ペルソナ4~覚醒のゼロの力~
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4/13 謎の声
前書き
更新です。
ちょいちょいオリジナルを入れて行きます。
オリジナルのペルソナも出す予定です。まだ考え中ですけど。
少しでも楽しんで頂けたらと思います。
今日の朝食は、縦に3等分したパンを使ったピザトースト、そしてヨーグルトを添えてみた。
菜々子ちゃんから好評だったので安心。マズイとか言われなくても、微妙そうな顔されただけでもショックだ。
昨日と同じように途中まで菜々子ちゃんと一緒に行き、途中から別れる。
そして昨日と同じ道を歩いている時、後ろから猛スピードで自転車が駆けて行った。
だが、次の瞬間には事故って、自転車に乗っていた生徒はゴミ箱に上半身を突っ込み、転げ回っている状況だ。
これは……。
「何をしているんだ?」
「おい!誰か知らねぇけど、助けてくれ!」
「えっ?新手のギャグじゃないのか?」
「違ぇーよ!チャリからの事故で、ゴミ箱に身体突っ込むギャグあるかよ!」
「いや、お前が将来のダ○○ウ倶楽部なら有り得るのかと」
「そんなわけあるか!いいから助けくれ!」
ゴミ箱を被って転げ回る人間と話す俺。かなり奇妙な光景だな。
「わかった。今助ける」
「ホントか!?助かるぜ!」
「あっ、ちょっと待て」
「ん?何だ?」
「その前に、1枚いいか?」
「早く助けろよ!何で写メ撮ろうとしてんだよ!」
俺は携帯を取り出し、写メの準備をする。だが、男子生徒から帰って来た答えは拒否だった。
しかし、結構ツッコンでくるな。
「なかなか無い映像だからな。記録に残しておこうかと」
「いらねぇーよ、そんなの!マジで何なんだよお前!」
「俺?鳴月 斎」
「え?ああ、転校生の…。って違うわ!何でこの状況で!?おかしいだろ!いい加減助けろよ!」
正直、自分で出れるんじゃね?って思うんだが、無理なのか。
このままコントみたいなことをしてても仕方ないので、そろそろ助けることにする。
「いや、助かったわ。ありがとな!えっと、鳴月 斎だな。俺、花村 陽介。よろしくな」
「自転車は大丈夫か?」
「俺より自転車かよ!」
「頑丈そうだから」
「確かに、割かし頑丈な方だけどよ…」
やはりな。やはり、陽介はツッコミキャラか。
これから、どんどんボケていくとするか。
「な、昨日の事件、知ってんだろ?“女子アナがアンテナに”ってやつ!あれ、何かの見せしめとかかな?事故なわけ無いよな、あんなの」
「そうだろうな」
アンテナに引っ掛かるってことからおかしい。
空から降って来るわけ無いしな。竜巻でも起きたなら別だけど、そんなの起きて無いし。
でも、目立つ所に置くってことは、何かのメッセージか?
警察への挑戦、あるいは挑発?捕まらないことへの絶対的な自信?
犯人の思惑はともかく、被害者を早く見つけて欲しかったってことか。
分からん。俺、プロファイリングなんか出来ないし。
「わざわざ屋根の上にぶら下げるとか、マトモじゃないよな。つか、殺してる時点でマトモじゃないか。やっべっ、遅刻!後ろ乗ってくか?ちょっとギコギコいってるけど」
大丈夫かよ。
自転車が壊れそうなので後ろに乗るのは止め、普通に歩いて行くことにした。
学校にはギリギリで間に合った。
授業を軽く受け流し、放課後。
机にノートやら教科書やらを入れていると、陽介が話しかけてきた。
「どうよ、この町もう慣れた?」
「ああ」
「へえ、早いな。ここって、都会に比べりゃ何も無いけどさ、逆に“何も無い”がある…っての?」
日本語はおかしいが、分かるような気がする。
「空気とか結構ウマイし、あと食いもんとか…。あ、ここの名物、知ってっか?“ビフテキ”だぜ。すごいっしょ、野暮ったい響き。俺安いとこ知ってんけど、行っとく?奢るぜ。今朝助けてもらったお礼に」
出た、“ビフテキ”!
ゲームをプレイしていた時から、ちょっと気になっていたんだ。
ビフってくらいだから、ビーフだよな多分。ちょっと筋っぽいとか言ってたけど、どうなんだろうか。
「あたしには、お詫びとかそーゆーの、無いわけ?“成龍伝説”」
「う…メシの話になると来るな、お前…」
急に出てきたな。さっきまで居なかったはずなんだが。
「雪子もどお?一緒に奢ってもらお」
「いいよ、太っちゃうし。それに、家の手伝いもあるから」
「天城って、もう女将修業とかやってんの?」
「そんな、修行なんて。忙しい時、ちょっと手伝ってるだけ。それじゃ、私行くね」
やっぱり、何か変だな。不機嫌っていうか、複雑そうっていうか…。
でも、仲が良さそうな千枝は何も言ってないしな。俺の気のせいか?
