Fate/WizarDragonknight
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二人の処刑人
「……ダメだね」
ディケイド激情態。本来のディケイドの目を歪めたその姿の彼は、じっとハルトとディエンドを睨んでいる。
ディエンドはやがて大きくため息を付いて続ける。
「こんな士じゃ、僕を満足させられないよ」
『ケッ! 言ってろ! アナザーパラドクス! メタルビルド! お前らも出番だ!』
コエムシの命令により、銀のオーロラがその背後に出現。
そして現れる、二人の処刑人。
それぞれ、ほとんどが黒一色で染め上げられた仮面ライダーたち。
何かのゲームのキャラクターのように、デフォルメされたような顔と造形をしているが、その一方、黒で構成されることにより、どこか心のない無機質さを醸し出す、アナザーパラドクス。
そして、まさに戦争兵器だと体現しているかのように、冷たい鋼鉄のボディを持つ、戦車の形を両目に付けた、メタルビルド。
「スリリングなゲームを始めようぜ」
「面白い。さあ、戦争だ」
ディケイドと合わせ、合計三人の処刑人たちは、各々の武器を構え、ディエンドへ飛び掛かる。
三人の猛攻をディエンドライバーで応戦しながら、ディエンドはカードを取り出した。
「こういうごちゃごちゃしてくるのはあまり好きじゃないんだ」
『カメンライド パラドクス グリス』
ディエンドがカードを読み込ませると、ディエンドライバーが別の仮面ライダーを召喚。
パラドクス、グリス。
それぞれ、処刑人たちと因縁のある相手である。
「士にはこれだね」
『カメンライド クウガ キバーラ』
そして、ディケイドの前に立つのは、また二人の仮面ライダー。
ディケイドも一度は変身して見せたことのある、赤い超古代の戦士、クウガ。それと、白いコウモリの女性の姿をした、キバーラ。
それぞれ、関係の深い相手と取っ組み合う。
幻影たちがそれぞれ戦っているのを見届けて、ディエンドは最後に新たなカードを使用する。
『アタックライド インビジブル』
「あとは任せたよ」
それは、透明化のカード。
見えなくなったディエンドは、足音もない。おそらく、戦線離脱したのだろう。
だがディエンドがいなくなっても、それぞれ三か所で格闘が繰り広げられれば、狭い教会の中など破壊されていく。
廃墟はより一層傷付いていく。座席は破壊され、柱は砕け、天井近くのパイプオルガンは落下する。
「ぐっ!」
パイプオルガンが大きな音を立てて落下する。
粉塵に顔を覆いながら、ハルトは顔を上げる。
合計七人の攻撃が容赦なく降り注ぐ中、ハルトは自らの指輪を持つコエムシを睨む。
『ハハッ! いいぜ! やれやれ!』
戦う仮面ライダーたちへ野次を飛ばしながら、コエムシは鑑賞している。近づくハルトには気付いていない。
完全に、コエムシの死角。
果たして、少しだけ首を傾けているキュゥべえは気付いているのだろうか。
『そこだ! やれ!』
気付いていない。
そう確信したハルトは、やがて様子を窺い、完全にコエムシが観戦にのめり込んだタイミングで動き出した。
「……今だっ!」
『なあっ!? オイコラウィザード! 何しやがる!?』
コエムシへ横殴りで指輪を奪い帰すハルト。突然の奇襲に対応できず、コエムシは慌てて指輪を抑えた。
「返せ! 俺の指輪!」
小さいのに、どこにこんな力があるんだと叫びたくなるほどの抵抗を見せるコエムシ。
『アタックライド スラッシュ』
そして、ここは戦場。
ディケイドが放った斬撃。クウガとキバーラを消滅させたその流れ弾も、容赦なくハルトたちを襲う。
『ぐわっ!』
爆風に煽られ、コエムシは吹き飛ぶ。さらに、それはアマダムにもおよび、彼が奪い取っていたルビーの指輪もまた吹き飛ぶ。
それにより、奪われた指輪が全て地面に散らばった。
ハルトはすぐに転がり、すぐそばに落ちた指輪を手にする。
「よし! コネクトだ!」
手にした指輪に笑みを零しながら、ハルトは回収したコネクトの指輪を右手に取り付ける。
『コネクト プリーズ』
発動した魔法により、まずはドライバーオンの指輪へ繋げる。
「おい、よそ見すんなよ」
だが、その背後には、いつの間にかアナザーパラドクスが回り込んでいた。
その手にしたゲーム機の形をした武器、バグバイザーⅡで斬りかかるが、ハルトはその手首を抑え、チェーンソーのようなその刃を防ぐ。
「ぐっ!」
「フン」
アナザーパラドクスは鼻で笑い、その腹を蹴り飛ばす。
無防備のまま、椅子を圧し潰したハルト。さらに、落ちたところには、すでにメタルビルドが足を蹴り上げて待っていた。
「死ね」
シンプルな一言を告げながら、戦車のように重い足を蹴り落とすメタルビルド。
ハルトは慌てて起きあがりながら、指輪を腰に当てた。
『ドライバーオン プリーズ』
ウィザードライバーを生成。
