魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
Saga22-A最終侵攻~Battle of the north~
†††Sideイリス†††
来た来た来た来た来た。ようやく“T.C.”が活動を再開してくれた。リーダーかガーデンベルグか、どっちがルシルとアイリを殺したのか判らないけど、ガーデンベルグは必殺確定。リーダーも、事故に見せかけてでもこの手で殺す。わたし達から、わたしからルシルを奪った奴はこの世界に生きていていいわけがない。
「シャル! はやても復活したみたいよ! 八神家総員も参加できるって!」
「そう、やっとなのね、はやて。・・・了解」
特騎隊の臨時スタッフとして働いてくれてるアリサからの報告にそう答えて、「ルミナ、T.C.からの挑戦状を全員に送信」って指示を出す。腹立たしいことに“T.C.”はわたし達に直接メッセージを送りつけてきた。日時と場所を明記したうえで襲撃するという挑戦状だ。
(ルシルとアイリを誤って殺害したことに対するお詫びとして、こちらの今後の行動を伝えよう? ふざけんな・・・!)
わたし達に防衛準備をするよう仕向けたうえで襲撃しに行きますっていう宣戦布告。ただでさえルシルとアイリっていう身内を無残に殺害されたことで、本局の“T.C.”に対するヘイトはとんでもないのになってる中で、こんな、捕まえられるものなら捕まえてみろ、みたいな挑発的なメッセージを送り付けられたりなんかすれば、さらに高まるのは必至だ。
「それで? チーム分けはどうする?」
「幹部はガーデンベルグを除いて壊滅したことで残るは雑魚だろうから・・・」
襲撃を予告されたのはミッドの各地にある名の有るロストロギアの研究施設で、6ヵ所中5ヵ所は局の研究施設だけど、残り1ヵ所は聖王教会本部をターゲットにしてる。あそこにも魔術を使える騎士が居るし、そっちへの派遣はしないつもりだから、特騎隊は残る5ヵ所の防衛をすることになる。
「はやて、アインス、シグナム、アギト、ザフィーラを中央区アンダリアへ。すずかとシスターズを同じく中央区のダァムシアンへ。なのは、ヴィータ、リイン、クラリスを東部メランへ。フェイト、アリシア、エリオ、キャロを南部マクファーデン地区へ。アリサ、スバル、ティアナ、ミヤビを西部ネオンノード地区へ」
「他は?」
「わたし、ルミナ、セレスはスカラボで待機。6ヵ所のどれかでリーダーを確認次第、ミッドへ直通転送で出撃よ」
「徹底的にリーダー狙いか。・・・ところで襲撃は1週間後の正午みたいだけど、それまでに各施設からロストロギアを移動させないの?」
ロストロギアなどの魔力保有物の移動、それは先日の本局襲撃の時に実行した手段だ。だけど「今回はやめた方がいいと思う」って首を横に振った。襲撃場所を指定した以上、すでに施設を見張ってる可能性がある。今さら変更したところで襲撃場所が変わるだけ。
本局に集めて、招き入れた“T.C.”の残党と総力戦をやってもいいけど、本局はあくまで次元航行部の本部であって戦場じゃない。さらに上層部からは前回みたいに囚人を脱獄させてほしくはないから余計に戦場にするなってに釘を刺されてる。まぁ前回は囚人たちの魔力を吸収するのが目的だったから、今回もやるって可能性は低いと思うけど・・・。
「とまぁ、そんな理由で本局に招くような真似はアウトなの。だから地上で潰すわ、徹底的に、確実に」
部隊長席の背もたれに体重を預け、静かに魔力と殺意を研ぎ澄ませてると、「イリス、堕ちちゃダメだからね?」って、わたしの肩に手を置いたルミナに「判ってる」って言っておく。チラッと見たデスクの引き出しの中には退職届と、フライハイト家への離縁状が入ってる。これからわたしは人を殺す。管理局員どころか人として許されない私情による身勝手な殺人だ。フライハイトやシャルロッテを名乗る資格すら無いし、局員であり続けるのも不可能だ。だから、そのための意思表示・・・。
「もし、イリスが暴走するようだったら、私が、私たちが力ずくで止めるから」
「・・・肝に銘じておくよ」
