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チートゲーマーへの反抗〜虹と明星〜

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R8話 善意のWing【翼】

 
前書き
麻雀がキテまして……サボりがちになってごめんなさい。

 

 









「はぁぁぁっ!」
「よっと…!」


瞬きをする間に何度も交錯する刃と刃……ただ、一方のそれは全くと言っていいほど空振っている。仮に当たってもそれは刃同士の激突でしかない。

ゼロワンvsエグゼイド……高咲侑と俺 伊口才との戦いは、互角に見せかけたワンサイドゲームを見せている。


「どうした?お前の攻撃は当たるどころか掠りもしてねぇぜ?」
「んなことわかってるよ…!」
「じゃあもっと強く打ち込んで来いよ。」
「はああああっ!!」
「………なーんてな。」


俺の挑発に乗ってしまい、強く踏み込んでアタッシュカリバーを思い切り振り下ろす———俺はそれを余裕で躱し、前屈みになったゼロワンの腹を思い切り天上に蹴り上げる。

追撃は行わず、ゼロワンが地面に落ちてくるのを待つ。


「痛てて…!」
「スピードが互角以上ならパワー重視でねじ伏せる……これも悪手だ。どちらも上回っている敵にはステータスのバランス崩壊はカモでしかないからな。」
「うっ……」
「さて…次はどうする?」


パワー重視、スピード重視……どちらも格上には全くもって通用しない。ではどうするか————答えは単純かつ唯一無二である。


「じゃあ——!」
「!」


黄色いエフェクトを伴った高速移動を再び行うゼロワン……再び俺の懐に入り込み、俺を下から斬ろうとする。無論俺もキースラッシャーで受け止めようとする。

が……


「今だっ!」
「!!」

刃を振り下ろすモーションを急遽やめ、俺の左方へと回り込んでミドルキックを繰り出す———それを視認した俺はキースラッシャーの裏側で何とか受け止める。

今思いついた割にはシンプルでありながら、いい仕事をする。


「やっとわかったか……侑。」
「ええ…バトルは頭を使うもの。スピードとパワーのバランスをとりながら、瞬間的にどちらかを重視する———敵に塩を送るって大丈夫です?」
「ふん……塩くらい送ってやらねぇと勝負にもならねぇからなw」
「はああああっ!」


ミドルキックをやめ、アタッシュカリバーで再度———と見せかけて、突きを繰り出す。今度の攻撃はさすがに対応が間に合わない……俺は左腕でその剣先を受け止め、ダメージを最小限に抑える。

ダメージはほぼ皆無であったが……ノックバックを食らってしまう。


「ほう……」
「どーだ!ちょっとは僕の攻撃受け取って!」
「なるほど……戦いの中で成長していくか———まるで戦い方を思い出してるみたいだ。」
「……?」
「ま、誇りたいところ悪いが……ちょっと本気出してやるよ。」
「!!」


ゼロワンが反応した瞬間にはもう遅い……遅すぎる。

拳1つ分まで急接近した俺は片手でキースラッシャーを持ったまま、右フックパンチをお見舞いする。あまりのスピードとパワー……その2つの積が、そのまま攻撃力に化ける——運動エネルギーの公式だ。


「うっ……」
「さてと———そろそろフィニッシュか…?」
「いや…まだ…まだだよ……!」


痛みを堪えながらも立ち上がろうとするゼロワン……その瞳———支配に反対し、自由を求めてのしあがろうと反抗する瞳。

俺はその瞳が……


バンバンバン!!!


