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レーヴァティン

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第二百七話 冬の進軍その八

「帝国としてはな」
「いいのですか」
「問題なしだよ」
「領地も俸禄も装備も」
「出すな、戦の時は兵糧もな」
 これもというのだ。
「当然な」
「帝国がですか」
「ミュンヘンからの税や年貢もそこに入るけれどな」
 帝国から出す金や兵糧にというのだ。
「けれどな」
「出してそのうえで」
「戦ってもらうぜ」
「階級も地位もそのままで」
「それで民にもそちらの財産にもな」
「一切ですか」
「手は出さないぜ、人質もな」
 久志はこのことも話した。
「いいぜ」
「出さなくて」
「ああ、だからな」
 それでとだ、久志はさらに言った。
「降るか?」
「そのお言葉偽りはないですね」
「皇帝の言葉だぜ」 
 使者に笑って言った。
「それでわかるよな」
「皇帝陛下の」
「ああ、皇帝が嘘を言ったらな」
 それこそとだ、久志は言葉を続けた。
「成り立たないだろ」
「帝国の秩序は」
「だからな」
「それで、ですか」
「約束する、若し俺が嘘を言えば」
「その時はですか」
「二つの浮島全体に言えばいいさ、歴史書にもな」
 これにもというのだ。
「永遠にな」
「残すことですか」
「そうしろ」 
 使者にこうも告げた。
「いいな」
「そこまで言われますか」
「そうだよ、俺が嘘を言ったらな」
「そうですか」
「その時はな、それでな」
 久志はさらに言った。
「俺は俺の言葉はな」
「嘘ではない」
「そうさ、ミュンヘンをそのまま欲しいんだ」
 帝国にというのだ。
「俺の願いはな」
「我が騎士団も」
「そうさ、帝国に入ってな」
 そうしてというのだ。
「そのうえでな」
「帝国軍の中で戦う」
「民を護ってくれたらな、ただ民への賦役や税はな」
「それはですか」
「帝国のそれでいくな」
「重いとですか」
「軽くする、そのことはな」
 どうしてもというのだった。
「従ってもらうぜ」
「民を苦しめるなということですか」
「民が苦しんでいたら国もよくならないだろ」
「楽しく働いてこそですか」
「多くのものを生み出すからな」
 それでというのだ。
「だからな」
「それで、ですか」
「ああ、そうしたものは軽くだ」
 帝国のやり方でというのだ。 
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