襲撃は1週間後の正午。局員としての、騎士としての、フライハイト家長女としてのイリス・ド・シャルロッテ・フライハイトの人生もきっと1週間後で終わるだろうけど、“T.C.”も一緒に終わらせてやる。
†††Sideイリス⇒トリシュタン†††
「全騎傾注!」
「先日すでに伝えましたが本日正午、聖王教会本部に保管されているロストロギアを犯罪組織T.C.が奪いに来るという情報が、本局特務零課課長、イリス・ド・シャルロッテ・フライハイトより送られてきました。T.C.は我ら教会騎士団の恩人であるルシリオン・セインテスト、アイリ・セインテストを惨殺しました。同じ秩序を守っていた者としても、私個人の知人としても、彼らの死は辛く悲しく、そして許せない」
教会騎士団総会というこの場で、聖王教教皇であり教会騎士団団長であるマリアンネ聖下が壇上で告げた。聖下はイリスの母親でもあるためルシルさんとは個人的な付き合いもあった。私だって、ルシルさんを想い慕っていて、アイリはご先祖エリーゼ卿の時代よりシュテルンベルク家の家族だった。私にとって2人とも大切な存在だった。
「2人の命を奪った犯罪組織T.C.が、今度は私たちの城に盗みのために攻め入ろうと言う! 騎士の総本山に攻め入らんとするあの愚かな者たちに思い知らせてあげましょう! 私たち騎士に敗北の二文字など無いことを!」
聖下の言葉に私たち教会騎士は雄叫びで応じた。ルシルさんやアイリと関わりのある騎士は、聖下と同じように2人の仇を討たんとするため。関わりの弱い騎士は、自分たちの本部への襲撃に対する怒りで以て。そこからはすぐに行動を開始。
全13隊ある騎士隊の中で戦闘の出来る騎士隊11隊の内、銀薔薇騎士隊、白雪中花騎士隊、朱朝顔騎士隊の4隊が、対“T.C.”の戦力として聖王教会本部の正門、北門、西門、東門で待ち構えることになっている。そして全騎、対魔術仕様の神秘カートリッジを渡されていることで、魔術師が来ても一方的に不利にはならない。
「トリシュ」
「兄様」
教会本部を囲う壁の正門を護ることになった銀薔薇騎士隊の一員であるパーシヴァル――兄様が、槍型アームドデバイス・“ロンゴミアント”を手に私に声を掛けました。
「知っているか? 先日、イリスがフライハイト邸よりキルシュブリューテを持ち出そうとして、聖下にかなりきつく叱られたそうだ」
「イリスがキルシュブリューテを?」
フライハイトの“キルシュブリューテ”となれば、イリスのデバイスのことではなくフライハイト家に受け継がれてきた神器のことを指すはず。神器は強大な武器ではあるけど非殺傷設定なんてものが無いため、魔術と共に危険なものだ。それを持ち出そうとしたということは、ルシルさんとアイリを殺害したと思われる“T.C.”のリーダーと、“エグリゴリ”のガーデンベルグを殺害するための手段にしようとしたのだと思う。
「魔術師であろうリーダーと、エグリゴリのガーデンベルグを斃すには必要な物かと思いますが」
「キルシュブリューテでリーダーとガーデンベルグの首を刎ねる、と言っていたそうだ」
「そうですか・・・(ハッキリ言いすぎ!!!)」
ルシルさんとアイリの葬儀の後、私とイリスは誓った。2人の仇は絶対に殺ると。そのための“キルシュブリューテ”は解るけれど、正直に言って持ち出せるなんて考えたイリスの頭の弱さに驚くほかない。ううん、そこまで感情的になっているということは、それだけ本気だということ。責めるわけにはいかない。
「ところでトリシュ」
「はい、なんでしょうか?」
「その楽器ケースはなんだい? お前は歌も楽器もダメな、音楽の成績E判定だったろ。なのに、なんでここにそんなケースがあるんだ?」
兄様が指を差したのは薄い長方形をした黒のケース。音楽の成績に関しては忘れていたい思い出だったのに、まさかこんな形で思い出すことになるなんて。兄様をじとーっと見ながら「これから練習を少々」と答えた。嘘だけれど。
「嘘だな」
即バレた。兄様はケースに一瞬で近付いて、私が止める間もなくガチャッと開けました。中に収められているのは楽器ではなく、「スタウロスか」と兄様の言うように、元ボーゲン・パラディンのガラガースが所有していた、ルシルさん曰く、神器に分類される杭、それが12本だ。
