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機動6課副部隊長の憂鬱な日々

作者:hyuki
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第23話:シュミット3佐の妙に忙しい一日


翌日,俺は108陸士部隊への出張で訓練に参加できなかった
はやてへ訓練の結果を報告するために部隊長室を訪れていた。

「ほんなら,今回の訓練結果としては上々っちゅうわけやね」

俺の報告が終わった後,はやては上機嫌で俺に言った。

「今回の訓練の条件下では,だけどね。
 さっきも言ったように課題は山積みだよ」
 
「まぁ,初回としてはこんなもんやろ。
 フォワードの子らも限りなく実戦形式に近い形で
 ヴィータとかシグナムと戦って,それなりに作戦目標は達成したんやろ?
 得るもんは多かったと思うで」

「そっちも残った課題は多いけどな」

「そこは時間をかけてやっていかなしょうがないよ。
 まぁ,とりあえずは個々人の実力の底上げをせんことには
 戦術もクソもないからな。
 まだまだなのはちゃんにしごいてもらわんと」

「その点は同感なんだけどね。
 この部隊が訓練だけの部隊で,すぐにでも実戦投入なんてことが
 ないならいいんだけど,6課はそうじゃないからさ。
 指揮官としては,即修正しておきたいところは修正したいじゃん」

「まぁ,連絡不徹底の部分については,反省会の後にゲオルグくんが
 釘を刺しといてくれたんやろ?さすがに理解してると思うわ」

「だといいけどね」

「そこはあの子らを信じてあげようやないの」

「へいへい」

俺はそう答えると,話題を変えることにした。

「ところで108への出張はどうだった?」

俺がそう聞くと,はやては椅子の背に体重を預けて天井を見た。

「ま,時間を割いて恩師に会いに行っただけのことはあったよ。
 スカリエッティの捜査に関しては協力してもらえそうやし」

「ならいいじゃん。なんでそんなに疲れてんのさ」

俺がそう聞くと,はやては俺の方に身を乗り出してきた。

「なんか重要なピースが抜けとるような感じがしてならんのよ。
 スカリエッティがレリックを使って何かやろうとしとるんは
 間違いないんやけど,それが何かは手がかりも掴めてないやんか」

「そのためにフェイトは捜査に飛び回ってるし,
 108部隊の力も借りるんでしょ?今焦ったところで意味ないよ」

「そうなんやけど,カリムの予言のこともあるしな・・・」

「はやてはさ,ちょっと肩の力を抜いたほうがいいよ。
 何に追い立てられてるのかはわからないけど,
 焦りは人間のパフォーマンスを著しく下げるからね」

俺がそう言うと,はやては大きく息を吐いた。

「心配してくれておおきにな,ゲオルグくん」
 
「今更何言ってんの。はやては俺にとって大切な友人だし,
 6課に来るときに誠心誠意はやてに尽くす言ったでしょ」

俺はそう言ってはやてに笑いかけた。



部隊長室を出て隣の副部隊長室に戻ると,
俺は机の上の決済書類を処理し始めた。
半分ほどを片付けたところで,来客を告げるブザーが鳴った。
俺がどうぞというと,ドアが開きグリフィスが入ってきた。

「ゲオルグさん,昨日の緊急事態対処訓練の報告書です」

「お,早いね。ありがとう。で,退避経路の件はどう?進んでる?」

「少しずつですね,今は映像を確認しながら,避難経路の問題点を
 洗い出そうとしている最中です」

「まぁそのへんは,各隊からの意見書が上がってきてからでかまわないよ。
 ただ,ある程度方向性が見えた時点で俺にも報告してね」

「はい了解です」

俺はグリフィスがまだ動こうとしないのを見て怪訝に思った。

「まだ何かある?」

「実はですね,小火器類の調達について本局運用部から
 正式に却下すると通達がありまして」
 
「あらら,理由は?」

「たかが1部隊の隊舎防衛のために質量兵器の配備は許可できないと」

「本局は地上がどんだけ危険性に満ちているか理解してないんだよね。
 ったく,自分たちは安全なところにいるから平和ボケしてんだよな。
 だから陸に目の敵にされてんのにさ。ほんとに忌々しい連中だなー,
 殺るかぁ?」

俺が手に持ったペンで机をバシバシ叩きながら言うものだから
グリフィスは恐怖を感じたのか,身を固くしていた。
俺は,叩きすぎて折れてしまったペンをゴミ箱に放り込むと
少し考え込んだ。

(隊舎へのAMF発生装置と合わせて防衛戦力増強策として
 期待してたんだけどな・・・強引にねじ込んでもはやての
 立場が悪くなるし・・・)

「まぁ,人間あきらめも肝心だよな。しょうがないから,
 小火器類の配備はお流れってことにしよう」
 
「よろしいんですか?」

「よろしくはないよ。でもどうしようもないしね」

「わかりました」

グリフィスはそう言うと,退室していった。



俺が決裁書類処理を再開して,決済書類の山がそろそろ無くなろうとしたころ,
再び来客を告げるブザーが鳴った。
俺がどうぞというと,ドアが開きアルトが入ってきた。

「副部隊長。今よろしいですか?」

「すまん,ちょっと急用!すぐ戻るから適当に待ってて」

俺はトイレに向かってダッシュしていた。
トイレに着いて用をたした俺は,落ち着いて副部隊長室に戻って行った。

(あぶねぇ・・・危うく漏らすところだった・・・)

俺が副部隊長室に入ると俺が出て行く前と同じように俺の机の前に
アルトが立っていた。

「で,何の用かな?」

「先日の緊急事態訓練・・・でしたっけ?
 あれのロングアーチ分の意見書です」
 
「それなら,グリフィスに渡してやってよ」

「でも,なんかグリフィスさん見当たらないんですよ。
 なんで,副部隊長にお願いします」

「はいはい,以上?」

俺がそう聞くとアルトはニヤリと嫌な笑顔を浮かべた。

「そのはずだったんですけどー,ちょっとした発見をしてしまいまして」

「なんだ?」

「副部隊長の後ろのキャビネットって,何が入ってるんですかー?」

「・・・見たんか?」

「はい,それはもうバッチリ」

アルトの答えを聞いて俺は,アルトに向かって手を合わせた。

「すまん。このことは内密に頼む」

「えー,どーしよっかなー?
 じゃあ,私とルキノでここにお茶しに来てもいいですか?」

「しょーがねーな」

「やった!ありがとうございます!副部隊長」

アルトはそう言うとスキップしながら出て行った。



そのあとも,食堂に昼飯を食べに行くとなのはに
午後のフォワード訓練に参加するようにお願いされ,
フォワードの訓練が終わったらシグナムと模擬戦をすることになり,
流石にへとへとになって副部隊長室に帰ってきたのは日も落ちた後だった。

(なんで今日はこんなに忙しいんだよ・・・さっさと飯食って寝よ)

俺がドアを開けると,机の上には書類の山が復活を遂げていた。

「・・・え?」

結局,その日俺は日付が変わるまで眠りにつくことができなかった。


 
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