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蕾の少女

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第一章

                蕾の少女
 池田青空は明らかに普段と違っていた。
 毎日機嫌がよく空を舞う感じだった、それでだった。
 周りはそんな彼女を見てだ。ひそひそと話した。
「青空ちゃんおかしくない?」
「そうよね、最近ね」
「妙に機嫌がよくて」
「言葉も明るくて」
「いつもにこにことして」
「歩くのだってスキップしている感じで」
「一体何があったのかしら」
 まずは友人達が首を傾げさせた、そしてだった。
 彼女の両親もだ、小学五年で黒髪を左右でツインテールにしていて大きなはっきりとした目と小さなピンクの唇に大きな耳と白い肌を持つ学年の割に小柄な娘を見て話した。
「どうもな」
「ええ、最近青空様子が変ね」
「何かあったか?」
「絶対にね」
 夫婦で娘について話した。
「あったわ」
「そうだな、しかしな」
「問題はよ」
「その何かだな」
「あの、多分だけれど」
 母の翠は彼女の夫の修に話した、翠の背は一四五程で黒髪をおかっぱにしている童顔で丸眼鏡をかけていて肌は白い。よく見れば目は娘のものだ。
「あの娘誰かを好きになったわ」
「初恋か!?」
 夫はそう聞いて妻に応えた、背は一七〇位で痩せている。髪の毛は三十五歳だが前から次第にきている感じだ、細面でやや色黒で耳は娘のものだ。
「まさか」
「いや、そう言ってもね」
 妻は夫に話した。
「あの娘も十一になったでしょ」
「その歳事になるとか」
「女の子はね」
「そういえば成長期か」
「それに入って」 
 そうしてというのだ。
「身体つきも変わってきて」
「そうしたこともか」
「経験していくのよ」
「そうなんだな」
「そう、だからね」
 それでというのだ。
「あの娘だってよ」
「誰かを好きになってもか」
「恋愛感情を抱いてもね」
 そうなってもというのだ。
「不思議じゃないんだな」
「そうよ、だからね」
「青空もか」
「誰かを好きになってもおかしくないし」
「それでか」
「最近うきうきとしてるのは」
 それはというのだ。
「それかもね」
「そうなんだな」
「ええ、けれどね」
「けれど?」
「別に誰かを好きになってもいいでしょ」
 微笑んでだ、妻は夫にこうも言った。
「別に」
「それはな、家庭を持つ人でもないとな」
「こう言ったら何だけれど子供のすることでしょ」
 妻はこうも言った。
「そうでしょ」
「ああ、それはな」
 その通りだとだ、夫も答えた。
「やっぱりな」
「そうでしょ」
「ああ、本当にな」
「そう、所詮と言えば馬鹿にしているみたいだけれど」
「子供のすることか」
「そう、だからね」
 それでというのだ。 
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