「やっぱりお前だったか。スタウロスは聖王教会に危機が迫った際、貸し出しが許されることになってはいるが、それはロストロギアなどの特異事象にのみ適用される。受付はお前がパラディンの1人だったから申請を通したわけだが・・・。トリシュ。スタウロスを何に向けて射ろうとしているのか解っているのか?」
「・・・イリスと私は同じ考えなのですよ、兄様。ルシルさんとアイリを殺害した者を絶対に許さない」
「殺すと言うのか? それでは奴らと同じ殺人犯だぞ」
「理解しています。騎士であろうと何だろうと他者の命を奪うのは大罪です」
「解っているようで何よりだ。じゃあコレはもう必要な――」
ケースの持ち手に手を伸ばそうとした兄様の右腕をパシッと掴み取り、「ソレ、まだ使いますので」と制した。睨み上げてきた兄様を睨み返し、空いている右手でケースの持ち手を掴もうとしたところで、『西門、東門にてT.C.構成員と思しき人物を確認!』と、全体通信で“T.C.”の襲撃が始まったことが通達された。
「トリシュ、騎士パーシヴァル! こちらも来ました!」
同じ正門を護るアンジェの言葉に、私と兄様はバッと離れて臨戦態勢に移った。正門を護るのは私たち3人のみで、フィレスさんや他の銀薔薇騎士隊のメンバーは他の門の応援として散っている。魔術師化できる弓騎士最強の私と打撃騎士最強のアンジェに加え、神秘カートリッジを持つ槍騎士最強の兄様の3人であれば、銀薔薇騎士隊全騎が揃っていなくても問題ないとされたからだ。
「了解。こちら正門のトリシュタン。こちらでもT.C.構成員と思しき人物を視認、数2」
「同じくこちら正門防衛隊、パーシヴァル。警戒体制に移行する。T.C.構成員と確認後、即時戦闘を開始する」
『了解。ご武運を、騎士パーシヴァル、騎士トリシュタン、騎士アンジェリエ』
通信が切れる。私たちはこちらに向かって普通に歩いてくる、フード付きローブを身に纏う2人を睨む。1人は背の高い女性で、170㎝はあるかもしれない。もう1人は150㎝くらいで、歩き方からして性別は女。リーダーでもガーデンベルグでもない以上、スタウロスを使う必要はない。
「止まってください! 現在、聖王教会本部は封鎖中です! これは1週間前より通達されていた事です! 礼拝などは明日まで受け付けておりません! 今すぐ来た道を戻ってください!」
“T.C.”の襲撃に備えて今日1日だけ一般人の教会本部立ち入りは出来ないようになっていた。それは観光案内にも乗せられている知らせで、ミッドの聖王教信者はもちろんツアー客なども知っているはず。それにもし知らずに来たとしても本部に続くすべての道には案内モニターが置かれているため、必ず目にする。それでもなお本部に来たというこは、ほぼ間違いなく“T.C.”のメンバーになる。
「聖王教会本部に保管されている魔力保有物の回収に来たぜ! 黙って道を開けやがれ! 痛い目に遭いたくねぇだろう!」
「ご、ごめんなさい! ボクの妹は口が悪くて! あの! 魔力保有物ください! じ、じゃなくてお貸しください! すぐに返しますから!」
口の悪い男勝りな妹と、おどおどしている姉という凸凹な姉妹を見て兄様が「T.C.構成員と断定。交戦の意思あり。撃破する」と冷たい声で告げると同時、この付近一帯を隔絶するために結界が張られた。結界担当の騎士が遠くで私たちを見てくれていて、兄様の今の言葉を合図に結界を展開してくれた。
「「了解」」
私は弓形態シュッツェフォルムの“イゾルデ”を構え、アンジェは2mのポール・“ジークファーネ”の先部より朱色の魔力幕を展開。兄様は槍型デバイス・“ロンゴミアント”を構えた。
「パーシヴァル・フォン・シュテルンベルク」
「トリシュタン・フォン・シュテルンベルク」
「アンジェリエ・グリート・アルファリオ」
「参る」「「参ります」」
――とぐろ巻く連環の拘束蛇――
兄様とアンジェが同時に石畳を蹴って姉妹へと突進。そして私は“イゾルデ”の魔力弦に番えた魔力杭4本を射る。狙うは足元の地面。ダメージを与えることより今は拘束を選択だ。兄様とアンジェを追い越した杭は姉妹の足元に刺さり、1本につき4本の帯となって姉に8本、妹に8本と絡みつこうとした。
