とある3年4組の卑怯者
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110 真犯人
前書き
不幸の手紙事件、今回で解決です。そして意外な人物が絡んでいた!?
帰りの会となり、丸尾は緊急学級会を開いた。
「皆さん、藤木君に不幸の手紙を出した犯人が分かりました!」
皆が「ええ!?」と驚いた。
「犯人は・・・、ズバリ、西村君、アナタでしょう!!」
(ええ!?あの西村君がかい!?)
藤木は信じられなかった。西村たかしはかつていじめられっ子だった。そんな彼が不幸の手紙など出すなど考えられない。自分の子犬を可愛がっていおり、さらにその子犬の親犬の飼い主の家に自分を招待した彼がそんな陰湿な事をするわけがない。藤木は何かが引っ掛かった。
皆はたかしの方に視線を向けた。
「う・・・、ご、ごめんなさい・・・」
たかしは泣きながら謝った。
「何故に、アナタはそんな事をしたのですか!?」
たかしは理由を言おうか迷っているようだった。
「う、じ、実は・・・」
その時、一部の男子が文句を飛ばす。
「おい、ウジウジしてんじゃねえ!」
「たかし、お前は最低だ!」
藤木はたかしが非難を浴びる様子が不幸の手紙を出した事で皆から責められた時と同じだと感じた。自分はあの時は誰からも助けて貰えなかったし、たかしだってあの時のような孤独を感じるのは辛いはずだろう。藤木は思わず立ち上がった。
「やめろよ、そんな文句言うのは!西村君だって何かあったんだ!僕は好きで西村君が出したとは思えないよ!!」
皆は黙り込んだ。そして藤木はたかしに顔を向ける。
「西村君、僕は君を怒ったりしないよ。なんでこんな事したのか言ってくれるかい?」
「うん、ありがとう、藤木君・・・。それじゃあ、言うよ。実は僕、脅されたんだ。そしたら言う事を聞かなかったら僕の犬を殺すって。それで、不幸の手紙を出したり、サッカー部のボールを切り裂いたり、5組の教室を墨で汚したり、2組の教室を荒らしたり、3組の女子の体操着をプールに落としたりと色々やらされたんだ・・・」
「何ですと!?ズバリ、それは濡れ衣でしょう!!」
「一体誰なんだい!?君を脅した人は!?」
「・・・う、駄目だ、言うと、僕の犬が殺される!」
戸川先生も会話に入った。
「西村君、大丈夫ですよ。そうはさせませんので安心して言ってください」
「僕を脅したのは・・・、2組の堀内君なんだ・・・」
(何だって!?堀内!?)
藤木は怒りが込みあがった。これはたかしに対してではない。たかしにいじめをさせた堀内に対してだった。皆がざわついた。
(何て奴だ・・・。あの迷惑者が・・・!!)
「分かりました。西村君、ありがとうございました。座っていいですよ」
「はい・・・」
たかしは座った。
各クラスの学級委員と担任は放課後に会議室に集合し、真犯人は堀内だと丸尾は伝えた。
「堀内だって!?あいつ・・・」
横須は怒りに震えていた。同じクラスの者として相当許せなかったのだろう。
「すみません、私の不行き届きです。堀内君には私から叱っておきます」
2組の担任である女性教師は頭を下げた。
「いえいえ、これは問題ですね。明日の一時間目を緊急事態として皆を体育館に集めましょう」
5組の担任が提案した。
藤木はリリィと帰っていた。
「藤木君、良かったわね。これでもう大丈夫ね。そうだ、花輪クンに藤木君の氷滑りの祝賀会をやろうって提案したんだけど、丁度花輪クンのお母さんも帰ってくるから纏めてお祝いしていいって言ってたわ。土曜は花輪クンちに行こう!」
「え!?でも花輪クンに迷惑が・・・」
「そんな事ないわよ。花輪クンもいい考えだねって言ってたもん」
その時、たかしが二人を追いかける。
「藤木君、ごめんよ、君に酷い事して、本当にごめんよ・・・!!」
「西村君・・・。いいよ、君は自分の犬が殺されるのが怖かったんだから仕方ないよ。一番悪いのは堀内なんだから・・・。そうだ、君も今度の土曜の花輪クンのパーティーに君もおいでよ!」
「いいのかい!?」
「うん、リリィ、西村君もいいかい?」
