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勿忘草-ワスレナグサ-

作者:樫吾春樹
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大きな罪
  ありがとう

 祥が人物検索でヒットしなかったのは、改名していたからだと本人が説明していた。そのことについて、両親は知らされていない。
「お待たせ、みんな。」
 今は、宏と拓真、結城、そして祥と一緒に帰ることが多くなった。今、祥は翼になっているけど。
「遅いぞ、玲。」
 そう言ってからかってくる、翼。
「まあまあ。」
 結城はそう言って、笑っていた。
「仕方ないでしょ。」
 拓真は肩をすくめながら、苦笑いしていたのだ。
「そうだね、玲は式川春だからね。」
 そういって、みんな笑った。私はもう、みんなにこのことは隠していない。今までは、少し恐怖心があったから、隠してしまっていた。実際に伝えてみると、驚かれることはなかった。
「早く行かないと、送れるよ。今日は沢山歌うつもりでしょ。」
「今、行くよ。」
 季節は暖かくなって、桜が咲いている。彼女たちは、進級して春から、三年生になる。最高学年になって、全ての行事に「最後の」という代名詞が付く。
「里奈、行ってきます。」
 空を見上げながら、玲は呟いた。
「玲、行くぞ。」
「わかっているよ。」
 玲がそう言ったとき、風が強く吹いた。桜が空を舞い、彼女たちを祝っているようだった。
「ありがとう。」
 みんなに急かされながら、玲は家を後にした。
 窓の空いている玲の部屋に、一匹の蝶が入り込んだ。そして、写真たての近くにとまった。その写真たてには、四人の子供達の写真。その隣に、笑顔の玲達五人が写っていた。 
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