絢と僕の留メ具の掛け違い・・そして 結末
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1-⑶
次の日の朝、上履きに履き替えようとしたら、先っぽに何か入っていた。折りたたまれた紙だつた。中には几帳面に書かれた「今度の土曜日水島君の家にいっていいかな」って書かれていた。
名前なかったけど本町絢だとすぐにわかった。僕はその瞬間、うれしいような、でも戸惑っていたかもしれない。
教室に入ってゆくと、いつもは僕より遅いんだけど、この日は本町絢が机に座っていた。僕の方を見もしない。返事が気にならないのだろうかとか、他の人に知れたら嫌だなとか、色んなことが頭を横切った。と同時に、どうやって返事したらいいのか、もちろん来るのは良いのだけれど、どう言えばいいのかとか、おそらく心臓がバクバクしていたと思う。
手紙を書くのも面倒だし、だれかに見られるのも嫌だったので、給食を食べ終わってみんながわさわさしている時をねらって、食器を戻しに行く際に彼女の側に寄って、
「市民会館で朝9時待っている」と何気なく言って通り過ぎた。
彼女に聞こえたのかどうかわからなかったが、食器を返して戻るとき、彼女の方を見ると、小さく指でVサインをしていた。その時の顔は窓の方を向いていたが、僕が席に戻るとこっちを向いて、ニコッとした。可愛かったのかもしれない。その時、二人の留メ具が掛かり始めようとしていた。
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