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魔法少女リリカルなのは~無限の可能性~

作者:かやちゃ
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最終章:無限の可能性
  第273話「その想いは、決して阻めぬ祈り・前」

 
前書き
司side。
269話直後から始まります。
 

 














「ッッ!!」

 迫る理力の極光を、円錐状の障壁で受け流す。
 同時に、お返しとして祈りによる理力の極光を放つ。
 極光は神と“天使”の群れに穴を開け、僅かに手傷を負わせる。

「呑み込め……!」

 上下から、交互に極光が放たれる。
 壁のように放たれる極光が、多くの神々を押し流す。

「まだまだ……!」

 際限なく“祈り”を起こし、極光が雨霰の如く放たれる。
 死角や弾幕を縫っての攻撃も、既に張ってある障壁で防ぎきる。

「(何とか安定させました。後は、負けないようにするだけ……!)」

 “性質”による干渉も、既に“祈り”による防御で弾いている。
 完全に相殺とまではいかないが、単純な戦闘においては決して致命的な干渉は受けないようになっていた。

「……司さんも、頑張ってくださいね……!」

 プリエール・グレーヌは司に託してある。
 天敵に対する対策のために、祈梨が所持する訳にはいかなかった。
 自身の戦力低下を顧みても、自身が持つべきではないと祈梨は判断していた。
 だからこそ、司を信じて祈梨は戦い続ける。



























「ぐっ……ッ!!」

「ッ……!」

 理力の衝撃に仰け反り、だが同時にシュラインを振るう。
 現在、“早い性質”を相手に司は相打ち前提で戦っていた。

「っ、くぅ……!」

 捨て身のカウンターで、先手を取られてもダメージを与える。
 だが、相手は神だけでなく“天使”もいる。
 複数人相手に捨て身の戦法を取っていれば、そのうち追い詰められる。

「そこ!」

「がっ!?」

 だからこそ、先手を取らせ、その防御と同時に仕込んでおいた“祈り”を使って“天使”を仕留める。

「(仕留めきれなかった!)」

 しかし、一撃で倒せる程相手も甘くはない。

「ッッ……!」

 連続で先手を取られ、その度にギリギリでカウンターを当てる。
 槍の形であるため、全部の攻撃にカウンターを返せる訳でもない。
 それでも、ただ防御するよりはマシだと、司はカウンターを返し続ける。

「(なんとなく、分かった事はある)」

 戦いが始まってまだ数分も経っていない。
 それでも、司は神と“天使”に癖のようなものがあると見抜いていた。

「(“早い性質”。行動の早さを以って、先手を取ってくるけど―――ッ!)」

 思考の合間にも戦闘は続く。
 一度、カウンターを止め、防御に徹しつつ思考を続ける。

「(ありとあらゆる行動に対し、連続で先手を取る事は)」

 障壁を張ろうとした所への攻撃を、シュラインの柄で逸らす。

「(ない……!)」

 本来ならば、その柄で逸らす行為にも先手を取られる。
 だが、そうなる事はなかった。
 複数人で来た場合はその限りではないが、今の所ほとんど一対一だ。
 波状攻撃もあるが、複数を同時に相手どる事はない。

「(……尤も、“今の所は”と注釈が着くけど、ねっ……!)」

 回避先へ回り込まれるが、その攻撃で敢えて飛ばされる事でダメージを最小限に抑え、同時に間合いを取る。

「(……それと、どう見ても複数で同時には来ない。そうしていれば―――)」

 またもや思考に割り込む理力の斬撃が迫る。
 回避した所へ先読みされ、不可避の極光が司を呑み込む。

「(―――私の動きを完封出来るはずなのに……!)」

 “意志”でそれを耐え、同時に魔力を“祈り”と共に爆発させる。
 本来ならば、これも先手を取られるはずなのだ。

「(やっぱり、同じ“性質”でも、邪魔し合うんだろうね……!)」

 再び飛んできた斬撃を受け止めつつ、司はそう結論付けた。
 “早い性質”は、同じ“性質”同士でも先手を取ろうとする。
 そのため、お互いにブッキングしてしまうのだ。
 だからこそ、司の考える通り同時にかかってくる事はないのだ。

「(……と、いう事は―――)」

 瞬時に肉薄され、顎を蹴り上げられる。
 だが、先手を取られても司は回避へと体を動かしていた。
 結果、ダメージを抑えつつ魔力を爆発させて反撃出来た。

「(例え、その分野だとしても“性質”は完全無欠じゃない……!)」

 事前に障壁を張ろうとして、その先手を取られる。
 その妨害を最低限のダメージで受け流し、カウンターを繰り出す。
 カウンター自体は先手を取られて防がれたが、そこまでの動きは一切邪魔される事なく行う事が出来ていた。

