FAIRYTAIL転生伝 ~ 黒き魔王は妖精と共に ~
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第七話『神との邂逅』
前書き
本当はアットノベルスに先に投稿しないといけないのですが現在全くつながらないのでこちらとハ―メルンの方に先に投稿させていただきます。
今回は主人公を転生させた存在との邂逅。なんか違和感たっぷりだけどそこはスルーでお願いします。
ピシィ!ピシィ!ピシィ!ピシィ!
その部屋にはただムチを叩きつける音だけが響いていた。
やがてそのムチを叩きつけていた人物、神官はその手を止めると呆れたような声をだす。
「おいおい…。こんだけやって叫び声一つ漏らさないってこいつ本当にガキかよ?」
「はッ!もう声をだす体力もないだけだろ。なあ坊主?」
そう問いかけられた『坊主』、ユウト・ベラトリックスは口の端を歪め、バカにするような口調でそれに答えった。
「はッ!ブタに人間の言葉で言ってもしょうがねえだろ?」
「なッ!?き、貴様ああああ!!!」
ユウトの言葉を聞いた神官は激昂し、相方の神官からムチを奪うとユウトに思いっきり叩きつける。
ビシィイイ!ビシィイイ!ビシィイイ!
「奴隷の分際で!神官様にむかって!なんだ!その!口の!聞き方はあああああああ!!」
どうやらこの神官は想像以上に沸点が低かったようだ。相方の神官もその豹変ぶりに若干引いている感じがする。
神官は何度も何度もユウトにむかってムチを打ち続けるが、やはりユウトはなんの反応もしなかった。そんなユウヤの様子も神官を苛立たせる原因だった。神官にはそれが自分たちをバカにしているように思えたのだ。
神官がまたユウトをまた怒鳴りつけようとしたそのとき、慌てた様子で一人の神官が転がり込んできた。
「た、大変だ!奴隷どもの反乱がすぐ近くまで来ているぞ!!」
「ッ!?」
「はあ!?」
その報告に驚愕する二人の神官。
それもそうだろう。反乱の報告自体は聞いていたがこの第八セクターは楽園の塔の施設の中でも兵の数はとりわけ多い。
それをろくな装備も持っていないはずの奴隷如きが?
神官二人はそれを確かめようと急いで部屋を出ようとするが、
「ま、嘘なんだけどな♪」
「は?」
「へ?」
報告に来た神官はそんなことを言ったかと思うと、二人の神官の顔を掴み、
ドッゴォオオオォオン!!
「「ぐべらへッ!?」」
地面へと叩きつけた。叩きつけられた神官は数瞬体をぴくぴくと痙攣させたが、その後ばたりと全く動かなくなった。
「・・・は?」
ユウトは目の前で何が起こったのかわからなかった。仲間割れかと思ったがそれにしてもなにかおかしい。
神官を地面にたたきつけた男は満足そうに潰れた神官を一瞥すると、今度はにこやかな笑みで右手をあげてユウヤのほうに視線をむけた。
「やあ一応はじめましてということになるか?」
「……誰だお前?俺のことを知ってるみたいだが」
我に返ったユウヤは警戒心もあらわに、正体不明の男にそう問いかける。神官を倒したからと言って目の前の男が自分に危害を加えないとはいえなかったからだ。
そんなユウヤの様子を見た男は苦笑する。
「そう警戒するな、別にとって食いはしない」
「あいにくとあんたみたいな怪しい人間に簡単に心を許すほどお人よしじゃないんでね」
そんなユウトの言葉に、今度は男はなぜか楽しそうに笑みを浮かべた。
「ふふふ、疑り深いな。ユウト・ベラトリックス。いや、
夜神悠斗と呼んだ方がいいかな?」
「ッ!?お前なんでその名前を!!」
男がユウトに告げたその名前はユウトの前世での名前。
この世界ではユウト意外誰も、それこそエルザ立ち仲間たちどころか母親でさえ知らないはずの名前だった。
驚愕するユウトの表情を見て、男は悪戯が成功した子供のような満足そうな笑みを浮かべる。
「理由を教えてもいいがその前に自己紹介をさせてもらおうか」
そう言って男が指をパチンと鳴らす。すると男の周りに黒い風のようなものが発生する。
「!?な、なんだ!?」
ユウヤがその突然起こった現象に驚いている間にその黒い風は完全に男を覆い尽くし、それが晴れたときには男の姿は跡形もなく、その代わりに褐色の肌を持つ顔に黒い入れ墨を入れた男がそこに立っていた。
「だ、誰…?」
思わずこぼれたその問いに、男は不敵にほほ笑みながら答えた。
「俺の名は“ミカボシ”。お前さんをこの世界に連れてきた神の一柱だよ」
☆
☆
あまりの状況の変化に頭がショートしそうになるのを感じた。
神官が神官を叩き潰したかと思ったらその神官が自分の名前を知っていて、その神官が指を鳴らしたかと思ったら違う男の姿に変化して。こんな状況にまともについていけるやつがいたら顔を見てみたいとすら思う。
だが最後に相手が言い放った聞き捨てならない言葉になんとか反応する。
「か、神様?お前が?そ、それに俺をこの世界に連れてきたって・・・?」
「まぁそうなるな」
「!?」
男は俺の言葉にただ一言そう返しただけな上に、話の内容も荒唐無稽な話なはずなのに、なぜか俺はこの男の言うことは正しいと本能で、いや魂のレベルで感じていることに気づいた。
これはいったい……?
