とある3年4組の卑怯者
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109 目標(せかいいち)
前書き
藤木はスケート大会で金賞を受賞した事で先生から放課後の学級会で発表されるが、男子達には火に油を注ぐのみだった。それを止めるべく笹山が皆を説き伏せた。そして丸尾は各クラスの学級委員に先生方と集合するが、色々な生徒が嫌がらせを受けているとする。この謎を解明する為に各クラスの学級委員と手を組み、動き出す!!
花輪はヒデじいに永沢の両親を泊めている別荘に電話するよう促した。
「もしもし、ヒデじいで御座います」
『ハイ、どうかしましたか?』
メアリーが応答した。
「永沢君の御父様か御母様に替わって頂けますか?」
『ハイ、かしこまりました!』
暫くして、永沢の父が出てきた。
『もしもし、永沢です。どうしましたか?』
「各務田は逮捕されました。明日迎えに行きますのでもう大丈夫です」
『そうですか、息子は大丈夫ですか!?』
「はい、ですが、大怪我を負い、只今入院中で御座います」
『なんですと!?わかりました・・・』
「では、失礼します」
お互い電話を切った。永沢の父は母を呼んだ。
「おい、お前、大変だ!君男が大怪我をして入院したぞ!」
「何だって!?大丈夫かしら!?」
二人は心配でしょうがなかった。
藤木は長山、ケン太と年賀状を使って不幸の手紙の差出人を調べた。しかし、一致する字はなかった。
「う~ん、この中にはいないのか・・・」
藤木は首を傾げた。その時、電話が鳴った。
「誰だろう?」
藤木は電話に出た。
「もしもし、藤木です」
『ああ、藤木君、丸尾です』
「丸尾君!?どうしたんだい?」
『実は不幸の手紙について解決したいと思うのです!もし不幸の手紙を捨てていないなら明日持ってきてくれますか?字で犯人を照合したいと思います!!』
「うん、分かったよ」
『では、失礼いたします!』
丸尾は電話を切った。藤木は部屋に戻った。
「誰からだい?」
長山が聞いた。
「丸尾君からだよ。不幸の手紙の犯人を捜すから手紙を明日持ってきて欲しいんだって」
「そうか、見つかるといいね」
「うん、そうだ、君達にあるものを見せるよ」
藤木は楯を棚から取り上げて、長山とケン太に見せた。
「スケート大会で金賞を獲った楯だよ」
「うわあ、凄いなあ!」
「それで僕、決めたんだ。あの時は皆を見返すつもりで出たけど、今度はその唯一の取り柄のスケートで世界一になるって!」
「そうか、藤木君ならできるよ!俺もサッカーで世界一になりたいし、その気持ち分かるよ!」
「ケン太君・・・」
ケン太は藤木が悪い奴ではないと信じていた。球技大会の時、藤木はゴールキーパーとして必死に頑張っていた事をケン太は覚えていた。
「それじゃあ、僕達はこれで失礼するよ」
「うん、じゃあね」
長山とケン太は藤木の家を出た後、ケン太はある事を話しだす。
「それにしてもサッカー部のボールが全部切り裂かれていて、新しいボールを仕入れるまで練習が出来ないや」
「ええ!?」
「うん、もしかしたら、藤木君の不幸の手紙事件と関係あるのかな・・・?」
「さあ・・・」
ケン太と長山はスッキリしない表情で帰った。
翌日、藤木は朝礼でスケート大会の事で校長から表彰状を受け取った。皆からパチパチと拍手が送られた。藤木はその後、丸尾に会うと彼に不幸の手紙を渡した。
(本当に解決するのかな?)
藤木は不安だった。
放課後、リリィは帰ると母親からチョコレートケーキの入った箱を持たされ、藤木の家へ行く事になった。途中で笹山と合流した。
「笹山さん」
「リリィさん。どうしたの?」
「私、藤木君に謝りに行く所よ。ママがこのケーキを渡しなさいって」
「そうなの?私も丁度同じ事考えていたわ。お母さんが造ってくれたクッキーとドーナツをあげるつもりなの」
笹山は紙袋を持っていた。この中にそのクッキーとドーナツが入っているのだろう。
「それじゃあ、一緒に行こうか」
「うん!」
二人は藤木の家に向かった。藤木の家に到着し、インターホンを鳴らした。藤木が現れた。
「リリィ、笹山さん・・・。どうしたんだい?」
「私達不幸の手紙の事で藤木君に謝りに来たの」
笹山が返答した。
「これ、私のお母さんが作ったクッキーとドーナツ、藤木君にあげるわ。本当にごめんね」
「私はママのお気に入りのブランドの楂古聿ケーキをあげるわ。藤木君、意地悪して本当にごめんなさい・・・」
リリィは泣いてしまった。
「二人とも、ありがとう・・・。でも僕も悪かったんだから、そうだ、君達に見せたいものがあるんだ。中に入ってくれよ」
「見せたいもの?」
二人は藤木に連れられて中に入った。そして居間で茶を入れてもらい、少し待たされた。そして藤木は昨日長山とケン太に見せたスケート大会で金賞を獲った証である楯を持ってきたのだった。
「これが、一昨日大会で優勝した時に貰った楯だよ」
「うわあ、凄い!」
「うん、あの時は皆を見返すために参加したけど、今は新しい目標を決めたんだ」