「やっぱり……!」

 ならばと、司は思考を切り替える。
 これ以上の考察は必要がないため、思いついた策を実践する事にした。

「ッッ……!」

 先手を取らせ、その攻撃をギリギリで受け止める。
 同時に術式を構築し、吹き飛ばされながらも防御魔法を展開する。

「これは……」

 さらに先手を取られるが、展開した防御魔法が攻撃を阻む。
 すぐに破られはしたが、その間に司は祈りを実現させていた。
 これにより、より強力な障壁が展開される。

「……さぁ、どうやって突破する?」

 先手を取られようと、既に張った障壁が攻撃を阻む。
 そして、そこへさらに障壁を追加する事で、完全に攻撃を遮断した。
 理力の出力によっては破られるが、それでも障壁を常時展開できるのは大きい。

「真正面から吹き飛ばせばいいだけの事……!」

 そういって、神や“天使”が一斉に理力の極光を放つ。
 まともに受ければ、障壁は紙切れのように吹き飛ぶだろう。
 ……だが、これで既に“先手”は取ってしまった。

「そこっ!」

「ッ!?しまっ……!?」

 故に、司の転移は妨害されなかった。
 そのまま“天使”の一人に肉薄し、シュラインを突き刺す。
 追撃として魔力を爆発させ、その肉体を四散させた。

「っ……!」

 そのまま、まず先手を取らせ、障壁を犠牲にする。
 即座に障壁を追加し、上に跳ぶ。
 直後、理力の極光が寸前までいた場所へと飛んできた。
 そこへ、司は干渉する。

「(“性質”が干渉しあうなら、この攻撃は所謂無属性!なら……!)」

 理力のみの極光に“祈り”を作用させる。
 と言っても、自在に操れる訳ではない。
 単に“味方に当たらない”という効果を打ち消すだけだ。

「まず、一人」

 司が寸前までいた場所には、先ほど爆発四散させた“天使”がいた。
 本来、味方の……それも、同じ“性質”の“天使”や主である神の攻撃で同士討ちする事はあり得ない。
 それを知っているからこそ、敵は司に向けて攻撃をしていた。
 司は、そんな攻撃を逆手に取り、あり得ないはずの同士討ちをさせたのだ。

「(別の“性質”を付与する事での同士討ち……上手くいった……!)」

 何度も先手を取られ、障壁が破られる。
 だが、司も負けじと障壁を展開し続け、こうして普通の戦闘が出来ていた。
 結果として、ついに戦況が動いたのだ。

「なっ……!?」

 “天使”の一人が動揺する。
 それこそ、司の狙いだ。
 まともに戦える状況に持っていく事や、実際に倒す事は過程でしかない。
 “意志”が強く関わる神界での戦いにおいて、動揺させる事こそ重要だ。

「くっ……!」

「ッ……!(間に合う……!)」

 その影響か、先手を取られても防御行動が間に合うようになっていた。
 尤も、防ぎきれる訳でもないので、結局司は回避を強いられる。

「落ち着け」

「っ……!」

 だが、神もそんなに甘くはない。
 たった一言。それだけで広がりかけていた動揺が止まった。

「障壁自体は破れる。ならば、波状攻撃で攻め続ければいい」

「(―――あぁ、もう)」

 上手くいくと思った矢先だった。
 神の言った通り、波状攻撃で攻められると障壁展開が間に合わなくなる。
 混乱に乗じてそれを誤魔化せればよかったのだが、そうはいかなかったのだ。

「(勢いのままなんて)」

 障壁が割られ、即座に追加する。
 ……が、二枚目が同時に割られた。

「(さすがに、上手くいかないか)」

 追加の展開が間に合わない頻度で攻撃が迫る。
 回避しようにも、その行動の先手を取られるため、避ける事も出来ない。
 結果的に、せっかく張った障壁は全て割られてしまった。