「ああそれは俺ら神が身に纏っている波動のせいだろう」
「波動?」
「ああ。それを受けた生物は無意識にそいつが自分より上位の存在だと認識しちまうのさ」
(そんなものがあんのか…)
どおりで太陽の光が入らないこの場所で、後光みたいなものがさしてるように見えるはずだ。
「あんたが神様だっていうのは理解した。だが二つほど聞きたいことがあるんだが?」
俺がそう言うと、神、ミカボシは「まあちょっと待て」と俺の言葉を押し止める。
「お前さんの聞きたいことはわかってる。なんで俺がお前さんをこの世界に転生させたか。それとなんで今お前さんの目の前に現れたのか。……違うか?」
「いや、その通りだ」
ミカボシの言うとおり俺が聞きたいのは、なんで俺をこの世界に転生させたのかと俺の目の前になぜ今更現れたのかの二つ。
俺の偏見だが神様とは人間に対しては傍観者というイメージがある。もし神様が自らの感情に任せて人間に対して積極的に何かするような存在ならば、人間の世界はもっと混沌的なものになっているはずだからだ。
だからこの神様が俺をこの世界に転生させたというのならなにかしらの目的があるはずだ。
そして二つ目。こいつがなぜこのタイミングで俺の前に現れたのかだ。
俺がこの世界に産まれて既に数年が立っている。何か用事があるのなら接触する機会はいくらでもあったはず。
それがなぜ今のタイミングで……?
そんな俺の疑念を見透かしているのか、ミカボシは不敵な笑みを口元に浮かべながら口を開いた。
「そんじゃあ順に説明するか。まずお前をこの世界に転生させたのは、まあ仕事の一環だな」
「仕事?」
「ああ」
なんでも神様というのは不老不死で暇らしく娯楽がないので、それを解消するためにたまにランダムで死んだ魂を選び、違う世界で生き抜くだけの力を与えてそれを天界のテレビで放送するという仕事があるらしい。……ん?ということは?
「あんたってひょっとしてプロデューサー的な人なの?」
「まあそうなるねえ」
マジか。神様の世界にもそんなものがあるとは……。
「それで今のタイミングでお前さんに接触した理由なんだが…実はお前さんに対して渡さなきゃいけないものがあるからだよ」
「…は?どうゆうこと?」
俺の言葉にミカボシは先ほどから浮かべていた笑みを引っ込め、苦虫を噛んだような顔になる。
「……実はお前さんを転生させる時にライバル局の妨害にあっちまってな。それでお前さんの行方を今まで見失っちまってたんだ」
「は?ライバル局」
「ああ」
ミカボシが言うには彼の所属しているそのテレビ局には長年ライバル関係となっているテレビ局がいるらしいのだが、ミカボシがプロデューサーになってからはそのライバル局の業績をどんどん上回るようになっていったらしい。
そしてそれを苦々しく思っていたライバル局は、ある日ミカボシが新しく人間の魂を誓って新しく番組を作ろうとしているという情報を得たライバル局はそれを邪魔するためにミカボシが回収した魂、つまりは俺の魂を、ミカボシが転生させる前にミカボシにばれないように適当な場所に転生させてしまったのだという。
それに気づいたミカボシは、全ての神の頂点に立つ最高神にその件を訴えて裁判を起こしてそのライバル局を処罰してもらった後、今回の件で巻き込まれる形になった俺を探して受けた被害の補償をするために様々な世界を飛び回って俺の姿を探していたのだとか。
「補償?」
「ああ。転生っていうのは俺ら神の都合でやるもんだからなぁ。そいつの命の危険がある世界に転生させる場合はその世界を無事に生きていくためになにかしらの力を一つ与える事になっているんだ。優れた身体能力とか完全記憶能力とかな?だがお前さんは俺らの都合でだいぶ苦労させちまったようだからその分サービスしなくちゃなんねえがなぁ」
そう言ってミカボシが指をパチンと鳴らすと、今まで俺を拘束していた縄が消えた。
「あた!?」
だが俺の体を吊るしていた縄まで消えたので、俺はそれに反応できず尻から地面に落ちてしまう。
ミカボシはそんな俺を笑いながらさらに指をもう一回鳴らすと再び黒い風が起こり、俺の目の前に黒い飴玉くらいの球体が出現した。
俺はそれをおそるおそる手に取る。
それの感触は想像していたものとは違い柔らかく、温かみを感じる。
「……これは?」
「それは俺の力の一部をこの世界の魔法に変えた物と他にお前に与える力を封じ込めた物だ。こいつを使えばお前はその魔法の知識とお前に適性のある魔法の知識。使いこなす魔法の才能に強大な魔法でも使えるほどの魔力を得ることができる。……まあ簡単に言えば強力な魔法が使えるようになるってことだな」
「魔法を使えるように?」
なるほど。ロブじいさんにラクリマの中には体に埋め込んで初めてその中に封じられた魔法を使えるものがあると聞いたことがある。
(これも同じようなものか?)