「!……!?」
「……!?」


突如俺にぶつけられた弾丸…無論そこまでのダメージは無いのだが、気に障るのは当然である。


「あ…?」
「そこまでにしてもらおうか外道…!」


俺に銃口——変身アイテム兼用のそれを俺に構え、今にももう一発撃たんとしている。そんな彼はいかにも真面目感が漂う黒い髪の中背の青年。

ゼロワンは突如現れた彼に尋ねる。


「キミは…?」
「俺は宮下陽人———防衛学科一年生にして…仮面ライダーだ!」


陽人と名乗る彼は手に持っていたアイテムを腰に装着……そしてコウモリが描かれたハンコ型アイテムを取り出し、ベルトに押印する。


【バット!】

【Confirmed!】

【Eeny, meeny, miny, moe♪ Eeny, meeny, miny, moe♪】


どちらにしようかなと神聖さ漂う声音で歌うドライバー———それが下す答えは……正義のみ。


「変身!」


【バーサスアップ!】

【Precious!Trust us!Justis!バット!】

【仮面ライダーライブ!】


コウモリが羽ばたく様を複眼に持つ…正義の執行者。若き英雄———仮面ライダーライブ。


変身したライブはすぐさま俺に向かって銃弾を放ちまくり、俺に迫る。


「はああああっ!!」
「ふっ…」


キースラッシャーでそれらを全て弾きながら、ライブとの距離は一気にゼロになる。


「なぜこのゲームエリアに……誰の差し金だ?」
「この学校のマスコット猫が教えてくれたんだよ……お前の悪事をな!!」
「さっきから正義漢を気取って、俺を悪に仕立て上げようとしてるが———何か大きな勘違いをしているらしい。」
「っ!!」


俺はライブの腹を蹴って無理やり距離を取らせる。


「俺もお前と同じ仮面ライダー……絶対的主役ってやつだってこと覚えておけ。」
「何…?だったら何故コイツと戦ってる!?」
「ただのミニゲームだよ……別に殺そうだなんて思ってねーよ———ちょっと怪我は負うかもしれんが。」
「何だと……?」
「だが…お前のせいで白けた———また次の機会に遊ぶとするか。」
「おい!待てっ…!」


俺は指パッチンと共に閃光のように姿を消す。


流石に姿を消してしまうと追いようがない……ライブはその変身を解除する。同時に侑もその変身を解除して、地面に横たわってしまう。

それを見た陽人は急いで彼女の元に行き、その様子を伺う。


「大丈夫か!?」
「う、うん...なんとかね///——ところで君は?」
「俺は宮下陽人ーーー防衛学科一年…またの名を仮面ライダーライブ。」
「ライブ……」

多くを語る体力を削がれてしまった侑の肩を持った陽人はゲームエリアから抜け出そうと元いた道を歩いていく……

すると。


「「侑ちゃん(さん)!」」
「歩夢…それに生徒会長…」
「打撲だらけじゃないですか…保健室に——」
「いや…それはダメだ。」
「「え?」」


侑の肩を持つ陽人が侑の返事よりも先に、2人にその返答をする。見ず知らずの人に急に否定されたことに歩夢はキョトンとする。


「えっと——あなたは…?」
「俺は防衛学科一年 宮下陽人。高咲侑と同じ仮面ライダーだ。」
「え…?」
「防衛学科は政府特務機関ヘラクレスって部隊の管轄だ。そして怪人や仮面ライダーに関する事項はごく一部の人間しか知らない…日常生活に大きく影響するからな。だから保健室に行って情報が漏れることは避けたい。」
「で、でも…」


困惑する歩夢。

そこで側にいた菜々は歩夢の態度をさらに軟化させようと、自分が把握している情報を説明しようとする。


「上原歩夢さん、この防衛学科の陽人さんが言っていることは理にかなっています———私もこの目で見ましたが、保健室で解決していい話ではないかもしれません。」
「生徒会長…」


頭ではなんとなくその論理が理解できた歩夢———それでも困り眉が治ることはない。

だが……次の瞬間。


「……ほいっと。」
「「「!!!」」」
「なんか重大な話っぽかったけど———もう治っちゃった♪」
「え…マジかよ———」


同じく仮面ライダーである陽人ですら目を疑った———当然と言えば当然。

この世界は多種族混合社会…異形の存在が居てもおかしくはないが、それにしてもこの生命力は異常と言わざるを得ない。

しかし侑はなんの困惑もせずに陽人に言いよる。


「陽人くん、君たち…ヘラクレスだっけ?その人たちの中に君以外にも仮面ライダーがいるの?」
「え?あぁ…俺ともう1人、防衛学科の学生長が——」
「そっか……」
「あっ…そういえば———」


