戦姫絶唱シンフォギア~響き交わる伴装者~
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第38節「先輩」
前書き
もう少し早く書き上げられていれば、昨日には更新できてたけど……まあ、過ぎたことを悔やんでも仕方ない。ここは宣言通りの締め切りを達成できたことを喜ぼう!
三撃槍が開催してた頃にXDを始めた俺氏、遂に復刻でそのストーリーを目の当たりにする。
響についての深めの掘り下げ、プチオールスター展開に、終身名誉ド畜生で翔くん激おこ案件なベル様もといベア子ことベアトリーチェ、三人のガングニール装者が集合と胸糞から胸熱の盛り上げ方で神イベと名高い三撃槍。
まだ途中までしか読めてませんが、既に伴装者三撃槍編の構想は出来てます。
というかこの作品と相性が良すぎる。ベア子(様付けするのが癪)がマジでド畜生過ぎて、翔くんが黙ってない筈なんですよね。
恋焦がれ、愛し合う男女に手ぇ出すのが手酷いしっぺ返しを食う事になる哲学兵装だってことを教えてやるぜ……。
さて、今回はタイトル通り、つばクリ推しの皆さんが大好きなあのシーンです。
純くんが唄います。BGM再生必須ですね。
推奨BGMは『DREAM FIGHTER』です。それではお楽しみください!
クリスの弾丸を叩き落し続け、翼の足元には既にいくつもの弾丸が転がっていた。
だが、既に彼女の精神はギリギリだと言ってもいい。
その上、首輪の点滅は徐々に早まり始めている。既に時間がないのだ。
『ちゃっちゃと仕留めないと、お友達は一生このままですよ?』
「くッ……」
そして、クリスもそれには気づいていた。
(操られた天羽奏……それに加えておそらく、あの首輪があの人を従わせているのか──クソッタレがッ!)
もう既に猶予はない。このままでは二人とも爆死してしまう。
だから、これ以上は引き延ばせない。次が勝負だ。
「犬の首輪はめられてまで、あんたは何がしたかったんだ?」
クリスの言葉に翼は俯き、肩を震わせる。
「私は……これ以上、不要な犠牲を出したくなかったのだ……。その為なら、たとえ裏切り者の汚名を被ることになろうとも……そう決めた筈なのにッ! でも……奏が生き返るならって気持ちもあって……だから……」
翼の目元に、何かが光る。
「私の覚悟が足りなかったばっかりに……気が付けばこの有様だ……。私は……わたしは、どうすればよかったのよッ!」
両目の端から、大粒の涙を零す翼。
それは、生来の責任感の強さと、亡き友を思う心の弱さに押し潰された少女が、防人の矜持の裏に隠したものだった。
だからこそ、クリスは叫ぶ。
照れくさくて言い出せなかった、自分の素直な気持ちを。
翼に対して抱いていたものを、包み隠さずぶつける。
「だったら……てめぇ一人で抱え込むんじゃねぇよッ! 頼りないかもしんないけどさ、あたしらを頼ってくれたっていいじゃねえかッ! それは別に、恥でも何でもねぇ……仲間として、当たり前の事だろッ!」
「──雪音……」
「道に迷ったときは言ってくれ……。あんたが道を見失わないよう、あたしらがついててやる。そして迷いを振り切ったら、また、いつものかっこいいあんたに戻ってくれッ! だってあんたは、あたしの──あたし達の先輩なんだからよッ!」
「──ッ!?」
その言葉は、クリスの口から初めて出た、翼への素直な感情……。人生で初めての『先輩』へと向けた敬意だった。
普段は素直になれず、自分の本当の感情をひねくれさせてしまうクリス。
そのクリスが、自らの感情を真っ直ぐにぶつけてくれている。自分の事を仲間と呼び、尊敬する先輩として見てくれている。
(そっか……。先輩だから、歳上だからって、肩肘張ってる必要無いんだ……。わたしの弱い所も見た上で、雪音達は受け入れてくれる。支えてくれる。そして、成長していくのか……)
手本であるばかりが先輩ではない。頼られるばかりが先輩ではない。
時に後輩に支えられる、相互の関係。
それこそが先輩、後輩と呼ばれるものなのだ。
