真・恋姫†無双~俺の従姉は孫伯符~
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俺+緑三つ編み眼鏡少女=我が人生に選択権なし!!
前書き
こんにちは。
毎度おなじみ、ふゆいです。
今回から新章突入です。旅人雹霞をご覧あれ!
それでは、お楽しみください。
俺が旅に出てから数週間が過ぎた。
最初の方は慣れない旅人生活で路銀確保や寝床確保に苦労していたが、今では盗賊を壊滅させて財宝を奪……もとい、計画的な収入を得ることができている。やっぱ世の中要領良いやつが勝つよね♪
「た、旅人風情が……俺達を誰だと思ってやが――――」
「シ・ネ☆」
「ぎゃふっ!」
ふぅっ、鳩尾にコークスクリューで完璧っと。モブは黙っとけよな、モブは。
今現在は洛陽付近の小村をちょいちょい襲っていたクズ共を完膚なきまで叩き直して人質とかお宝とかを開放している最中である。
「ほら、早く村に帰りな。みんなが待ってるぜ?」
「あ、ありがとうございます!」
「流石は【盗賊殺し】……実力は折り紙つきですね!」
「孫瑜仲異……あなたがあの【竜も思わず跨いで通る】と言われるお方ですか……」
「…………はぁ」
しかし……ずっと盗賊弄りばっかりしていたせいか、こんな不名誉かつ愉快な二つ名まで戴いてしまっている。リ〇・インバースじゃないんだからそういうのやめろよ……呉に帰った時に雪蓮に何て言われるかな……めっちゃ笑われそうだ。
「と、【盗賊殺し】だと……! こいつがあの【江東の修羅】か!?」
「孫策の従弟だって言われてるが……凶暴なところまで似ているっていうのかよ!」
「嫌だぁー!! たすけてー!!」
「……おいこらてめぇら」
仮にも善良な市民を脅かす存在だろうが。なんで俺みたいな一般人にそこまでビビってんだよ。
「いや、アンタは十分異常な存在だから。一人で盗賊団壊滅させるって何者よ」
「ぅ……あなたもなかなかキツイこと言いますね、賈駆さん」
「アンタに自覚がないからでしょ?」
馬鹿ね、と眼鏡のブリッジをあげながらキツイ視線で俺を見る緑三つ編みの美少女。全身から秀才のオーラが滲み出ているようにも思える。
彼女の名前は賈駆。今回の依頼を請け負った際に、付添人として俺に付いてきた少女だ。なんでも、「アンタが武人としていかほどの腕を持つのか見極めに来たのよ!」とのこと。世の中暇な人もいるもんだねぇ……。
「……今アンタなにか失礼なこと考えてなかった?」
「滅相もございません」
どうやら勘は良いらしい。ていうか俺の周りはテレパスばっかりか。
「それにしても……」賈駆さんは足元で気絶している盗賊の一人を足蹴にしつつも、俺の方を呆れた様子で見てくる。
「アンタがまさかあの【孫瑜仲異】だったとはねぇ……通りで強いわけだよ。孫策の手綱を握れる数少ない猛者で、随分前に国を去ったとは聞いていたけれど……盗賊弄りなんて。貴族のすることじゃないんじゃない?」
「貴族って……確かに俺は孫家の者ですけど、雪蓮や、長いこと会ってないけど、蓮華みたいに本家の人ってわけではありませんし、貴族って言うのとは少し違うと思うんですよね。王様の従弟なんて、歴史上でも全然目立たないでしょう? そういうことじゃないですかね」
「ふぅん……なかなか面白い考え方するのね、アンタ。ボクが今まで会ってきた中でも一、二を争うくらいの変人よ?」
「変人って……まぁ他の武人の方々に比べれば変なことは認めますけどね」
祭とか雪蓮とか、なにかある度に「勝負だ!」って吹っかけてくるけど、俺は基本的に平和主義者だ。戦いなんて避けるに越したことはない。……今は生きるために止む無くやってるけど。で、でも、村の人達を脅かしているんだから因果応報だよな!
「……で、一応盗賊団は全滅させて、人質も財宝も運び出しましたけど……俺はこれからどうすればいいんですか?」
「んーそうねぇ……とりあえずは村まで行くのがいいんじゃないかしら? お礼も言いたい人たちもいるだろうしね。……ま、その後に少しだけ用事があるのだけれど、それはまた後でってことで」
「なんですかそれは……俺に用事があるって人は、女性に限っては大抵俺に不利益なことばかりなんですけど……」
「それだけ頼られているってことじゃない。孫家の血は伊達じゃないわね。……ほら、さっさと歩いた!」
「はいはい……」
孫家って言うのは関係ない気がするが……まぁ、それであちらさんが納得してくれるならもういいや。
財宝を乗せたリヤカーらしきものを引きつつ、俺は賈駆さんと共に山のふもとにある小村へと向かった。
☆
「ありがとうございます! なんてお礼を申し上げたらよいか……」
「いえいえ、そこまで大したことはしていませんから」
「そんなことはありません! もう戻ってこないかと思っていた家族を助け出してくれたのですから、ご謙遜なさらずに胸を張ってください! 貴方様は私達の救世主なのですから……」
「あはは……なんか随分と大袈裟になってますね」
村に戻った途端に村民に囲まれた俺は、村長の家で豪華なもてなしを受けている。勿論俺は遠慮したのだが、村長をはじめとした村民の皆様の熱意と、賈駆さんの「何かをしたら、報酬を受け取るって言うのが優しい人間ってものよ」という言葉に負け、苦笑いながらも要求に応じたのだった。
「それにしても、流石は【盗賊殺し】様。あのような暴君達をいとも容易く成敗されてしまうとは……」
「容易かったですかね、あいつら。結構危なかったんですが。何度か死にかけましたし」
「嘘をつくんじゃないの、嘘を。顔色一つ変えずに捻りつぶしていたでしょうが」
「賈駆さん……すっげぇ尾ひれが付いてるんですけど……」
ほら、そんなこというから村民さん達の羨望の眼差しが一層強くなっちゃったじゃないか! どうしてくれるんだよ、賈駆さん!
