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FAIRYTAIL転生伝 ~ 黒き魔王は妖精と共に ~

作者:ラドゥ
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第八話『豹変した友との決別』

 
前書き
更新です。


変なところがあったらごめんなさい。


それではどうぞ。 

 



「ユウト!?」



自らが監禁されていた部屋を出て仲間の元に駆けつけようと走りだそうとしていた俺は、聞き慣れたその声に立ち止まり、声の聞こえてきた方に視線を向けると、そこには驚きの表情でこちらに駆け寄ってくる一人の少女の姿が。



「エルザ!?」



エルザは俺の言葉に何故か顔を泣き笑いの表情に変え、俺に向かって勢いよく飛びついてきた…って!?



「ちょい待ちエル、ぐふッ!?」

「ユウト!良かった無事だったのね!!」



どうやらエルザは俺が無事なのが嬉しくて抱きついてきたらしい。



その気遣いは嬉しい。とても嬉しいのだが……。


(うおぉぉぉ……ッ!?傷が!?傷が衝撃で物凄い痛む…!?)



実は神官どもの拷問で受けた傷は治っておらず、今まで気合いでなんとかごまかしていたのだが、エルザの抱きつきにより痛みが完全にぶり返した。



俺はエルザにそのことを伝えようと彼女に向けて口を開こうとするが、



「…ひっくっ…ひっく……よ、よがった…。ぶじでほんどうによがっだよぉ……」



どうやらよほど俺の無事を心配していてくれたのか、俺の無事を確認し緊張の糸が切れたようで、エルザは俺の胸に顔を埋めながら、堰を切るように泣きはじめた。



俺はそれを見てこっそりとため息をつく。



(これじゃあ痛いから離れてくれなんて言えないな……)



元はと言えばここまで心配させた俺が悪いんだし。



俺はその場は大人しくエルザが泣き止むまで待つことにした。





















「ご、ごめんね?突然泣いたりなんかしちゃって…」

「いや、それほど心配してくれてたってことだろ?別にかまわないよ」



涙で目を赤くしながら恥ずかしそうにするエルザに俺はそう言葉を返す。



「それよりエルザ。なんでお前がここにいるんだ?お前たちは教団の神官どもと戦っていたはずじゃあ?」



エルザは俺のその言葉に「あ!」と何かを思い出したかのような仕草をとると、興奮で顔を赤くしながらエルザは俺に向かって口を開いた。



「そう。そうだわユウト!私たちあいつらに勝ったの!自由になったのよ!」

「なに!?それは本当か?」

「もちろんよ!」



エルザは俺の言葉を満面の笑みを浮かべて肯定するが、俺はすぐにはそれを信じることができなかった。



(確かに数はこちらが上だがあちらには魔法兵の部隊がいたはずだ。魔導師のいないあいつらでは対抗できないはず……)



だが詳しく話を聞いてみると、反乱が成功した理由はあっさりと判明した。



確かに魔法兵たちには魔導師のいないあいつらではでは対抗できない。



となると話は簡単。ようはあいつらの中に魔法が使えるようになったやつが現れたというわけだ。それも魔法兵どもをまとめて相手どれるほどの。



その魔法を使えるようになったやつっていうのが……。



「お前というわけかエルザ?」

「うん!ほら見てて!」



そう言うとエルザが手に持っていた剣を放り投げると、剣はくるくると空中でダンスを踊り、再びエルザの手の中へと戻る。



(ふむ、なるほどな。身体能力の強化と武器の操作か……)



これなら魔法兵たちを倒せたのも頷ける。



神官どもは武器は持っているが、俺たちのように重労働で鍛えるなんてないはずだから身体能力は俺たちよりも低い。


おそらく魔法兵たちも神官どもと同じように、魔法は使えてもエルザの魔法で操った剣たちに反応できるほどの身体能力が無かったのだろう。



(……ロブじいさんが、エルザのために与えてくれたのかもしれないな)



エルザがここに来るまでの経緯は全て聞いた。



俺とジェラールの言葉がきっかけで、エルザがあいつらへの反乱に踏みきったこと、戦いの途中でシモンが重傷を負ってしまったこと。





そしてロブじいさんがエルザを庇ってその命を落としてしまったことも……。




ギリ!



(俺がもっと間に合っていればロブじいさんは死ななくて済んだかもしれないのに……ッ!!)



悔しさで思わず拳をきつく握りしめる。



「ユウト?」

「!?」



エルザのその声に俺は我に返る。



見るとエルザが心配そうに俺の顔をのぞき込んでいたので、俺は心配させないためにも、笑みを浮かべたまま返事を返す。



「なんでもないよ。ちょっと考え事をしていただけさ」

「ならいいけれど……」



……そうだ。悔やんでばかりはいられない。



(ロブじいさんは俺たちを護るために死んだんだ。前を向いてこれからを生きなくては……ん?そういえば?)



