フェアリーテイルに最強のハンターがきたようです
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第1章 始動編
第4話 希望
六魔将軍を倒した後、アレンと同じように100年クエストへ出ていたギルダーツがフェアリーテイルに帰ってきた。
マグノリアの住民やフェアリーテイルの仲間に歓迎されながら、ギルダーツはマカロフの元へと向かう。
「マスター、久しぶり!」
「仕事の方は?」
「うーん、がははははっ!」
ギルダーツは、手を頭の後ろに回して、笑い始めた。
そんなギルダーツの姿を見て、マカロフは俯く。
「ダメだ、俺じゃ無理だわ…」
ギルダーツの言葉に、フェアリーテイルのメンバーは驚きを隠せなかった。
「嘘だろ…あのギルダーツがクエスト失敗!?」
ギルドの誰かが呟く。
「いやー、改めて、アレンのやつがどれほどすごかったのか、身に染みてわかるよ」
ギルダーツはそう言いながら、カウンターの隅に置かれたビンを見つめる。その中には枯れた花が入っていた。エルザがアレンからもらったマジックフラワー、エクレールダムールであった。
アレンが黒竜と戦い、評議会のエーテリオンに飲み込まれた後、この花も光を失い、枯れてしまった。
その時より、またいつか光を取り戻すと信じて、ギルドの皆にその花のことを話し、エルザはギルドのカウンターに飾っているのだ。ギルドの誰かが、すぐに気づけるようにと。
そんなギルダーツの様子を見て、ギルドの皆は黙り込んでいる。
「あー、なんだ。ほんとは帰ってくる前まではマスターとナツだけに話しておこうと思ったんだが…やっぱ、皆に伝えることにするわ」
ギルダーツが含んだように告げる。ギルドの皆は一体なんだ?というような雰囲気でギルダーツの言葉を待っていた。
「…仕事先で、黒いドラゴンに会った」
その言葉を聞いて、ギルドの全員が目を見開き、これまでにない驚きを現した。
「そのドラゴンには、身体の至る所に切り傷があった。まず間違いなく、アレンが戦ったドラゴンだ。信じられねえだろうが、あの野郎、生きてやがった」
「ど、どこで…」
皆が言葉を失っている中、ナツが弱弱しい声で尋ねる。
「霊峰ゾニア…おかげで仕事は失敗しちまったよ、ちくしょう」
ナツはギルダーツに背を向け、歩き出す。
「行ってどうする」
ギルダーツが引き止めるように言った。
「決まってんだろ、イグニールの居場所と、アレンのことを聞くんだよ」
「もういねえよ、あの黒竜は大陸を、あるいは世界中を飛び回ってる」
ナツはギルダーツに、激高したように答える。
「それでもなんか、手掛かりがあるかもしれねえ!」
ギルダーツは呆れたように、自身のマントに手を伸ばす。
「ナツ、これを見ろ」
マントを脱いだギルダーツの体、それを見たナツとギルドのメンバーは、更に驚きで目を見開く。
「ギ、ギルダーツ、どうしたんだ、その身体…」
エルザは途切れ途切れといった感じでギルダーツに問いかける。
ミラジェーンは驚きのあまり、両手で口を覆っていた。
ほかのメンバーも、もはや言葉にならないといった様子であった。
「黒竜の一撃を喰らった。ほとんど一瞬の出来事だった。左腕と左足、内臓もやられた」
マントを元に戻し、再度、話を続けた。
「イグニールってやつがどうだか知らねーが、あの黒いのは間違いなく人類の敵だ」
そこまで言うと、ギルダーツは近くにあったカウンターの椅子に腰かける。
「そして…人間には勝てない…」
「そ、それを倒すのが滅竜魔導士だろ!俺の魔法があれば…それに、ガジルとウェンディもいる!黒いドラゴンなんて…」
「本気でそう思ってんなら、止めやしねーよ…。だが、忘れたわけじゃねえだろう?」
ギルダーツはそう言ってカウンターの端にある枯れた花を見つめる。
「あのアレンですら、勝てなかったんだ」
その言葉を聞いて、ナツはギルダーツを睨みつける。
「アレンは負けてねー!アレンは、評議会のエーテリオンに巻き込まれたんだ!評議員のやつらがエーテリオンなんか撃ち込まなきゃ…きっと、勝ってた!」