「(仕切り直し―――)」

 先手を取られ、避ける事も防ぐ事も出来ない一撃が司を吹き飛ばす。

「(―――それすら、難しい)」

 体を捻り、すぐに着地。
 ……だが、体勢を立て直す暇はない。

「っ、この……ッ!」

 一撃、二撃と理力の剣を逸らす。
 しかし、不定形の理力の攻撃までは逸らせず、再び吹き飛ばされた。

「だったら……!」

 着地と同時に、追撃が迫る。
 防御魔法で先手を取らせ、捨て身のカウンターを放つ。
 それを連続で行い、波状攻撃を凌ぐ。

「くっ、ぁあっ!?」

 しかし、やはり“早い”。
 防御を、カウンターを抜けて攻撃が司に直撃する。

「(動きと思考を止めちゃダメ!)」

 継続して思考を巡らし、行動する。
 先手を取られても行動しなければ、それこそ前回における敗北の二の舞だ。

「(先手を取られた際の動きは、同じ相手なら絶対に先手を取られ―――)」

 攻撃が弾かれ、咄嗟に司は体を捻る。
 “天使”の攻撃を躱すものの、別の“天使”の斬撃が司を吹き飛ばす。

「(―――ない!でも、連携を取られた!)」

 同じ相手に、連続で“先手”は取れない。
 先手を取った際の動きに先手を打つのは、完全な矛盾を引き起こす。
 “矛盾の性質”のような“性質”があれば、それも可能だっただろう。
 だが、“早い性質”単体ならば、その矛盾で追撃は放てない。
 尤も、別の“天使”などが連携を取れば、その矛盾も発生しなかった。

「(大丈夫。まだ、“意志”は挫けない……!)」

 先手を取られようと、攻撃が直撃しようと、司は耐える。
 攻撃が防げない、躱せないのは、とっくに覚悟していた。
 そのため、物理的ダメージでは司は決して挫けない。
 “意志”が折れるのは、それこそ司が絶望しない限りありえない。

「(まずは、数を減らす……!)」

 まだ一人しか倒せていない。
 数さえ減らせば、波状攻撃も緩み、それだけ反撃の目が見えるだろう。
 そのために、司はストックしていた“祈り”を開放する。

「ッ、そこ!」

 先手を取られ、極光が司を呑み込んだ。
 だが、その中から司が“祈り”で反撃を繰り出す。
 圧縮された閃光、それが“天使”の一人を貫く。

「ッ……!」

 さらに行動を起こし、その先手を取られて理力の刃に切り裂かれる。
 その反動を利用しつつ転移し、勢いのままシュラインで“天使”達を薙ぎ払う。

「もう、出し惜しみはしない!」

 ストックしておいた“祈り”をどんどん開放していく。
 神界の存在相手でも劣らない威力の極光で、一気に“天使”を薙ぎ払う。

「な、ここに来て……ッ!?」

 一人、二人と“天使”の“領域”が砕けた。
 これで数も減り、司の逆境を若干覆した。

「………」

「……弾切れのようだな?」

「っ………!」

 だが、そこでストックしていた“祈り”が尽きる。
 実際はまだ残ってはいるが、それでも今使える“祈り”はなくなった。

「でも―――」

「数が減った所で、こちらの有利は変わりない」

「っづ……!」

 理力の衝撃で司は打ち上げられる。
 直後に追撃の極光が司を襲うが、シュラインを盾のように構え、耐える。

「ぁぐっ……!?」

 何度も耐え、先手を取られた上でのカウンターも繰り出す。
 しかし、それだけでは倒し切れない。
 最早、以前の戦いの焼き増し。
 そんな劣勢に司は追い込まれていった。









「っ………!」

 既に数えるのも億劫な程吹き飛ばされた司が、ついに膝をつく。
 “祈り”を切らしてから倒せたのはたった一人だけだ。
 未だ司が圧倒的不利なのは変わらず、こうして瀕死になっていた。

