とある3年4組の卑怯者
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43 弁償
前書き
リリィの雑誌を巡って上級生の女子から暴行を受けた藤木、リリィ、笹山。それを救ったのはまる子の姉とその友人達6年生だった・・・!!
藤木とリリィは6年生達の協力で笹山が昨日買った雑誌と同じものを書店で購入することに成功した。
「本当にお金出させてしまってごめんなさい・・・」
藤木が謝った。
「いいのよ、だって二人だけじゃ、お金払うのにすごく負担がかかるでしょ?」
さきこは気にもせず、笑顔だった。
「は、はい・・・」
「お姉ちゃん、今日ばかりは優しいね」
まる子が怪しげに姉を睨んだ。
「な、何言ってんの!いつも優しいわよ!」
さきこは慌てて抗議した。
3年生4人と6年生4人のグループという珍しい構成だった。
「ところで君は外国人っぽい顔をしているね?」
根岸がリリィに聞いた。
「はい、お父さんがイギリス人なんです」
「へえ、すごく可愛いね」
「あ、ありがとうございます」
リリィは照れた。
「根岸君、そりゃリリィは驚くほど可愛いよ!だから藤木が好きになってんだ!」
「お、おい、さくら!」
藤木は赤面した。
「まあ、いいじゃないの~」
まる子はニヤニヤした。皆がハハハと笑う。
「ええと、藤木君だっけ?いいじゃない、好きな人がいて、それにそれを知ってもらえるなんて恥ずかしいかもしれないけど嬉しいでしょ?」
さきこの友人、よし子が藤木に言った。
「え?はい、確かに」
「私なんて好きな人はいるけど、未だにその人に想いを伝えることができないからね・・・」
よし子は恥ずかしながら言って小山の方を一瞬見た。
「ん・・・?」
小山はよし子が自分を一瞬だけ見てどうしたんだろうと思った。
「そうですか。確かに好きだって言うのは恥ずかしくて逆に怖いですよね。僕は嫌われるんじゃないかってずっと不安に思っていました」
「そうかもしれないわよね・・・」
藤木はよし子も自分のように告白を恥ずかしがっているんだと思った。確かに好きな人に想いを伝えるのはリスクもあるかもしれない。しかし、藤木はそれでもリリィにはラブレターを出し、さらには彼女が転校してきたことで想いを正確に伝えることができた。笹山についても堀内竜一との件の際に彼女に好意を気付かせた以降は以前よりも好意的に接している感がある。
「大丈夫ですよ。思い切って伝えてみてください!きっとその人も答えてくれますよ!」
「え?うん、そうね・・・、ありがとう」
よし子はやや照れた。
やがて分かれ道にさしかかった。別れ際に小山が言う。
「もしまた何か嫌な目に遭わされたら俺たちに言ってくれよ!俺たちは6年2組にいるからいつでも相談に乗るよ」
「そうだな!まる子ちゃんの友達繋がりだしな!」
根岸もそう言ってくれた。藤木は6年生に味方になってもらうとは有り難い気もしたが、一人で追い払えない自分がやや情けなく思った。
「あ、ありがとうございます・・・」
藤木とリリィはさらに山根とも分かれ、まる子とその姉と共に、さくら家へ向かった。そして傷の手当てをしてもらい、絆創膏を貼ってもらった。その後、ココアをご馳走になり、さくら家を後にした。帰り途中、リリィが藤木に話しかける。
「藤木君、今日はありがとう・・・」
「え?で、でも、僕も結局一緒にやられたし、助けてくれたのはさくらのお姉さん達だよ・・・」
「でも、藤木君に助けてほしかったんだけど、あの時は急いでいたし、誰かに言うなって口止めされてたの。でも藤木君は気づいてくれたから嬉しいわ」
「い、いやあ・・・」
藤木はリリィがこんなみっともなくやられていた自分に礼を言ってくれるなんてやや恥ずかしく思った。リリィと別れると、もっと頼もしい男になりたいと自分で思うようになった。
(そうしたいならまず卑怯を治したいな・・・)
翌日、リリィは笹山に声をかけた。
「笹山さん、昨日は本当にごめんね。私のために人質になって、それに洋琴のお稽古まで遅刻させちゃって・・・」
