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ネクタイでも駄目

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第二章

「ネクタイをされているということは」
「しっかりした格好ですね」
「そうです、上はスーツ下はジャージは流石に」
 ネクタイを締めていてもというのだ。
「どうかという格好で」
「ナチスの親衛隊はですね」
「ナチスのしたこととその評価はご存知ですね」
「はい、僕も」 
 中もわかっていてやっているからその通りだと答えた。
「それは」
「では中にはです」
「入られないですか」
「またのお越しをお願いします」 
 店員は中達に礼儀正しく告げた。
「宜しいでしょうか」
「じゃあまた」
「はい、しかしその服はどちらで買われましたか」
「大学の演劇部から借りました」
「そうですか、わかりました」 
 この時も礼儀正しくだった。
 店員は中に応えた、そうして彼等には丁寧に帰ってもらってだった。
 中達も納得していた、自裁悪戯でしていたのでどうしてもとは言わなかった。それで次の日部室で話した。
「しっかりしたお店だね」
「真面目で礼儀正しくて」
「分別があって」
「いい感じだよ」
「じゃあ今度はちゃんとしたスーツで行こう」
 中は友人達に話した。
「しっかりしたお店だし」
「悪戯で行ったことは謝罪して」
「そのうえでね」
「今度はスーツで行こう」
「そうしようね」 
 こう言って実際にだった。
 中達は機会をあらためてそれぞれ大学の入学式それに成人式で着たスーツを着て来店した、店員はこの時は笑顔で入れてくれた。料理は流石に高かったがそれだけのものはあった。
 だが彼等が店を出る時だった。
 上はスーツでネクタイだが下はジャージの俳優あがりの国会議員が店の入り口で怒って騒いでいた。
「ちゃんとネクタイしてるだろ」
「ですからズボンもしっかりして下さい」
「俺は国会議員だぞ」
「そうしたことは関係ありません」
 こうやり取りしていた、中達は悪戯のことは謝罪していたが。
 ここでだ、彼等は思った。
「ああなってはいけないね」
「悪戯でもやっていいことと悪いことがあるし」
「二度としないでいよう」
「そしてああした人にならない様にしよう」
 その彼を見て思った、そのうえで店を後にしたのだった。


ネクタイでも駄目   完


                2022・11・18 
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