ガチゲーマーになった

　　　　　　　　　　　　　　　　ガチゲーマーになった
　高校を卒業してから地元の工場で働いている大正智一はゲームが趣味だ、それで仕事から帰ると毎日楽しんでいるが。
　妹で高校生の寧々は呆れた顔で兄に言った。
「たまには外出したら？」
「休日はか」
「お兄ちゃん仕事してないとずっとゲームじゃない」
「馬鹿言え、飯食って風呂も入ってるぞ」
　智一は妹にこう返した、長方形の顔でくぼんだ小さな目とおちょぼ口にこけた頬それに短い黒髪の一七二程の背の男だ。
「ちゃんとな」
「そうだけれど」
　それでもだ、寧々は言った。大きなはっきりした目と小さな唇とホームベース型の顔に長めの黒髪をポニーテールにした少女だ、一五六程の背で発育は結構いい。
「お家にいたらでしょ」
「ゲームばかりか」
「テレビゲームばかりね、そのご飯だって掻き込んで」
　そうして食べてというのだ。
「お風呂もシャワーさっと浴びて」
「またゲームだな」
「そんなのじゃない」
「いいだろ、別に金かかる趣味じゃないだろ」
　兄は弟に憮然として返した。
「ギャンブルじゃないんだからな」
「お酒も飲まないし煙草も吸わないし」
「俺はゲーム一筋なんだよ」
「課金もしないわね」
「課金なんかしたらすぐになくなるしな」
　金がというのだ。
「そうしたゲームもしないよ」
「そうよね」
「だからな」
　智一はさらに言った。
「俺は誰にも迷惑かけてないぞ」
「だからいいっていうのね」
「そうだ、外出もするか」
　休日にはというのだ。
「俺はずっとだ」
「ゲームをしてなのね」
「生きていくからな、趣味はこれ一筋だ」
　こう言ってだった。
　彼はいつも仕事から帰ると仕事がない日はそれこそ一日中ゲームであった、会社でも休憩時間はスマートフォンで攻略法を研究していた。
　そんな彼を見てだ、工場の社長が言ってきた。
「君ゲーム好きだね」
「生きがいですよ」
　智一は笑顔で答えた。
「俺にとってはです」
「そこまでなんだね」
「はい、ゲームをしていたら」
　それこそというのだ。
「それで。です」
「君は幸せかな」
「幸せですよ、ただ仕事はちゃんとしますんで」
　智一はこのことは断った。
「宜しくお願いします」
「それはそうだね」
　社長もそれは認めた、初老の穏やかな感じの人である。