」 
 

 
後書き
伏線は各章に張ってあります 
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