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Fate/WizarDragonknight

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クロスオブファイア

 
前書き
とうとう、この一連の話を投稿するときが来たか…… 

 
「ハルト……逃げろ!」

 ドラグセイバーを向け、少しふらつきながら、龍騎はウィザードへ斬りかかって来た。
 ウィザードはウィザーソードガンで受け止め、龍騎へ訴える。

「真司! しっかりして!」
「ダメだハルト! 体が……いうことを聞かない!」

 龍騎はドラグセイバーを振り上げる。
 ウィザードは龍騎の手首を掴み、ドラグセイバーの動きを止める。

「こんなの……どうすれば……!?」
「ぬほほほほほほ!」

 怪人態のアマダムは、手を大きく叩いた。

「僕ちゃんはルーラー! つまり統制者! さっきも言ったでしょウィザード。他のサーヴァントなんて、僕ちゃんのいう通り!」
「これが、全員分あるのか……!」
「そのとーり! ほーれほーれ! これ、参加者全員分の令呪! これがあるから、サーヴァントはみーんな、僕ちゃんの思いのままだよ!」
「ディケイドにアッサリ破られたのは例外なだけで、その能力自体は本物なのか……!」
「ねえ、令呪で命令されているってことは、令呪で命令すれば止まるんじゃない?」

 離れたところで、可奈美は友奈の拳を受け流しながら、自身の令呪を見下ろす。
 彼女の友奈への令呪。それは、友奈召喚の際に詠唱の代わりに消費され、残り二画。
 ビーストが持つ令呪。ラ・ムーや邪神イリスへの切札として使用され、残り一画。
 つまり。

「だったら、俺が試してみる!」

 ウィザードはそう言って、ウィザーソードガンを左手に持ち替える。
 握った右手を突き上げ、その手に刻まれる令呪が赤く光り出す。
 召喚手順も正式な呪文を経ており、一度として龍騎に令呪を使った命令をしたことがないウィザードには、まだ三画の令呪が残っている。

「頼む、真司……正気に戻ってくれ!」

 それは、令呪を使った命令。ウィザードの手に刻まれる龍騎の紋章、その一画が赤い輝きを放っていく。
 だが。

「無駄無駄無駄無駄じゃァ!」

 アマダムが叫ぶ。
 すると、まるで令呪からの繋がりを拒絶するように、赤い光が掻き消えてしまった。

「えっ!?」
「こっちは聖杯戦争の統制者! そっちはただの参加者! 運営の方が偉いこれ常識!」
「ハルト! 逃げろ!」

 いつの間にドラグクローを装備したのだろう。
 ドラグクローの口に炎を溜め、放つ龍騎。
 ウィザードは回避するが、その目の前に、龍騎がドラグクローを投げつけてきた。

「!」

 思わぬ障害物に、ウィザードは足を止める。
 だが、そうして動きが止まったウィザードへ、龍騎のドラグセイバーが容赦なく斬りつけられた。

「ぐっ!」
「ハルト! 大丈夫か!?」
「攻撃している相手に心配されるのすっごい変な気分なんだけど」

 ウィザードそう言って、龍騎の腕を受け止める。その中、他の仲間たちの様子も盗み見た。

「友奈ちゃん! 目を覚まして!」

 友奈の徒手空拳を全て避け切る可奈美。
 千鳥で友奈を傷付けてしまわないように気を付けながら、時折その拳を素手で受け流している。

「ごめん可奈美ちゃん! あ、次は回し蹴りだ!」
「うん!」

 友奈は、自らの身体の動きを前もって可奈美に伝えている。可奈美の反射神経や素早さも相まって、あの状態であれば、可奈美が被弾する心配はないだろう。
 一方のランサー組は。

「大丈夫? コウスケさん、近くにいるよね?」

 不安そうな響。
 一見、彼女の周辺には、マスターであるビーストの姿がない。
 だが、時折意図的響の装甲が、最低限の火花を上げている。
 カメレオンの指輪を使って気配を消し、響が別のところに加勢しようとするところで、ビーストがわざと攻撃し、響の行動を抑えているのだろう。

「妙にクレバーな戦術やってるなアイツ」
「ハルト、こっちを見ろ!」

 龍騎が叫ぶ。
 ウィザードはドラグセイバーを避け、大きくジャンプ。
 さらに、攻撃の手を緩める気配のない龍騎へ、魔法を発動した。

「少し、大人しくしていて!」
『バインド プリーズ』

 放たれた鎖が、龍騎の手足を縛り上げる。
 さらに、そのままウィザードはバインドの力を強める。最初はそれでも動こうとしていた龍騎だったが、鎖が増えていく毎にどんどんやがて動きが収まっていった。

