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モンスターハンター 〜故郷なきクルセイダー〜

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特別編 追憶の百竜夜行 其の三

 
前書き
◇今話の登場ハンター

◇アテンス・センテラ
 キザで目立ちたがりで自信過剰……というクセの強いボクっ娘である一方、連携を重視して立ち回る堅実さも持ち合わせている、モガの村出身の新人ハンター。武器は飛雷棍ムシカガチIを使用し、防具は カガチシリーズ一式を着用している。当時の年齢は13歳。
 ※原案はただのおじさん先生。

◇シン・オーマ
 10人兄妹の長男として稼ぎの良いクエストを探していた新人ハンターであり、独特な「訛り」が特徴の巨漢。武器はバスターソードIを使用し、防具はスカルダシリーズ一式を着用している。当時の年齢は17歳。
 ※原案はカイン大佐先生。

◇ディリス・ハルパニア
 確かな弓の腕を持っている一方で、華奢な女性に間違えられがちな「男の娘」であることにコンプレックスを抱いている新人ハンター。武器はカムラノ鉄弓を使用し、防具はイズチシリーズ一式を着用している。当時の年齢は15歳。
 ※原案はリオンテイル先生。

◇ユナ
 寡黙で小柄な少女であり、その体躯を利用して懐に潜り込む戦法を得意としている一方で、当人はそれが使える自分の体型にコンプレックスを抱いている。武器はデスペラードIを使用し、防具はスパイオシリーズ一式を着用している。当時の年齢は15歳。
 ※原案はクレーエ先生。
 

 
 アダイト達がリオレイアとの交戦に入った頃。彼らを素通りした大型モンスターの群れは、里に続く門を目指して猛進していた。
 霧の彼方から地響きを立てて迫り来る、災厄の波。それは本来、歴戦のハンターでさえも戦慄を覚えるほどの光景なのだが。

 その群勢に真っ向から立ち向かう新人ハンター達の眼に、恐れの色はない。それどころか、待ち受ける激闘に対する昂りの色すら滲ませている。
 そんな彼らの佇まいがただの虚勢ではないことは、これから始まる猛攻が証明していた。

「ふっふ〜ん……どうやら! ついに! このボクのエクセレントにしてエレガントな狩猟の腕前を、カムラの里に知らしめる時が来たようだね!」

 操虫棍「飛雷棍ムシカガチI」を巧みに振るいながら宙を舞い、猟虫を飛ばすアテンス・センテラは。カガチシリーズの防具を纏っているとは思えないほどに優雅な挙動で、エキスを採取し己を強化している。
 雷属性の攻撃が有効とされているアケノシルムの頭部に、弧を描くように振るわれた一撃が炸裂したのは、その直後だった。

「さぁ皆、せいぜいボクの華々しさを引き立ててくれたまえ! 容姿端麗才色兼備、絶対無敵のアテンス・センテラ様の――」
「よっしゃいくでぇえ! どいつもこいつも、ワイの剣のサビにしたるわぁあッ!」
「――こらぁあぁあー! まだボクが喋ってる途中でしょうがぁあ!」

 アテンスの長い口上を遮って飛び込んできたのは、バスターソードIを豪快に振るう巨漢――シン・オーマだった。スカルダシリーズで全身を固める彼は、独特の「訛り」で叫び散らしながら大剣を振り上げ、アケノシルムに強烈な溜め斬りを見舞っている。

「アテンスぅ、邪魔してもうて済まんなぁ! せやけどワイも、チビどもの生活が懸かっとるさかい……ちったぁ役に立って稼がにゃいかんのや! せやないと、この仕事をくれたウツシの奴にも申し訳が立たんしのぅ!」
「……分かってるよ! エレガントなボクは、つまらないことで連携を乱したりはしないのさ! なんたってボクは、大海の如く広い心の持ち主……アテンス・センテラ様なんだからね!」

 9人もの弟や妹達を養うために、元ハンターの父から譲り受けたバスターソードを携えて、この依頼を引き受けた彼は。危険な最前線にも躊躇うことなく、その体躯を武器に踏み込んでいる。
 そんな彼のパワーファイトをサポートするべく、アテンスも文句を言いながら華麗に跳び回り、アケノシルムの撹乱に専念していた。

「ガッハッハ、そりゃおおきに! 相変わらずちっこいくせして、器はホンマにでっかいな! ワイは好きやで、そういう女子(おなご)!」
「ん、んなっ!? 器だけじゃないんだからっ! まだ成長途上なだけだからっ!」

 それでも、小さい胸に対するコンプレックスはかなり根深いらしく。悪意なしに傷口を抉るシンの発言に対し、アテンスは援護に徹しながらも真っ赤になって懸命に反論していた。

「……仕留める」

 一方で。その近くにいたドスフロギィの対処に当たっていた、もう1人の小柄な少女は。毒を以て毒を制すと言わんばかりに、毒属性を持つデスペラードIを振るっている。
 スパイオシリーズに身を包む彼女――ユナは、その小さい身体を活かしてドスフロギィの懐に飛び込むと、ここぞとばかりに鬼神連斬を放っていた。そんな彼女の戦いぶりを目撃したシンは、豪快に彼女の技を称賛する。

「おおっ! 相変わらずやるやないか、ユナ! その懐に飛び込んで一気に斬り刻む技、ワイには出来る気がせんなぁ! まさしくお前の専売特許やでぇ!」
「……う、うるさい」

 無論、そこにも悪意は一切ないのだが。アテンスと同様、発育の悪さを気にしているユナとしては、その戦法が「出来てしまう」自分の体型について触れられたくはないのである。

「……うるさい……」

 とはいえ、褒められることが嫌というわけでもなく。僅かな「嬉しさ」も滲ませた複雑な表情でシンを一瞥する彼女は、むすっとした面持ちで文句を零すしかないのであった。

「よし……ここからならよく狙える! 食らえッ!」

 そんな彼らの攻撃により、弱り始めていたアケノシルムとドスフロギィを、高台から狙っている者がいる。カムラノ鉄弓を引き絞っている、そのハンターの名はディリス・ハルパニア。

「はぁッ!」
「おぉっ……!?」

 イズチシリーズの防具に袖を通している彼は、狙い澄ました矢の一閃を以てモンスター達の眉間を射抜き、2頭を続けざまに討ち取るのだった。その腕前を目撃したシンは、爆発するような歓声を上げる。

「やりよるなぁ、ディリスの奴ッ! あんな高いところから、奴らの急所だけに当てよったで! やっぱあいつも男の中の男! 可愛いのは顔だけってことやなッ!」
「うるっせぇえ! こっちまで聞こえてんだよシンッ! 俺は最初から男の中の男だっつうのッ!」

 弓の手腕を全肯定しつつ、コンプレックスの女顔にもしっかり言及してくるシンの称賛は、高台にいるディリス本人にも届いていたらしく。
 女性と見紛う容姿に思い悩んできた彼は、デリカシーに欠ける同期の笑顔に、なんとも言えない表情で怒号を飛ばすのだった。
 
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