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機動6課副部隊長の憂鬱な日々

作者:hyuki
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第30話:古巣への帰還


数日後,俺とはやては本局へ出張することになった。
目的は,部隊の後見人であるクロノ・ハラオウン提督との会談だ。
が,真の目的は本局情報部への協力要請である。

俺は,自分の車にはやてを乗せ,近くの転送ポートへ行くと,
本局へと向かった。

本局に着くと,まずはクロノさんの執務室へと向かった。
クロノさんの執務室に入ると,クロノさん勧められるままソファに座った。

「2人とも久しぶりだな」

「クロノくん,お久しぶりやー」

「お久しぶりです。というほどでもないんじゃないですかね」

挨拶を交わすと,クロノさんが話し始めた。

「順調みたいじゃないか,機動6課は。つい最近も出動したばかりだろう」

「まあ,クロノくんらのお陰で優秀なスタッフを集められたからね」

「お陰で僕は,いろんな部署からあまりいい顔をされないがね」

クロノさんは苦笑しながらそう言うと,俺の方を見た。

「ゲオルグもうまくやっているみたいだな。出動時の戦闘記録は確認したが,
 前線指揮官としての働きは流石というべきだろうな」

「いえ,なのはやフェイトを始めとして前線メンバーがよくやってくれてます。
 俺は口を出しているだけですよ」
 
俺がそう言うとはやてが口を挟んできた。

「何を謙遜してんのや。ゲオルグくんが現場で前線指揮をとってくれるから,
 みんなが迷いなく動けてるんやで。胸張っとき」
 
「僕も同感だよ。しかも,先日のオークション会場警備でも自ら前に出て
 戦闘したんだろう。もう僕では君にかなわないかもな。
 そういえば,負傷の方はもう大丈夫なのか?」

クロノさんが心配そうな顔で尋ねてきたので,俺は苦笑しながら
大丈夫ですよと返した。
そんな調子で1時間ほど歓談してクロノさんが会議に出席する時間となったので
俺とはやては辞去することにした。
別れ際,俺は前から気になっていたことをクロノさんに聞くことにした。

「そういえばクロノさん。この前ユーノと会ったときにずいぶん
 やつれてたんですけど,ユーノにずいぶんと無茶な資料請求を
 してるらしいですね」

俺がそう言うと,クロノさんはピシリと固まった。

「・・・何を言ってるんだ?そんなことはない」

「じゃあ,なんでユーノが3日連続の完徹をする羽目になったりするのか
 ご説明いただけますか?」
 
「・・・すまない。君からも言っておいてくれ」

「そういうことはご自分で言われる方がいいですよ。
 でないといつかユーノに後ろから刺されても知りませんからね」
 
俺はそう言うと,先に行ったはやてに追いつくべく駆け足で追いかけていった。



クロノさんとの会談を終えると,俺とはやては情報部のフロアに向かった。
その途中で,はやてが話しかけてきた。

「そういえば私,情報部フロアに入るんは初めてやわ」

「そうなの?ヨシオカ一佐と話をしたときは?」

「通信で話したり,会議室で会ったりやね。
 そもそも私一人では入られへんやん」

「それもそうか」

情報部フロアは本局の人間でも入れる人間が限定される。
情報部員であれば当然入れるが,それ以外では提督クラスでもないと入れない。
なので,はやてが入れないのは当然と言えば当然なのだ。

そうこうしているうちに,情報部フロアの入口に到着した。
情報部フロアのセキュリティは3段階で,
まずIDカードの認証,次に指紋認証,最後に網膜スキャンによる認証で
それを順番通りにこなさないとロックが外れないようになっている。

俺が,慣れた手順でロックを外すと目の前のドアが開いた。
俺ははやてを先に通してから自分も情報部フロアに入った。

「なんか普通やね。ほかの部署とそんなに雰囲気変わらへん感じや」

「あのなぁ,建物が同じなんだから廊下の雰囲気が
 そんなに違うわけないじゃん」

俺とはやては目的地であるヨシオカ一佐の執務室に向かった。
途中で,何人か見知った人間とすれ違い,その度にビシッと敬礼されるので
はやてが,少し驚いているようだった。
ヨシオカ一佐の執務室の前に着くと,俺はブザーを鳴らした。
中からどうぞという声が聞こえてきたのでドアを開けると,
ヨシオカ一佐が書類仕事をしていた。

