幻の月は空に輝く
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結果
ゆらゆらと陽炎のように揺らめく私の意識。
今の私は、銀色と蒼い眼を持つランセイの姿。
けれど一つ違和感を覚えるのは、二十歳前後の大人の姿だという事だろうか。
目の前には、お父さんとお母さん。
ミナトさんとクシナさん。
私の横には天華。
不思議な光景に、これは夢なんだと思った。
「ランセイ」
お父さんが口を開く。
「~?」
私は寝ぼけたような夢現な眼差しを向けながら、ほんの少しだけ首を傾げる。
どうしてかはわからないけど、上手く言葉を紡ぐ事は出来なかった。
「予言を視たのね」
今度はお母さんが口を開いた。
予言って何の事だろう。それを言うなら予知じゃないのかと天華を見るけど、天華も無言のまま私を見上げる。
「クシナとミナトさんに関わる事。そして、この里に関わる事」
状況が掴めていない私に、お母さんが更に続けた。けど、私が言いたかった事を言ってくれたからコクリコクリと頷き、態度で伝えたかった事を表してみる。
姿だけが大人で、実際はまだ赤ん坊の機動力しかないらしい。
視えてないよ?
ただ、知ってただけ。
その言葉は言えず、私は白い光に包まれていく。
「ぅ~」
小さく唸る私の頬を、何かが舐めてくれてる。
感触がくすぐったくて、右、左に顔を動かして何かを探してみる。すると、そこにいたのは銀色の狐。視覚で確認した事はなかったけど天華だ。私は確信をもって、天華に手を伸ばした。
やっぱり小さな私の手。
天華はその手に身体を摺り寄せるように、私のお腹の横辺りで丸くなった。可愛いよ。可愛いけどね。状況がまったく掴めません。
一体どうなったの?と両親の姿を探してみたら、私に微笑を向けていてくれているお父さんがいた。
「天禍は、ランセイを選んだんだね。予言通り嵐誓を継ぐ、ランセイを。君はこれから渦中に巻き込まれるかもしれない。その前に、俺は君に俺の全てを教えるよ」
けれどお父さんは、一方的に私に言い聞かせるように。
ううん。違う。自分に言い聞かせているように苦しそうに眉間に皺を寄せて、組んだ手にギュッと力を込めていた。
そんなお父さんから目が離せない私は、不思議そうにお父さんを見つめながら、最近お決まりになった動作だけど、小さな手をお父さんに向かって伸ばしてみる。
多分。
多分ね。
イレギュラーな私はイレギュラーらしく、自分が関わると決めた場合はだけど生死の境をさ迷うのかもしれない。きっと、そんな目に合うんだと思う。
でも、ま。人生は慣れだよ経験だよ。
一回死んだ私だからこそ、死というものの怖さはわかると思う。けど、逆に開き直ろう。ウジウジと考えてても仕方ない。
だからねお父さん。
私に沢山沢山教えてね。
そんな意志と願いを込めて伸ばされた私の小さな手。
お父さんはギュッと掴んで、あぁ、と小さく呟き頷いた。
結局この時の記憶は曖昧で、詳しくは覚えていない私がいたりするわけだけど。
なんとなく、夢の中の内容と混ざり合って、あやふやな状態のままだけどしっかりと心には刻み込まれていた。
この日を境に、天華は何故か銀色の小鳥の姿で、常に私の肩に止まるようになった。人柱力や尾獣に恐怖を抱く人間がいる里で、狐の姿は神経を逆撫でするかもしれない。天華も、両親もそんな結論に至ったのだろうと思う。
そして、私が生まれて数ヵ月後。
ナルトの誕生の日になった。
ちなみに、私の身体は赤ん坊のままなので特に出来る事はなく、全部天華任せになってる。
この件に両親が関わると道筋が大きく変わるという事で、こっそりと秘密裏に、誰にも内緒でナルトの両親を助けるとか。
勿論、二人とも死んだと思わせたる為に、天華の力で死ぬ直前に救い出し、そのまま異空間へと眠りにつかせた。
騙す為に、幻術をかけたらしい。
私が直に見たわけじゃないから何とも言えないけど。
概ねだけど道筋は変わらないと思う。
そして、瀕死の重傷を負ったミナトさんとクシナさんの生死については、誰にも喋ってはいけないという事。
人に話せば惑わせた力に綻びが出来、天華が細工した事が台無しになる上に異空間で眠りにつく二人もその時の状況に逆戻りするとか。
即ち、死の直前の二人はそのまま死ぬだけ。
だからこれは、二人の傷が完全に癒えるまで私と天華だけの秘密。
九尾が暴れた木の葉の里はほぼ悲惨な状態。
里は四代目であるミナトさんを失い、九尾はナルトに封印された。
これが、私が天華から聞いた今の木の葉の里の状況だった。
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