犬達と不思議な女の子
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第二章
「だから畳の端をね」
「歩くの」
「そうなんだよ」
「あの娘草原でいつもジョン達と遊んでるから」
「多分ね」
「山の神様なの」
「うちは裏が山だし」
曾祖母はその話もした。
「その娘はね」
「山の神様なの」
「そうだよ、だから大事にしてその話も聞くんだよ」
「神様だから」
「そうするんだよ」
曾孫にこう言うのだった。
その話を聞いて奈々子は女の子がジョン達と遊んでいる時に実際に女の子にそうなのかと聞いたが。
女の子は答えずにこりと笑ってジョン達と遊び続けるだけだった、ジョンの子供達は雄と雌が三匹つずつで。
雄はチロ、タロ、ゴロと名付けられ雌はチャロ、メロ、シロと名付けられて大事に育てられていた。皆女の子と楽しく遊んでいた。
そんなある日のことだった、女の子はいつもの様にジョン達のところに来たが奈々子にこう言った。
「今日のうちに公民館の方に皆で逃げて」
「今日のうちに?」
「うん、夕方から大雨になって」
そうしてというのだ。
「山崩れが起こるから」
「じゃあうちが」
「うん、山崩れに飲まれて」
そうしてというのだ。
「皆もワンちゃん達も大変なことになるから」
「じゃあ」
「すぐにね」
今日のうちにというのだ。
「皆逃げて、ワンちゃん達も連れてね」
「うん、それじゃあ」
奈々子は女の子の言葉に頷いた、そしてすぐに家に入って曾祖母に話すと家の田畑にいた祖父母と両親もだった。
家に戻って来た、そうしてだった。
祖父は強い声で家族に言った。
「山の神様の言うことならな」
「それならなの」
「間違いないな」
こう奈々子に言った。
「起こるな」
「土砂崩れが」
「ああ、だから大事なものは全部持って」
そうしてというのだ。
「今は田畑のこともな」
「そっちもなの」
「大雨になった時も何とかなるしな」
「今台風がこっちに来ているんだ」
父も言ってきた。
「それだな」
「そうだな、絶対にな」
祖父は父の言葉に頷いた。
「それならな」
「本当に今のうちにな」
「何もかもしてな」
「避難するか」
「印鑑や通帳、免許証は全部持って」
母はそちらの話をした。
「そしてね」
「行こうね」
祖母も言った。
「早いうちに」
「公民館の管理人さんにもお話して」
「土砂崩れが心配だからって」
「そうしないと」
「ジョン達も連れて行ってって言われたから」
奈々子は犬達のことも話した。
「だから」
「わかっている、そのこともな」
祖父は孫娘に確かな声で答えた。
「だからな」
「皆公民館に連れて行くのね」
「そうするからな、田畑のことをして」
そしてというのだ。
「その後ですぐにな」
「皆でなのね」
「家のことをしてな」
そしてというのだ。
「それからな」
「ジョン達を連れて」
「公民館に行くぞ」
そこに避難するというのだ、こう話してだった。
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