【自作イラスト追加しました】ちゃちゃっと絵を描く能力で世界最強!~追放されたい俺を女神さまが放してくれない~
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自信をもって【役に立たない】アピールをした
結局彼女の足も速かったので、町に着くころにはすぐに追いつかれてしまった。
とはいえこの世界のバスに当たる乗り合いの馬車にはすぐに乗れた。
どうも渋滞していて前の何本かは遅れていたのと、この馬車には運ぶ荷物が多かったために俺達三人が乗って乗員は締め切りだった。
この辺り特産の、パイナポーといった果物の瓶づめを運ぶらしい。
缶詰も流通しているそうだがこの辺りでは瓶詰がまだ流通しているそうだ。
ちなみにこのパイナポーという果物は、木にぶら下がるように生っている。
形はどこからどう見てもパイナップルだった。
この世界の言葉は転移した時の影響? によりイメージと文字と言葉は密接に繋がっているから? 自動翻訳されてこの世界の異世界転移者は会話もできるし文字の読み書きも出来たりするが、会話で、知らない物はその【音】として表現されたり、例えばメロンの形、味をしたものはメロンと聞こえるが、赤くて細長くて時々丸くなるアカマルメという果物は、【アカマルメ】としか聞こえない。
ただ、俺が知らない物でも【別の転移者】が【知っていた場合】、俺たちの世界の言葉で訳される場合もあるらしい。
但し形が似ているからと言って同じような生態であるとは限らない。
このパイナップルのように。
……もっとも草からにょきにょき生えているパイナップルのあの姿よりは、個人的には気になっている方がイメージに俺の場合は近いが。
初めてパイナップルの実がなる絵を見た時驚いたものである。
それはいいとして、瓶づめが乗せられている関係で御者の人とお話が出来ない。
必然的に三人でお話し合いに。
その時に食べ物の話や趣味などを話していて、俺はおある事に気づいた。
「クレア。そのクレアの能力【共感の庭】で、俺の能力が使えるようにならないのか?」
「固有魔法? それも異世界転移者の? 魔力消費が激しそうな気がするけれど……」
「では魔力回復ポーション(極上品。イチゴ味)を差し上げるのでいかがでしょう?」
「……まあ試しに一回くらいなら。それにこれ高級品でしょう? 品質が高いものは、良薬は口に苦しで不味くなるのに、最近は美味しいものも……もしかしてこれを作ったの、貴方が関係しているの?」
「……」
「他にも……」
「あ~、それで試して欲しいんだ」
「……えっと貴方の能力って、【ちゃちゃっと絵を描く】能力だったかしら」
「そうそう、それで、リセを描いて欲しいんだ」
「貴方でもいいんじゃないの?」
不思議そうに聞いて来たクレアに俺は、
「自分の顔や男なんて見たくないんだ」
「え?」
「何が楽しくて男の絵を描かなくちゃいけないんだ。女の子だ、女の子を描かせろ、女の子が見たい」
「そ、そう、分かったわ。クレアを描けばいいのね。紙とペンを頂戴」
「紙だけで十分だぞ。魔法を使って描きたいものをイメージすれば勝手に補正して魔力でインクも生成されたし。……絵の【模写】の練習になるかもと思うんなら、ペンとインクで書くのをお勧めするぞ。実際に数をこないしていたら、ちょっとだけ絵も上手くなったし」
「……絵の練習予定はないから、紙さえもらえれば能力を使ってみせるわ」
そう言って紙を渡してクレアが手を触れる。
なんとなく俺の体がざわりとしたが、そこでクレアがうっと呻いてから、
「やっぱり固有魔法系は体に来るわね。……一枚が限界だわ」
「となるとクレアの肉体で【俺の魔法が作用】しなければいいのか。じゃあそっち系で検討してみよう」
「え? えっと、何が言いたいのか分からないけれど、とりあえずできたわ」
「ありがとうございます……って、凄く、写真みたいな絵が……」
そこに書かれていたのは本人を写し取った写真のような絵だった。
リセもそれを覗いて、
「わ~、流石私。凄く美少女。いいわね~」
「いや、俺としてはこう……もっと漫画みたいな絵を……」
「マンガ? この世界、まだそれほど漫画といった娯楽は広まっていないわよ? まだ貴方の所の女神さまがはまっているだけで」
リセに聞いたこの世界の事情で俺は、自分が凄く狭い範囲の世界にいたと気づいた。
だが気づいたならば修正するのみ。
この機会を絶対に逃がしてはいけない。
そもそもクレアは女神さまと同じ女性なのだから!
「……クレア、漫画とかそういった絵に興味はないか? そうすれば俺が助かるんだが」
「う~ん、前ちょっと見かけて変わったた絵だと思ったくらいでそこまで興味はないわ」
「そうか? う~ん、とりあえずクレアの興味が出るものに当たるまで書き散らしていくか?」
俺はそこで写真のような絵を見ながら、どうしようかと悩む。
それにクレアが呆れたように、
「私にそんな事をさせてどうするの?」
「俺にとっては重大な問題なんだ。そうだ、リセは俺達と同じ世界の人間だったら、女性の流行について知っているだろう? 教えてくれ!」
そんな必死のお願いにリセは、
「でも今のままだとクレアの負担が大きいわよ?」
「大丈夫、それについて俺に考えがある。だからお願いできないか?」
「……まあいいけれどね。でもいいの? そうするとしばらく自動的に貴方、一緒にいることになるけれど」
「……どのみち俺、戦闘には向かない能力だぞ? 新しい転移者と接触するまでのつなぎだ」
そう自信をもって【役に立たない】アピールをした俺に、呆れたようにリセがため息をついたのだった。
後書き
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