「エルザ。ジェラールはどこにいるんだ?俺と一緒に捕まったはずだが……」

「今から助けにいくのよ。私がここに来たのもユウトとジェラールを助け出すためなんだから」

「なに!?」



それを早く言えよ!



「場所はわかってるのか?」

「ええ。この先の懲罰房にジェラールは監禁されているはず」



エルザはそう言って、俺が監禁されていた懲罰房のさらに奥の方を指し示す。



「わかった。さっそく行ってみよう」

「わかった」



そして俺たちは駆け出した。



俺たちの大切仲間を救うために……。





(今助けに行くぞ。無事でいてくれよ、ジェラール!!)























ジェラールの姿を探して五分ほどの時間が経った時、俺とエルザは懲罰房で腕を縛られ、吊されたジェラールを見つけることができた。



「ジェラール!!」

「ジェラール、大丈夫!?」



俺達は駆け寄り、ジェラールを吊していた縄を断ち斬る。



ジェラールは俺と同じように神官どもから拷問を受けていたらしく、体中酷い傷だらけになっていた。



「全て終わったぞジェラール。反乱が成功した」

「そうだよ!!私達は自由なんだよ!!」


俺たちは、満身創痍なジェラールをそう元気づけながら、倒れ込んだジェラールを抱き起こす。



けれど、俺はそこでジェラールの様子がおかしいことに気づく。



瞳にはいつもの輝くような光ではなくどこまでも深い闇が宿っており、その顔は、どこか熱に浮かされているような陶酔しているような表情を浮かべていた。



それを見て困惑する俺をよそに、ジェラールはゆっくりと口を開く。



「……ユ……ウト……エルザ……もう逃げる事はないんだ。」

「え?」

「なに?」

「本当の自由は、ここにある」



ジェラールはそれだけ言うと、ふらふらと立ち上がり幽鬼のような足取りで歩き出す。



「ジェラール?何言ってんの?一緒に島から逃げるのよ」

「………」



(おかしい。なんだこの違和感は……)



俺は元々のジェラールの魔力がどんなものかは知らない。その時には俺は魔力を感知する術など持たなかったからだ。



だが今なら感じ取れる。



ジェラールに纏わりつく恐ろしいほど禍々しい《・・・》魔力が。



ミカボシから貰った知識に、魔力とはその者の本質を表すとあった。



(……これがあのジェラールの魔力だというのか?)



俺が考え込む間も、ジェラールは言葉を止めない。



「エルザ。ユウト。…この世界に自由などない」

「!?」

「なに?」

「オレは気づいてしまったんだ。オレたちに必要なのはかりそめの自由なんかではない。本当の自由…」





――――ゼレフの世界だ





ぞわっ!?




そう言ってこちらに振り返ったジェラールは、口元に禍々しい薄笑いを浮かべていた。



(なんだ!誰なんだこいつは!!)



俺はもうそいつをジェラールだとは思わなかった。いや、思えなかった。



そう思わざるを得ないほど、ジェラールの様子は普段と百八十度変わっていた。



「今なら奴等の気持ちも、少しは分かる。あのゼレフを復活させようとしていたんだ。だが、奴等はその存在を感じる事が出来ない哀れな信者どもさ」



ジェラールはそう言って、未だに地べたに這い蹲る神官のうちの一人に足をのせる。



「なぁ?」

「ひぃ!?」



その神官は今まで気絶したふりをしていたのか、ただ動けなかっただけかもしれないが、ジェラールの問いに小さく悲鳴を上げる。



「この塔は俺がもらう。俺がRシステムを完成させ、ゼレフを蘇らせる」

「ど……どうしちゃたの?ジェラール……」



様子がおかしいジェラールに動揺するエルザをジェラールはあざ笑うかのように見ながら、そのままその看守の頭を―――



グシャッ!!



―――踏み潰した。



「!?」

「なッ!?」



その後も、ジェラールは魔法でどんどん看守達を殺していく。



「アハハハハハハハハハハハ!!」



無惨な看守達を見て、ジェラールは笑い狂う。



(狂ってる……)



