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IS《インフィニット・ストラトス》‐砂色の想い‐

作者:グニル
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『唯一』との会合

「えっと、1024……1024……あ、ここだ」

 夕食が終了し、私は今割り当てられた部屋を見つけて扉に手をかけます。さあ、いきなりクラスメイトと喧嘩してしまいましたがようこそ私の高校ライフ!

「あ、あれ?」

 鍵がかかっています。どうやら相室の人はまだ戻ってきてないみたいですね。食堂に最後までいたのは私だったんですけど……
 貰っている鍵を使って中に入ります。電気をつけて中を確認するとまだ相手の荷物さえありません……
 荷物は入学前に運び込まれているはずなんですけど?

「もしかして……」

 寮の部屋割り名簿を確認する。思ったとおり……ここではあまり思い通りにならないで欲しかったんだけど……相室はいないという決定的な事実がそこには記されていました。

「そ、そんなぁ……」

 せっかく友達を作れるチャンスだと思ったのに~……
 相室がいないなら一夏さんが一番いいんじゃないんですか!

 いや、まあオルコットさんと一緒よりは全然いいんですけどね。

 ベッドの上でそうしてゴロゴロ悶絶していたが今更決まったことを嘆いても仕方ない!
 こうなったらクラスで友達を!

 バキィ!

「ひぃ! ごめんなさい!」

 思わず謝ってしまいました! こういう時は同室がいなくて良かったかも……
 音源は隣りの1025室かららしいです。なにかの破壊音と喧騒が聞こえてきます。

 初日から喧嘩でもしているんでしょうか?

 興味本位で扉を開けて外を確認すると既に人だかりが出来ています。

 人だかりの中心は隣の部屋の入り口。一夏さんがいました。
 どうやら隣の部屋は一夏さんの部屋みたいですね。でも中に誰かいるみたいです。女の子と同室になってしまったのでしょうか?
 囲んでいる皆さんは既に部屋着やパジャマなどラフな格好でいます。私にはあそこまで恥ずかしげなく男性の前に出ることは出来ない……と思います。

 ふっと、入り口を開けている私と一夏さんの目が合いました。

 え? え!? 何でこっちに走ってくるの!?

 必死の表情で迫ってくるので思わずドアを閉めようとして……閉まりきる前に取っ手を掴まれました!

「ひい!」

「ごめん! 匿ってくれ!」

「え? ええ!?」

「お願いします。このままじゃいろいろまずいのでお願いします!」

「え、ええ。構いませんけど」

「助かった! ありがとう!」

 必死の懇願に思わずうんと答えてしまいました。一夏さんを中に入れて扉の鍵をかける。

「えっと……カストさん、だったよね?」

「え、はい。そうですけど」

「良かった。無理言って入れてもらって名前まで間違っていたらどうしようかと思ったよ」

 息を整えている一夏さんがそう言います。
 そういえば……思わず入れちゃったけど若い男女が密室で二人きりって言うのは非常にまずい気がしてきました……

「と、ととと……とりあえず織斑さん、何か飲みますか?」

「へ? ああ、いいよ。ほとぼりが冷めたらすぐに出て行くから……」

「いえ! 招いた客人をもてなしもせず返したとあっては両親の教えに反します! ぜひ!」

「そ、そうなのか? じゃあお願いしようかな」

 自分の気持ちを落ち着けるために半ば強引に進めてしまった……両親の教えというのは本当なのだけどこっちのほうが怒られそうな……

 とりあえず椅子を進めてから荷解きもしていないダンボールの中からコップを二人分取り出して他のダンボールから飲み物を取り出します。
 やっぱり最初に飲んでもらうなら『ヌーディー』かな? あれなら誰でも好きになれる味だと思います。

「どうぞ」

「ああ、ありがとう」

「いいえ」

 座っている一夏さんにコップを渡して反応を待ちます。実は他の国の人に物を勧めるのは初めてだったりするわけで……

「お……」

「お、美味しくなかったですか?」

「いや、逆だよ! これ美味いなあ!」

「そうですか? 良かったぁ」

「うん、不思議な触感がするけど。これフルーツ?」

「はい、これは柑橘系のフルーツを使ったものです。国では『ヌーディー』と言って結構有名なんですよ? 他の果物のも飲んでみますか?」

「いいのか!?」

「はい、むしろ飲んでください」

 かれこれ一時間は『ヌーディー』の話で盛り上がっていたでしょうか。と言ってもほとんど私が故郷の話を交えながら勝手に話していただけのような気がしますけど……
 気がつくとほぼ全てのボトルの蓋を開けて試飲させてしまっていました。