クリスの一言は、押し潰されそうになっていた翼の心を、再び立ち直らせるには十分だった。
『何をしてるのですか? 素っ首のギアスが爆ぜるまでもう間もなくですよ?』
ウェルの煽動など、もはやその耳には届いていない。
その手に握るは剣のみにあらず。
見失いかけて、仲間に照らされ掴み直した彼女の誇りだ。
「──風鳴先輩……次で決める。昨日まで組み立てて来た、あたしのコンビネーションだッ!」
構えるクリスに、翼は刀を構え直す。
「ならば……こちらも真打をくれてやるッ!」
その顔に既に涙はなく、ただ、いつものように凛々しく毅然とした眼差しが戻っていた。
「うおおおおおおッ!」
「はああああああッ!」
「へぇ……いい顔してるじゃないか」
「ああ。まだまだ万策尽きたってわけじゃねぇからな……ッ!」
純が閃いた逆転の一手。
それは今、戦場に鳴り渡る音にあった。
(奏さんが唄わなくてもフォニックゲインが下がっていない理由……それは、間違いない。翔のイクユミヤと同じ『伴奏』だ。ウェルのアメノノリゴトが奏でる旋律が、奏さんに力を与えている……)
純は立ち上がりながら、奏の仮面を観察する。
鋭角的なバイザー状の仮面は、彼女の顔を口元以外を覆い隠している。
(あの仮面、ヘッドホンの部分に接続した外付けパーツか……。だとすれば──)
純はこの戦いをモニタリングしているであろう、本部の了子に小声で問う。
「了子さん、あの仮面は小日向を操っていたのと同じものなんだろ?」
『ええ。ダイレクトフィードバックシステムを応用したものでしょうね。ただし、神獣鏡と違って脳に直接情報を投射することは出来ないはず。おそらくは──』
「──音を利用して命令している、だろ?」
『察しがいいわね。おそらく、ギアの収音機能を利用して、アメノノリゴトの旋律を電気信号へと変換しているんだと思うわ』
「それだけ分かれば十分……ッ!」
そう言って純は盾を一つに戻すと、左腕へと装着する。
(ウェルの伴奏を掻き消し、その隙に仮面を引っぺがす……。外付けのパーツなら、多少荒っぽくなっても問題ないはずだ。問題は、その音をどうするか……)
純は一瞬、迷う。
装者として、まだまだ半人前の自分に出来るのか?
だが、迷っている暇などない。
やれるか、ではなく、やるしかないのだから。
「応えろ、アキレウス……。俺に、奏さんを助ける力をぉぉぉぉぉぉッ!」
突き出した手を開き、強く念じる。
その手にアームドギアを握る時と同じように。
そして、アキレウスの鎧は純の心象をカタチにするように、その右手に集まる光を新たな力として彼に与える。
「それは……槍、か」
「ああ……あんたを助ける力だ」
銀地に青と赤のラインが入った投擲槍を、純はクルクルと振り回す。
ルナアタックから三ヶ月。純の適合率が上昇し、更なる力を求めたことで、RN式アキレウスが彼の心象に応えたのだ。
「あたしと槍で対決しようって? いいぜ……そういや名前、聞いてなかったな」
「純……爽々波純、クリスの伴装者だッ!」
「なら、来いよ純、盾なんて捨ててかかって来なッ!」
「聴かせてやる……俺の音楽をなッ!」
そして純は、槍の穂先を盾に差し込み、合体させる。
次の瞬間、槍と盾は一つになり、武器から楽器へと変わった。
困惑する奏の目の前で、純は弦に指をかける。
盾と槍を重ねたギターが奏でる音は戦場に鳴り渡り、そして純は思いを歌にした。
「夢に向かい歩いて行こう 描いたヒカリを抱いて 輝け ULTRA HEART──ッ!」
「なんだよそいつはッ! その歌はッ!」
奏は地面を蹴り、アームドギアを手に突っ込む。
純はギターをかき鳴らしながら跳躍。目の前から消えた純に、奏が顔を上げると……そこには、突き出された槍の上に立つ純の姿があった。
「自分の力信じて 一人でもできるなんて ほんとカッコばかりつけていたMYSELF──」
「ずっと戦っていたくて 大切なもの見失って それでも走った MY STAGE──」
純の歌に合わせ、翼の刃に自慢の弾丸をぶつけるクリスのコンバーターも同じ曲を再生する。
「ぐ……ッ!? なんだ、頭が……このッ! その歌を止めやがれッ!」