「ご無沙汰しています。ヨシオカ一佐」

俺がそう声をかけるとヨシオカ一佐は書類から目をあげずに
部屋の中にあるソファを指さした。

「すまんが数分待ってくれ。これだけ片付ける」



俺とはやてがソファに座って待っていると3分ほどで
ヨシオカ一佐が俺たちの向かい側に座った。

「よう,ゲオルグ。意外と早い再会だったな」

「そうですね。こんな形でここに戻ってくることになるとは
 思ってませんでした」
 
「八神は久しぶりだな。1年ぶりになるか」

「お久しぶりです。今日は急に伺って申し訳ありません」

はやてがそう言うと,ヨシオカ一佐は手を振った。

「んなことはいいんだよ。ところでゲオルグはどうだ?
 ちゃんと仕事してるか?」
 
「ちゃんとやってくれてますよ。私はすごい助かってますから」

はやてがそう言うと,ヨシオカ一佐は嬉しそうな笑顔になった。

「そうか。なら,俺も貴重な人材を出した甲斐があったってもんだよ」

俺たちはしばらく近況報告なんかの雑談をすると,
ヨシオカ一佐が本題を切り出してきた。

「で?今日はどんな話をしに来たんだ?雑談をするためだけに
 本局まできたわけじゃねえだろ?」
 
俺は,前にはやてに話したのと同じ内容を例のメモを見せながら話した。
説明し終わると,ヨシオカ一佐は難しい顔で唸っていた。

「っつーとなにか?お前らはスカリエッティがロストロギアで何か
 やらかそうとしてて,そいつが管理局の崩壊につながると。
 おまけにスカリエッティは裏で最高評議会と繋がってる可能性まで
 あると考えてんのか」

「はい,そうです。ただ,スカリエッティと評議会については
 少なくとも8年前につながっていたのは間違いないと考えてますが,
 現在もその関係が維持されているかは,わかりませんね」

俺がそう言うと,ヨシオカ一佐は俺とはやてを交互に見てから
何かを考えるかのように目を閉じた。
しばらくして,目を開くと一度息を吐いてから話し始めた。

「お前らの考えは判った。で?俺にどうして欲しいんだ?」

「スカリエッティと最高評議会の関係についての証拠集めを
 お願いしたいんです」
 
俺がそう答えると,ヨシオカ一佐は俺を睨みつけた。

「お前しばらく情報部から離れて馬鹿になったのか?
 最高評議会の裏情報なんて探れるわけないだろうが。
 そもそも何者なのかも定かじゃねえんだ。探ろうにもその糸口すらねえよ」
 
「それはそうなんですが・・・」

俺がうつむきながらそう言うと,ヨシオカ一佐はため息をついた。

「まぁ,お前らの熱意と危機感はよくわかったから
 力にはなってやりたいんだが,今回ばかりはお手上げだよ。
 こういう場合,本人を尋問するぐらいのことでしか情報は引き出せない」