「いいわよ、一緒に藤木君を祝おう!」
「うん!」
翌日、一時間目は三年生の全クラスが体育館に集合した。そして、堀内が呼ばれて前に出た。堀内は嫌々とした表情だった。
「堀内君、ズバリ、今までの各クラスへの嫌がらせ、そして利用した西村君に謝罪するでしょう!」
丸尾が怒った。
「うるせえ!!」
「うるせえじゃなくて謝れよ!」
横須も文句を言った。
「うるせえ!!」
堀内は謝ろうともしなかった。
「オメエらが舐めた口聞くからんな事になんだよ!」
「それ、どういう事!?」
橿田が聞いた。
「とぼけんじゃねえ!!球技大会とか授業の時もテメエらふざけやがって!!」
「ふざけてんのはお前だろ!!」
5組の鷲山が怒った。皆も堀内を非難した。
「うるせえ、うるせえ、うるせえ!!」
堀内は一切謝ろうとせずお馴染みの言葉を繰り返した。一時間目の時間は過ぎた。先生方は堀内の態度を問題過ぎると見て母親に児童相談所に暫く通わせるように伝えた。
永沢の母が太郎を連れて永沢と城ヶ崎の見舞いに現れた。
「たー、たー!」
「こんにちは、太郎君」
城ヶ崎は太郎に挨拶した。
「母さん・・・」
「今日はジュースを持ってきてあげたよ。ごめんね、姫子ちゃん。ウチは火事の借金でいいお菓子を持ってこれなくて」
「いえ、大丈夫です。私は太郎君に会えるだけでもとても嬉しいです」
「そう、ありがとう」
太郎は城ヶ崎に懐いていた。
「太郎君、暫くピアノは弾けないけどいつでも来てね」
「ふん、なんで太郎はこんな生意気な奴と仲良くなるんだよ」
「お兄ちゃん!」
永沢は母親に叱られた。永沢と城ヶ崎はジュースをご馳走になり、永沢の母と太郎は帰って言った。
藤木は家に帰ると手紙を書き始めた。
堀さんへ
この前は応援に来てありがとうございます。それから不幸の手紙の事だけど学級委員の友達が犯人を捜してくれたんだ。犯人は見つかったけど、全く謝る気もない迷惑者だったよ。それから皆とも少しずつ仲直り出来たんだ。皆をアッと言わせるために今度はスケートの頂点を目指すつもりだよ。まずは中部大会で頑張るよ。それからみどりちゃんに花束をありがとうと伝えてくれるかい?あの花、玄関に飾ってあるんだ。それじゃあ、また会おうね。
藤木
藤木は堀宛てに手紙を出した。
丸尾は学級委員達と話していた。
「本当に皆さん協力してくれてありがとうございました」
「うん、ウチの堀内が本当にすまない・・・」
横須は頭を下げて謝るしかできなかった。
「まあ、横須君の気持ちは分かるよ。僕も2年の時あいつに相当手を焼いたからね」
鹿沼が回想するように言った。
「それにしても、今まではクラスのために動くのが学級委員だけど、堀内の行いを見て、これからは学年全体で動かなきゃダメだと私は思うんだけど・・・」
橿田が言った。
「橿田さん・・・。そうですね、これからは我々『学級委員隊』が協力し合いましょう!」
「『学級委員隊』か、かっこいい名前だね」
本郷が褒めた。こうして学級委員隊のメンバーは三年生全体のために動くことを誓い合った。
土曜日、藤木は花輪家の藤木のスケートの祝賀会と花輪の母の帰国祝いを兼ねたパーティーに参加した。
「やあ、花輪クン、こんにちは」
藤木は花輪とその母親に挨拶した。
「こんにちは。貴方が藤木君ね。カズちゃんから聞いたわ。スケート頑張ってね」
「はい、ありがとうございます・・・」
藤木は花輪の母に礼をした。その場にはリリィ、笹山、たかしなどクラスメイトが集まっていた。藤木はここでスケートで世界一を目指すことを宣言し、その後、楽しく、食べて、飲んだのだった。
後書き
次回:「応援」
中部大会に向けて、練習を続ける藤木。リリィと笹山は藤木のスケートの応援に行きたいと考えるが、松本は遠く、簡単には行けない事に悩んでしまい・・・・。
一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!!
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