菜々は思い出したように陽人に口添えをする。


「陽人さん。侑さんも歩夢さんもスクールアイドル同好会の一員になる予定だそうです。」
「!…そうか。なら侑さん、俺たちと一緒に怪人と戦ってくれ!」
「?」
「俺たち防衛学科に課された任務…それはスクールアイドルイベントにて多く発生する怪人を倒す———あなたもそうする予定のはずだ。」
「…!」
「俺たちと一緒に———人々を守ろう!!」


「!!———もちろん!」





ゼロワン———始まりの戦士。新たな戦士が…加わった。



————※————



〜〜〜♪


クラシック音楽が流れる高級ホテル……そこに併設された高級カフェでコーヒーを啜る、6に結ったカチューシャが特徴的な白く輝く長髪で、超グラマラスな女性。

ミルクコーヒーを一口飲み、温かい息を吐く。

『ふぅ…』

そして———そんな彼女の側に……よちよち歩きの乳児が2人。白黒半々の髪の双子。


「ねこ…はしってた〜」
『かわいかったね〜♪』ニコニコ
「うん!!」


ニコニコとした白ドレスの女性——ハイパーロードA。しかしその笑顔はどこか裏の顔を持っている……この状況とは無関係のそのことで。

そこに———


コツコツコツ……ガシャン!


「「父上さま〜」」
「……」


ぶっきらぼうに入ってくるなり、高そうな机を叩く俺は一番大嫌いな妻と対峙する。

俺は早速彼女を威圧する。


「よぉ…随分と悠々としてるじゃねぇか。Aqoursさん?」
『あら、あなたから来るなんて…嬉しいわ♡』


威圧も無意味…というよりむしろその視線を楽しんでいるかのような言い草である。

しかしそんなこと考慮している懐の広さは今の俺にない。


「俺のゲームの邪魔をするとは…覚悟はできてるんだろうな?」
『邪魔?何を証拠にそんなこと言うのかしら?」
「お前の眷属があの男を導いた———そのせいでせっかくのゲームがめちゃくちゃだ。」
『ふーん……』


彼女は俺を嘲るように微笑でコーヒーを一口飲んだ上で俺に言い放つ。


『私言ったよ?もしあの子を殺すような真似をするなら……「お覚悟ください」ってね♪』
「チッ……!」
『あなたの思い通りにはさせないわ———けど私のモノになろうっていうなら、話は違うわ♪』
「テメェ———」


彼女が対価に出してきた条件……これが全ての行動原理である。彼女たち【Aqours】は宇宙を生み出した……いわばあらゆる事象、力、存在の母である。だが同時に母の慈愛は子供たちを縛る狂気でもある。

そしてその愛は、夫である俺に対しても例外ではない……むしろ俺にしか向けられない。その理由はただ1つ、彼女の束縛を全く受け付けないのが俺だからだ。

そう……俺の答えは既に決まっている。


「誰がテメェみてーな若作りババアのモノになんてなるか!」
『は…?ババア?』
「あぁ。俺は誰からの束縛も受けない。俺は俺の道徳に則って行動する。」
『くっ…!』


思い通りの展開に運ばず、一転して悔しそうな表情を見せるハイパーロードA。俺はそれをさらに煽るようにテーブルに置いてあった抹茶ケーキを鷲掴んで、半分齧る……

それをみて……幼子はいう。


「父上さまごうかい〜」
「あぁ。マナーなんて所詮は誰かが勝手に作ったモノ……わざわざ従う必要なんてないのさ。」
『ちょっとあなた!『セフィオスとグリフォス』に勝手なこと教えないでよ!!』
「バカ。お前の愛情とやらで躾けられたらそれこそ大問題だ。」

エコーのかかった九色の声が怒りを帯びる。


『この子の育ち方で何もかも……それこそ『人が人でなくなってしまう』かもしれないのよ?』
「さぁ?その方が面白いかもしれないぞ?…それに。」




「もうそのカウントダウンは始まってんだよ……あいつらの意思によってな。」

















 
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