「仕方ないか。じゃ、あたしたちも行こ」
「え、マジ2人分奢る流れ…?」
「自業自得だろう。諦めろ。行くぞ」
「…はい…」
項垂れる陽介を引き連れ、千枝と一緒に学校を出た。
着いたのは、ジュネスのフードコート。
「安い店ってここかよ…。ここはビフテキなんか無いじゃんよ」
「お前にも奢んなら、あっちのステーキハウスは無理だっつの」
「だからって、自分ち連れて来ること無いでしょーが」
「別に、俺んちってわけじゃねーって」
そういえば、陽介はジュネス店長が父親だったな。苦労もあるだろうな。
覚えてるのはそれだけだけど。ストーリーだけじゃなくて、コミュまで消されてるのか?
…新鮮でいっか。
「あーえと、お前にはまだ言ってなかったよな。俺も、都会から引っ越してきたんだよ。半年ぐらい前。親父が、新しく出来たここの店長になることんなってさ。んで、家族で来たってわけ」
考えていたら、陽介に説明された。不思議そうな顔してたか?
まあ、してたんだろうな。
「んじゃコレ、歓迎の印ってことで。里中のも奢りだぞ」
「うん、知ってる」
俺がトレイに載ったジュースを取るのに続き、千枝も手に取った。
そこからは、他愛の無い話で盛り上がった。
「ここってさー、出来てまだ半年くらいだけど、行かなくなったよねー。商店街とか。店とかどんどん潰れちゃって…あ」
「…別に。ここのせいだけってことないだろ」
まあ確かに、近くにこんな大型のデパートが出来れば、近くの商店街とかは潰れるだろうな。
こういう田舎町なら尚更だろうな。ただでさえ人が少ないのに、それが全部デパートに流れていったら、店を閉めるしかないよな。
とはいえ、商店街には商店街の、デパートにはデパートの良さがあるんだろうけど。
「あ、小西先輩じゃん。わり、ちょっと…」
陽介は少し離れた場所に座った女の子に気付くと、席を立って近付いて行く。
「あれは?」
「小西 早紀先輩。家は商店街の酒屋さん。けど、ここでバイトしてんだっけ」
商店街の酒屋の娘か。あちらさんからしたら、ジュネスは親の仇みたいな存在だろうな。
周りの人間は、いろいろと言いそうだな。
陽介と一言二言話した後、俺と目が合うとこちらに歩いてきた。
「君が転校生?あ、私のことは聞いてる?都会っ子同士は、やっぱり気が合う?花ちゃんが男友達連れてくるなんて、珍しいよね?」
「べ、別にそんなこと無いよー」
声が若干、裏返ってるな。図星か。
「こいつ、友達少ないからさ。仲良くしてやってね。でも、花ちゃんお節介でイイやつだけど、ウザかったらウザいって言いなね?」
「イイやつだよ」
「あははっ。分かってるって、冗談だよー」
……何か、嫌な感じだな。気のせいか?…気のせいだな。
「せ、先輩~。変な心配しないでよ」
「さーて、こっちは休憩終わり。やれやれっと。それじゃね」
「あ、先輩。はは、人のこと“ウザいだろ?”とかって、小西先輩の方がお節介じゃんな?あの人、弟いるもんだから、俺のことも割とそんな扱いって言うか」
「弟扱い、不満ってこと?…ふーん、わかった、やっぱそーいうことね。地元の老舗酒屋の娘と、デパート店長の息子。…燃え上がる禁断の恋、的な」
「バッ…!アホか、そんなんじゃねーよ」
「ロミオとジュリエットか」
「ちげーって!」
俺と千枝の言葉に、顔を紅くして照れる陽介。図星じゃん。
本当のロミオとジュリエットみたいにならないといいけどね。
「そうだ…。悩める花村に、イイコト教えてあげる。“マヨナカテレビ”って、知ってる?雨の日の午前0時に、消えてるテレビを1人で見るんだって。で、画面に映る自分の顔を見つめてると、別の人間が映ってる…ってヤツ。それ、運命の相手なんだって」
「何だそりゃ?何言い出すかと思えば…。お前、よくそんな幼稚なネタでもいちいち盛り上がれんな」
「よ、幼稚って言った?信じてないんでしょ!?」
「信じるわけねーだろーが!」
“マヨナカテレビ”?運命の相手が映るねぇ……。
本編にあったか?覚えてないってことは、これはストーリーに深く関わってるってことか。
陽介の反応が普通だろうな。普通、そんな話信じないよな。
