レーヴァティン
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第百八十七話 オデッサからその十
「兵は殆どプロじゃないな」
「はい、農民や町民です」
「その者達に武器を持たせまして」
「それで戦の場に送り出しています」
「徴兵、いや違うな」
久志は彼等がどうして集められたのか察した。
「無理に引っ張って来てるな」
「あの国ではそれが普通です」
「正規軍もいますが」
「戦になれば民を根こそぎ連れ出します」
「そうして戦わせます」
「そうなんだな、それだったらな」
民達を強引に戦の場に連れて来てはというのだ、久志は武器も防具も粗末な彼等を見つつコサック達に話した。
「相当士気は低くて質もな」
「元々戦う連中ではないですから」
「訓練なんてしていません」
「そうですから」
「ただ数だけです」
「その実は」
「そうだよな、そんな連中だとな」
それこそとだ、久志はさらに言った。
「あまり強くないな」
「左様です」
「数だけです」
「あの国はいつも数で押してきます」
「そうして戦います」
「そうか、確かに数は多いな」
久志は今度は敵軍の数を見て言った。
「こっちと互角だな」
「三十万いますね」
「我々も今はそれだけですが」
「それだけいますね」
「数は互角か、それにな」
久志はさらに言った。
「どんどん来るな、敵は」
「この辺りの民で十五歳以上の男子はだ」
正が話した。
「七十歳まで全て動員しているとのことだ」
「七十歳までか」
「根こそぎな」
「もう産業のこと考えてねえな」
「いや、考えている」
正はこのことは否定した。
「あちらの王もな」
「男は全員動員してか、いや」
「わかったな」
「女に働かせるか」
「そういうことだ」
「女にも男の仕事やらせるか」
「二人分な」
男がいない分というのだ。
「そうさせている」
「滅茶苦茶しているな」
「しかも戦費を増税で賄う」
「重税も課すんだな」
「そうして戦っている」
「民に優しくない国だな」
「その戦術もな」
これもとだ、正は話した。そしてその数はかなり多い敵軍を指差してそのうえで久志に話をしたのだった。
「連中は歩兵だが」
「突っ込ませるか」
「後ろに刀を持った貴族達がいる」
「退けば切れってか」
「若しくは撃て、だ」
「戦術まで民に優しくねえな、そういえばな」
久志は敵軍を細部まで見て自分も言った。
「女もいてな」
「重労働をさせているな」
「雑用をな、しかも兵もその女も痩せているな」
「食いものも碌に与えていない」
こちらもというのだ。
「与えはしているがな」
「あまりなんだな」
「そして重労働をさせている」
そちらもというのだ。
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