だが、いつの間にか因縁の敵の幻影を破壊した二人の処刑人は、明らかにハルトを抹殺対象にしている。
「処刑人が、一気に大勢攻めてくるなんて……」
『ここはオレ様たち運営の本拠地の一つだ。処刑人が山ほど待機しているなんて当然だろうが』
「ごもっとも……」
『コネクト プリーズ』
ハルトはすぐに、手にした指輪を発動。
あちらこちらに散らばった指輪を即座に回収。腰のホルスターに収めたところで、ハンドオーサーを動かした。
『シャバドゥビダッチヘンシーン シャバドゥビダッチヘンシーン』
ハルトがウィザードライバーを起動させると同時に、アナザーパラドクスがその武器に付いているAボタンを押し、前後を入れかえる。
『ガッチャーン……』
「これで……ゲームオーバーだ」
アナザーパラドクスはビームガンモードとなったそれを発砲。
ジャンプで避けると同時にハルトはルビーの指輪を左手に取り付ける。
「変身!」
『フレイム プリーズ』
空中で翻りながら、ハルトは魔法陣をくぐる。着地したときには、すでにウィザードへの変身を完了させていた。
『コネクト プリーズ』
再度発動した魔法。それは魔法陣からウィザーソードガンを___ラビットハウスにいる狂三の手から___回収した。
『チィ……変身を許しちまったか。今までお前の抹殺には散々失敗してきたが、そろそろ年貢の納め時だ! アナザーパラドクス! メタルビルド! 徹底的にやれ!』
コエムシの命令に、二人は、それぞれの武器___バグバイザーⅡとドリルクラッシャー___で、ウィザードに挑みかかる。
「ぐっ……!」
それぞれの攻撃をウィザーソードガンで受け流し、教会の真ん中に転がり込む。
だが、二人の処刑人の攻撃は止むことはない。
『ガッチャーン……』
「おいおい……まさかの難易度アップかよ? 面白くなりそうだ」
再びチェーンソーモードとなったバグバイザーⅡで斬りかかってくるアナザーパラドクス。ウィザードはウィザーソードガンで防ぎ、そのまま斬り合う。
だが。
「甘い」
「ぐあっ!?」
がら空きになっている背後から、メタルビルドのドリルクラッシャーがウィザードの背中を切り裂く。
散った火花とともにダメージにのけ反ったウィザードは、そのまま正面からメタルビルドのドリルによる突きを受ける。
より大きなダメージとともに吹き飛ばされたウィザード。すぐに起き上がりながら、メタルビルドを睨む。
「卑怯だぞ……」
「戦いに、卑怯も綺麗もない」
「いいねえアンタ。今回は最高のゲームになりそうだ」
メタルビルドの肩を叩くアナザーパラドクス。
そして、また襲い掛かってくる処刑人たち。
まともにやり合うのは不利。そう判断したウィザードは、まずはアナザーパラドクスのチェーンソーを受け止める。
「おいおい、そんなんじゃこのゲームには勝てないぜ?」
アナザーパラドクスは挑発する。
ウィザードはその言葉には耳を貸さず、蹴りでメタルビルドのドリルクラッシャーに対応する。
だが、数回蹴りによってドリルを反らされたメタルビルドは、やがてウィザードの体を直接貫こうとする。
「今しかない!」
ウィザードはドリルを見据えて、アナザーパラドクスのバグバイザーⅡをドリルクラッシャーへ受け流す。
二人の処刑人の武器が、それぞれぶつかり合う。反発し合い、弾かれた二人へ、即座に指輪を発動した。
「よし! 今だ!」
『ビッグ プリーズ』
威力よりも即効性の方が重要な局面。
そう判断したウィザードは、蹴りを巨大化させ、二人の処刑人をステンドグラス両隣の壁まで蹴り飛ばす。ある程度距離が開いたところで、ウィザーソードガンの手を開く。
『フレイム シューティングストライク』
炎の銃弾。起き上がろうとした二人の処刑人に対し、ウィザードはすぐに引き金を引いた。それは二体の処刑人を飲み込み、教会の外まで追い出していく。
だが。
「ぐあっ!」
背後からの斬撃に、ウィザードは倒れ込む。
襲ってきたのは、ディケイド。
「どうした? まだ終わっていないぞ」
そう。敵は処刑人たちだけではない。
洗脳されたディケイドが、ライドブッカーを撫でながらウィザードへ歩み寄っていく。
さらに、ウィザードが開けた穴の近くにはアマダムも控えている。処刑人たちも、シューティングストライクだけでは倒しきれていないだろう。
「これ以上は分が悪すぎる……撤退するしかない!」
そう判断したウィザードは、即動いた。
『ハリケーン プリーズ』
椅子を吹き飛ばす勢いの風を纏いながら、ウィザードはさらにエメラルド最大の魔法を発動する。
『チョーイイネ サンダー サイコー』
雷の魔法が、教会の内部を次々に雷撃。
土煙が教会の内側に充満していく中、ウィザードは緑の風を纏い、入口を通り、教会から飛び去って行った。
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