レーヴァティン
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第百八十一話 東から西へその六
「人だよ」
「今石にされて海に沈められている世界ではそうらしいわね」
双葉はこの世界の話もした。
「人間以外の多くの種族がいるそうね」
「人がな」
「ホビットなりフェアリーなりが」
「吸血鬼だってな」
「そうらしいわね」
「ああ、けれどどの種族だってな」
即ち外見に関係なくというのだ。
「心が人ならな」
「人ね」
「ああ、けれどその領主はな」
「身体は人間でも」
「心は化けものだ」
それになっているっていうのだ。
「血に餓えたな」
「殺人狂ね」
「言うならシリアルキラーだよ」
その領主はというのだ。
「絶対にこの世に置いていたら駄目な奴だ」
「シリアルキラーが人か」
正も言ってきた。
「それは言うまでもない」
「化けものだよな」
「世の中稀にいる、化けものがな」
「人を殺すことで快感を感じる奴がな」
「それも惨たらしくな」
ただしシリアルキラーによっては殺し方やその対象に法則があったりする、フリッツ=ハールマンという一次大戦後のドイツに出たシリアルキラーは同性愛者でかつ人の肉を食らうことを好んでいた。
「それが生きがいの奴がいる」
「俺達には理解出来ない奴だな」
「理解出来るものか」
これが正の返事だった。
「到底な」
「そうだよな」
「化けものの考えなぞ理解出来るものか」
「誰でも理解出来るって訳じゃないんだな」
「従軍慰安婦の話を捏造して自分がやったと言った奴の考えを理解出来るか」
この話は実際にあった。
「架空の話をでっちあげ祖国を貶め自分も罪を行ったと言う」
「変態かよってなるな」
「そんな奴もいる」
「世の中色々な奴がいるんだな」
「悪い意味でもな」
「それでか」
「そうした理解不能な奴もだ」
まさにというのだ。
「いるものだ」
「だから殺人鬼を理解出来なくてもか」
「別にだ」
これといってというのだ。
「悪いことでもない、むしろだ」
「理解出来たらか」
「その方がおかしい」
「殺人鬼はか」
「人を殺すことを楽しいむ様な奴はな」
そうだというのだ。
「そうしたものだ」
「そうなんだな」
「お前は人を殺して血の海に入って喜ぶ女を理解出来るか」
「あいつか」
それが誰か、久志はすぐにわかった。
「エリザベート=バートリーか」
「そうだ」
「自分がずっと美人でいたくてそうしていたな」
「そうだったがな」
「狂ってるだろ」
久志はこれ以上はないまでに忌々し気に言った。
「そいつは」
「普通の奴はそう思う」
「それで理解出来ないんだな」
「ずっと美人でいたいという気持ちはわかるな」
「ああ、そうした感情はな」
これはだった。
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