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ウルトラマンカイナ

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外星編 ウルトラホピスファイト part3


「ぐ、うぅッ……! あのロボット野郎、もう外に出ちまいやがったのか……!?」

 ――その頃。キングジョーが「通過した」洞窟の中で、弘原海達はうつ伏せに倒れ伏していた。
 琴乃とシャーロットを庇うように伏せていた弘原海は、周囲の安全を確認しつつゆっくりと起き上がる。2人の爆乳美女も、それに続くように静かに身を起こしていた。

「危ないところでした……! 申し訳ありません隊長、私が不甲斐ないばかりに……!」
「……駒門隊員、自分を責めてる暇なんてないわよ。このままでは、BURKスコーピオンもBURKセイバー隊も危ないわ」

 数分前――BURKエイティーツーから降りた弘原海達はこの洞窟の最奥で、沈黙していたキングジョーと遭遇していたのである。光波熱線によるものだけではない、深刻なダメージを受けていたそのボディは、弘原海達が発見した時点ですでに満身創痍となっていた。
 だが、そのキングジョーはまだ完全に戦闘機能を失ってはいなかったのである。弘原海達という「生命体」の接近を感知したキングジョーは、その機体を軋ませながらも動き出してしまったのだ。

 そして、決して広いとは言えないこの洞窟内で55mものキングジョーが動き出してしまったことにより、凄まじい振動が発生し――洞窟の一部が崩落してしまったのである。
 幸い、咄嗟に2人を庇うように伏せた弘原海に落石が降って来ることはなかったが、彼らはそのままキングジョーの暴走を見送る形となってしまっていた。

 起動したばかりのキングジョーはすでに洞窟を脱して、リーゼロッテ率いるBURKセイバー隊との交戦に突入している。BURKセイバーの機首付近に搭載されているレーザー銃の連射音は、この洞窟内にまで響いて来ているのだ。

「しかし、どうしてペダン星の兵器がホピス星にッ……!? まさか、この星の滅亡はペダン星人の仕業だったのかッ……!?」
「……いいえ駒門隊員、それは考えられないわ。キングジョーの破壊光線(デスト・レイ)では限界まで出力を引き上げたとしても、この星を焼き尽くすほどの火力は出せない。あの機体はむしろ、ホピス星が保有していた防衛戦力だったと見る方が妥当よ」
「なんだって……!? あのウルトラセブンですら敵わなかったと言われているキングジョーだぞ!? それがあんなザマになるまでやられちまったってのかよ……!?」

 外の状況に弘原海達が思いを馳せる中、シャーロットは自身が辿り着いた「仮説」を口にしていた。その内容に瞠目する弘原海に対し、彼女は深く頷いている。

「……ここは恐らく、あのキングジョーを保管しておくための格納庫だったのでしょうね。あの機体の背部にはこの星の言語らしき文字列と……ペダン星の『通貨』の記号が記載されていたわ」
「通貨だって……!?」
「この星の言語までは私にも分からないけれど、その記号だけでもある程度の背景は推測出来る。……ホピス星人はペダン星人から、あのキングジョーを『輸入』していたのよ」
「輸入……!? しかしシャーロット博士、キングジョーは……!」
「ええ、そうよ駒門隊員。弘原海隊長が今言った通り、あれはウルトラセブンですら苦戦を強いられたロボット兵器……決して安い買い物ではなかったはず。しかもあの機体は、星ごと焼き尽くすような光波熱線に晒されても、戦闘機能を維持出来るほどの特別製……。過去のデータにあるどのキングジョーよりも、強力な機体である可能性が非常に高いわ」
「……ホピス星人は一体、そんな代物を手に入れるためにどれほどの代償を……!?」
「全てが丸焼けになった今では、その真相も闇の中……ね。ただ少なくともホピス星人には、何としてもアレを手に入れなければならない理由があったのよ。……そうでもしなければ勝てない『相手』が居ることを、彼らは知っていたのね」
「……そこまで分かり切っていて、そのための準備までして、それでもこんなことになっちまったっていうのか!? そんなあんまりな話が、あって良いのかよッ……!」

