もう一つの"木ノ葉崩し"
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第十二話―絶望の咆哮
ドドドドドドドドドドドド!!!!!
規則的な爆音が鳴り続き,金角は晴れることのない爆炎に包まれる。互乗起爆札……それは,起爆札が次の起爆札を口寄せすることによって連鎖的かつ半永久的に新たな起爆札が召喚され続け爆発を繰り返す,扉間考案の一点集中爆破戦術である。
「ぐ……!ぐおおおぉぉっ……!!」
立ち込める煙の中から,激しい爆音に混じってうめき声が聞こえてくる。
(タフな奴だ。この爆発の中で,まだ意識を保っているとは……。……ん?)
しかしその時,扉間はこの止まらない連続爆破の中に,妙なチャクラを感じた。……いや,正確に言えばその禍々しいチャクラは最初に金銀兄弟と相対した時からかすかに感じ取ってはいたのだが,ここへ来てそれが次第に大きくなり始めているように思えた。
(……これは……まさか……!)
「おのれ……!ぐおおぉぉっ……!おのれ……っ!!銀角……っ!!ぐおおおぉぉぉぉっ!!!」
(まずい……!このチャクラは……!)
ドン!!!
次の瞬間,大きな衝撃波が放たれ,金角を取り巻いていた爆炎は吹き飛ばされる。さしもの扉間も,その衝撃に押されて少し後ろによろめく。
「くっ……!」
その衝撃を最後に辺りは静寂に包まれ,今まで凄まじい爆音が鳴り響いていたことを改めて思い出させた。
(爆発がやんだ……!?起爆札の口寄せの連鎖が全て済んだか……?いや,それにしてはあまりにも早すぎる……。)
「ヴオオオォォォッ!!!」
吹き飛んだ煙の中から現れた金角の姿は,全身に赤黒いチャクラを纏い,幾本もの尾を持ち,先ほどまでの姿からはおよそ想像もつかないものとなっていた。体躯も心なしか大きくなったように思える。
(あの姿……どういう訳かは知らぬが,やはり九尾の力を持っていたようだな。起爆札は九尾チャクラの圧と先ほどの衝撃に耐えられず,引き裂かれたといったところか……。)
「ヴオオォォッ!!」
ビュン!
腕とも尾とも分からない赤黒いチャクラが,鞭のようにしなりながら扉間に向かう。
(速い!!)
フッ!
扉間はギリギリで飛雷神の術で飛び,攻撃を回避する。チャクラの鞭は地面をたたき,岩盤に入った亀裂が放射状に延びる。
(まさか銀角を倒されたことで正気を失い,九尾の力が覚醒してしまうとは……。まずいな,あの力を正面から抑えられるのは兄者かマダラくらいのもの……まともに戦っても勝ち目はない……!)
~~~~~
バッバッバッバッ!!!
「火遁・火炎龍大炎弾!!!」
「風遁・乱気流大乱破!!!」
「まずい……!!」
サスケとサイゾウが放つ,最高火力の合わせ技が角都に襲いかかった,その時である。
ドン!!!
「!?」
九尾の力が覚醒した金角から放たれた衝撃波は,彼らのもとにまで届いた。そのあまりの衝撃に,吸い込む風で角都を拘束しかつ火遁の道筋を作っていたサイゾウの獏が一瞬怯む。同時に,術を放ったサスケとサイゾウの手元がほんのわずかに狂い,放たれた術そのものも衝撃波の影響を受けたことが相まって,炎は角都のいる位置からわずかに逸れた。
「何だ,今の衝撃は……!?金銀兄弟が居た方向じゃないか……!?」
「くっ……だが,それよりも……」
サスケが驚いて衝撃波を感じた方を見る一方,サイゾウは険しい表情で正面にいる敵を見る。
「何だ,今のは……だがおかげで……」
一瞬怯んだ獏のスキをつき,角都は自らを拘束していた風から脱出していた。
「……助かったな。」
そして,振り返ってサスケとサイゾウの二人を見据えた。
「まずい!獏……」
「もう同じ手は食らわん!」
ドカッ!!
サイゾウの言葉より早く,角都はまず前方にいたサイゾウの口寄せゾウを攻撃する。
「ヴオオォッ!!」
「獏っ!」
角都の拳を受けた獏は悲鳴を上げ,そのまま口寄せが解除されてしまい煙となって消えた。
「次はお前らだ!」
ダッ!
角都は更に続けてサスケとサイゾウに向かって突っ込む。サスケは再び猿魔の棍棒を構えようとするが間に合わず,二人ともども角都の蹴りを食らって飛ばされてしまった。
「ぐあっ!」
「ぐわっ!」
「フン,動きが鈍いな。さっきの術でチャクラを使い果たしたか。確かに,当たっていれば俺も無事ではなかっただろうな。」
倒れ込んだ二人のもとへ角都が足を踏み出そうとしたとき,近くにあった建物が突然大きな音を立てて崩れた。
「……何だ?またさっきの衝撃か?」
「!?」
そちらへ目をやると,倒壊したその建物の向こうに赤黒い化け物の姿があった。
「何だアイツは……!?まさか,金角か銀角なのか!?」
角都が驚いているうちに辛うじて立ち上がったサスケとサイゾウの二人も,それを見て驚愕する。
「あれは九尾か……!?まさかミト様ではあるまいし……。」
「あっちに居たのは扉間様,それに金銀兄弟だ……扉間様が言ってた,奴らの隠してる力ってのはこれのことか!?」
木ノ葉の里に住み,少しばかり知識のあった二人はその姿を見て九尾だと理解する。その点においては,さすがの角都も二人に追い付かない。しかしながら,得られる情報を分析する能力にかけては負けていなかった。角都はすぐに,その赤黒い化け物が片腕に抱えている人物を見つける。
「銀角か……意識がないようだな。金角のあの姿……銀角がやられ,錯乱状態にでも陥ったか。」
その場に,扉間も姿を現す。
「扉間様!」
「扉間様,ご無事で!?」
「サスケ,サイゾウ。そこにおったか。少々厄介なことになった……だが,お前たちも苦戦しているようだな。悪いがそっちの男は任せて良いか?ワシはあの九尾もどきをどうにか片づける。」
駆け寄る二人に対し,扉間は金角から目を逸らさずに指示を出す。
「はっ!お任せください!」
「扉間様もお気をつけて。」
「フン,そんな状態で本気で勝てるつもりか?」
力強い言葉とは裏腹に,ほとんど余裕のないサスケとサイゾウに向かって改めて角都は歩を進める。
「ヴオオォ……」
一方,扉間の眼の前にも,九尾化した金角が迫っていた。
後書き
お読みいただきありがとうございます!
ついに九尾の力を解放した金角……扉間たちは万事休すか!?
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