「いいじゃない。アンタを冠づける二つ名が増えていくってだけよ」
「いや、それが問題なんですが……いやですよ、これ以上【盗賊殺し】やら【竜も思わず跨いで通る】なんて言われるの。【江東の修羅】は……まぁギリギリで許容範囲として」
雪蓮だって【江東の小覇王】なんて言われているくらいだし。
「次は何かしらね……【鬼神】とか【阿修羅】とか付いたりしてね……ぷぷっ」
「いや、笑いごとじゃないですよ」
ていうか何故知ってるし、【阿修羅】。日本だけじゃなかったのか。
「ささ、とにかく今日は飲んでください! 英雄殿!」
「……なんかもうなんでもいいや」
結局、その日は夜まで飲み続けたのだった。
☆
「う゛ぅ……頭痛い……」
「昨日はしゃいであんなに飲むからよ、バカね」
洛陽までの道程を馬に揺られながら、俺は生気のない声で呟いた。隣ではケロッとした顔の賈駆さんが呆れたようにこちらを見ている。いや、賈駆さん……あなたは俺の三倍くらい飲んでいませんでしたか?
「ボクはお酒には慣れているからね。普段から周りに豪傑揃いっていうのもあるけど」
「へぇっ、それは凄い……てか豪傑って……賈駆さんってどんな人なんすか、どこかの軍師さんだったりするんすか?」
昨日の盗賊団討伐の際に彼女が立てた作戦は、素人目から見ても信じられないほど完璧だった。まさに戦場においての戦術。冥琳とか穏に匹敵するくらいの、頭の良さ。どう考えても一般人ではない。
賈駆さんは俺の質問に「え?」と首を傾げた。
「ボクが何者か言ってなかったっけ? もう予め知っているものと思っていたのだけれど……」
「名前と付添理由しか聞いてないですね。それ以外はまったく知りません。良く言えば謎の女って奴ですよ。今のあなたは」
「なんか恥ずかしいわね、その呼ばれ方……」
少しは俺の気持ちも分かってくれましたか。
「しっかし、ホントに賈駆さん何者なんですか? いい加減教えてくださいよ」
「まぁ別に構わないけど……聞いたら聞いたで態度変えるとかはやめてよね」
「しませんよ、そんなこと……どこの三流官僚ですか、俺は」
教頭先生とか副社長とかはしそうだよな、役職的に。こう、両手を擦り合わせたりして、「そこんところよろしくお願いしますよ~」……なんだこれ。
賈駆さんは悪戯っ子じみた笑みを浮かべると、片目を瞑った、いわゆるウインクをしながら、言った。
「ボクは洛陽を治める董卓軍一の軍師。賈文和よっ」
「…………マジっすか」
どうやら、とんでもない人物と知り合いになってしまったようだ。董卓って……ロクに三国志知らない俺でも知ってるぞ……。
しかし、目の前の賈駆さんを見ていると、董卓が正史のような残忍な奴だとは到底思えない。果たして、どんな人なのだろうか。
「董卓さんかぁ……なんか凄い人なんでしょうねぇ」
「何言ってるの? 孫瑜。今からアンタが会いに行くのが、その董仲頴よ?」
「…………はい?」
「あれほどの技量を持った武人なんだもの、ぜひともボク達の軍に引き入れなくちゃ勿体ないじゃない。だから、入隊する前に一度くらいは大将格にお目見えしなくちゃでしょ?」
「俺が入隊するのは決まりなんですか!? 拒否権は……」
「そんなものないに決まっているじゃない。もし断ったら……」
「断ったら?」
怯えながらもなんとか言葉を返す。なんだこの理不尽な展開は。ていうか賈駆さん? なんでいきなり鞭を取り出しているんですか……。
「……二度とお天道様に顔向けできない身体にしてあげるわ」
「…………」
前言撤回。董卓はともかくこの人は百パーセント悪人だ。つか……
「脅迫じゃないかぁ――――――――っ!!」
本日、俺の運命は眼鏡緑髪腹黒娘によって、理不尽の極みともいえるくらいの進展を迎えました。
あぁ……なんかもうどうにでもなれ……。
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