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IS《インフィニット・ストラトス》‐砂色の想い‐

作者:グニル
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IS学園、入学!

 あっという間に入学式を迎えた私の前には、黒板の前で小柄で胸の大きいメガネの女性、山田麻耶先生が自己紹介をしています。
 やまだまや……上から読んでも下から読んでもやまだまや。この人の名前を聞いた人は絶対この印象を受けるはず。私だけじゃないよね!?

 第一印象がこれなんだけどどうしよう……でもやさしそうな先生かな?

 挨拶はしているのですが、私を含めほとんどの生徒の視線は全く違うところを向いています。その反応に山田先生は戸惑ってるみたいですが……みんな担任の先生より他のことに興味が有るといったほうが正しいと思います。

 かく言う私もある無しに関わらず見ることになってしまいます。

 本来女性しか使えないIS、よってIS学園に通うのは必然的に女性になる。その中の異端。
 受験時にISを偶然起動させ、世界で唯一ISを動かせる人になった男性。全世界規模でお茶の間を騒がせた張本人。


 名前は確か……織斑一夏……さん。


 何の因果か私の席はその織斑さんの真後ろ。必然的に私の目の前に織斑さんの背中があります。
 そんなことを考えている間も山田先生が必死に施設のことなどを説明していますけど周囲はやっぱり沈黙。なにか返事をした方が良かったんでしょうか。
 でも、恥ずかしいし……

「じゃ、じゃあ自己紹介をお願いします。えっと、出席番号順で」

 山田先生は涙目になりながら何とか場を進めました。やっぱり返事くらいすればよかったかも……

 ア行から始まるので自分の番はすぐです。しかも織斑さんの後……うう、やりにくいよう……
「セシリア・オルコットですわ。ご存知の方もいると思いますが、イギリスの代表候補を務めさせていただいております。何かありましたら遠慮なく声をかけてくださいませ」

 え、イギリスの代表候補生?
 自己紹介の声の聞こえた方に目を向けてみると教室の左後ろの席には、縦ロールのある長い金髪の女性がその髪を手で軽く払うように席に着きました。
 あの人がセシリア・オルコットさんですね。あの人も代表候補生なら後で声をかけてみましょうか。

「では次は織斑君。お願いします」

 あれ? 織斑さんどうしたんだろう?
 織斑さんはなにか考えているのか、俯いたまま返事がありません。

「織斑君! 織斑君!?」

「は、はい!?」

 山田先生の大声で織斑さんはようやく顔を上げて返事をしました。
 うーん、山田先生は優しいというより私みたいに引っ込み思案なのでしょうか? それはそれで教師として問題があるような。
 織斑さんが立ち上がって自己紹介を始めます。

「えー……織斑一夏です、よろしくお願いします……」

 うわ! 皆の視線が痛い!
 私に向いているもののじゃないって分かってはいるんですけど背中に視線がヒシヒシと伝わってきます。

 席替えてもらえませんかね!?

 織斑さんの自己紹介が簡単過ぎて皆次の言葉を期待しているのがすごく分かります。
 織斑さんもその空気を感じ取ったみたいで深呼吸をすると……

「……以上です!」

 ガタガタガタ! という音と共にクラスの大半が椅子から転げ落ちました。

 私はというとポカーンとしてしまっていたのですが……でもみんなの反応も分からないこともありません。なにか言うのかと思ったから当然といえば当然です。
 と思ったらいつの間に教室に入ってきたのか、黒いスーツ、タイトスカートの長身で鋭い吊り目の女性が立っていました。

 その女性が手の出席簿を振り上げて……周りを気にしている織斑さんの頭に振り下ろしました。
 風を切る音共に振り下ろされた出席簿が気味のいい音を立て、それと共に織斑さんがうずくまる。恐る恐る振り返った織斑さんが声を上げた。

「……げぇ!千冬姉!?」

 あ、また叩かれた……痛そう……いや、最早痛いを通り越してその出席簿の振り下ろす速度に感心してしいました。
 それにしても……千冬姉って?

