IS《インフィニット・ストラトス》‐砂色の想い‐
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激突、代表候補生!
「まさかこんなに早くリベンジのチャンスが来るとは思いませんでしたわ」
アリーナの中央上空、ISを纏った私と箒さんの前には、青と赤の対照的なISを展開したセシリアさんと鈴さんが待機していて試合開始の合図を待っている状態です。
セシリアさんは『スターライトmkⅢ』を右肩に預けていてすぐには射撃できませんが、既に『ブルーティアーズ』が4基その周囲に浮いている状態で待機していてやる気満々と言った感じです。
「ちょっと、カルラは私が相手にするんだからあんたは邪魔しないでよね」
セシリアさんの言葉に鈴さんが言います。鈴さんも既に『双天牙月』を展開していて、持て余しているのか時々ブンブンと回している。
個人間秘匿通信を使って箒さんに話しかける。
「箒さん、最初は予定通り作戦Aで」
『了解だ』
箒さんは正面の二人に集中しながら頷き返してくれました。武装はいつも通り主武装の近接ブレードを右手で抜いて無造作に下げています。
私はというと『ハディント』と『エスペランス』は腰のスカートから取り外しておらず、右手に『グリニデ』、左手には『オーガスタス』を構えています。片手では命中率が下がりますが作戦上これはしょうがないですね。
試合開始時刻まで残り5秒……
セシリアさんが『スターライトmkⅢ』を両手で構え正面の私たちに向けてきます。
4……
箒さんが近接ブレードを中段に構えました。
3……
鈴さんが振り回していた『双天牙月』を止めて左手だけ逆手に構えます。
2……
私は『グリニデ』を構えて安全装置を解除。
………今!
『それでは始めてください!』
アリーナのスピーカーの声が試合開始を告げると同時に2つのISが同時に動く!
近接戦闘主体の鈴さんが突撃してくるのに合わせて、こちらも箒さんがブースターを吹かして真っ向から受けて立ちます。
『おりゃあ!』
『はあ!』
甲高い金属音と共に箒さんと鈴さんが激突した。箒さんの近接ブレードと鈴さんの右手の青龍刀がぶつかり合って一瞬だけ火花を散らす。
『ふぅん。片手とは言え『打鉄』で『甲龍』の攻撃を受け止めるなんてやるじゃない』
『舐めてもらっては困るな』
『ま、片手だけでも褒めてあげるわ!』
鈴さんはそう言うと同時に左手の逆手で持っていたほうを箒さんに振り下ろす。箒さんはそれに合わせて右足を振り上げ鈴さんの腹部を蹴り飛ばすことでその斬撃を回避し、距離を取りました。
それを見て私は箒さんの前に出るべく一気に加速。
『迂闊ですわよ!』
セシリアさんが動きの止まった箒さんに射撃を行う。直撃寸前に箒さんの前に私が出て盾でレーザーを受け止め、右手のアサルトライフルのトリガーを引いた。
射撃を止めたセシリアさんが私の弾丸を回避し、『ブルー・ティアーズ』で四方から狙いをつけてくる。
「囲まれた!?」
私ではなく箒さんに攻撃を集中!?
『くっ!』
箒さんが慌てて『ブルー・ティアーズ』のレーザーの嵐を回避。
その方向は……まずい!
咄嗟に『グリニデ』を上空に投げ捨てて『ユルルングル』を解除し、右腕を振るった!
『もらい!』
『な!』
その先には……既に『双天牙月』を振りかぶった鈴さんが……
なんという連携……!
『ブルー・ティアーズ』の射線を邪魔しないように鈴さんが位置取り、その位置にセシリアさんが誘導して確実に『甲龍』の攻撃を当てるベストな選択。
鈴さんが『双天牙月』を振り下ろす瞬間に箒さん(・・・)の右足に『ユルルングル』が巻きつく。
「はあ!」
『うわ!?』
ラグを全くおかずに『ユルルングル』を収納することで箒さんを無理やり回収する。絡まりきっていなかった『ユルルングル』は途中で解けて箒さんが私の後方に飛ばされてしまった。『ユルルングル』を収納と同時に放り投げ、落ちてきた『グリニデ』を掴み取る。
『無茶な回避させるわねアンタ!』
「箒さん! 作戦Bへ!」
『わ、分かった!』
鈴さんの言葉を無視して箒さんへ指示を出した瞬間、ISが警告音を発する!
―空間の歪曲を感知! 衝撃砲発射まで0,2秒!―
回避が間に合わず咄嗟に盾を衝撃砲の来る方向に向けます。
「ぐ……!」
激しい衝撃によって私の体は受け止めた『オーガスタス』と一緒に弾き飛ばされた!
