とある3年4組の卑怯者
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42 最上級生(ろくねんせい)
前書き
この危機を救うのは、この作品では出番はないと思われる意外な人達です・・・!!
藤木と笹山は蹴られたところを手で抑えた。リリィが泣きながら震える。
「オラ、サッサとそいつ出せよ!」
リリィに迫る上級生たち。そして理子という女子がリリィから本をひったくるように取ろうとする。綱引きのように引っ張り合う形となった。
「抵抗してんじゃねえよ!」
茉友という女子がリリィの頬を殴り、リリィの手が雑誌から離れた。もうだめかと藤木は絶望した。しかし、その時・・・。
「やめなさいよ!!」
五人は怒鳴り声が聞こえた方向を向くと、別の上級生が四人いた。一人は見覚えがあった。まる子の姉である。他の三人は彼女の友達かと藤木は察した。
(さ、さくらのお姉さん・・・!?)
「下級生にこんな暴力振って、何を考えているの!?」
さきこが近づき、上級生に聞いた。
「う、うるせえ、こいつらが理子たちに本をくれねえからだよ!」
理子と言う女子が言い訳をした。
「ち、違います・・・!この人たちは私の友達の本を無理やり取ろうとしたんです。私を人質にして・・・」
笹山は必死で説明した。
「てめえは黙ってろよ!」
茉友という女子が笹山に怒鳴り、彼女の脇腹を蹴った。
「おい、蹴るなよ!可哀想だろ!」
顔の悪そうな根岸という男子が茉友という女子を批判して言い放った。
「いいんだよ、こんな奴!」
その時、さきこと眼鏡をかけたよし子という友人がそれぞれの女子の腕を掴み、勢いよくビンタした。そしてさきこが理子を地面に倒し、彼女の手から本をひったくり、非難の言葉を放つ。
「暴力振って人の本を盗るなんて貴方達は最低よ!強盗と一緒だわ!」
「あ!?理子たちはこの外人に本盗られたんだよ!」
「はあ!?」
「いいえ、違います!私はその本を買おうとしたらその人たちが立ち読みしてて、それで買ったらよこせとしつこく迫ってきて・・・!」
リリィは泣きながら必死で訴えた。
「そうだったのね・・・」
よし子が彼女に同情した。
「読みたいなら立ち読みしないで買えばいいでしょ!?」
さきこは怒り続ける。
「小遣いが足りねえんだよ!」
「じゃあまた入荷するまで待てばいいじゃない!少しは我慢しなさいよ!それにアンタら口が悪すぎるわよ!」
「あ、テメエら何様のつもりだよ!?」
「それはこっちの台詞よ!私たちは六年生よ!アンタ達は何年生なのよ!?」
「るせえ、最上級生が威張りやがって!」
その時、一人のイケメンそうな男子(さきこから小山と呼ばれた男子)が出てきて怒鳴る。
「いい加減にしろよ!暴力振っといて今度は口答えか!?反省しないならたとえ女でも殴るぞ!」
「う・・・」
「それに一方的に君たちが殴っているようだったぞ!それでも自分は悪くないというのか!?」
根岸も怒鳴った。
「う、うるせえ!!」
茉友という女子が喚く。
「もう許さないわ!」
さきこが理子と言う女子の頬を再びビンタし、よし子も茉友の頭を平手打ちした。
「小山君、根岸君、貴方達も好きにやっていいわよ!」
さきこが小山と根岸に促す。
「う、やめてくれ!!」
「じゃあ、この子達に謝りなさい!そしてもう二度とこんなことしない事!」
「分かったよ、悪かったな!茉友、行くぞ!」
二人組の上級生は走って去った。さきこは取り上げた本をリリィに返した。
「ありがとうございます・・・」
まる子、たまえ、山根が安堵して入ってきた。まる子が落ち着きの声をあげる。
「はあ、よかった~」
「さくらのお姉さんたち、助けてくれてありがとうございます」
「いいのよ、藤木君達、大丈夫?」
「あ、はい・・・」
藤木は照れながら礼をした。
「君たち怪我をしているじゃないか!」
根岸が驚いた。
「とにかく、私の家に来て!」
さきこが三人を誘った。
「でも私ピアノがあるので、遅刻してるしもう行かないと・・・、本当にありがとうございました!」
笹山は慌てて言って、その場を去った。しかし、痛みがあって上手く走れなかった。
「笹山さん、無理しないで、私が付き添うよ!」
たまえが心配そうに言った。
「穂波さん、ありがとう」
笹山はたまえに支えられて去った。リリィがはっと思い出す。
「そうだ、昨日あの人たちに笹山さんの雑誌を身代わりにして逃げて、その後捨てられたんだった、笹山さんの雑誌を弁償しないと・・・」
「ああ、僕が半分出すよ」
藤木が安心させようとしていった。
「二人だけじゃ大変でしょ?私も出してあげるわ」
さきこが優しく言った。
「私も出すわよ」
「俺も出すよ」
「俺も!」
さきこの友達も親切に言ってくれた。
「あ、ありがとうございます・・・」
リリィは自分を助けてくれ六年生達に深く感謝した。
笹山はたまえに連れられて帰宅の道を急ぐ。
「穂波さん、ごめんね、迷惑かけて・・・」
「いいよ、気にしないで」
そして笹山の家に辿り着いた。
「た、只今・・・」
「かず子、遅いじゃない!!・・・あら?」
笹山の母は帰宅が遅い上にピアノ教室に遅刻している娘を叱責しようとしたが、怪我だらけの姿を見て表情を変えた。
「笹山さんは、その、上級生の女子に絡まれて怪我したんです!」
たまえが弁解した。
「そうだったの・・・。穂波さん、ありがとう」
笹山の母はたまえに礼をした。結局、怪我の手当ての為、ピアノの稽古は休む羽目となり、手当てが済むとたまえも帰って行った。
(リリィさんの本、守れてよかった・・・)
笹山は安堵した。しかし、自分が買った雑誌を手放した事は悔やんでも仕方がない。
(誰かに借りるしかないわね・・・)
笹山はそう思った。それにしても藤木が自分達を助けてくれた事についてやはり彼は卑怯ではないと感じる事ができた瞬間だった。しかし、笹山はある事が気になった。
(リリィさんって、藤木君が私の事も好きになってるって知ってるのかしら・・・?)
後書き
次回:「弁償」
まる子の姉、さきこら6年生の介入でリリィの雑誌を守る事ができた藤木達。翌日、リリィは笹山に雑誌を弁償して彼女に渡す・・・。
一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!!
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