「オレぁリッタっつうんだ!」
「ボ、僕はエッタっていいます、ごめんなさい」
リッタは瞬時に自分を拘束しようとした帯4枚を右手で掴み取り、続けて左手でエッタに巻き付く寸前の帯4枚を掴み取って、そのまま握り潰した。
「コード・フロガゼルエル!」
「ハルトファーネ・ゼーデルヒープ!」
兄様は穂先に炎熱付加をしての刺突を、アンジェは魔力幕をピンッと張って魔力刃へと変化させてからの斬撃を繰り出した。2人もまだ魔術に変化させていないため、全力の一撃を振るっている。リッタは紙一重で2人の攻撃を躱したけれど、ローブはズタズタにされたことで素顔を晒した。
綺麗な黒髪と瞳。ノースリーブのロングコートにホットパンツ、両手には手の甲に鋼のプレートをあしらった指ぬきグローブ。それがリッタという女性の出で立ちだ。
「リッタ! ダメじゃないですか! そんな簡単に素顔を晒しちゃ! 後で一緒におと――王にごめんなさいですよ!」
「いいんじゃんかよ姉貴。どうせオレ達の素性なんて判んねぇんだし。にしても、お兄さんとお嬢さん、良い腕してんな。完璧に避けたつもりだったんだが。いろいろと制限されてるとしてもこりゃ凄いぜ」
女性の顔に声に身体なのに口調が男性過ぎて頭が少し混乱しそう。そんなリッタの後ろでおどおどしているエッタも「ごめんなさい、お兄さん達。お仕事なので」なんて言いながら袖口から武装を出した。右手に携えるのはライフルで、マガジン式ではなく回転式シリンダー。左手には拳銃で、グリップの長さをはるかに超えるロングマガジン。顔が未だにフードで隠れているけれど、ローブの隙間から見える服装はリッタと同じ。違いと言えば、カートリッジベルトを両太腿と腰に巻いていることくらい。
「銃使い・・・。ならば」
私たちは目線だけで誰を相手にするかを決める。兄様は「俺と闘ってもらうぞ、エッタ!」と、銃使いを相手にするべく突進。私とアンジェは近接特化と思しきリッタを標的にする。
「オレぁそっちの槍使いのお兄さんとやり合いたかったが、しょうがねぇ! 相手してやるよ!」
右と左の拳を打ち付け合うことで生まれた火花が、まるで意思を持っているかのようにパチパチと連続で弾けながら、私とアンジェの顔に向かって襲い掛かってきた。単なる目くらまし効果だろうけど、魔術特有の気配、魔力を薄っすらと感じることで後退しつつ・・・
――昇華――
私とアンジェは魔術師化を果たし、「開戦だぜ!」と突っ込んでくるリッタに、アンジェは「はい。そしてすぐに終戦です」と告げ、“ジークファーネ”を振るって迎撃を行った。
「おらおらおらおらおあらぁ!!」
「っ・・・!」
リーチは短いけれど攻撃速度が速い徒手空拳のリッタと、間合いは広いけど懐に入られたら不利になる長柄武器を使うアンジェ。アンジェは“ジークファーネ”を振るってリッタの猛攻を完璧に防いでいるけれど、リッタは思いのほか強く徐々に押され始めて行っている。
――天翔けし俊敏なる啄木鳥――
リッタのアッパーで“ジークファーネ”が弾かれたことでアンジェの懐ががら空きになった。その僅かな隙にリッタがアンジェに肉薄しようとしたところで私は高速矢を射る。アンジェの顎目がけての右フックを振るおうとしていたリッタの右腕に着弾して弾いた。
リッタをアンジェから引き離すために、2人の間に高速矢を射続ける。リッタは「懐かしいなおい!」と楽しそうに言いながら私に視線を移し、「アンタからやっちうまうか!?」と体も向けてこちらに向かってきた。そんな彼女の背後にアンジェがいるのにもかかわらずに・・・。
――シュラーゲンファーネ――
「シュテルケンシュラーク!」
魔力幕をポール全体に巻き付けさせて、完全打撃仕様と成す魔術からの打撃術式。アンジェが“ジークファーネ”を振り被り、私はまた高速矢を4本と同時に番えて、リッタがどのような行動に移ろうとも即座に射られるよう狙いを定める。先手はアンジェの薙ぎ払い。“ジークファーネ”がリッタの背中に打ち付けられた。リッタは防御系の魔術も使っていないのは確か。その状態での直撃を受けてもよろけもせずにリッタは普通に歩いてきた。