「確かに、評議員のやつらは互角に戦ってたと言っていたが、例えそうだとしても、今のお前じゃ、やつを倒せやしねえ」
ナツは拳を握りしめ、小刻みに震えている。怒りとその他色々な感情で訳が分からなくなっていた。
「く、くそぉ!!」
そう言い残し、ナツはギルドを飛び出していった。
「「ナ、ナツっ!」」
ハッピーやギルドのメンバーがナツを引き留めようと声を掛ける。
「ハッピー」
ギルダーツに声を掛けられたハッピーは、ギルダーツの方へ再び向き直る。
「お前がナツを支えてやれ。あれは人間じゃ勝てねえが、竜なら勝てるかもしれねえ。ナツなら、いつかきっと…」
ギルダーツの言葉を聞き、ハッピーは固まっていたが、
「あい!」
とすぐに返事をし、ナツの後を追いかけていった。
そんな様子を見守り、ギルダーツは再び大きなため息をつく。
「さて、話は戻るが、俺が出会った黒いドラゴンは間違いなく、あの日、あの時、アレンが戦った黒竜で間違いはないだろう」
ギルダーツの言葉を皆、固唾をのんで聞いている。
「妙だとは思わないか?」
「妙?」
カグラが聞き返す。
「わしも、お主の話を聞いていて、同じことを思ったわい」
ギルダーツの話を、先ほどまで黙って聞いていたマカロフが口を開く。
「どうゆうことですか?マスター」
今度はミラジェーンがマスターに聞き返す。
ギルダーツとマカロフはタイミングを合わせたように同時に答えた。
「「なんでやつは生きている?」」
その言葉に、カグラ、エルザ、ミラ、ウルティアが目を見開く。
そう、なぜ生きているのか。評議員は、アレンとアクノロギアはほぼ互角の状態で戦っていたと話していた。それはつまり、アクノロギアも相当なダメージを負っていたということだ。そんな上で、エーテリオンを投下された。
普通ならば生きてはいない。そう、アレンの攻撃と評議会のエーテリオン。どちらか片方だけであれば、生きていても不思議ではないだろう。だが、満身創痍の状態であれば、たとえ黒竜でも死は免れない、それが評議会、引いてはマカロフとギルダーツの考えであった。
だが、アクノロギアは生きていた。
「ど、どういうことだ?俺には何の話かさっぱり…」
グレイが困り果てたようにエルフマンに助けを求める。
「お、俺に聞かれても…ね、姉ちゃん…!?」
エルフマンも同様に、意味が分からずオロオロしている。リレーのように、エルフマンはミラジェーンに助けを求める。驚く。
ミラジェーンの頬に、一筋の涙が流れた。
「ど、どうしたんだ、姉ちゃん」
しかし、ミラジェーンは答えない。ただ、一点をマカロフとギルダーツの方を見て、身動き一つ取らない。エルザとカグラ、ウルティアも同じように目を見開いて見つめていた。
そんな様子を見ながら、ギルダーツは決心したように口を開いた。
「アレンが…生きている可能性が高い」
ギルダーツの言葉を聞き、またもギルド内に衝撃が走る。
「ど、どうしてそんなことが言える?」
ウルが、狼狽しながらギルダーツに問いかける。
「確証はない。だが、アレンと黒竜は互角の戦いをした。それはつまり、両者の力は拮抗していた。そして、黒竜…片方が無事だったということは…」
ギルダーツがそこでいったん言葉を紡ぐ。
「…同等の力を持っているアレンなら、攻撃に耐えるか避けるかして、今もどこかで、生きている可能性が高い…ということじゃな」
ギルダーツが紡いだ言葉を、マカロフが繋ぐ。
「ずっとアレンの無事を信じていたお前らにはわりーが、つい先日まで俺は、正直、アレンは死んだんだと思っていた。それは、黒竜が死んだとされていたからだ。黒竜が耐えられない攻撃に、人間であるアレンが耐えられるわけはない。だが、黒竜が生きていたのであれば、アレンももしかしたら…そう、思ったんだ」
それは、ギルダーツだけでなく、皆が感じていたことであった。
アレンの生存の可能性。どこまで行っても予測の範疇でしかないが、それでも、フェアリーテイルのメンバーは、確証に近い何かを感じていた。「絶対に生きている」、そう信じることのできる材料を新たに見つけたのだから。
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