レーヴァティン
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第百六十六話 全て整いその十
「漬物もな」
「これもですね」
「好きだ」
「左様ですね」
「粥に漬物の組み合わせはな」
「朝にはですね」
「最高のものだ」
そうだというのだ。
「やはり贅沢だ」
「そうしたものですね」
「実にな」
「お粥が贅沢である」
「珍しい考えか」
「上様の室となるまで聞いたことがなかったです」
そうした考えはとだ、お静は素直に答えた。
「ですが上様に言われて」
「それでか」
「そうしたお考えもあるとです」
その様にというのだ。
「考える様になりました」
「そうか」
「はい、それから」
「俺の考えを聞いてか」
「そうでした、確かにご自身が満足されれば」
「それで贅沢だな」
「実に」
「そうだ、俺は贅沢者だ」
自分自身で言った。
「実にな」
「そうなのですね」
「茶粥と漬物を楽しんでな」
「そうして満足されてですね」
「そしてだ」
そのうえでというのだ。
「出陣する、満ち足りたまま出陣するとな」
「最初からですね」
「心地よくはじめられてだ」
それでというのだ。
「最初から波に乗れるからな」
「いいのですね」
「最初が悪くても調子を戻すことは出来るが」
それでもというのだ。
「それは中々疲れる、だからな」
「最初からですね」
「心地よいに限る」
「ご出陣は」
「他の時もそうだがな」
戦の出陣に限らずというのだ。
「やはりはじまりがいいとな」
「違うのですね」
「何かとな」
「それではですね」
「今朝はこうしてだ」
「お粥を召し上がられますか」
「茶粥をな」
その茶粥を食いながら言う。
「そうする、ではな」
「はい、後はですね」
「宜しく頼む」
「わかりました」
お静は微笑んで応えた、そうしてだった。
英雄は気分よく出陣した、大坂城を大軍を率いて出るその背は堂々としていて既に勝っているかの様であった。
第百六十六話 完
2020・6・15
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