「「カートリッジロード!」」
リッタは普通の魔術師なんかではない。だから私たちはすかさず自分の魔力を内包した神秘カートリッジをロードして、自身の魔力量と神秘を増加させる。番えていた矢を破棄して、再度高速矢4本を生成して番え直す。
「お? なんだよ。まだ上があるんじゃねぇかよ。いいぜ、ならオレももうちょっと本気を出すぜ」
――イグニッション――
「「っ・・・!」」
リッタの全身から微かに漏れていた魔力が爆発的に増大して、溢れ出し始めた。アンジェとは目線だけで会話できるほどに一緒に戦ってきたから、私の対角線上に居るアンジェはその場から飛び退いた。
――天翔けし俊敏なる啄木鳥――
「往けっ!」
私が矢を射るかどうかの一瞬。リッタは右腕を引き、私が矢羽根を離した瞬間に彼女は拳を突き出した。たったその一動作で4本の矢は私とリッタの合間で粉砕された。それと同時に私に向かって突っ込んできたから、私は後退しながら新たに生成した魔力矢を弦に番える。
「私に背を向けていていいのですか!」
――ランツェファーネ――
先端にて魔力幕を円錐状に固定することで槍となった“ジークファーネ”による鋭い刺突攻撃を繰り出すアンジェ。リッタは真っ直ぐに私だけを見据え、左腕を思いっきり引くために半身になりながら上半身を捩じった。その動きでアンジェの一撃を躱した。
「おらぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
――翔け抜けし勇猛なる光条――
攻撃が空振りになったことでアンジェはすかさず射線上から離れ、真っ向から私を殴るために左拳を突き出そうとしているリッタだけが私の前に居る。だから遠慮なく砲撃と化す矢を射た。零距離とはいかなかったけれどリッタは砲撃に、そして着弾時に発生した魔力爆発に呑まれた。
(この程度で終わる防御力ではないだろうし・・・!)
追撃の砲撃矢を生成しようとしたところで、「効かねぇな!!」と無傷のリッタが煙の中から飛び出してきた。私が未だ矢を番えていないことにリッタはニヤッと笑顔を浮かべ、引いていた右拳を高速で繰り出してきた。
「させませんよ」
しかし残念。リッタは私を注視しすぎて、低い体勢で同じように突っ込んできていた隣のアンジェに気付かなかった。繰り出された右拳はアンジェの振り上げた“ジークファーネ”によって上に向かって弾かれた。その僅かな間で私は砲撃矢を番え終え、「少し痛いですよ」と伝えてから射た。今度はほぼ零距離だったから私とアンジェも魔力爆発の衝撃をまともに受け、数mと後退を強いられた。
「だから効かねぇって言ってんじゃねぇか!」
神秘カートリッジで強化したうえでの零距離直撃。それでも無傷という異常性に驚きはしたけれど、「私たちもまだ全力ではないから」とだけ言い放ってみた。するとリッタは「そいつは楽しそうだ!」と肩を揺らした大笑いした後、構えを取った。異常な防御力と徒手空拳。これは・・・。
「あなたの戦い方、幹部レオンと似ていますね。師弟だったりします?」
映像の中でしか見たことのない幹部レオンの戦い方。リッタも戦い方だけでなく戦うことに喜びを見出しているし、絶対に仲の良い関係かと思えば、「はあ?」とものすごく睨まれた。
「あんなクソと師弟関係? ねぇよ。レオン、プリムス、フォード、アーサー。なんであんな奴らを幹部なんかに・・・! 始めっからオレ達を使ってくれたらよかったんだ、おや――王はよ!」
リッタが地団太を踏むたびに地面に亀裂が入り、クレーターを拡げていく。そんな彼女に私は「卑怯とは言わないでくださいね」と伝えてから・・・
――滅び運ぶは群れ成す狩り鳥――
1本の魔力矢を射る。矢はリッタに着弾する前に200本の光線となり、「むぉ!?」と驚く彼女に次々に着弾して連続で魔力爆発を発生させた。質量ではなく物量で防御を削る。リッタにダメージを与えるのはもうそれしかない。
「アンジェ!」
「ええ! このまま押し切りましょう!」
ページ上へ戻る