モンスターハンター 〜故郷なきクルセイダー〜
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特別編 追憶の百竜夜行 其の四
前書き
◇今話の登場ハンター
◇エルネア・フェルドー
華奢で無愛想な印象を受ける少女だが、その体格に反した膂力の持ち主でもあり、仲間を気遣う優しさもある新人ハンター。武器はモンテベルデを使用し、防具はドボルシリーズ一式を着用している。当時の年齢は12歳。
※原案は妄想のKioku先生。
◇ドラコ・ラスター
明るく真っ直ぐで情に厚い好青年であり、赤い髪と左眼の上にある傷跡が特徴の新人ハンター。武器はフラムエルクルテIを使用し、防具はゴシャシリーズ一式を着用している。当時の年齢は17歳。
※原案はたつのこブラスター先生。
◇ゴウ
大剣を軽々と振り回す剛腕の持ち主ながら、礼儀正しい好青年でもある新人ハンター。武器はシルムズブレイドIを使用し、防具はベリオシリーズ一式を着用している。当時の年齢は20歳。
※原案はホープ先生。
◇カエデ
黒髪の長髪が特徴の寡黙な新人ハンターであり、素早い剣捌きを得意とする双剣の使い手。武器はフルージェントダガーIを使用し、防具はカガチシリーズ一式を着用している。当時の年齢は18歳。
※原案は団子狐先生。
ウツシの同期達は新人らしからぬその手腕を以て、百竜夜行の侵攻を辛うじて食い止めている。だが、群れを率いている「大物」が健在である以上、この戦いを終えることはできない。
同期達が耐え切れず物量に押し潰されるのが先か、首魁を討って群れを瓦解させるのが先か。その命運は、リオレイアと対峙している前線のアダイト達に懸かっている。
拠点に搬送されたウツシにも、それは分かっていた。彼らだけでは、あの大物は仕留め切れないということも。
「まだ、奴を討つには足りないんだ……! 俺が、俺が行かないとっ……!」
「無理に動いては駄目、身体に障る。応急薬は確かに傷は癒せるけど、出血で消耗した体力までは戻らない」
そんな彼をここまで送り、看病していたエルネア・フェルドーは。疲れ果てた身体を引きずり、戦線に戻ろうとするウツシの肩に手を置き、座らせようとする。
だが、ドボルシリーズの重量を乗せて制しようとする彼女の手を掴むウツシは、力強い瞳で彼女を射抜いていた。ここだけは、敬愛する同期達にも譲るわけには行かないのだと。
「分かっていたさ……ずっと前から分かっていた。強く気高く、情に厚い君達ならば必ずそう言うだろうとね。だが、だからこそ俺が……いつまでもここで寝ているわけには行かないんだ」
「……困った時は助け合い。あなたが気負う必要はない」
「ふっ……変わらないね、エル。俺も、君が知っている俺のままだ。なら、分かるだろう? こう見えて、結構頑固な奴だってことはね」
お互い、昔から変わっていない。短いやり取りの中でも、すぐに分かってしまう。
「……!」
「エルッ!」
それ故にため息を溢すエルネアの背後に――バサルモスが現れたのはその直後だった。
拠点と前線を繋ぐ通路も未完成だったために、モンスターが容易く侵入できてしまう状態になっていたのである。だが、エルネアの眼に動揺の色はない。
ハンターは常在戦場。この程度の非常事態に狼狽えていては、生き延びることなどできないのだから。
「……邪魔」
振り向きざまに、パワーバレルを装着したモンテベルデを引き抜いた彼女は。熱線を放射しようとしていたバサルモスの顔面に、至近距離からの接射をお見舞いする。
文字通り出鼻を挫かれてしまったバサルモスは、思いがけない反撃に体勢を崩してしまうのだった。その隙にウツシは翔蟲を飛ばし、岩竜の巨体に鉄蟲糸を絡ませていく。
「ハァッ!」
消耗した身体を補うべく、鉄蟲糸を利用してバサルモスの身体に飛び乗り、操竜状態に持ち込んだのはそれから間もなくのことだった。
