| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

僕は 彼女の彼氏だったはずなんだ 完結

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

16-⑷

 「佳乃ちゃん さしでがましいことだったら、ゆるして あのね、今年二十歳でしょ 来年の成人式の振袖 私の方で用意させてもらえないかしら と言っても、お下がりなんだけどね どうかな」

 佳乃ちゃんは「店長」と言った切り、下を向いていた。

「どうして、そんなに私のことを・・」と、言ってきた顔は泣いていた。

「ごめんなさい 私 おせっかいよね ごめんね」

「違うんです 嬉しいんです いつも、気にかけてもらって・・妹が、小学校の先生になるのが夢なんです だから、大学に行ってほしくて 私 振袖なんて、贅沢だって、あきらめていたから・・でも、そんな厚かましいこと、ご遠慮させてもらいます」

「妹さん 想いなのね」

「あの子 頭いいんです それに、おしゃれもしないし 我慢して・・参考書なんかも、図書館で借りてきて・・せめて、大学くらい、応援しなきゃと思って お母さんと・・」

「うん 頑張ってるもんね でもね 佳乃ちゃん 一生に一度の事ヨ 地元だから、お友達も集まるんでシヨ お願い 私は、そんなこと出来なかったから、佳乃ちゃんには、ちゃんと、振袖で想い出作って欲しいのよ」

 佳乃ちゃんは、しばらく下を向いて考えているようだったけど

「店長 ありがとうございます 甘えさせてもらってもいいですか」

「えぇ よかったわ あのね 私も、着せてもらったんだけど、蒼の実家のお義母さんのものなの だけど、とっても、きれいな柄よ 私は、気に入っているの だから、佳乃ちゃんにも、着てほしくって もちろん、お母さんにも、お話してあるわよ」

「ありがとうございます 私、こちらに雇ってもらえて、本当にラッキーだったと思っているんです。店長にも、よくしてもらえて、晋さんにも親切に教えていただけて・・。料理学校行って居るよりも、いろんなこと教えてもらえるし・・」

「そう 良かったわ 晋さんもね 教えたことは、きちっとやるし、掃除の隅々までやってくれるし助かるって言ったわよ」

「そうなんですか あんまり、話さないですから、気に入られてないんかなって思ってました」

「あの人は、そうなんよ 最低限の必要なことしか話さないの でも、面倒見はいいのよ 武君もちゃんと一人前にしてきたし、佳乃ちゃんも頑張ってね」

 そして、次のお店のお休みの日 私は、産婦人科で受診した。秋に出産の予定だった。あの時、私、今までにないものを感じてしまって、蒼にしがみついて離れなかったんだ。その時の・・。

 何か、とんでもないことしてしまったような・・。でも、思っていたより、少し早いけれども、蒼も望んでいたことだし、私も、喜びが湧いてきていた。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