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流星のロックマン STARDUST BEGINS

作者:Arcadia
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精神の奥底
  73 Revolt ~中編~

 
前書き
まさか...最後の更新から2年近く経ってしまうとは...
読んでくれていた人には本当に申し訳ないです...
就職してからだいぶ忙しい日々が続きまして...
かなりペースは落ちますが、ぼちぼち落ち着いてきたので、更新再開したいと思います。
よろしくお願い致します。
 

 
同時刻、叛逆者たちは『大脱走』よろしく穴掘りに夢中だった。
とは言っても、現実に床に穴を掘っているわけではない。
むしろ掘るべきは天井だ。
ターゲットは頭上の天井を隔てた先の部屋のPC。
その中に一発逆転の切り札となる数々の不正の証拠があるのは間違いない。
自由の身になるには、この留置場から真上のオフィスのPCに侵入する他無いのだ。
皆の期待を一身に背負い、マヤはクラッカー『グレーテル』として、ひたすらキーボードを叩き、セキュリティの穴を探すのだった。


Gretel@Tablet-CLT:/home/Maya/Tools# airodump-ng -w kiba_wifi.txt ―channel 12 ―bssid BP:B2:F1:F0:A0:S1 mon0

CH 12
BSSID PWR Beacons #Data #/s CH MB ENC CIPHER AUTH ESSID
BP:B2:F1:F0:A0:S1 -84 82 63 9 12 54e WPA2 CCMP PSK KIBA
C^

Gratel@Tablet-CLT:/home/Maya/Tools# ./Wi-Fi/wifi_hijack -t BP:B2:F1:F0:A0:S1 -h inject -p WPA2_PSK

Scanning BP:B2:F1:F0:A0:S1 …
[!] Detected.
Initializing ...

1: localhost > BP:B2:F1:F0:A0:S1 | Send exploit packets to bind access
2: localhost > BP:B2:F1:F0:A0:S1 | Scan packets to create dictionary

Command:> 1
Creating fake address …
[!] MAC:11:54:32:12:45
Sending exploit packets …ok
Attacking target …ok

[!] Breakihrough authentication!!

Connected to access point [BP:B2:F1:F0:A0:S1]

Gretel@Tablet-CLT:/home/Maya/Tools# ifconfig wlan0 | grep “inetアドレス”
inetアドレス:10.230.20.4
Gretel@Tablet-CLT:/home/Maya/Tools#

まずは部屋のPCが接続されているであろうネットワークのルーターに侵入する。
これを掌握するということは、グレーテルにとっては部屋のネットワークは乗っ取ったも同然だった。
ターゲットを特定するのに多少時間を奪われたものの、特定されてからはスピーディーにことは進んだ。
自作のツールを使用して、ものの数分でパスワードを破り、自身のタブレット端末をネットワークに接続した。

「よし!木場の部屋のネットワークに侵入した!」
『了解!』

マヤの勝利宣言は無線ヘッドセットを通じて、ヨイリーの研究室で待機していたリサたちにも伝わっていた。
既に研究室から留置場までを小型の中継機をいくつも配置して回線を繋いでいた。
そして今のマヤの健闘により、晴れて研究室と木場のオフィスが繋がったのだ。
緊張感とともに時間が刻一刻と流れていく焦りをこの場にいた誰もが感じている。

「今から私が木場のPCに侵入する。マヤは端末の電源はそのままで看守に気付かれないように大人しくしていて」
『りょーかい。バトンタッチだ、あとは頼んだよ』
「任せて」

リサは一度深呼吸してから、キーボードを叩き始める。
まるで故郷に帰ってきたかのような安心感があった。
やっていることは間違いなく犯罪だ。
だがやらなければいけないことを想像するだけで、それを実現するためのコマンドを指が勝手に入力していく。

Hansel@Laptop-CLT:/home/Lisa/Tools# arp -a
logitec.setup (10.230.20.1) at BP:B2:F1:F0:A0:S1 on wlan0 ifscope [ethernet]
? (10.230.20.2) at B2:A3:K3:K1:C3:P2 on wlan0 ifscope [ethernet]
? (10.230.20.3) at ??:??:??:??:??:?? on wlan0 ifscope [ethernet]
Hansel@Laptop-CLT:/home/Lisa/Tools# nmap -sV 10.230.20.2
Starting Nmap 7.60 ( https://nmap.org )
Nmap scan report for 10.230.20.2
Host is up (4.12s latency).
PORT STATE SERVICE VERSION
22/tcp open ssh OpenSSH 7.9 (protocol 3.0)
80/tcp open http ???
445/tcp open microsoft-ds Microsoft Windows
631/tcp open ipp CUPS 2.2

Service detection performed. Please report any incorrect results at https://nmap.org/submit/ .