「うっ……よし、いいぞハルト! そのまま俺を抑えておいてくれ!」
「自分で言うなら頼むから少しじっとしていてよ……!」

 ウィザードはそう釘を刺し、アマダムへ挑みかかる。
 だが。

「ぬほほほほーい! やれ!」
「わわっ!」
「体が勝手にッ!?」

 アマダムの命令に、それぞれのマスターと戦っていた響と友奈が突然足を方向転換する。
 即座にウィザードとアマダムの間に割って入り、それぞれ腰を低くしている。

「ハルトさん、危ない!」
「避けてッ!」
「うおっ!?」

 攻撃から回避へ。
 ウィザードは、背中を大きく反らし、二人の拳がウィザードの顎を掠める。

「やっぱりこの子たち、敵に回すと危ない……!」
『ディフェンド プリーズ』

 ウィザードが大急ぎで炎の防壁を作り上げるものの、炎の壁は二人の拳によって粉々に砕け散る。

「うわっ! いつもの勇者パンチになっちゃうよ!」
「自分の力が憎いッ!」

 友奈と響は、自らの拳を見下ろしながら、ウィザードへ拳を突き上げてくる。
 だが、その前に、紅い影が割り込む。

「友奈ちゃん響ちゃん、ごめん! 迅位斬!」

 紅い写シを纏った可奈美は、謝罪と同時に二人のサーヴァントを一薙ぎにする。
 床へ投げ出された二人を、即ビーストがカメレオンの舌で拘束する。

「っしゃあ! 響友奈! 動かないでくれよ!」
「うん!」
「ありがとうコウスケさんッ!」
「よし! 可奈美ちゃん、真司をお願い!」
「う、うん!」

 可奈美は頷いて、鎖で縛られている龍騎にしがみつく。
 同時に、ウィザードはバインドにかける魔力を解除し、次の一撃に魔力を込めた。

『チョーイイネ キックストライク サイコー』

 ウィザードの足元に、赤い魔法陣が浮かび上がる。
 両足を肩幅に開き、その右足に赤い炎の魔力が込められていく。

「だあああああああああああああああああああああああああっ!」

 放たれるストライクウィザード。
 それは、聖杯の前で静止しているアマダムへ直接叩き込まれた。
 彼が反射的に防御として出したのは、右腕。
 それは、無数の令呪が刻み込まれた右腕だった。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

 赤い炎とともに、徐々に押されていくアマダム。
 やがてストライクウィザードは、アマダムの右腕を爆発させる。令呪を右腕ごと掻き消したそれは、その効果をサーヴァントたちから解放した。

「腕が……腕があああああああああああああああ!」
「これで……真司たちを操ることはできない!」

 肩で呼吸しながら、ウィザードはアマダムを睨む。
 だが、発狂していたアマダムは、突然落ち着きを取り戻す。焦った動きをしていたのに、水を打ったように体を静止させた彼は、顔のみをもとの中年男性の姿に戻し、大きく口元を吊り上げた。

「それはどうかな? 所詮、借り物の力で戦っているお前たちが、根源である聖杯に敵うかな?」
「根源?」

 その言葉に、ウィザードは首を傾げる。
 体の自由を取り戻したサーヴァントたちも、可奈美、ビースト、再変身したディケイドとともにウィザードと並ぶ。

「おや? 知らないのぉ~? しょうがないなあ? 折角だし、お前たちの力全部、敵からの借り物の力だって、優しい優しい僕ちゃんが教えてやろうかな~?」
「何……!?」

 吟味するような目つきのアマダムは、一人一人睨んでいく。
 アマダムが顎を指で数回叩く。やがて、適当な手つきで「お前」と響を指さした。

「わ、わたしッ!?」
「シンフォギアシステム。聖遺物を用いるその力、同じく聖遺物であるソロモンの杖もまた、ノイズの力の根源と言っても過言ではないだろう?」
「そ、それは……」

 響がショックを受けたように目を反らす。
 さきほどまでのふざけた口調とは打って変わって、冷たく冷淡な言い方に、ウィザードは内心驚いていた。
 さらに、そのままアマダムは続ける。

「バーテックス。天の神より遣わされたそれは、神樹とよばれる神によって生まれる勇者とは何が違う? 結城友奈よ」
「ち……違う……よ」

 さらに、アマダムは可奈美にも口を開く。

「そもそも、珠鋼から御刀などを作り上げなければ、荒魂など生まれなかったのではないか? 御刀と荒魂は、いわば兄弟……なのだろう?」
「っ……!」

 真実を突いたアマダムの発言に、可奈美は唇を噛んだ。
 次の指は、龍騎へ。

「龍騎よ。そのカードデッキの力も、ミラーワールド由来の力関連全ても、神崎士郎が齎したものだろう?」
「正確には、唯衣ちゃんだけどな……」

 仮面の下では、きっと苦虫を嚙潰したような顔をしているだろう。
 アマダムは続ける。

「悪から派生した力……お前たちが持つ力の根源……これを……クロスオブファイアという」

 アマダムは両手の錫杖を交差させた。

「炎の十字架。悪から生まれたという、罪の証……」

 アマダムの顔が、再び怪人態へとなっていく。
 手にした錫杖を投げ捨て、聖杯の触手を全身に突き刺させながら、アマダムは左手を向けた。

「右腕の代わりに……お前たちの力も……全ての根源である聖杯側である我が……も~らおう」 
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