「なんて……威力!?」
―直上より熱源! 警告! ロックされてます!―
『頂きですわ!』
今度はセシリアさん!?
まずい、『オーガスタス』は吹き飛ばされた時にセシリアさんと真逆の位置に。これじゃあ間に合わない!
ダメージ覚悟で『グリニデ』をセシリアさんに向ける。
―60mmグレネード安全装置解除、時限信管0,1秒に設定―
『スターライトmkⅢ』のレーザーと『グリニデ』のグレネード発射がほぼ同時。私は狙いをつけないで引き金を引いた。
ISの命令どおり、ほぼ0距離でグレネードが爆発する!
「げほっ!」
グレネードの爆風で体が吹き飛ばされ、衝撃で肺の中の空気が吐き出される。
その甲斐あってかレーザーの直撃は回避に成功。したけど……
いくらシールドと防護フィールドがあるからってこの距離での爆風の衝撃はきついですね。
『じ、自殺願望でもあるのですか!? そんな無茶な回避の仕方……!』
セシリアさんが開放通信で叫んできます。
まあ、これも作戦の内なので気にしないでください。
『グリニデ』をクローズしつつ『オーガスタス』を真上に構えます。
『む! 同じ手は食いませんわよ! 鈴さん!』
『私に指示するなっての!』
それを見たセシリアさんが鈴さんに叫び、その声を聞く前に鈴さんが突っ込んでくる!
『オーガスタス』のジャミングと煙幕の発射は間に合う。でもそのジャミングが私を隠してくれる前に接近されれば目視で鈴さんの間合いに入ってしまいます。
どうやら目標は完全に私一人に絞って先に落とすという戦法で決まりのようですね。
確かに近接ブレードしか持っていない箒さんなら距離さえ取れてしまえば恐るるに足らないという考えからでしょう。
以前ならそれでいいんですが…そこを私たちが対応していないとでも?
鈴さんが『双天牙月』を振りかぶった瞬間……
『な……きゃあ!』
遥か上空から複数のエネルギーの塊が降り注ぎ鈴さんが体勢を崩した。
その隙に『オーガスタス』が発動。内部から煙幕が放たれ、ほぼ同時にジャミング装置がアリーナの3方向に飛んで強力なジャミングを発生させる。
この状態では範囲内で開放通信も個人間秘匿通信も使えない。
熱探知センサーを作動させつつ『グリニデ』を量子化し、右腰の『ハディント』を構えてセシリアさんに突撃する!
『同じ手は通じないと言ってるでしょう!』
当然読んでいたのか、正面の空間がいきなり爆発しました。
その爆発で私とセシリアさんの間の煙が一気に晴れます。
『以前にも言いましたが、『ブルー・ティアーズ』は六基ありますのよ!』
なるほど、残りの二基の『ブルー・ティアーズ』の誘導弾ですか。近距離で爆発させることで爆風で煙を晴らすと、これはやられましたね。
『鬱陶しいってのよぉ!』
通信でもなんでもなく、アリーナ中に響き渡る声と共に全く見当違いの方向の煙が霧散する。その先を確認すると鈴さんが両肩の『龍咆』をアリーナ全体に無差別に撃ち込んでいるのが見えました。
これは……相性悪すぎますね。衝撃砲のような兵器に煙幕は無意味です。というかめちゃくちゃ!
『ちょっと鈴さん! きゃあ!』
セシリアさんにも誤射しかけてますし、いくらなんでもこれは……
瞬間、発生していたノイズが消える。恐らく煙が晴れたことでセシリアさんがジャミング兵器を撃ち抜いたのでしょう。鈴さんに気を取られたせいでセシリアさんへの注意がそれてしまいましたね。
『みっけ! 覚悟ぉ!』
私を視認した鈴さんが『双天牙月』を連結してそれを投擲。風を切りながら猛スピードで『双天牙月』が宙を舞い、私に向かって飛翔する。
まずい、この距離は……
『フィナーレですわね!』
セシリアさんの距離……!
『双天牙月』を避けた瞬間に『スターライトmkⅢ』が左肩に直撃した。装甲が弾け飛びそのまま大きく弾き飛ばされる。
ブォンブォンブォンブォンブォン!!
そして再び風を切る音と共に『双天牙月』が鈴さんの元に戻るために……私に向かってくる!
『オーガスタス』で受けるとまた弾き飛ばされる……ここはギリギリでも……避ける!