俺は自らの友、いや友だった《・・・》男のそんな行動に、そう思わずはいられなかった。



「ジェラールもうやめろ!!」

「やめて!!!ジェラール!!!」


だからこそ俺たちは必死にジェラールへと呼びかける。きっと元のあいつに戻ってくれると信じて。



ジェラールはそんな俺たちの声につまらなそうに視線を向ける。


「やめる?お前等はこいつらが憎くないの?」

「に…、憎いけど…そんな……」


ジェラールの返答に歯切れ悪くそう返すエルザ。そんな彼女をジェラールはあざ笑う。


「ダメだ。そんなことではゼレフを感じとることはできない」


ジェラールはそう言うと、こちらにジェラールが視線を向けている間に逃げ出そうとした神官の一人に向かい、再び魔法を放つ。



「ジェラール……しっかりしてよ……。きっと何日も拷問を受けていたせいで……」



エルザがジェラールのあまりに異常な行動に涙ながらにそう訴えるが、ジェラールはバッサリとそれを切り捨てる。



「俺は正常だよ。ユウト、エルザ……一緒にRシステムを……いや、『楽園の塔』を完成させよう。そして、ゼレフを蘇らせるんだ」


「…断る。今のお前にはついていけん」

「馬鹿な事言ってないで、私達はこの島を出るのよ!!」



俺達はジェラールのその申し出を拒否した。



するとその瞬間、ジェラールの瞳に俺たちに対する敵意が宿ったのがわかった。



(まずい!?)



ジェラールの瞳が剣呑なものになったのと同時に、やつの周りに魔力が急激に集まるのを感じた俺は、とっさにエルザを庇うように前に立ち、両手を前方へと向ける。



「“闇《ダーク》の楯《シールド》”!!」



その俺の言葉と共に漆黒の魔力が俺とエルザを護るかのように盾のような形に形成される。



これは闇の初歩の防御魔法。闇の魔力で盾を作り術者を守るという魔法なのだが、いかんせん所詮は初級の魔法。魔法は防ぎきったが、勢いは殺せず、エルザと共に後ろの小さな崖まで吹き飛ばされた。



「ぐあッ!!」

「きゃあ!?」



二人ともゴロゴロと転がり落ちる。



「っ~!エルザ、大丈夫か?」

「な、なんとか……」



ふらふらになりながらもなんとか立ち上がる。



ジェラールが崖の上に歩いてきた。



以前のような仲間を暖かく見守るようなものではなく、まるで壊れてしまったおもちゃを見るような冷たい眼差しで、ジェラールは俺たちを見下す。



「いいよ、そんなに出て行きたければ二人でこの島を離れるといい」

「…なに?」

「二人?」



ジェラールの言葉に俺とエルザが疑問を返す。



「他の奴等は全員俺がもらう。心配するな、俺は奴等とは違う。みんなに服を与え、食事を与え、休みを与える。恐怖と力での支配は、作業効率が悪すぎるからな」



ジェラールのその言葉に、エルザが反論する。



「何を言っているの?みんなはもう船の上!私たちを待っているのよ?今更こんな場所に戻って働こうなんてするハズない!!」



だが、そんなエルザの必死な声をジェラールはあざ笑う。



「それは働く意味を与えなかった奴等《・・・》のミスだ。オレは意味を与える。“ゼレフ”という偉大な魔導師の為に働けとな」



そう言うとジェラールは右腕を何かを掴むかのように突き出す。



すると、下から黒い手が俺とエルザの首を掴み、締めあげ始めた。



「しま…ッ!?」



すると、下から黒い手が現れ、俺とエルザの首を掴み、締め上げ始めた。




「ぐうッ!」

「く、苦しい!」



息苦しさにエルザは苦しい悲鳴を上げる。



(しまった!話に聴き入って魔力の集中を見逃すとは…ッ!!)



ちなみに先ほどジェラールの魔法を練習無しでとっさに防げたのは、魔力の集中は魔法の発動の兆しだと、ミカボシに貰った知識が教えてくれたからだ。



俺はとっさに魔力を手に集中させ、黒手の拘束を解こうとしたが、込められた魔力が高いのかまるでびくともしなかった。



ジェラールは必死で拘束から抜け出そうとしている俺を嘲笑うかのように話を続ける。



「お前達は、もういらない。殺しはしないよ。邪魔な奴等を排除してくれた事には感謝してるんだ。島から出してやろう。かりそめの自由を堪能してくるがいい」

「ぐうッ!?」



(まずい!?締め上げる力が強くなってきた!)



「ジェラ………ル」



エルザはボロボロ涙を流す。



「分かってるだろうけど、この事は誰にも言うなよ?政府に知られるのは厄介だからな。バレた暁には、証拠隠滅で、この塔及びここにいる奴等を消さなければならない。お前達が近づくのも禁止だ。目撃情報があった時点でまず一人殺す。そうだな……まずはショウあたりを殺す」



「!?て……め…え……」

「ジェラ…ル」








「それがお前達の自由だ!仲間の命を背負って生きろ!






アハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」



(なぜ…だ……ジェ……ラ……ル……)



そこで俺達の意識は途絶えた。 
 

 
後書き
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