「あ………す、すいません!」

「へ? どうかしたか?」

「こ、こんな無理やりいっぱい……織斑さんに迷惑でしたよね」

「ああ、そんなことか。むしろご馳走になっちゃって悪いって思ってたくらいなんだ」

「そ、そうですか? ならいいんですけど……」

「迷惑なら迷惑って俺はちゃんと言うからさ。気にしなくてもいいよ」

 一夏さんはそう言って笑ってくれた。いい人なのかな……織斑先生とは大分違うタイプみたいですね。

「あ、そういえばさあ」

「はい?」

 思い出したように織斑さんが尋ねてきた。

「カストさんもえっと……代表候補生とかいうのなんだよな?」

「え、ええ。そうですよ。それがなにか?」

「いや、あのオルコットって奴と大分感じが違うというか……エリートって感じじゃないなあって」

「ああ、そう言うことですか。確かにほとんどがエリートと言える人たちでしょうね。むしろ私みたいな人のほうが特例です」

「カストさんはどっかの社長の令嬢とかそういうのなのか?」

「いえ、生まれは一般家庭でどこでもいるような普通の学校に通っていましたよ。私の場合は両親がIS開発に携わっているんですが、その関係で。なのでこれと言って特異なものがあるわけではありません。そんな私に専用機まで用意してくれるですから両親と国の人たちには本当に感謝しています」

「ふ~ん」

 一夏さんは半分理解していて半分理解していないような顔で頷いています。
 ……この顔……専用機って分かっていませんね。

「織斑さん、教科書の6ページを読んでおくことをお勧めします」

「へ? なんでさ?」

「専用機って言葉の意味、わからなかったでしょう?」

「あ……バレた?」

「当然です」

 普通なら専用機持ちはISを使うものにとっての憧れなんです。それをあんな風に流すのですからそれはバレて当然でしょう。
 そこで話が途切れたので外の様子を見るために鍵を開けて廊下に顔を出すと、どうやら皆さん部屋に戻ったようで誰もいませんでした。

「織斑さん、もう大丈夫みたいですよ」

「そっか、本当ありがとうな。カストさん」

「いえ、織斑さんは唯一ISを使える男性ですし……皆さんの興味を引くのも仕方ないことかと」

「あ~、そのさ、織斑さんってやめてもらえないかなあ?」

「へ?」

「ほら、千冬姉がいるだろ? そのせいか苗字で呼ばれるとなんかむず痒くってさあ」

 確かにそうかもしれません。けど……

「でもいきなり名前で呼ぶのも……」

「んー、俺は構わないんだけど……お! じゃあさ、友達なら名前で呼んでも大丈夫だよな」

「はい?」

 そんなさもいいアイディアを思いついたように言われても!

「あれ? 迷惑だったか? それなら無理にとは言わないけど……」

「いえいえいえ! そんな私なんかが……むしろもったいないって思うくらいで!」

「じゃあ俺とカルラさんは今から友達ってことで、おっけー?」

「は、はい。おっけー……です」

 そう言って一夏さんが手を差し伸べてきました。

「よろしくお願いします、おり……一夏さん」

「おう! よろしくな、カルラ!」

「カル……!」

 ま、まさかいきなり名前を呼び捨てにしてくるなんて! せめてそこは『さん』づけとかじゃないんですか……

「あれ? カルラ、顔が真っ赤だけど大丈夫か?」

「だ、大丈夫れす! また人が来る前に早く戻ったほうが!」

「あ、ああ。じゃあカルラ。明日からよろしくな」

 そう言って一夏さんは部屋に戻って行きました。
 日本の男性というのはあそこまで大胆なものなのでしょうか? 一夏さんが特別なのでしょうか?

 と、とりあえず疲れました……今日はもう寝ましょう


『よくもまあオメオメと戻ってこれたものだな!』

『ま、まだ怒ってたのか!!』

 隣の部屋から叫びが聞こえますが……
 幻聴です。幻聴なんです。これは余程疲れているのでしょう。早くシャワーを浴びて寝なくては明日に支障がでますね。

『成敗してくれる!』

『た、助けてくれー!!!!!』

 こういう時は日本語でなんて言うんでしたっけ?ご愁傷様です、で合ってましたっけ?
 
 

 
後書き
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