「いいのよ、もう気にしないで・・・」
「あ、そうそう、あの後まる子さんのお姉さんたちがお金出してくれたから笹山さんの雑誌を弁償したわ。今日私の家に来れる?」
「え、いいの?わざわざごめんね・・・」
笹山はリリィの家に向かった。
「こんにちは」
「あら、あなたが笹山さんね。どうぞ上がって」
リリィの母が出迎えた。その時、リリィも現れた。
「来てくれたのね。はい、これよ」
リリィは雑誌の入った紙袋を確認した。笹山は受け取り、中を確かめた。自分が買ったのと同じ漫画雑誌だった。
「う、うん、ありがとう・・・」
「昨日はウチの子の問題に巻き込んで本当にごめんなさいね。クッキーとマドレーヌがあるから是非食べていって。紅茶もあるわよ」
リリィの母が謝るように笹山に言った。
「いえ、大丈夫です。リリィさんは全く悪くありませんので・・・」
笹山はリリィの母が好きなブランドのクッキーとマドレーヌをご馳走になり、紅茶も貰った。そしてリリィと笹山が話をする。
「そういえば藤木君も巻き込ませちゃったわよね」
「え、あ、うん・・・、あの時、途中で藤木君達に会ったけど、笹山さんに何されるかわからなくて言えなくて、でも私が嫌がらせ受けるところを見ていたから気付いて追いかけてきたのよ。もしかして誤解してた?」
「う、ううん・・・、そんな事ないわ。藤木君も知ってたんだ。だから来たのね」
「うん・・・。藤木君も誘ったんだけど、『僕は結局何も助けてやれなかったから』って断っちゃって・・・」
「藤木君、もしかして助けに行こうとして自分もやられて、恥ずかしく思っちゃったのかな・・・」
笹山もリリィも藤木を心配そうに思った。
「リリィさん、電話を借りていいかしら?藤木君に電話するわ・・・」
藤木は自分の部屋でボーっとしていた。
(あんなみっともない所見せた自分が情けないなあ・・・)
藤木は上級生に暴力を振るわれた笹山とリリィを自分で助けきれず、まる子の姉ら6年生に助けを借りた自分が恥ずかしく、頼りないと自覚していた。その時、電話が鳴った。藤木が出る。
『あの、藤木君、笹山だけど』
「え、笹山さん!?」
『今藤木君が気になってリリィさんの家から掛けているんだけど、藤木君は何も助けてくれなかったわけじゃないわよ。だから元気出して。あの時、藤木君と山根君に会っていてよかったってリリィさんも言ってたから、だから落ち込まないで・・・』
「あ、うん、ありがとう・・・」
『昨日は助けてくれてありがとう、じゃあ、また明日ね』
「あ、うん、さようなら」
お互いは電話を切った。藤木は笹山に言われて少しは安堵することができた。
笹山は電話を切った後、リリィに藤木は自分も好いていることを言うべきか迷った。
「リリィさん、藤木君は卑怯って言われているけど、本当は悪い人じゃないから信頼してあげて」
「そうね・・・、私もそうは見えないし」
「でも藤木君、すごく迷っている事があるの」
「え?」
「藤木君はリリィさんに会う前から、私の事も好きになっていたの」
「・・・え!?」
リリィは笹山の告白に驚きを隠せなかった。
「それで今リリィさんと私どっちにするか今すごく苦しんでるの。時間がかかるかもしれないけどどっちか決められるまで待ってあげて。藤木君と仲良くし続けてあげて・・・」
「そうだったのね・・・。分かったわ。私も藤木君を信じるわ・・・」
リリィと笹山、藤木が好意を寄せる二人はお互い藤木の心を理解しつつ、友であるようなライバルであるような関係を築くのだった。
後書き
次回:「帰国」
花輪は母親が日本に帰国するという連絡を受ける。そしてリリィはある事を花輪に相談していた。藤木は花輪と喋るリリィを見て羨ましく思い・・・。
一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!!
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