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レーヴァティン

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第二百二十八話 建て直しその六

「身内も何もかもっちゃ」
「家臣でもな」
「それは正しいっちゃが」
「しかしやり過ぎたな」
「それで誰もいなくなったっちゃ」
「源氏の血は絶えた」 
 それも完全にだ、嫡流とされる彼の祖父である為義の血筋は五代にして誰もいなくなってしまった。
「ああなったことを思うとな」
「よくないっちゃな」
「織田信長は苛烈というが」
「敵も結構許してるっちゃ」
「あそこまではしなかった」
 源頼朝の様なことはというのだ。
「そうだった」
「敵は皆殺しで」
「家臣に対してもな」
「粛清をしたっちゃ」
「織田信長も弟を殺したが」
 織田信勝のことだ、かつては信行と言われていた。
「しかしな」
「一度は助けてるっちゃ」
「その息子までは殺さなかった」
「逆に重く用いているっちゃ」
「自分の傍に置いていた」 
 そして時には名代の様な仕事をさせていた、一族の中でも非常に重く用いていたのである。その名を津田信澄という。
「そうしていた」
「頼朝さんは息子までっちゃ」
「それが幼子でもな」
 義経の子供のことである。
「殺していたっちゃ」
「木曽義仲にもそうしてな」
 人質だった彼の息子己の娘の許嫁もそうした。
「無論平家もな」
「皆殺しっちゃ」
「奥州藤原氏もそうしてな」
「敵はいなくなったっちゃ」
「そうなったが」 
 まさに無数の屍の上に鎌倉幕府を開いたのがというのだ。
「彼以降もな」
「源氏は殺し合ってっちゃ」
「誰もいなくなった」
「血が完全に絶えたっちゃ」
「因果だ」
 英雄は厳しい目で言い切った。
「平家は隠れ里に落ちて生きていたが」
「源氏はいなくなったっちゃ」
「傍流は生き残ったがな」
 武田信玄で知られる甲斐の武田家もその一つだ、この家は甲斐源氏といって源氏の家系でも名門であった。
「それでもな」
「嫡流はそうなったっちゃ」
「五代で滅んだ」
 為義から数えてである。
「誰もいなくなった」
「身内で殺し合ったっちゃしな」
「そして敵であるが」
「容赦せず皆殺しにしてっちゃ」
「いなくなった、平清盛は子供は助けた」
 その頼朝も然りだ、義母に言われて伊豆に流すに止めたのだ。
「そして降ればな」
「敵の有力な将でも用いたっちゃ」
「もっと言えば身分の低い者にも優しかった」
 そして寛容であったのだ。
「穏やかな声で話し寒さに震えているとな」
「労わったね」  
 桜子が言ってきた。
「外でそうしていたら自分の部屋に入る様に言って」
「身分の高い自分と同じな」
「そうした話を見るとね」
「入道の方がいい」
 清盛の方がというのだ、彼は出家したので平家物語等では入道殿と呼ばれるのだ。尚大事なことは清盛とは呼ばれないことだ、これは諱であるので普通は使われないのだ。 
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