「織斑先生だ、バカものが」

「織斑先生、会議は終わられたのですか?」

「ああ、山田君、クラスへの挨拶を押し付けてすまなかったな」

「いえ、副担任としてこれくらいはしないと」

 その女性は軽く山田先生と会話を交わすと黒板の前に立った。

 ん、あれ? そういえば織斑って、同じ苗字?

「諸君、私が担任の織斑千冬だ。これから一年間で君達を使えるようにするのが私の仕事だ。私の言う事はよく聞き、よく理解しろ。理解出来ない者は出来るまで指導してやる。諸君らは若干15歳から16歳と若い。故に逆らっても良いが、私の言う事だけは聞け、いいな」

 そう言った瞬間教室が割れるような嬌声に包まれ、その大きさに思わず耳を塞いでしまいます。
 曰くファンだとか、お姉さまのためなら死ねるとか、結婚してくれとか、ぺろぺろしたいとか……なんかおかしい人が

 でもそうですよ。この人を見たらそういう反応も過剰なわけではないんです。

 織斑千冬さん。
 第1回IS世界大会(モンド・グロッソ)の総合優勝および格闘部門優勝者。その実力から『ブリュンヒルデ』と呼ばれる事実上最強のIS操縦者。
 非公認だけどあの『白騎士事件』の当事者というのがもっぱらの噂だ。
 確かにIS学園で教師をしているというのは聞いていたけどまさか担任がその本人だなんて……

「毎年、よくもまあこんな馬鹿者共が集まるものだ。私のクラスにだけ馬鹿者を集中させてるのか?」

 織斑先生がそう呟きましたけど……多分どこも同じなんじゃないでしょうか? 世界中でファンクラブがあるみたいですし。

「……で? 挨拶も満足に出来んのか、お前は」

「いや、千冬姉、俺は……っ」

 織斑先生の手によって織斑さんが机に叩きつけられられました。
 ……分かりづらいから今から織斑さんは一夏さんと呼びましょう。
 もちろん面と向かっては恥ずかしいから言えないませんけど。

「織斑先生と呼べ、馬鹿者」

「…はい、織斑先生」

 苗字が同じでこれだけ親しいということは恐らく、いや十中八九実の姉弟なのでしょう。周りもその関係に気づいたようでヒソヒソと声が聞こえます。
 織斑先生が机を叩いただけでそれを沈めました。

「時間も無いことだし次の者、自己紹介を」

「はい!」

 次の人の自己紹介もまともに頭に入ってきません。織斑先生怖すぎます。勘弁してください。私こういう人タイプ的にダメなんですよ……

「次の者!」

「ひ、ひゃい!」

 私の番になったので織斑先生に言われて立ち上がると同時にちょっと足を打ちました……うう、皆には気づかれてないみたいだけど、痛い……

「か、カルラ・カストです。オーストラリアから来ました。若輩ながら代表候補をやらせてもらっています。これから1年間、よろしくお願いします」

「ほう、お前がオーストラリアの代表候補生か。確か、元は一般の女子学生ということだったが」

「は、はい。その通りです」

 またも周りがざわつくのを感じました。うう、今度は私への視線が痛い……
 人から注目されるのは苦手なのに……ああ、なんか緊張してきた!

「元が一般人であろうと私は容赦しないからそのつもりでいろ。いいな」

「はいぃ……」

「返事はしっかり!」

「ひ……は、はい!」

「うむ、では次の者」

 うう、これでは注目されてるのも一緒ですけど……

 まあでも、そもそもこのクラスには一夏さんがいるんですから私より目立つのは確実です。
 ショートホームルームが終わったら授業の前の小休憩。それから授業ですね。

「よし、これでショートホームルームは終わりだ。諸君等にはこれから半月の授業で基礎知識を覚えてもらう。その後に行われる実習での基本動作も同じく半月で覚えろ。 良くてもよくなくても私の言葉には返事をしろ! 以上だ」

 鬼教官という言葉が頭に浮かんだのは私だけではないはずだ。
 それでも周りのクラスメイトたちは狂喜乱舞状態になっていますけど……

 こんなので一年間大丈夫なんでしょうか……
 
 

 
後書き
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