右足のブースターだけ全開にして体を急速回転、紙一重の位置を『双天牙月』が通過した。よし、回避成こ……!
ジャキン!
「ま、避けるわよね。カルラなら」
至近距離での『双天牙月』を受け止める音。それはつまり……
音の方向、真下を向くと予想通り鈴さんが『双天牙月』を再び分割して迫ってきていた。
ここまで接近されては対応策が無い!
「今度こそ落ちろぉ!」
両手共に右からの強打。『オーガスタス』に『双天牙月』を振るった『甲龍』の全衝撃が襲い掛か……振るわれたのは左の青龍刀だけ!?
鈴さんは右手を更に振りかぶって……
「な、何を!?」
「いくら盾でも物体なら切ることは不可能じゃないってことよ!」
左手の青龍刀に右手の青龍刀を打ちつけた。『オーガスタス』に……切れ目が!?
「うあ!」
金属の切断音とは思えない鈍い音と共に『オーガスタス』の上半分が真っ二つにされて地面へと落下し、私はその衝撃で弾き飛ばされる。
そのまま鈴さんが肉薄してきて得意の回転攻撃に移行します。『オーガスタス』の下半分を投げ捨てて右手の『グリニデ』を捨てるつもりで防御に回すと同時に左膝の『アドレード』を射出。左手で受け取る。
『グリニデ』が弾き飛ばされ瞬間に右膝の『アドレード』を同じように射出し右手で構える。
しかし短剣でこの連続攻撃は正直きついです!
「その短剣でいつまで防ぎきれるかしらね!」
「いつ、まで、でも!」
更に増す回転攻撃を両手の『アドレード』で弾き、受け流し、避ける。
「は!」
両足の『アドレード』を展開して一瞬出来た隙に鈴さんに足を振り上げた。
「ったく! どこまで武器が仕込んであんのよ!」
鈴さんが刃の無い部分を右腕で受け止めて左腕の青龍刀を振り下ろしてくる。片手だけなら!
『アドレード』を交差させて青龍刀を受け、鍔迫り合いに持ち込む。
「へえ、アタシの『甲龍』と力比べしようっての?」
「そ、それも面白そうですけどね……」
言っていても分かります。明らかに力の差がありすぎて伸ばしていた腕がドンドン押し込まれてくる。
しかもこの状態はまだ片手。今から足を払って引き戻したもう片方が来る!
「流石に無理ですかね?」
「あったり前!」
鈴さんが先ほどと同じように『双天牙月』を打ち付ける。『オーガスタス』で耐えられなかったものに耐久性の劣る『アドレード』が耐えられるわけも無く、『オーガスタス』の時よりもあっさりと二本の『アドレード』が両断される。
そのおかげで『双天牙月』の攻撃は回避できましたけど……
ここまで2人同時がきついのは……予想していたとは言え作戦を実行するより先に落ちてしまいそうですよ!
再び鈴さんが攻撃態勢に移行したのを見て腰から『マリージュラ』を引き抜くと同時にISが新たな警告を発する。
―警告! 上空3時方向より接近する熱源! 警告!―
警告に顔を向ける。そこには……
「はああああああああああ!」
「セ、セシリアさん!?」
右手には『スターライトmkⅢ』を構え、左手には『インターセプター』を展開したセシリアさんが突っ込んできていました!
左には鈴さん、右からはセシリアさん。
挟まれた! まさかセシリアさんまで前に出てくるなんて!
鈴さんの方向を向いていたせいでセシリアさんへの対応が一瞬遅れ、ほぼ体当たりと同意の『インターセプター』の突きをもろに受ける。
「ぐ……ああああああああああ!」
頭部への攻撃でシールドエネルギーが大きく削られ、弾き飛ばされて地面へと自分が落下していくのが分かる。体勢、立て直さないと……狙い撃ちに……!
「これで終わり!」
「ですわね!」
―警告! 敵2機にロックされています! 衝撃砲の発射まで0,5秒、レーザーライフル発射まで0,8秒!―
間に……合わない!
「な!?」
「ちぃ!」
来るべき衝撃に備えた瞬間、二人が射撃をせずに回避行動を取り、そこにまたもエネルギーの塊が降り注いだ。
どうやら……ようやく準備完了のようですね
『待ったか? カルラ』
「遅いですよ」
顔を上げるとそこには……
そこにはいつもの近接ブレードのほぼ倍の大きさのブレードを構える『打鉄』を身に着けた箒さんの背中が浮いていました……
後書き
誤字脱字、表現の矛盾、原作流用部分の指摘、感想、評価等などお待ちしてます。
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