「だったらさ、ちょうど今晩雨だし、みんなでやってみようよ」
「やってみようって…。お前、自分も見たことねえのかよ!久し振りに、アホくさい話を聞いたぞ…。それより、昨日のアレって、やっぱり“殺人”なのかね?実はその辺に、犯人とか居たりしてな。…ひひひ」
魔女か、お前は。
「そういうの面白がんなっての。幼稚はどっちだよ…」
「花村だな」
「肯定すんなよ!!」
いや、俺もそう思ってたし。
「とにかく、今晩ちゃんと試してみてよね」
“マヨナカテレビ”、何が映るのかな、と。
あっ、そうだ。ジュネスに来てることだし、丁度良いから買い物していこう。
あの空っぽの冷蔵庫に、食材を入れるとしよう。
買い物を終えて家に帰ると、やっぱり叔父さんはいなかった。
今日も帰って来ないのかな。
「おかえり」
「ただいま。今作るね」
「今日も作るの?」
「惣菜もあるけどね」
俺の料理スキルだと、今から何品も作るのは無理だ。休みの日なら違うんだろうけど。
今日は、ロールキャベツもどきを作るか。
あらかじめ半分に切られていたキャベツを3・4cmに切り、ベーコンも同じように切っていく。
「何作るの?」
「ロールキャベツみたいなやつ」
「ロールキャベツとは違うの?」
「ちょっと違うね」
「ふーん」
菜々子ちゃんはつま先立ちをしながら、俺が料理するところを熱心に見ている。
ここまで見られると、恥ずかしさも覚えるな。
次に、切ったキャベツとベーコンを鍋に押し込み、塩コショウを振りかける。
水を4分の1投入し、蓋をして弱火にかける。キャベツから水が出るから、そんなに入れなくてOKのはずだ。
火が通ったころ、ミートソースの缶詰を1缶ぶちこみ、さらに煮込んでいく。
完成したら、皿に盛り付ける。で、食事の時間だ。
夕食は出来たけど、やっぱり叔父さんは帰って来ないか。
「食べようか」
「うん」
準備を終え、居間に持って行き食べることにする。
「美味しい、菜々子ちゃん?」
「うん、美味しい!」
それは良かった。失敗したら、目も当てられん。
食べていると、玄関の引き戸が開く音がした。
「あっ、帰って来た!」
「ただいま。何か、変わり無かったか?」
「ない。帰って来るの、遅い」
「悪い悪い。仕事が忙しいんだよ。ん?何だ、それ。そんな惣菜あったか?」
叔父さんが、俺作のもどきに気が付く。
「お兄ちゃんが作った」
「斎が?お前、料理なんか出来たのか?」
「簡単な物だけど」
「いや、それでも充分だ。いつも惣菜物ばっかってのも、どうかと思ってたしな。テレビ、ニュースにしてくれ」
叔父さんはソファーに腰を下ろすと、菜々子ちゃんは不満そうな顔をしながらもチャンネルを変える。
『次は、霧に煙る町で起きたあの事件の続報です。稲羽市で、アナウンサーの山野 真由美さんが民家の屋根で変死体となって見つかった事件です』
やっぱり、ニュースはこれで持ちきりか。被害者は、今話題の渦中にいるからな。
メディアが飛び付くのも当然か。
『山野さんは生前、歌手の柊 みすずさんの夫で議員秘書の生田目 太郎氏と、愛人関係にあったことが分かっています』
よくある、痴情のもつれってやつか。
『警察では、背後関係をさらに調べると共に、関係者への事情聴取を進める方針です。番組では、遺体発見者となった地元の学生に、独自にインタビューを行いました』
「ふぅ、第一発見者のインタビューだ?どこから掴んでくんだよ、まったく…」
それがメディアの凄いところか。
まぁ、こんな狭い田舎町だからすぐに知れ渡るだろうし、聞き込みの結果なんだろうけど。
『最初に見た時、どう思いました?死んでるってわかった?顔は見た?』
『え、ええと……』
画面が切り替わり、リポーターがインタビューしている映像に変わった。
確かに、うちの学校の女子の制服だ。
声も顔もぼかしているが、どこかで見たような……。
『霧の日に殺人なんて、なんだか怖いよね?』
『え…?殺人、なんですか?』
『あ、えーっと…最近、このあたりで不審な人とか、見たりしなかった?』
リポーター、迂闊すぎるだろう。しかも、ストレートに聞き過ぎじゃないか?
そう思うのは俺だけか?