「以前よりも随分としぶといな」

「けほっ……だって、絶望する必要がないからね……」

 ここまで打ちのめした事と、それまでカウンター以外成す術がないと判断した事から、神は普通に司と会話した。
 対し、司は不敵な笑みを浮かべながら神の言葉にそう返す。

「……なに……?」

 その時、神が違和感に気づく。
 “領域”または“意志”が削れていけば、それだけ回復に時間がかかる。
 その事から、瀕死状態の司を見て追い詰めたと判断したが……

「もう、十分かな」

 目の前の司が、全快して普通に立ち上がる。

「シュライン、行けるよね?」

〈当然です〉

 シュラインはそれだけ言って再び沈黙する。
 同時に、司の腰回りを周回するように、プリエール・グレーヌが浮かぶ。

「………」

 淡い光が司を包み、消えていく。
 それを受け入れ目を瞑っていた司が、改めて神達を見る。
 その瞳には、決して神に劣らない強い“意志”の力がこもっていた。

「くっ……!」

 その何とも言えない威圧感を受けながらも、“天使”が先手を取る。
 踏み込もうとした司の懐に肉薄し、掌底を―――

「はぁっ!」

 刹那、司が踏み止まるように足を振り下ろす。
 その瞬間、“祈り”が爆発する。

「なっ……!?」

 “天使”達が吹き飛ぶ。
 それを尻目に、司はシュラインを回して構え直す。

「このっ……!」

 今度は残った“天使”達が一斉に襲い掛かった。
 先手を取り、それぞれ理力による攻撃を振りかざす。

「遅いッ!」

 だが、その“早さ”を司は真正面から迎え撃つ。
 先手を取っても、それ以上の反応速度で攻撃を弾き、カウンターを叩き込んだ。

「ど、どういう―――」

「ふっ!!」

「ッ……!」

 動揺する神に、司は神速の刺突を放つ。
 一瞬で肉薄され、神は咄嗟に先手を取って槍を逸らし、掌底で吹き飛ばした。
 だが、そのカウンターは障壁を纏った司の片手に防がれていた。

「散々、その“性質”は見た。……もう、その“性質”は効かないよ。私が、そう“祈った”からね。そのために、わざわざ戦いを長引かせたんだから」

 後退し、構え直しつつ司はそう言った。

「そもそも、先手を取るだけで勝てる程、神界の神は甘くない。その“性質”が明確に通用するのは、攻撃の過程が存在する神界以外の存在だけ」

「ちっ……!」

 神と“天使”で連携を取って攻撃を放つ。
 だが、司はそれらに対し先手を取られた上で全て弾き、防ぐ。

「でもね、先手を取っただけで、確実に攻撃が阻止できる訳がないんだよ」

 そう。飽くまで“先手を取る”までしか出来ない。
 特に、本来は“早い性質”なため、先手を取るのは副産物でしかない。
 それこそ“先手の性質”ならば、もっと強い効果を見込めたかもしれないだろう。
 ……だが、例えそうだったとしても、今の司には通用しない。

「先手を取られる?なら、その上で発動すればいいだけの事だよ」

 そういって、先手を取ってきた“天使”に、“祈り”の極光を叩き込む。
 先手を取られていたため、攻撃は食らっていたが……司はその事にお構いなしに反撃を叩き込んでいたのだ。

「くそっ!」

「甘い!」

 転移と共に、三人の“天使”に襲い掛かる司。
 先手を取って“天使”も転移するが、即座に司が再度転移する。

「ッ……!」

「だからと言って、そう簡単に負ける訳ではない……ッ!」

 振るわれる司の一撃を、神が理力で防ぐ。

「戦闘技術なら、そう簡単に負けないよ……!」

「ほざけ……!所詮は理力もない存在。私に勝てるはずが……ッ!?」

「人間から神にだってなれる。……だったら、神を倒すぐらい、出来るでしょ!」

 攻撃の早さは未だに神の方が上だ。
 だが、その上で司は立ち回り、神と“天使”の攻撃を捌いている。
 防御から攻撃への流れを縮める事で、互角に渡り合う。

「ッ……!」

「はぁっ!」

 両サイドからの理力の極光を跳んで避け、即座に転移する。
 転移からの攻撃で先手を取られ、シュラインで理力の斬撃を逸らす。
 即座にシュラインを回し、柄で理力を砕く。
 直後、転移で背後に回られるが、司も転移して体の向きを反転。攻撃を防ぐ。
 背後から、神が極光を放つが、転移を一瞬で発動させる事で回避を間に合わせる。
 上を取り、“祈り”をシュラインに纏わせ、特大の斬撃を放つ。
 これらの流れを、司は数秒にも満たない間に行った。

「ただの白兵戦なら、私は負けない!」

 連続転移。その数25。
 プリエール・グレーヌが転移魔法の発動を担う事で、それを可能にする。
 先手を取られようと、連続転移について行く事は出来ない程だ。
 そして、司はその転移の合間にシュラインによる攻撃や、魔力弾を放つ。

「そこか!」

「っ……!」

 最後の転移先を神に読まれ、背面でシュラインと理力の剣が拮抗する。
 だが、それも一瞬だ。
 司が“祈り”による身体強化で一瞬だけ神を上回る。
 その一瞬だけで剣を押し切り、その勢いで蹴りを叩き込んだ。

「かはっ……!?」

「ふっ……!……ッ、シュライン!!」

 怯んだ神に対し、転移で上に回り込む。
 そのままシュラインで地面へと叩きつけようとし……即座に命令を下す。
 先手を取り、司の背後を取った“天使”に対し、“祈り”を開放した。
 極光が司を中心に広がり、神ごと“天使”を巻き込み、炸裂する。