頭を押さえて狼狽えながら、奏は乱雑に槍を振り回す。
しかし、乱れた槍撃は純を捉えることが出来ず、純は奏の攻撃を華麗に躱しながら唄い、奏で続ける。
その姿はまるで、弁慶を翻弄する五条大橋の牛若丸が如く。
『夢を守る為に戦う』と決めた、純とクリスの心象を繋ぐ歌。
銃爪にかけた指で夢をなぞる少女と、誓いを胸に少女の盾となる少年。戦場に響く二人の歌声が、邪悪なる雑音を掻き消していく。
「やっと気づいた──」
「本当のヒカリ──」
「「『守る』ことが『戦う』ってこと──ッ!」」
純が狙うのは、自分達の伴奏がウェルの伴奏を相殺し、奏に供給されるフォニックゲインと洗脳音波が切れるその一瞬。
純の目論見に気付いたウェルは慌てた。
「これは……伴奏による音の相殺ッ!? させるかぁッ!」
RN式アメノノリゴトを更にかき鳴らすウェル。
しかし、歌なき旋律では、純とクリスが奏でる命の旋律に敵うはずもない。
奏は遂に膝を付きかける。
「ぐああああああッ! なんなんだ……なんなんだよ、この歌は……ッ! 頭が……ぐぅ……ッ!」
「バカなッ! 僕の奏でた音が、掻き消されていく……ッ!?」
想定外の状況に焦るウェル。
そして、純は更なるフレーズを口ずさんだ。
「もうひとつだけ、君に伝えたい 『愛する』ことが『生きる』ってこと──」
「──ッ! 愛することが……生きる……こと……」
夢うつつで、どこか足元がおぼつかなくて……でも、この手に握る槍で敵を斃し続ける事だけがタノシクッて……。
でも、何か大切なことを忘れているような……それが何か分からなかった。
その歌ガ聞こエルと、全てどうデもよクなって……それダケが、あたしに残サレたものだった……。
だケど……このウタは……ナにか、大事なことを──そうだ、思い出した……ッ!
あたしがこの槍を振るう理由は、戦いを楽しむためなんかじゃないッ!
この撃槍は、今日を生きる誰かを守る為の──
「あたし……は……あたしは……ああああああああああああッ!!」
「届け今……、明日へと、響けえええぇぇぇ……ッ!」
純が奏に向かって急接近した瞬間、クリスの〈MEGA DETH PARTY〉と、翼の〈千ノ落涙〉がぶつかり合い、その爆発が辺り一帯を巻き込んだ。
「ぐあ……ッ!?」
「う……ッ!?」
「うわぁッ!?」
「ぐうぅぅぅッ!?」
そして、その爆発で地面が崩れて出来た亀裂の中へと、四人の装者は真っ逆さまに落ちていった。
「ひゃっはーーッ! 願ったり叶ったりぃ、してやったりぃッ!」
まさしく思惑通り。
四人の装者が同時に始末できたと、ウェルは大喜びで小躍りするのだった。
『アメノハバキリ、イチイバル、アキレウス、そしてガングニールの反応を、見失いました……』
「翼……クリスくんに純くん……奏……」
友里からの報告に、弦十郎はただ、四人の名前を呟く。
「慎次様、私はここで」
「春谷さん……頼みましたよ」
「ええ、お任せを」
そして春谷はシートベルトを外し、風呂敷を背負い直すと、ジープを飛び降り着地。
忍者走りで颯爽と、走り去っていくのだった。
後書き
主人公より先に専用曲を唄う純くん(二回目)
まあ、彼もこの物語の主人公の一人ですので、特に矛盾はないのですがw
メイン主人公の翔くんにも、その内唄ってもらわなくては。
Twitterで梶さんの曲を募集したのはそういう事ですとも。
それにしてもDREAM FIGHTERが純クリに似合い過ぎる件。
「夢に向かい歩いていこう」がまあ刺さる刺さるw
翔くんの歌も、響への愛が溢れてるんだろうなぁ……。
次回──
切歌「調に悲しい想いをして欲しくなかったのに、出来たのは調を泣かすことだけ……」
調「ダメッ! 切ちゃんッ!」
?「あの子に伝えて欲しいのよ……」
ツェルト「ドォォクタァァァァッ!」
マリア「あなたの歌って何? 何なのッ!?」
第39節「撃槍」
響「意味なんて、後から探せばいいじゃないですか。だから──」
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