『や…私は何も…』
『早退した帰りに見つけたってことだけど、早退は何か、用事で?』
『え?えっと……』
リポーター、勢いが強過ぎだ。女子学生、戸惑ってるぞ。
何となく、今日会った小西先輩に似てるような…。
『商店街関係者の多くは、客足がさらに遠のくではと懸念しています…』
「ふん。お前らが騒ぐから、余計に客足が遠のくんだろ…」
再び画面が切り替わり、スタジオに戻った。
画面には、アナウンサーと専門家だろうコメンテーターが映っている。
『まったく、奇怪な事件ですね~。民家のアンテナに引っ掛けて、逆さに吊るすってんですから…。何かの見せしめか、犯人からのアピールと言ったとことでしょうな~』
『犯行声明などは、出ていないようですが』
「イタズラ電話なら、殺到してるがな…」
警察も大変みたいだな。
『そもそも、死因は不明のままだし、容疑者の1人も見つかって無いわけでしょ?事件か事故かも分からないなんて…。ったく、警察は血税で何を遊んでるんだか…』
警察でもないド素人が、よく言うよ。お前らは意見を言うだけで、金が貰えるんだからな。
『では、いったんCMです』
『エヴリディ・ヤングライフ!ジュネス!』
「エヴリディ・ヤングライフ!ジュネス!ねえ、お父さん。今度皆で、ジュネス行きたい」
ジュネスのCMが流れると、菜々子ちゃんはお決まりの言葉を口にした。
よっぽど好きなんだな。陽介が知ったら、喜びそうだな。
「……」
「ダメ?」
「……Zzz」
何も言わない叔父さんを不審に思い視線を向けてみると、熟睡していた。
疲れてるってことだな。
「あーあ、もー」
「菜々子ちゃん。布団準備してくれる?」
「うん」
俺は叔父さんを担ぎ、布団まで連れて行く。
「お兄ちゃん、お風呂沸いてるよ」
「ありがとう」
風呂から出ると、さっきまでは小降りだった雨が本降りになっていた。
そういえば、“マヨナカテレビ”を見る約束してたな。見なきゃ。
勉強やら本読んだりして時間を潰して、そろそろ0時。
外では大粒の雨が降り注ぎ、雨音が響いてくる。
あと10秒くらいで0時。俺は立ち上がると、テレビに近付いて行く。
0時になりテレビを見つめてみるが、何も映らない。
あれ、おかしいな。他に何か条件あったか?
その時、点けていないはずのテレビ画面が砂嵐に変わると、途切れ途切れながらも何かの映像が映し出される。
人?人が映っている。だが、俺を見ているわけじゃない。別の誰かを見ているのか?
怯えている?何かから逃げているようにも見える。
テレビ画面が消え今の映像について考えていると、突然頭に響く声。
―――――我は汝、汝は我。汝、扉を開く。
うっ……!
声と同時に、ひどい頭痛が襲う。何だこれ…!
こんなに痛い頭痛、初めてだぞ!
すぐに頭痛は無くなると、俺は自然にテレビへと手を伸ばした。
何か理由があったわけじゃない。ただ何となく、そうするのが自然だと思ったから。
指がテレビ画面に触れると、水の中に石を落としたかのように、テレビ画面に波紋が広がる。
何だ、これ……。
テレビ画面へと腕が沈んで行く。沈むのに違和感など無く、ただ沈んで行く。
その時、腕が何かに引っ張られ、テレビの中へと引きずり込まれていく。
って、ヤバい!
腕だけではなく、ついに頭までテレビの中に入ってしまう。
何か空間があるな。結構広いぞ。
いや、そんなのんきなこと言ってる場合じゃない!
俺は左手でテレビの縁を掴むと、戻るために力の限り力を込める。
よし、戻れた。って、イッテぇ!!
力を入れて戻ってこれたのは良いが、入れ過ぎた反動で後頭部を机にぶつけてしまった。
「だいじょうぶ?」
痛みで悶絶していると、寝ていたはずの菜々子の声が聞こえる。
起こしてしまったか。
「起こした?」
「すごい音したから…」
「ごめん。大丈夫だから。おやすみ」
「…うん、おやすみなさい」
階段を下りる音がしたことから、菜々子は部屋に戻ったみたいだな。
いや、それより……。何が起きたんだ……。
信じてもらえないだろうが、明日話してみるか。
痛みをこらえながらも、布団に入り寝ることにした。
―――――我は汝、汝は我。汝、目覚めの時なり。我、汝の敵を屠る剣とならん。我が名は――――。
―――――彼の者の目覚めを待ちし、同胞たちよ。彼の者、未だ目覚めの時にあらず。今しばらく、時を待とう。
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