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チートゲーマーへの反抗〜虹と明星〜

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R9話 皆の夢を守るRider

 
前書き
しばらくはニジガク編続くな……


 

 


「侑先輩〜歩夢先輩〜部員を集めに……って———その人は?」


歩夢と侑に駆け寄るかすみは、隣にいた知らない男子生徒について2人に尋ねる。


「お前が……部長か?」
「え、まぁ、うん。」
「俺は防衛学科1年 宮下陽人。今後スクールアイドル活動の際には俺たち政府特務機関ヘラクレスが実験的に、ライブにおける治安維持を担当する。」
「ヘラクレス…?ん…?」
「ま、とりあえずライブを開催するときは俺に声をかけてくれ。」
「は、はぁ…」
「じゃ、またな。」


そう言い残して陽人は侑たちと別れた。

急にそんなことを言われて困惑するかすみはすぐさま事情を侑に尋ねる。


「どういうことですか侑先輩!?あの人たちは…?」
「あははは…多分、私と一緒でかすみちゃんや歩夢たちを守ってくれるってことなんだろうけど———でも悪い人じゃないと思うんだけどなぁ〜」
「それは確かにそうかもですけど———」


〜〜〜♪


かすみの電話から侑の聞き覚えのある音が鳴る……着メロだ。かすみはすぐさま携帯を取り、応答する。


「はいもしもし?」
【あ、かすみさん?】
「しず子!———何の用…?」


明らかに不機嫌そうに親友 桜坂しずくの電話に出るかすみ……しずくは物腰柔らかにかすみに尋ねる。


【今近くの海浜公園にいるんだけど……エマさんも彼方さんも一緒に。】
「……そう。」
【ちょっと話したいことがあるんだけど……いい?】
「———わかった。」


かすみは不機嫌さを隠すことなく、その電話をガチャ切りする。しかしその提案に応じるところを見ると素直になりきれていないだけのようにも感じられる。

歩夢は電話の内容を尋ねようとかすみに聞く。


「かすみちゃん…?」
「———お台場の水の広場公園です。」




————※————




「えぇー!?せつ菜先輩があのイジワル生徒会長!?!?んなわけありますか!!」
「って言われてもねぇ……事実は事実なのよ♪」


侑たち3人は公園にやってきた——そこで待っていたのは、以前スクールアイドル同好会に所属していた桜坂しずく、近江彼方、エマ・ヴェルデ…そしてエマの親友で以前歩夢に声をかけた果林である。

衝撃の事実を伝えられたかすみはその時まで仲間はずれにされていたことに腹を立てた様子で言い放つ。


「ていうかなんでそんな大事な話をかすみん抜きでするんですか!!部外者のお姉さんは行ったのに!!」
「へぇ…面白いコト言う子ねぇ…」
「ひぃい!ごめんなさい!」


かすみは不気味に微笑む果林にビビって、しずくの背後に隠れる。そして何やら懐から取り出して……


「コッペパンあげるから許してください…!」
「あら、美味しそう。ありがたくもらっておくわね♪」


なおも小刻みに震えるかすみに対して、盾にされているしずくは困り顔で先程の質問に答える。


「何度も電話かけようとしたんだけど……「あっちもやるべきことがある」って——」
「やるべきこと…?誰がそんなこと!!」
「私だ。」
「「「えっ!」」」


道路側からやってきた人物———伊口イフトである。突如黒幕的な存在として名乗りを挙げた彼に侑は意表を突かれたような表情を見せる。


「い、イフトさん!?」
「かすみを通じて……悪く言えば利用して君たちをスクールアイドル同好会復活の「足がかり」にさせてもらったわけさ。」
「足がかり…?どういうことですか?」
「結果同好会が成立寸前…もはや隠す必要もないだろう。」

訝しむように尋ねる歩夢……それをみたイフトはニヤッとほくそ笑むように話し始める。

「私の目的はスクールアイドル文化をより普及させることだ。そのためにスクールアイドルの結成を支援することでレベルの高い、人々の心を揺さぶり、魅了し、英気を高めるようなグループの誕生を自らの手で促進させること。君たちはその原石として選ばれた…そういうわけだ。」
「わからないわ……他の学校もあるのに、どうしてこの学校を選んだの?」
「当然———『優木せつ菜』という存在だ。」


イフトは一息ついてお台場の海を見渡しながら、その壮大な話を続ける。


「優木せつ菜はインターネットが普及したこの社会で人々に勇気と英気を与えてきた……その影響は世界中にも及んだ。実に世界の5%の人間、3億人近くが彼女の存在を認知している。彼女本人はそこまでとは思っていないだろうが。」
「そ、そんなにも……」
「せつ菜ちゃん——そこまで有名人だったなんて……」
「1人だけレベルが違うよ〜」


しずく、エマ、彼方は先ほどまであっていた人物がそれほどまでに影響力のある人物だと改めて感じざるを得ない。いや、むしろ人気が出たのはこの半年付近であるから無理もない。