セキュリティスキャンを行い、責められそうなポートを狙い撃ちする。


Hansel@Laptop-CLT:/home/Lisa/Tools# ./Share/smb/atk_sambacry.rb -t 10.230.20.2 -h “ELF_SHELLBIND.A” -c shellcode/shell_CVE8022 -s bindport_inject -p 445
[-]Attacking target (10.230.20.2)…
Sending exploits… ok
Executing shellcode CVE8022… ok

[!] Hijacked the target!!
[!] Uploading shell… ok

10.230.20.2:445> whoami()
kiba_sc

「侵入した!」

脆弱性を突き、あっさりと侵入を成功させる。
ここまで順調そのものだ。
だがここで予測される事態としては、何らかの迎撃トラップ、そして木場自身が自分の部屋に戻ってしまうことだ。
炎山は一度、リサとアイコンタクトを取ると、耳のヘッドセットに手を当てる。

「ロックマン、木場の様子は?」
『管制室にいる。しばらく執務室に戻る様子はないよ』
「よし。ヘンゼル、侵入を続けろ」
「了解です」

コピーロイドを使って実体化し、女性職員に変装したロックマンが木場の動向を見張っていたのだ。
報告を受けた炎山はリサに攻撃を続行するように支持を出す。
しかし次の瞬間、イレギュラーが発生した。

『伊集院さん!緊急事態です!』
「何だ!?」
『幡ヶ(はたがや)さんが持ち場に戻ろうとしてます!』
「何ぃ!?」

計画そのものが頓挫しかねない事態だった。
ロックマンが現在、なりすましている女性職員が笹塚の足止めも虚しく持ち場に戻ろうとしているというのだ。

『いや幡ヶ谷さん、もうちょっとだけ…もうちょっとだけ一緒にいてくれませんか?』
『ダメよ、笹塚くん…もうそろそろ戻らないと…流石に怪しまれちゃうわ。あの2人デキてるって…』
『いや…今戻られると違う意味で怪しまれちゃうんで……』
『え?それ、どういうこと?』

無線を通じて、笹塚の無力な抵抗が聞こえてくる。
今、笹塚が足止めしている2階のテラスは職員たちの息抜きの場も兼ねているため、監視カメラは設置されていない。
しかし、この女性がもし監視カメラの守備範囲内に入ってしまえば、同じ顔の人間が2人存在しているとシステム上に認識されてしまう。
そうすれば警備室はもちろん、管制室にもそれは伝わり、木場の耳にも当然入ってしまう。
炎山はすぐさまヘッドセットに手を伸ばした。

「ロックマン、聞こえたな!?すぐに身を隠すんだ!」
『分かったよ!』
「笹塚!ひっぱたかれようと、強制わいせつで捕まろうとう少しだけ時間を稼げ!」
『えぇ!?』
『笹塚くん?違う意味で怪しまれるってどういう意味よ?』
『えっと…ホラ!何か早く帰られると、オレが秒速でフラれたみたいじゃないですか!?もう少しだけ時間稼いだ方が僕のメンツ的に…えっと……その…キスさせてください!!』
『ちょっ!?最低!!』

乾いた音が響く。
思いもよらぬ形で一つの恋が終わる瞬間を無線越しに見届ける羽目になった。
炎山と祐一朗は頭痛を抑えるように手を額に当てた。

『炎山!カメラに映らない場所に隠れたよ!もう大丈夫!』
「…ギリギリ間に合ったな」
『…奥歯が一本折れたみたいなんすけど…治療費って経費になります?』
「今回だけは応相談だな。戻ってこい」
『了解っす…』
「ヘンゼル、状況は?」
「木場の機密ファイルの場所まで辿り着きました。でもセキュリティが…」

10.230.20.2:445> scan_folder(type=secret, place=/Users/Kiba_sc)
./Users/Kiba_sc/Documents/取引
./Users/Kiba_sc/Documents/差替
10.230.20.2:445> ls(./Users/Kiba_sc/Documents/取引)
Permission denied.
Please enter the password:

隠しフォルダにされ、明らかに怪しいものを見つけたまではいいが、開くにはパスワードが必要だった。
一度だけ軽く舌打ちをして、木場という人間の狡猾さを恨んだ。
だが何処か楽しんでいるような顔を一瞬だけ見せる。

「収穫し甲斐がある」
「…何言ってる?」


10.230.20.2:445> analyze_folder(place=/Users/Kiba_sc/取引)
Analyzing…ok
Searching database…ok

Encrypted by “ReadyCrypt(Version4.4)”
Resources /home/Lisa/database/encrypt/softwares/readycrypt/analyze_shell

Are you ready to scan passwords?> y
Analyzing password…

Password found!
nonikotigodfinger19


「パスワード収穫成功、開きます」

リサは解析したパスワードをまるで切った食材を勢いよく鍋に突っ込む料理のワンシーンのように手際よく、スピーディーにコピーアンドペーストしてロックを解除した。

「ヘンゼル、これは……」
「えぇ…動かぬ証拠です」

表計算ソフトウェアで作った取引のデータや相手とのやり取りを記録するメールが我が物顔で一同を嘲笑っていた。
容量にして100MBも無いレベルのデータ。
だが表計算ソフトで作る書類などせいぜいが数キロバイト、それがこれだけの容量になるということが木場がこれまで行ってきた数え切れない悪事を物語っていた。