 この星に破滅を齎す侵略者達に抗うため、あらゆる手を尽くしたはずのホピス星人。その無念に思いを馳せて胸を痛める弘原海は、血が滲むほどにまで唇を噛み締めていた。
 そんな彼の言葉に、シャーロットは首を振る。

「あって良いわけがない。……それを繰り返させないために、私達はここまで調査に来ているのでしょう? 弘原海隊長」
「あぁ……そうだったな博士。よし駒門、まずは俺達も脱出するとしようぜッ!」

 彼女の言葉に顔を上げた弘原海は、この洞窟から脱出するべく外に繋がる方向へと眼を向ける。だが、その胸中には一抹の不安があった。
 ――弘原海達がこの最奥に辿り着くまでの道には、幾つかの分岐路があった。この探索に追従していた男性隊員達は、その分岐先を調査するため弘原海達とは別のルートを探索していたのである。

「あいつら……上手く脱出してるだろうな……!? 通信機が故障してやがるのか、さっきから全然繋がらねぇしよ……!」
「彼らとて、この調査隊に選ばれたBURKの精鋭です。……これしきのことで死ぬような者などおりません。私は、そう信じます」
「駒門……あぁ、そうだな!」

 この振動による落石の発生。その影響を受けているのではないかと案じている弘原海を励ますように、琴乃は強気な声を上げていた。そんな彼女に背を押されるように、弘原海は意を決して真っ直ぐに脱出を目指して行く。
 一方、彼らに続いてこの場を後にしていくシャーロットは――ある思いを胸に、キングジョーが眠っていた場所へと視線を移していた。

(……特別製のキングジョーでも太刀打ち出来ないような侵略者達が、今の地球に攻めて来たらひとたまりもないわね。BURKの現行装備だけで、そんな奴らに対抗出来るとは到底思えない)

 ウルトラセブンですら叩きのめされてしまったことがあったという、最強のロボット兵器。そのキングジョーをあれほど無惨に痛め付け、この星を滅ぼしてしまえるような存在が地球に襲来した時、自分達は抗えるのか。このホピス星のような破滅を、回避する術はないのか。
 そんな思いを巡らせるシャーロットは独り、白くか細い手を強く握り締めていた。



(……「力」が必要だわ。今の地球の科学力だけでは絶望的に足りない。もっと強大な「力」が必要になる。そうだわ……ウルトラマンのような強大な外宇宙の戦力を、防衛手段に利用出来る手段があれば……!)

 地球人の科学力では太刀打ち出来ない絶対的な破壊者。その脅威にも屈しない、より強力な対抗手段を得なければ、地球人類もいずれはホピス星人のような末路を迎えてしまうのだと――。

 ◇

 そして、弘原海達3人が洞窟から脱出した頃。暴れ回るキングジョーを撃破するべく、リーゼロッテ率いるBURKセイバー隊は総攻撃を仕掛けていた……の、だが。

『ひ、ひぃいぃんっ! これだけ撃ち込んでも倒れる気配がないなんて、一体どれだけタフなんですかぁぁあっ!?』

 満身創痍になってもなお戦闘機能を維持しているキングジョーの攻勢に押され、圧倒的な力の差を分からされていた。外装に守られていない箇所を狙ってレーザー銃の砲火を集中させているのに、キングジョーは全く怯む気配がないのである。

 それどころか、リーゼロッテ達を迎撃する破壊光線の精度がますます高まっていたのだ。幸いにもまだ被弾している機体は無いのだが、それも時間の問題だろう。キングジョーはすでに、BURKセイバー隊の挙動を「学習」しているのだから。

「あのキングジョー、BURKセイバー隊の動きをもう把握し始めている……! このままでは完全に挙動を読まれて、偏差射撃で撃ち落とされてしまうわ! あのお嬢様(リーゼロッテ)達だけでは長くは持たない……!」
「なら、この星に来る時に使った光速ドライブで一旦離脱を……!」
「……ダメよ。ホピス星の近辺には幾つもの小惑星が点在しているの。事前の座標計算も無しに回避目的でいきなり使ったりしたら、この星を飛び出した瞬間に激突死だわ……!」
「くそッ、こうなりゃ少しでも奴の注意を引き付けるしかねぇな……! シャーロット博士は先にBURKスコーピオンに退避してろ! 俺と駒門は地上からBURKガンで攻撃だッ!」
「了解ッ!」