「ッ……シッ!」

「がっ!?」

 炸裂した爆炎の中から脱した“天使”の背後へと司は転移する。
 そのままシュラインで貫こうとするが、先手を取って“天使”が背後へと転移した。
 しかし、司は即座に対応し、突き出そうとした槍を反転。柄で“天使”を突いた。

「なっ……!?」

「どんなに“早く”ても、私の方が……速い!」

 別の“天使”が理力の砲撃を司に放つ。
 だが、即座に司は障壁を張り、その砲撃を弾いた。
 “早さ”を速さで圧倒する事で、先手を取られてもそれをモノともしていないのだ。

「はぁっ!」

 先手を取られてもその妨害をものともせず、司は“祈り”の刺突を繰り出す。
 たった一発の刺突が“祈り”で強化され、幾重もの刺突と化す。

「ぁ、ぇ……」

 最早先手を取られようと関係なかった。
 “天使”は穴だらけとなり、直後に極光に呑まれる。
 ただでさえ“意志”を伴っていたため、その“天使”の“領域”は砕けた。

「(あと、“天使”は二人……!)」

 司が全力を出す前に何人か仕留められていたのは大きかった。
 残っていた“天使”も少なく、今ではもう二人しか残っていない。

「だから、遅いよ!」

 攻撃後の隙且つ、次の行動の先手を取って“天使”が肉薄してくる。
 だが、司は即座に対応し、振るわれた理力の刃を弾く。

「っ、薙ぎ払え!」

 次の行動の前に、極光が司を襲う。
 司は目の前の“天使”への追撃を止め、“祈り”を斬撃として薙ぎ払った。

「皆、お願い!」

 さらに先手を取って追撃を妨害してくる。
 しかし、司はプリエール・グレーヌを使ってそれ以上の妨害を許さなかった。
 迎撃、相殺、障壁。あらゆる魔法を“祈り”と共に展開する。

「あと、一人!」

「かはっ……!?」

 連携を崩された今、“天使”一人では司に成す術はない。
 必然的に、また一人“天使”の“領域”が砕かれた。

「ッ……!」

 そして、ここまで来れば相手の動揺も相当なものになっていた。
 既に司に苦戦する要素はなく、一切苦戦する事もなく最後の“天使”も倒された。

「……残りは……」

「くっ……!」

 残ったのは神一人のみ。
 その神も、最初の威勢はどこへ行ったのやら。
 完全に司の勝利が確定していると見える程だった。

「容赦はしないよ」

 巨大な魔法陣を中心に、いくつもの魔法陣が重ねられていく。
 同時に、“祈り”も束ねられ、巨大な魔力がそこへと集う。

「くそっ……!」

 先手を取った妨害が司を襲う。
 しかし、並列展開された極光がその攻撃を相殺した。
 同時に、魔力の充填が終わる。

「これで、終わ―――ッ!?」

 いざトドメの一撃を。
 そう司が宣言しようとした瞬間、体の全機能が一時停止する。

「な、にが……!?」

 まるで、“トドメを刺す”という行為そのものを妨害されたかのような気分。
 そう思った瞬間、司は悟った。

「……来たんだ。私の、本当の天敵が……!」

 いつの間にか、“早い性質”の神の隣に、別の神がいた。

「さしずめ、“妨害の性質”……!」

「……ご名答」

 口角を上げ、司の言葉に気味の悪い笑みを返す神。
 問答無用な行動の阻害。
 祈梨から聞いていた通り、理不尽に厄介なのを司は身をもって知った。

「(出来れば、“早い性質”の神は倒しておきたかったけど……)」

 シュラインを握り直し、司は構える。
 先ほど攻撃を妨害された事で、司は体で理解していた。
 ……ここからが、本番なのだと。



















 
 

 
後書き
“矛盾の性質”…地の文のみ登場。文字通り矛盾を扱う“性質”。矛盾を打ち消す事もできるらしく、集団戦向き。

“先手の性質”…地の文のみ登場。先手を取る事に特化している。

“妨害の性質”…ありとあらゆる行動に対し“妨害”が出来る“性質”。司や祈梨の天敵。一応、突破口は存在している。


デバイス達がほぼ喋らないのは、戦闘に集中するためだったり、敵の干渉を受けないように“意志”を固めているからだったりします。……と言うのは建前で、メタ的には書ききれないだけだったりします。 
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