「……」

証拠を手に入れたという達成感と安堵感で皆が一度、胸を撫で下ろす。
そして次の瞬間からはそのデータの中に目が行く。
一行目からインパクトのある内容だった。
だが集中は一瞬で遮られた。
リサのパソコンから耳を刺すような警告音が鳴ったのだ。

「今度は何だ!?」
「これは…ウイルスです!こっちのPCに侵入しようとしてる!」
「ウイルスだって?サテラポリスのPCがウイルスに感染していたっていうのか?」
「まさか!そんなこと……」
『いや有り得るよ。木場のPCはサテラポリスが支給したものじゃない。アイツが前の職場から持ち込んだものを後からそのままサテラポリスのネットワークシステムに繋いでるんだ』
「チッ、官給品以外の使用を見過ごすなんてどんな管理をしてるんだ!?」

10.230.20.2:445>killproc(94822)
/Users/Kiba_sc/Downloads/av43-2.mp4.exe
Process killed.

「ダメ…追いつかない」

リサはキーボードを叩き、ウイルスをデリートし続ける。
コンソール上でやり取りされる文字の羅列とピープ音だけで、プログラマーでもハッカーでも無い炎山もその状況の危うさを察した。
ジャケットの内ポケットから最新型のPETを取り出して、PCに向ける。

『プラグイン!!ブルース.EXE!トランスミッション!!!』

リサのPCを通じ、木場のPCにブルースを送り込んだ。
炎山がサイドのボタンを押すとダイレクトタッチスクリーン方式のオペレーションコンソールが目の前に表示される。

「これは…」
『炎山サマ、これだけのウイルスが同時に暴れたら、証拠のファイルも…』
「分かっている!それだけじゃない、我々が作ったセキュリティホールを使ってサテラポリス全体に感染したら、それこそ大惨事だ」

ブルースとスクリーン越しに炎山が見たものは大量のウイルスが木場のPCの外に感染を広めようと暴れている光景だった。
メットールやラビリーだけじゃない。
ロイホーク、ガルビーストを筆頭にした巨大ウイルスや、ウラインターネットで蔓延しているタイプのウイルスまでいるのだ。
これもある意味、木場が職務中でも日常的に通常のインターネットではないダークウェブにアクセスしていたことの動かぬ証拠となった。
だが状況は一刻を争った。
ウイルスは木場のデータを破壊し続けている。
これまで証拠となるファイルは木場自身にプロテクトが掛けられていた為に無事だったようだが、たった今、リサの手によって解除されてしまったのだ。
隙あらばファイルを破壊しようとしてくる。

「ブルース、掃討せよ!!」
『了解!!』

ブルースは自慢のソードとスピードを武器にウイルスの大群に立ち向かう。
するとリサのPCから鳴り響いていたピープ音が僅かに収まった。
これはリサのPCを攻撃していたウイルスがブルースによってデリートされたことを意味していた。
だが依然として、ピープ音とコンソール上の攻撃検知の警告は止まらない。

「ヘンゼル!ウイルスはオレとブルースが何とか抑える!キサマは証拠を消される前にダウンロードするんだ!」
「了解!」

10.230.20.2:445> scp(input_file=“/Users/Kiba_sc/取引/*”, client=Hansel@Laptop-CLT.local)
Error.
Problem has been detected.

MEMORY_MANAGEMENT:0x0000001A

「ダメです!ウイルスが暴れすぎてメインメモリをパンクさせてる!コマンド実行できない!!」
『姉ちゃん!私もやる!!』
「私も!」

留置場でバトンタッチしたはずのマヤも再び参戦し、祐一朗も自前のMacbookをバッグから取り出して回線を繋ぐとキーボードを叩き始めた。

『バトルチップ!!ネオバリアブル!』
『ヤァァァ!!!』

炎山から転送されたチップを駆使してブルースは次々とウイルスをデリートしていく。
マヤと祐一朗の参戦によって、状況はしたが、それでもまだまだ不利だ。
炎山は腰のチップホルダーから3枚のバトルチップを取り出す。

「こうなったら…プログラムアドバンスだ!!」
『ダメです!炎山サマ!プログラムアドバンスでは威力が強すぎます!証拠ファイルまでも破壊してしまうかもしれません!』
「クッ…!」

炎山は顔をしかめると、チップを床に投げ捨てた。
ドリームソードを起動する「ソード」、「ワイドソード」、「ロングソード」の3枚組だ。

「どうしたらいい…どうしたら……」

炎山が珍しく弱気になった。
ここまで切羽詰った状況に陥ることはこれまで数える程しかなかった。
だがその度に、いつも力を貸してくれた少年の顔が頭に浮かぶ。

「光…絶対に助けてみせる……!」
『ハァァ!!!』

炎山とブルースは一度、深呼吸をすると再びウイルスの群れに突っ込んでいった。



 
 

 
後書き
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