「これなら俺の体調なんて関係ないだろう? さぁ、行こうかエル! 俺を死なせたくないというのなら、一緒に付いてくるしかないぞ!」
「……本っ当、呆れた人」
アオアシラとは比にならない戦力を持つバサルモスなら、確かにリオレイアの火力にも対抗できるかも知れない。だが、数分前まで死に掛けていたにも拘らず、すぐさま戦線に戻ろうと走り出していくウツシの姿には、エルネアも呆れ顔になっていた。
「……ふふっ」
だが、それはそれで彼らしいとも言える。元気じゃないよりは、余程いい。やがてその結論に至ったエルネアは、微笑を浮かべながらモンテベルデを背中に回すと、ウツシを追うように走り出していく。
◇
その頃、シン達の近くでは別のハンター達が大型モンスターの対処に奔走していた。柵を破ろうと暴れ回るプケプケを仕留めるべく、3人の「新人」がその巨体を包囲している。
「俺の乱舞、見せてやるぜッ!」
「閃光玉を使う……! 攻める時は、今ッ!」
先陣を切っているのは、フラムエルクルテIを振るうドラコ・ラスター。ゴシャシリーズを纏う彼は溌剌とした叫びと共に、双剣を手に毒妖鳥と渡り合っていた。
彼と同じ双剣使いであるカエデも、閃光玉を投げた直後にフルージェントダガーIを引き抜き、プケプケに飛び掛かっている。カガチシリーズに袖を通している彼女は、眩い輝きに翻弄される毒妖鳥を狩るべく、その二振りの刃をかざしていた。
「閃光玉、ありがとうございますカエデさん! はぁあぁあッ!」
混乱状態にあるプケプケを一気に仕留めるべく、ベリオシリーズで全身を固めているゴウも、無防備な毒妖鳥の頭部にシルムズブレイドIを振り下ろしていく。
その巨大な刃を眉間に沈められたプケプケは、さらなる狂乱状態に陥ると、無軌道に尾を振り回し始めていた。
カエデとゴウは咄嗟にその気配を察知して回避したのだが、深追いしていたドラコだけは反応が間に合わず、毒妖鳥の尾が顔面に直撃してしまう。
「ぐぅッ!」
「ドラコさんッ!」
「ドラコ……!」
「……よえーな。前に戦ったゴシャハギの方が強かったぞ」
ゴウとカエデが声を上げる中、ゴシャヘルムを破壊され宙に舞い上げられたドラコは――地を転がりながらも不敵な笑みを浮かべ、すぐに立ち上がっていた。
ゴシャハギの強力な個体とも戦ってきた彼にとって、この程度のダメージなど無問題なのである。頭部の防具を失い、燃えるような赤髪と左眼の傷跡を露わにされても、ドラコの眼に恐れの色はない。
ようやく混乱状態から復帰したプケプケは、1番弱っているハンターから始末してやろうとドラコに狙いを付けるが、その頃には彼も愛用の双剣を手に、毒妖鳥の懐へと飛び込んでいた。
「踊ろうぜ……フラムエルクルテッ!」
「……ゴウ。私は動きを止めるから、強力な一撃はあなたに任せる」
「分かりました! 俺も、全力で行きますッ!」
猛炎を宿したフラムエルクルテの鬼神連斬が、プケプケの全身を切り刻んでいく中で。カエデも仲間達をサポートするべく、フルージェントダガーの雷刃を以て、毒妖鳥の両脚を斬りつけていた。
その猛攻に身動きが取れなくなったプケプケに、とどめを刺すべく。シルムズブレイドを垂直に振り上げたゴウは、焔を纏う渾身の溜め斬りで、ついに毒妖鳥の頭部を両断する。
「よし……仕留めました! さぁ皆さん、すぐに次のモンスターを! 剥ぎ取りの時間はありませんよ!」
暴走の限りを尽くしていたプケプケは、その一閃によりついに倒れ。ドラコ達は毒妖鳥の死を確信すると、すぐさま次の獲物へと狙いを移していく。
「分かってらぁ! カエデ、ゴウ! あそこにいる奴らを止めるぞッ!」
「……言われるまでもない」
通常のクエストとは違い、剥ぎ取りのことを考えている時間などないのだ。今この瞬間も、仲間達が討ち漏らしたモンスターの群れが、里に繋がる門を破ろうとしているのだから。
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