「新しい目標?」
「うん、僕はスケートしか取り柄がないけど、それを活かして、世界の頂点を目指すんだ!まずは今度松本で行われる中部大会に参加するつもりだよ」
「世界の頂点・・・、うん、頑張ってね!」
リリィは応援したくなった。
「あとそれから、もう一つ決めた事があるんだ」
「え?」
「僕は卑怯を治したい。いつも怖くて言いたい事を口に出来なかったけど、もうこれからはちゃんと隠さずに打ち明けるよ!」
「藤木君・・・、うん、わかったわ。いつでも困った事があったら相談してね!」
笹山が答えた。藤木は二人と仲直りを果たす事ができて感動するのだった。
丸尾は放課後、本郷、横須、鹿沼、橿田を呼び集めた。
「皆さん、ウチのクラスの藤木君が不幸の手紙を残していました!」
「そうか、なら字を照合すれば誰だか分かるね!」
横須は解決を願った。
「そうだね、明日から、各クラス順番に名前をを書かせよう!」
橿田が言った。
「分かりました。では明日各クラスお願いします!」
こうして解散した。
ヒデじいは車で別荘に向かい、永沢の両親を迎えに来た。
「それでは、メアリーさん、本当に有り難うこざいました」
「エエ、お坊っちゃまにもヨロシクお願いいたします!」
ヒデじいと永沢の両親はメアリーに別れを告げ、花輪家の別荘を後にした。
「ヒデさん、息子は大丈夫なんでしょうか!?」
永沢の父が心配してヒデじいに聞いた。
「ええ、私も城ヶ崎さんのご家族から聞いたのですが、命は御無事との事でございます。先ずは息子さんのいる病院へ向かいましょう」
「はい、お願いします!」
ヒデじいは永沢と城ヶ崎が入院している病院へと車を走らせた。病院に到着すると、二人は永沢の病室を受付から聞いた。そして病室に入った。そこには頭や左手などを包帯で巻かれた永沢がおり、その隣のベッドには右腕を三角巾で吊っている城ヶ崎がいた。
「お兄ちゃん!」
「君男!」
「父さん、母さん・・・」
「ごめんよ、こんな目に遭わせて・・・!やっぱりあんたも太郎もあたし達と一緒に連れて行くべきだったねえ・・・」
「いいよ、各務田は捕まったから、もう大丈夫だよ・・・」
「そうかい・・・」
「それから城ヶ崎が太郎を必死で守ってくれたんだ・・・」
永沢は隣の城ヶ崎を指差した。
「そうだったの・・・」
永沢の母は城ヶ崎のベッドに向かった。
「姫子ちゃん・・・」
「おばさん・・・」
「ごめんよ、ウチの家族の問題に巻き込んで・・・。太郎を守ってくれてありがとうね・・・」
永沢の母は泣きながら城ヶ崎に詫び、礼をした。
「いいんです。太郎君が無事で私も安心してますから・・・。あ、太郎君は今ウチで預かっています」
「そうなの、ありがとうね・・・」
「母さん、泣きすぎだぞ。それじゃあ、城ヶ崎さんとこに行って太郎を引き取ろうか」
「そうだね。それじゃあ、また来るよ」
永沢の両親は病室を出ていき、城ヶ崎家に行って太郎を引き取ったのだった。
リリィは藤木の家を後にし、笹山と別れた後、藤木の事を考えた。せめて何か他にできる事がないか。帰りながらある事を思いついたのだった。
翌日、藤木は山根に声を掛けられた。
「藤木君、やっぱり考えたけど、君が好きで不幸の手紙を出すなんて思えなかったよ。ごめんよ、絶交なんかして」
「山根君・・・」
「それから君は思い切りスケートで頑張ってくれよ!君にはスケートなら僕や僕の父さんの熱血さよりもずっと凄いからね!」
「う、うん、ありがとう、山根君!」
やがて朝の会が始まった。丸尾が教壇に立った。
「皆さん、今日は藤木君に届いた不幸の手紙の犯人を捜したいと思います!そこで差出人を確かめるために一人ずつこの紙に名前を書いてもらいます!」
丸尾は皆に一人ずつ前に出てもらい、紙に名前を書かせた。念のためという事で、貰い主の藤木も名前を書いた。
(何で僕まで・・・)
藤木は少し考えた。その時、リリィが声を掛けた。
「藤木君、きっと犯人が見つかるわよ」
「う、うん、そうだね・・・」
藤木は早く見つかって欲しいと願った。
休み時間になり、丸尾は各クラスの学級委員を4組に呼び集め、皆の名前を書かせた紙と藤木に届いた不幸の手紙を見比べて字を照合した。まず1組にはいなかった。2組も3組もいなかった。そして4組には・・・。
「な、まさか!?」
丸尾は驚いた。
「でも、念のため、ウチのクラスのも見てよ」
橿田が5組のものも見せた。しかし、5組にも似た字はあったが、不幸の手紙の字と完全に一致はしていなかった。
「あ、後で皆に言っておきます!」
丸尾は少し息を荒くして言った。こうして解散となった。
後書き
次回:「真犯人」
丸尾は不幸の手紙の犯人を突き止めた。その犯人は何と意外な人物だった。そして丸尾は今後の学年の為に各クラスの学級委員と団結を強める事にする・・・!!
一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!!
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