 洞窟を出てからすぐにその状況を目の当たりにした弘原海達は、即座にそれぞれの行動を開始していた。
 豊穣な爆乳と爆尻をばるんばるんと弾ませ、BURKエイティーツーに乗り込んだシャーロットはハンドルを握り、BURKスコーピオンの方向へと走り出して行く。それと同時に弘原海と琴乃は、光線銃を腰のホルスターから引き抜き、キングジョーを地上から銃撃し始めていた。

「大して効かなくても良い、とにかく奴を撹乱するんだッ! BURKスコーピオンを破壊されても、シャーロット博士を殺されても俺達の負けなんだからなッ!」
「はいッ!」

 当然ながら、その火力だけでは今のキングジョーにも通用しない。それでも、この星に関する情報を得たシャーロットを死なせるようなことがあっては、調査任務も失敗に終わってしまうのだ。

「……頼んだわよ、皆!」

 例えこのキングジョーに勝てずとも、自分達は何としても生き延びて、地球に情報を持ち帰らねばならない。この星で起きていた凄惨な破壊と殺戮。その惨状を、伝えねばならない。
 シャーロットはその決意を胸に、焦燥を露わにしながらも必死にアクセルを踏み込んでいた。後ろ髪を引かれるような思いを、振り切るように。

『ひぃいぃいんっ……! こ、このっ、このぉおっ……!』
「おい、リーゼロッテの嬢ちゃん! そんなに突っ込んでたら撃ち落とされちまうぞッ! もっと不規則に飛び回れッ! 奴の狙いを掻き乱すんだッ!」
『あ、あなたの指図が無くたってそうしますよ、この日本製ゴリラッ! こんな化け物を起こしておいて、偉そうな口叩かないでくれますかっ!』
「リーゼロッテ、聞き捨てならんぞ! 弘原海隊長に対して何という口の利き方を……!」
「お前ら揉めてる場合かっ!?」

 弘原海と琴乃も、リーゼロッテ率いるBURKセイバー隊も。敵わないと知りながらも、それぞれの武器でキングジョーを攻撃し続けていた。BURK隊員の誇りに賭けて、任務は必ず完遂する。その信念だけを頼りに。

 ――そして。キングジョーの注意が、地上に居る弘原海と琴乃に向けられようとしていた、その時だった。

「……!?」

 突如、弘原海達の後方――洞窟の方向から、幾つもの「閃光」が突き上がり。やがてその光が巨人の姿となって、弘原海達の眼前に舞い降りたのだ。

 マッハ5という脅威的な速度で空を駆け抜けると、弘原海と琴乃を庇うように現れ、キングジョーの前に立ちはだかる巨人達。それはまさしく、M78星雲の「光の国」からやって来た、正義のヒーロー達の勇姿そのものであった。

「な、なぁっ……!?」
「えっ……!?」
『あ、あれって……!』

 弘原海、琴乃、リーゼロッテをはじめとするBURKの面々は皆、その光景に瞠目している。BURKスコーピオンの船内に辿り着き、しとどに汗ばんだ身体でコクピットに乗り込んでいたシャーロットも、その巨人達の勇姿に息を呑んでいた。

「ウルトラ、マン……!」

 特濃のフェロモンを帯びた芳醇な汗を、白い爆乳の谷間に滴らせて。彼女は乳房と臀部をぷるんっと弾ませながら、身を乗り出して巨人達の「総称」を口にしていた。
 BURKスコーピオンに残っていた他の乗組員達も、この時ばかりはシャーロットの熟れた女体から漂う芳香も忘れて、ウルトラマン達の姿を凝視している。

 ――だが、彼らは知らなかった。知る由もなかったのだ。
 そのウルトラマン達は皆、弘原海が率いていた男性隊員達が「変身」した姿であることなど――。
 
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