しかしイフトにその人気を逃す要因はない……


「しかし彼女はスクールアイドルを辞めた。」
「かすみんたちの目的がバラバラで1つにまとまらなかったから……」
「————そんなつまらんことで辞めるようなら、私は興味もかけらもない人間だったろうに。」
「「「「「「「「え?」」」」」」」
「彼女が辞めた理由は———もっと巨大で、恐ろしい理由だ。」


かすみが今まで感じていた責任———それをイフトはあっさりと一蹴した。しかし皆はそれに安堵することはできない……むしろ嫌な感じがしてならない。


「怪人……キミたちは知ってるかい?」
「はい...噂はかなり———」


しずくの返事に他のメンバーもそれに頷く。イフトはそれを聞いてスパッとその真実を話してしまう。


「彼女がスクールアイドルを辞めたのは…怪人による被害を利用して誹謗中傷を行う連中だからだ。」
「誹謗中傷…」
「そうだ侑。それもただの落書きレベルじゃない…何者かが、スクールアイドル自体を潰そうとしているんじゃないかってレベルだ。」
「でもそんなの聞いたことないですよ…?」
「そりゃそうだ…その誹謗中傷ーーーもとい「脅迫」はせつ菜本人にしか届いていないのだから。」
「!!!」」」」」


イフトは「ここまで言えばもうわかるだろう」———そんな雰囲気を醸し出す。コレで勘のいい人物ならば理解できるだろう。

その勘のいいとされる果林が話を要約してしまう。


「なるほど…つまり、優木せつ菜さんは同好会のメンバーが酷い目に遭わないにように——自分がその犠牲になることを選んだ。そういうことね?」
「それで私たちを遠ざけようと…」
「自分が関わると、彼方ちゃんたちが酷い目に遭うかもしれないから……」


補足したエマと彼方の考察がその全てを物語る。全てを知る…知らぬ者のために自らスケープゴートになるという勇断。

その無念さを推し量るのは難しいことではない。現に侑はその痛みを感じ取っている。


「菜々さん………」
「何か問題があるの?」
「?」」」」」
「あなたたちの目的はもう果たしているんじゃないの?」


皆の中にある根底…悪く言えば固定観念を覆すよう問いかける果林———コッペパンを口にしながら、クールさを絶やさない。


「優木せつ菜さんが自ら進んで犠牲になることで、あなたたちはスクールアイドル活動ができる……そして今日、5人以上の部員はいるんだし。それでいいんじゃない?」
「……そうでしょうか?」


現実的な話をする果林。しかし侑は悪あがきのような疑問を呈する。


「皆さんはどう思いますか?このまま辞めちゃってもいいと思いますか?」
「「「それはイヤだよ!!!」」」


せつ菜に直接対談した3人がソッコーで拒否する……しかし、その次のエマの言葉は——自信のなさが滲み出ている。


「せつ菜ちゃんはすっごく素敵なスクールアイドルだし…!でも...」
「彼方ちゃんお姉さんなのに何も相談してあげられなかった……」
「みんなで今までお披露目ライブに向けて練習してきたんです!せつ菜さん抜きなんて考えられません———でも…」
「————」


侑は皆の目を見る……とてもお世辞でこのようなことを言っているとは思えない。そして何より彼女にはそれを言われるだけのモノはある。

侑はスクールアイドル同好会の皆に言う。


「わかりました———その言葉が聞けてよかった!!」
「「「?」」」
「じゃあ私がみんなを守る。せつ菜ちゃん1人が抱え込ませない……みんなの夢を邪魔する奴から守る!」
「侑ちゃん……」


皆急に発せられた宣言に驚きキョトンとする。しかしその意味を知っている歩夢は驚くとともに少し複雑な顔をする……

そしてその言葉を待ってましたと言わんばかりに、イフトは侑の肩を叩く。


「その言葉を待っていたぞ…侑。」
「イフトさん———」


よくやった———美麗な目はその言葉を訴えかけていた。そしてイフトは同好会のメンバー及び果林の前で言い放つ。


「怪人と言ったが…ライブを止める必要はない!ここにいる高咲侑———『仮面ライダーゼロワン』が君たちのため戦い……ともに夢を見ることができるはずだ!!」


続けてイフトはこう述べた。


「後ろを気にする必要はない…君たちのやるべきことをやりなさい。」



————※————




「武野司令官、ゼロワンもとい高咲侑との接触に成功したそうです。」
「そうか———では一応警戒を怠らず、協力関係を築くように。」
「はっ……」


青年は公衆電話ボックスから出る。


「スクールアイドルを守る者……か。くぅ〜!!」


男は嬉しさを爆発させるように、いまにも飛び跳ねそうなテンションと化す。


「コイツの力…試す時が来たってわけだ!!」


青年の手には……水色のガジェット———バグヴァイザーツヴァイ。




そして…



【仮面ライダークロニクル!】







 
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