ヨシオカ一佐の最後の一言に俺はハッとした。

「そうか・・・その手があった」

俺がそう言うとヨシオカ一佐とはやては驚いた表情で俺を見た。

「情報のありかがわからないなら本人を秘密裏に誘拐して尋問すればいい。
 くそっ,特務隊の得意技じゃねぇか。なんでそこに発想がいかなかったんだ」

「待て!お前まさか最高評議会の連中を直接尋問する気か!?」

「ええ」

俺がそう答えるとヨシオカ一佐は頭を抱えた。

「お前,自分が何言ってるのか理解してんのか?
 そもそも最高評議会の連中はどこにいる?」

「それについては心当たりがあります」

「で?お前一人で潜入するつもりか?」

「そうですね。6課にはこの任務に対応できるのは俺しかいませんから」

俺がそう言うと,ヨシオカ一佐は肩を落として深いため息をついた。

「馬鹿野郎!バックアップもなしに成功するわけねぇだろ。ちょっと待ってろ」

ヨシオカ一佐はそう言うと部屋を出た。
はやては何かを考えているらしく,腕組みをしてうつむいていた。
しばらくして,ヨシオカ一佐はシンクレアを連れて戻ってきた。

「シンクレア?まさか貸してくれるんですか?」

俺がそう聞くとヨシオカ一佐は頷いてから口を開いた。

「俺はお前ら2人がやり遂げてきたことを見てるからな。
 お前らなら潜り込めない場所はないだろうさ」

「でも,いいんですか?部隊長が不在なんて」

「まあ,半年位なら俺が直接指揮するから問題ねえよ」

「すいません」

俺がそう言って頭を下げると,ヨシオカ一佐は俺の肩を叩いて言った。

「お前には4年間十分すぎるほど働いて貰ったからな。
 礼だと思ってとっとけ」

「ありがとうございます」

俺がもう一度深々と頭を下げると,シンクレアが話しかけてきた。

「あの・・・俺,まだ何も聞かされてないんですけど・・・」

「クロス一尉。お前はこれから最長で半年の間機動6課に出向だ。
 第1特務隊の指揮は俺が引き継ぐから1週間で引き継ぎを済ますぞ」
 
ヨシオカ一佐がシンクレアにそう言うと,シンクレアは頷いた。
そこで,はやてが割り込んできた。

「ちょっと話がとんとん拍子にすすんでるところ悪いんですけど,
 これ以上高ランクの魔導師がうちに来るんは困るんですけど」

「そこは大丈夫だよ。偽の身分で出向させるから」

ヨシオカ一佐がそう言うとはやてが目を丸くしていた。

「そんなんできるんですか?」

「余裕だね。なぁ,ゲオルグ」

ヨシオカ一佐が俺に話を振るので俺は黙って頷いた。

「よし,じゃあこれで決まりだな。八神にゲオルグ,シンクレアを頼むぞ」

「「はい」」



その後3人揃ってヨシオカ一佐の部屋を後にした俺たちは廊下で
改めて話を始めた。

「とりあえず,こちらの方を紹介してもらえるか?ゲオルグくん」

「ああ,コイツはシンクレア・クロス一等陸尉。
 俺の後任の特務隊部隊長だ」

「シンクレア・クロス一等陸尉です。八神二佐のお噂はかねがね
 伺っております」
 
シンクレアはそう言ってはやてに向かって敬礼した。

「機動6課部隊長の八神はやてです。よろしく。
 あと私のことははやてでええよ」
 
「はい。では私もシンクレアと」

2人の自己紹介が終わったところで,俺は話を再開することにした。

「でだ。シンクレアには6課に来てもらって俺たちのやってる調査に
 手を貸してもらう。よろしくな」

「はい。こちらこそ,またゲオルグさんと一緒にやれるなんて嬉しいです」

「なぁ,ゲオルグくん。シンクレアくんとは付き合い長いの?」

「そうだなぁ。シンクレアが情報部に来てからだからかれこれ3年か?」

「そうですね」

「へー,案外短いんやね。ゲオルグくんとの付き合いで言えば私のほうが
 長いやん」
 
「そうなんですか?」

「うん。ゲオルグくんとはじめに会ったんはゲオルグくんが
 まだ作戦部におったころやし」

「ま,腐れ縁だよ」

俺がそう言うと,はやてはむくれたような顔をした。

「ひっどいなぁ,その言い方」

俺とはやてのそんな様子をみてシンクレアは笑っていた。
俺は,シンクレアの方に向き直ると真面目に話すことにした。

「まぁ,細かい話は着任してからするから,とりあえずは
 1週間後を楽しみにしてるよ。あと偽装に使う身分は任せるから」

「了解です。俺も楽しみにしてます」

そうして,俺たちは別れ,俺とはやては6課の隊舎へと帰った。


 
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