俺はそれを確かめるためにミカボシに尋ねる。
「これはどうやって使うんだ?体に埋め込んだりするのか?」
「いやそんなことしなくてもいいぞ?普通に飲み込んでくれればいい」
「へ~。それは助かるな」
さすがに体に埋め込むってのは少し怖いからな……。
俺はミカボシの言葉に安心して、黒い球体を飲み込んだ。
すると、
「なッ!ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?!?!」
急にとんでもない頭痛が俺の頭を襲ってきた。
(な、なんだこれはッ!?こんなのあるなんて聞いてないぞ!!)
そこでミカボシが思い出したように口を開いた。
「そうそう。それを取り込むと力は得られるが、それ相応の情報が頭の中に一気に流れ込むことになるから気をつけろ」
………そ、
(それを早く言いやがれこのバカやろおおおおおおおおおお!!!)
~しばらくお待ちください~
薬の副作用により俺がその凄まじい苦痛にのたうち回って数分後、頭痛もおさまったので体の調子を確認すると、体の中に今まではなかったものがあるのがわかった。
あの球がもたらした知識でそれが魔力だということを理解することができた。そしてその使い方や、魔法の習得法。さらにはミカボシの力の一部という魔法の使い方まで。
「これでお前は立派な魔導師になったってわけだ」
「へぇ……ってちょっと待て」
「?どうした?」
ミカボシの話を聞きながら自分の体の調子を確かめていた俺は一つの問題を発見した。
不思議そうに首を傾げるミカボシに俺はその問題点を告げた。
「お前の力の一部だって魔法だが……全く使える様子がないんだが?」
「……は?」
俺の言葉に口をポカンとして呆けたような声を出すミカボシ。だが我に返ると凄い勢いで俺に詰め寄ってきた。
「ど、どういう事だそれは!?」
「いや神様《お前》がわかんねえもん俺がわかるわけねえじゃん」
というか初めて見たなこいつが取り乱したの。
(それだけ予想外な事態ってとこか?)
まあ俺もこのまま魔法が使えないままだと教団のやつらと戦う術が無くなるのでミカボシに調べてもらうと、とある事実が判明した。
「馴染んでない?お前の力が?」
「そういう事だな……」
なんでもミカボシの力の一部だというその魔法はその身に神の力を宿させるというとんでもない魔法なのだが、流石に神の力。人間の身で扱うにはそれなりに時間をかけて体に馴染ませないといけないらしい。
「……つまり現段階で俺は魔導師とは名ばかりのただの魔力タンクでしかないということか?」
「いやそうでもない。確かに俺の力の一部は今は使えないがお前にはお前に適性がある魔法の知識と魔法の才能があっただろ?」
「ああそう言えば……」
そんなのもあったっけな確か。
「お前に渡した魔法の才能は天才クラス。下位の戦闘魔法くらいなら練習無しでも使える」
「マジで!?」
「ああ。それにお前に渡した魔力はこの世界でも最強クラスの物。今は完全には使いこなせないだろうが、それでも教団の魔法兵たち程度なら力押しでなんとかなるだろ」
なるほど。それならなんとかなりそうだな……。
そんな俺の顔を見て俺が納得したのを感じたのか、ミカボシは満足げに笑う。
「そんじゃあそろそろ俺も帰るとするか。渡す物も渡したしお前さんも納得できたようだしな」
「なんだもう行くのか?」
もうちょっと話がしたかったんだが。
本来の神様と話す機会なんてめったにないのに。…まあ普通は神様に会える機会自体ないのだが。
「生憎と売れっ子プロデューサーは忙しくてね。次の仕事が待ってるんだよ」
そう言ってミカボシが指を鳴らすと、彼が神官から今のの姿になったときのように、ミカボシを黒い風が包み込む。
「それじゃあな。達者で暮らせよ」
そして風が晴れたかと思うと、そこにミカボシの姿はもうどこにもなかった。
「……じゃあな、神様。また俺が死んだら会おう」
そして俺は仲間助けるために今まで自分が監禁されていた部屋を飛び出した。
仲間の助けになるために。より多くの仲間が自由を手に入れるために。
……だが俺はこのときまだ知る由もなかった。
――――まさかあんなことになってしまうとは
後書き
感想やご意見。誤字脱字の報告などお待ちしております。
……どうでもいいけど神様転生の話を作るので一番めんどくさい作業は神が主人公を転生させる理由づけだと思うのは俺だけだろうか。
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